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第Ⅱ章 平穏70%・歪度30%
brocen 19 天使様による罰
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しばらくして、彼は落ちついた声でそっと尋ねた。
「冷徹な天使になるべきだったと思ってる?」
彼の胸の中で、ぼうっとして考えた。
初めにわたしは、どう思って彼を助けたんだっけ。もし彼の言うことが本当なら、助けなければ善人を見殺しにすることになる。騙されていたとしても、万が一のそれを後悔したくなくて……彼を、助けた。
「悪魔に……いい人は、いない?」
「しまったな、まだ真実薬が効いてるのに」
彼はからかうように言った。
「いないよ。だから次は騙されないで」
「あなたが、言わないで」
「ほんとだよな?」
まったく悪びれなく笑う。
少し考えて、おもむろに口を開いた。
「じゃあ、人間は? 人間の、殺人を犯した人や、誰かを虐める人、物を盗んだり壊したりする人は?」
「程度によるが、場合によっては善の心が残ってることもある。だが、痛い目をみることもあるかもしれない」
「こんかい、みたいに?」
「ああ」
彼は背中を優しく摩り、ひそやかに声を落とした。
「そういう人を助けたい? でも助けて裏切られたら、またお前は傷つくんだ」
「助けなかったら──」
「善人だったかもしれない人を見捨てることになる」
「わたしが、傷つく、だけなら」
彼は顎を肩にのせて、何度か頷いた。
「お前ならそう言うだろうな。じゃあ、周りの天使が巻きこまれるなら?」
「……それは、助けちゃいけないと思う……。けど、目の前に苦しんでいる人がいたら。わたしに助けを求めたら──」
見殺しにできるだろうか。悪人だからと切り捨てることができるだろうか。わたしは続けた。
「熾天使様はきっと、もっと大きな視点で生きていると思う。ひとりが死んでも、百人が助かるならそのひとりが善人でも、きっと見殺しにするの」
「お前はそういう天使になりたいの?」
いつかなりたいと思うときが来るかもしれない。何年も生きれば、そのほうが結果的に人間の幸せに繋がると……そう冷静な判断ができるようになるのかもしれない。
「あなたは、どう思うの」
「俺?」
とんとんとわたしの背中を叩いている。
「ひとりのほうが大事なら百人を殺すし、百人が大事ならひとりを殺す」
「善人でも……百人を、殺すの?」
「善人か悪人かなんて気にしたことない。人数も。俺がしたいようにやる」
悪魔に聞くなんて馬鹿だった。胸を押して離れようとしたけど、やっぱり放してくれなかった。
「じゃあ、天使ならどうするべきだと思う?」
「あー、俺が天使なら、百人を生かしてひとりを殺す。ひとりを生かせば百人が苦しみうるんだろ? 結果論として、犠牲は少ないほうがいいからな」
体を縮めた。翼が丸まり、心臓が小さくなった。
「じゃあ、私は」
「だが、ひとりを救うほうが天使らしい。悪魔の俺が百人を生かしてひとりを殺すと言うなら、天使はひとりを生かして、百人も生きるように頑張るもんじゃねえか」
顔を上げて彼を見た。まだ真実薬は効いているはずだ。本当に、本音で言ったんだろうか?
「薬飲んでてよかった。疑ってるだろ?」
彼が悪戯っぽく眼を細めた。わたしが俯くと、真面目な声で話した。
「どうせ何年も生きたら冷徹な天使になるんだ。なら今は、そのままでいいじゃねえか」
「だけど私は、悪魔を」
「悪魔悪魔って言うけど、俺お前を傷つけただけで、他に何もしてないじゃん。天界を脅かす気も、人間界を荒らす気もないよ。お前はただ悪魔を助けて、で、悪魔のせいで傷ついた。終わり」
そんな簡単な話なのかな?
