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死への恐怖

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平原に出来た大岩は、幸せ巾着袋があったのでキコさんの祝福で間違いない。内ポケットに入っていたのは、巾着袋と同時に送る為だろうか。そもそも自由に生きろと言われたが、話を聞いていなかったので何故この世界に送られたのかを知らない。疑問だけがまた増えた。

「それじゃあ次は魔物ですね。襲われたばかりで怖いかもしれませんが、重要な事なので。ああ、ご心配なく。ここには滅多に魔物は近づきませんし、万が一来ても直ぐに狩りますので。そういえば副隊長が褒めていましたよ、偶然でもシープの群れを横切るのは見事だと。俺でもなかなか褒められないのに。」

魔物。頭をよぎるのはライオンに襲われた瞬間。死んだら元の世界に戻るだけなのは知ってるが、本能では実際の死を感じた時と同じだった。階段から落ちた時や、海で溺れた時のような感覚。もう二度と味わいたくない恐怖感。

「死にたくない。」

感情が溢れ、言葉として流れ出た。

「そうだ、誰もがそう思っている。だから学べ!それだけが爪を持たない者の唯一の戦いだ!」

茶色の体より大きな翼を広げ、胸を張る隼姉さん。生じた風で揺らめく火に照らされたその姿は、とても輝いて見えた。ふと自分の獣化していない普通の手を見る。爪があっても戦えただろうか?そもそも本当に獣化出来るのか?手を握りしめ、前を向くと。お姉さんは小さな子供を見るような目で微笑んでいた。君なら出来ると言われている気がする。それでも不安が止まらない。

「格好良く言ってますけど、それ隊長の受け売りですよね。」

インコ兄さんの言葉で硬直し、顔を赤らめる。小刻みに震えてかなり恥ずかしそうだ。でも、受け売りだとしても、僕には必要な言葉だ。魔物に怯えるだけでは駄目、怖いならなおさら知らないといけない。むしろ、自分だけが怖いんじゃないと安心した。

「懐かしいな、二人して初めて魔物と戦った日でしたね。飛べばいいのに走って逃げて、最後には転んで泥まぐへっ!?食い込んでる、爪食い込んでる!!」
「お前こそ目を瞑ったまま特攻して、地面に突き刺さっていただろうが!忘れろ、そして二度と話すんじゃない!」

インコ兄さんの首に鋭い蹴りをいれ、壁まで吹き飛ばす。そして、流れるように頭を脚で掴み、アイアンクロー。今までで一番痛そうな音だった。そして、魔物を見た時よりも強いと感じる。蹴りを見たからではなく、雰囲気や本能からそう感じた。

とりあえず止めようと近づいたとき、僅かに風が頬に触れる。ゆっくり風が吹いた方を向くと、間に目玉が浮いていた。その目は僕をじっと見つめている。不思議な事に怖いと思わなかったが、目が合ったまま僕は動けなかった。
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