たしかにわたしはさっき、自分が傷つくだけですむなら、善人である可能性のある人間を救いたいと言った。悪魔が完璧に悪であることは知らなかったし──、たしかに、わたしが、傷ついた、だけだけど。
「傷つけたのはたしかだ。それに俺は悪魔だからお前に悪いと思ってないし、反省もしてない。だからセラエルは、ただ個人的な気持ちを傷つけられて、それを許すか許さないか──そこだけ考えればいいんじゃねえか」
もう一度彼を押すと、今度は離れてくれた。言いたいことを言い終わったってことかな。
「許したくない」
「でも楽しいことも教えてやったろ?」
「ぜんぶ裏切った」
「このあとも教えてあげるし、一緒に遊んであげる」
「悪魔となんて遊びたくない」
彼は答えをわかっていたのだろう。軽く笑って言いなおす。
「じゃああとは、お前に俺を殺す力があるかってところか」
「殺せるよ。天界にいる天使に、悪魔が適うわけないでしょ」
「そうじゃなくて」
彼はわたしの髪を掬い、落とした。
「悪魔は退屈だ。俺たちには娯楽を楽しむ心がない。お前と過ごした日々が楽しかったとは言えない、言わないよ。だが、新鮮ではあった。あとは……」
彼は目を伏せて、また開いた。わたしの後ろにある翼に視線を送る。
「たぶん、初めて平穏というものを感じた。天使の……お前の翼は、悪魔の俺でも。幸せの、その少し前くらいまでなら……与えてくれるらしい」
肩に手を載せる。
「ありがとう。本当に思ってる」
彼は立ちあがって、黒い翼を気怠そうに下ろしたまま部屋をゆっくりと出ていった。
布団に落ちた手を見つめる。
もう……ダメだ。酷い、酷いよ。
彼はずるい。彼は悪魔だ。だから何も聞きたくなかったのに。真実薬を飲ませたって、悪魔は悪魔だ。
わざとだ、わかってる。わたしが憐れむような話をして、気を引いて、わたしが彼を殺せないようにした。
いくつもの涙が落ちる。止められない。
嘘はつけない。『ありがとう』。本当なんだ。
だからこそ、だから余計に、胸に突き刺さった。それをわかってて彼はああ言った。彼を懲らしめるために真実薬を飲ませたのに、こんなの、…………ずるいじゃんか。
ついに抑えきれなくなって、しゃくりあげて泣いた。布団で口を抑える。
彼は本気でわたしに感謝をしていて、本物の感謝を口にした。わたしたちはそういう時間を過ごしたのだ。わたしはたしかに彼に……悪魔である彼に、心からの『ありがとう』を引きだすような幸せを贈ることができた。
わたしは天使だ、天使なのだ。
人に感謝されたくて、人を幸せにしたくて、幸せにするために生きる存在なのだ。その相手が悪魔だとしても、いや、他ならぬ悪魔だからこそ、その『ありがとう』には特別な意味があった。
初めて……今まで感じたことのなかった平穏を、彼は──。
さめざめと涙が落ちていく。
熾天使様に言えば彼は処分されるだろう。わたしはよくて降格……悪くて消されてしまう。最悪わたしが消えるのは、我慢できる。彼の言う〝天使らしい天使〟として生きる道は閉ざされてしまうけど、然るべき罰を受けるのは仕方のないことだ。
でもそれはすなわち、わたしが彼を殺すのとなんら変わりない。ただ直接手を下したかどうかの違いがあるだけだ。
彼は最初からわたしを騙していて、最後まで悪魔で、今もこうしてわたしを惑わそうとしているのだから、殺されてもいいのかもしれない。でも彼が悪事を働いたのはわたしにだけだ。ただ生き残りたくて、死にたくなくてわたしを頼った。それは……生存本能がある人間や悪魔なら自然なことだろう。
天使の翼で与えられる幸せなどたかが知れている。ほんの少し心を慰め、落ちつかせ、緩やかな平穏を贈るだけだ。恋人に愛される幸せにも、夢が成功を結ぶ幸せにも、家族とクリスマスを過ごす幸せにも勝てない。
それなのに彼は……あれを初めての平穏と言って、……本心から、感謝した。
かわいそうだと思ってしまった。
いつもそうだ、初めに彼を助けたときと同じだ。
悪魔である彼が可哀想で、あんなことで「ありがとう」を口にできる境遇が哀れで──。
わかってるのに。
悪魔は。悪魔は、悪い人で、悪魔は。
わたしは布団を引き剥がし、駆けて部屋を出た。ソファに座って本を読むディアンシャに迫る。持っていた本を机に置いて、頬を引っぱたいた。
「悪魔! 最低。最低!」
彼はぱちぱちと目を瞬いたあと、頬に手を当て、またこちらを向いた。赤くなった頬はすぐに引いてしまっている。もう一度叩いた。
「なんであんなこと言うの? わかってて言ったの? 最低だよ、酷い。どうして……」
「人に引っぱたかれたの、初めてだ」
「これは……罰です」
「そうだな、たしかに」
力が抜けて、よろよろと蹲った。
「わたし……殺せないよ。あなたを助けるくらい甘いのに、あなたを殺す選択なんて」
彼は頬杖をつき、しゃがんでいるわたしを見下ろした。
「お前、俺に地獄を滅ぼしてほしかったのか?」
「え……」
きょとんとして悪魔を見つめる。
「だって、地獄の悪魔が減るのはいいことかなって思ったから」
「じゃあ俺が完治して地獄に戻ったら、今いる悪魔の半数を殺そう。いや、もっとがいいか?」
「え、なんで? どういう……こと?」
彼は呆れたように笑う。
「少しは頭を使え。黙って悪魔を返すのは天使としてはまずいだろ。だからお前も苦しんでる。だが、殺したくても殺せない。だよな?」
「……うん」
「じゃあ今引っぱたいたみたいに、俺に罰を与えればいいだろ」
そっか。どうして思いつかなかったんだろう。
急に光明が差して、思考がクリアになった。
わたしは立ちあがって、ゆっくりとソファに座った。靄のかかった悩みを奥に押しこみ、深呼吸をして冷静さを取りもどす。大丈夫、できる。翼を畳むと、体がどこかひんやりとして、昂っていた感情が潮が引くように消えていった。これも天使の機能なのかな。
「あなたに怪我をさせるような罰を与えるのは……本末転倒だから。天界や人間のためになることをすればいいのか」
悪魔本人に教えられたのは癪だけど、彼も自分が助かるために必死なのだろう。
「悪魔を倒すだけじゃなくて……地上に降りて、人間に感謝されることを百年に千回行いなさい。あなたならそれくらい容易いでしょ?」
「おい、待て」
彼は慌てて体勢を変え、わたしの体を自分のほうへ向けた。
「百年に千回は多くねえか? わざわざ地上に降りて?」
「千人を助ければいいんだよ? 人間は地上にあんなにいるじゃない」
「感謝って……どの程度のことを?」
「えっと……あの」
わたしは首を傾げた。
「焦ってるの?」
「え? あ……」
いや、と答えようとしたのだろう。無理なことに気づいて、堪忍したように肩を竦めた。
「まあ、焦ってる」
初めて彼を負かした気がして、思わず口元が緩んでしまった。
悪魔が言う。
「百年に千回じゃなくて、ただの一万回とか……十万とか……。つまりこれ、永遠に善行を積むってことだよな?」
「そう。生かしてあげるんだから、いい悪魔になるの。心根がいい悪魔でなくとも、いいことをするなら……多少はマシでしょ。それと、人間に悪いことを──」
「いやいやいや。本当にそれはやめて」
彼はわたしの体を揺らす。
「俺なにもできなくなっちゃう。お前だって、人間に善行を積むのをやめろって言われたら困るだろ?」
「それは……そう、だけど」
「生き地獄みたいなことするなよ。なら死んだほうがいい」
わたしは顔を顰めた。
「そんなに人間に酷いことをしてるの?」
「いや……あ」
また薬のことを忘れていたらしい。
「結果的にしてる……が、趣味として行うことはほとんどない。ともかく、制限されると困る」
「本当に、悪事を制限されるくらいなら死んだほうがいいの?」
彼はいたって真面目に、真っ直ぐとこちらを見て言った。
「ああ。このまま天界で死なせてくれ」
「地獄に戻って……自分で死んだら?」
「意外と容赦ねえな?」
悪魔は視線を揺らした。
「地獄に戻ったら絶望しそうだから……嫌だ」
「わたしは今日、絶望したのに」
「それはさ……」
彼は言いにくそうに口篭ったあと、上目遣いで言った。
「頼む。善行は積むから」
「えー……」
「俺が地獄で死んだら、善行を積む悪魔がいなくなるぜ。いいのか? 生きてれば百年ごとに善行を積んでるんだから、人間のためになってるだろ?」
「それは……うーん……」
悪行を禁止したら、本気で死ぬつもりらしい。
「じゃあ、善行の数だけ悪行を増やすことはしない? そうなったら意味がないもん」
「しねえよ。そんな暇じゃない。これまでどおり生きるし、そこに百年に……千回」彼はそこで溜息を吐いた。「人間に感謝されればいいんだろ。やるよ……」
初めは百年に千回も渋っていたのだ。それなら、及第点かな?
わたしは棚から羊皮紙をだして、魔法の杖を作った。さらさらと契約内容を記していく。
隣で悪魔が溜息をついているので、本当に堪える契約内容だったんだろう。
たしかに、悪魔を殺すのは地獄で行えばいいから簡単だけど、地上へ百年ごとに善行を積みにいくのは……彼にとっては面倒くさそうだ。
書き終わって、彼に魔法の杖を渡した。さっと目を通している。
「これにサインすれば、俺を最後まで治してくれるんだな? それでちゃんと地獄へ返してくれる?」
「そう書いてあるでしょ」
「途中で裏切って、熾天使に言わねえか?」
むっとして翼を動かした。
「わたしは悪魔じゃない。嘘はつかない」
「じゃあ、熾天使からもちゃんと隠してくれるよな?」
「そう言ってるでしょ。わたしのできる範囲で隠すし、最後まで治療するよ。完治したら、地獄に戻って、あなたはここに書いてあることをずっとやっていくの」
「はー、わかった」
小声でぼやいている。
「条件を出せばいいとか、言わなきゃよかった」
「うふふ」
はっとして手を当てた。さっきまで落ちこんでいたけど、むしろいい悪魔をひとり作ったと思ったら、少し嬉しくなれた。
彼は笑ったわたしに気づいて、髪をくしゃりと回した。
「笑うと天使っぽいな」
はっとして顔を逸らした。真実薬を飲ませてもこういう顔はできるんだ。本当に……悪魔だ。
そのあと、悪魔はちゃんと紙にサインをした。間違いないかよくチェックをして、魔法を発動させる。金に光った羊皮紙は宙でくるくると巻かれていき、虹色の鱗粉に変わって弾けた。魔法がかかった。
「で。いい加減、真実薬を解いてくんねえか?」
体が苦しいんだろう。聞きたいことはすべて聞いたし、事も片付いたのでわたしはすんなり頷いた。コップに水を入れ、そこに魔法をかける。彼は初めと同じように飲み干した。
肩を上げて落とし、悪魔の翼を何度か開いたり閉じたりしている。わたしを見て、少し考えるように目線をずらしたあと口を開いた。
「セラエル」
「なに?」
青い目が一直線にこちらを見つめている。
「かわいい。愛してる」
「……は?」
悪魔は納得したように頷いて、「うん。ちゃんと戻った」と呟いた。
「ねぇ、そんな言葉で試さないでよ?」
一歩進んで彼の腕を掴むと、見下ろした眼がからかうように曲がった。
「わかりやすくていいじゃん。もうお前も間違えないだろ? さんざん説明したんだから」
「そういう問題じゃない……」
「どんな問題? 困ってんのもかわいいな」
本当にこの悪魔は流れるように嘘をつきたいらしい。わたしは彼の腕を強く掴んで、寝室まで連れていった。
「からかわないでよ。もう信じないよ」
無理に押してベッドに座らせた。
「信じてもらおうと思って言ってねえよ」
見上げた目がきらきら輝いている。
「じゃあなに?」
「なんだろうな、俺の性?」
彼は部屋を見渡した。
「それより、なんで連れてきたんだ? ああ、また抱きしめてほしくて? いいよ?」
立っているわたしの腕を掴み、ぐいと引っ張られる。もう少しというところで離れた。
「ち、違う! 本当に……本当に、まったく反省してないんだね。わたしがあんなに泣いてたのに、少しも悪いと思わないの?」
「泣いてたから、抱きしめて慰めてやったじゃん」
「全部あなたのせいだよ?」
「だから俺が慰めるんだろ? あ、謝ってなかったな。ごめんな」
真実薬のせいで、ろくに謝ることもできなかったんだろう。
あんなことがあってもまったく普段通りの悪魔に、呆れたらいいのか、傷ついたらいいのかわからなくなってきた。大きな溜息を落とした。彼に浄化魔法をかける。
「今日は……疲れたから。血は明日ね」
「ああ」
ベッドに残して部屋を出ていこうとすると、後ろから声がかかった。
「お前は寝ないのか?」
「わたしはソファで寝る」
「なんで」
「嫌だよ。もう」
「そ」
翼がはためく音が聞こえる。翼を畳み、ベッドに入ったらしい。寝室を出て、リビングに戻った。さっき彼が飲んだグラスが机に残っている。
どっと疲れが出て、倒れるようにソファに横たわった。徒にグラスを取りあげ、自分の顔を映し見つめる。
天使としてやるべきことはやったはずだ。悪魔を助ける代わりに、地獄の悪魔の数を減らさせて、地上の人間が少しでも幸せになるようにした。千回なんて、人間の数に比べたらたいしたことはない。少ないくらいだ。だけど……他ならぬ悪魔に善行を積ませるのは、きっと私にしかできなかったはずだ。
抑えていた感情が少しづつ漏れだしていく。しくしくと涙を流す。
そうは言っても、悲しかった。
そう。これはただのわたしの問題で、わたしが辛いだけ。
……彼は天使になりたいんだと思っていたのに。一緒に天使になれると思ったのに。彼に裏切られたのが、夢を見ているのがわたしだけだったことが、悔しくて、悲しかった。
それに、楽しいと思っていたのもわたしだけだった。少なからずよく思ってくれていると……思ったのに。
〝なにも思ってない〟
心臓に刺さった棘がじゅぐじゅくと埋もれて、一生抜けてしまいそうになかった。
でも、感謝はしていると言っていた。わたしを抱きしめると、翼のおかげで平穏を初めて知れたと。一緒にいるのが新鮮だとも聞いた。
元より悪魔に好かれるなんて夢みたいな出来事なのだから、もう忘れてしまえばいい。最初に告白されたときはむしろ困っていたくらいなんだから。
それでも心につかえた棘は何かを、どこかを刺激していて、たしかに芽生えていた何かを……。わたしの知らない何かを苦しめていて、……痛くて辛くて、仕方なかった。
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このあたりとてもお気に入りの話です♡ 性癖同じ方はぜひいいねしておいてください!
以下より匿名でコメントを送れますので、よければ使ってください! コメント内容も私しか見れません。感想をいただけるととても幸せな気持ちになります…! もちろん何回でも嬉しいです。
一話ごとの感想、特定のシーンだけの感想でも大歓迎です♡ セリフやキャラ名などを間違えていたり、シーンやシチュ、キャラたちの感情を誤解していても、全然気にしないタイプです! 「良き!」と思ってくださった方は、気楽に投げていただけたらと思います。
https://herrealmyth.studio.site/thoughts
この話は、『小説家になろう ムーンライト』では完結しています。
https://novel18.syosetu.com/n1801il/
「冷徹な天使になるべきだったと思ってる?」
彼の胸の中で、ぼうっとして考えた。
初めにわたしは、どう思って彼を助けたんだっけ。もし彼の言うことが本当なら、助けなければ善人を見殺しにすることになる。騙されていたとしても、万が一のそれを後悔したくなくて……彼を、助けた。
「悪魔に……いい人は、いない?」
「しまったな、まだ真実薬が効いてるのに」
彼はからかうように言った。
「いないよ。だから次は騙されないで」
「あなたが、言わないで」
「ほんとだよな?」
まったく悪びれなく笑う。
少し考えて、おもむろに口を開いた。
「じゃあ、人間は? 人間の、殺人を犯した人や、誰かを虐める人、物を盗んだり壊したりする人は?」
「程度によるが、場合によっては善の心が残ってることもある。だが、痛い目をみることもあるかもしれない」
「こんかい、みたいに?」
「ああ」
彼は背中を優しく摩り、ひそやかに声を落とした。
「そういう人を助けたい? でも助けて裏切られたら、またお前は傷つくんだ」
「助けなかったら──」
「善人だったかもしれない人を見捨てることになる」
「わたしが、傷つく、だけなら」
彼は顎を肩にのせて、何度か頷いた。
「お前ならそう言うだろうな。じゃあ、周りの天使が巻きこまれるなら?」
「……それは、助けちゃいけないと思う……。けど、目の前に苦しんでいる人がいたら。わたしに助けを求めたら──」
見殺しにできるだろうか。悪人だからと切り捨てることができるだろうか。わたしは続けた。
「熾天使様はきっと、もっと大きな視点で生きていると思う。ひとりが死んでも、百人が助かるならそのひとりが善人でも、きっと見殺しにするの」
「お前はそういう天使になりたいの?」
いつかなりたいと思うときが来るかもしれない。何年も生きれば、そのほうが結果的に人間の幸せに繋がると……そう冷静な判断ができるようになるのかもしれない。
「あなたは、どう思うの」
「俺?」
とんとんとわたしの背中を叩いている。
「ひとりのほうが大事なら百人を殺すし、百人が大事ならひとりを殺す」
「善人でも……百人を、殺すの?」
「善人か悪人かなんて気にしたことない。人数も。俺がしたいようにやる」
悪魔に聞くなんて馬鹿だった。胸を押して離れようとしたけど、やっぱり放してくれなかった。
「じゃあ、天使ならどうするべきだと思う?」
「あー、俺が天使なら、百人を生かしてひとりを殺す。ひとりを生かせば百人が苦しみうるんだろ? 結果論として、犠牲は少ないほうがいいからな」
体を縮めた。翼が丸まり、心臓が小さくなった。
「じゃあ、私は」
「だが、ひとりを救うほうが天使らしい。悪魔の俺が百人を生かしてひとりを殺すと言うなら、天使はひとりを生かして、百人も生きるように頑張るもんじゃねえか」
顔を上げて彼を見た。まだ真実薬は効いているはずだ。本当に、本音で言ったんだろうか?
「薬飲んでてよかった。疑ってるだろ?」
彼が悪戯っぽく眼を細めた。わたしが俯くと、真面目な声で話した。
「どうせ何年も生きたら冷徹な天使になるんだ。なら今は、そのままでいいじゃねえか」
「だけど私は、悪魔を」
「悪魔悪魔って言うけど、俺お前を傷つけただけで、他に何もしてないじゃん。天界を脅かす気も、人間界を荒らす気もないよ。お前はただ悪魔を助けて、で、悪魔のせいで傷ついた。終わり」
そんな簡単な話なのかな?
たしかにわたしはさっき、自分が傷つくだけですむなら、善人である可能性のある人間を救いたいと言った。悪魔が完璧に悪であることは知らなかったし──、たしかに、わたしが、傷ついた、だけだけど。
「傷つけたのはたしかだ。それに俺は悪魔だからお前に悪いと思ってないし、反省もしてない。だからセラエルは、ただ個人的な気持ちを傷つけられて、それを許すか許さないか──そこだけ考えればいいんじゃねえか」
もう一度彼を押すと、今度は離れてくれた。言いたいことを言い終わったってことかな。
「許したくない」
「でも楽しいことも教えてやったろ?」
「ぜんぶ裏切った」
「このあとも教えてあげるし、一緒に遊んであげる」
「悪魔となんて遊びたくない」
彼は答えをわかっていたのだろう。軽く笑って言いなおす。
「じゃああとは、お前に俺を殺す力があるかってところか」
「殺せるよ。天界にいる天使に、悪魔が適うわけないでしょ」
「そうじゃなくて」
彼はわたしの髪を掬い、落とした。
「悪魔は退屈だ。俺たちには娯楽を楽しむ心がない。お前と過ごした日々が楽しかったとは言えない、言わないよ。だが、新鮮ではあった。あとは……」
彼は目を伏せて、また開いた。わたしの後ろにある翼に視線を送る。
「たぶん、初めて平穏というものを感じた。天使の……お前の翼は、悪魔の俺でも。幸せの、その少し前くらいまでなら……与えてくれるらしい」
肩に手を載せる。
「ありがとう。本当に思ってる」
彼は立ちあがって、黒い翼を気怠そうに下ろしたまま部屋をゆっくりと出ていった。
布団に落ちた手を見つめる。
もう……ダメだ。酷い、酷いよ。
彼はずるい。彼は悪魔だ。だから何も聞きたくなかったのに。真実薬を飲ませたって、悪魔は悪魔だ。
わざとだ、わかってる。わたしが憐れむような話をして、気を引いて、わたしが彼を殺せないようにした。
いくつもの涙が落ちる。止められない。
嘘はつけない。『ありがとう』。本当なんだ。
だからこそ、だから余計に、胸に突き刺さった。それをわかってて彼はああ言った。彼を懲らしめるために真実薬を飲ませたのに、こんなの、…………ずるいじゃんか。
ついに抑えきれなくなって、しゃくりあげて泣いた。布団で口を抑える。
彼は本気でわたしに感謝をしていて、本物の感謝を口にした。わたしたちはそういう時間を過ごしたのだ。わたしはたしかに彼に……悪魔である彼に、心からの『ありがとう』を引きだすような幸せを贈ることができた。
わたしは天使だ、天使なのだ。
人に感謝されたくて、人を幸せにしたくて、幸せにするために生きる存在なのだ。その相手が悪魔だとしても、いや、他ならぬ悪魔だからこそ、その『ありがとう』には特別な意味があった。
初めて……今まで感じたことのなかった平穏を、彼は──。
さめざめと涙が落ちていく。
熾天使様に言えば彼は処分されるだろう。わたしはよくて降格……悪くて消されてしまう。最悪わたしが消えるのは、我慢できる。彼の言う〝天使らしい天使〟として生きる道は閉ざされてしまうけど、然るべき罰を受けるのは仕方のないことだ。
でもそれはすなわち、わたしが彼を殺すのとなんら変わりない。ただ直接手を下したかどうかの違いがあるだけだ。
彼は最初からわたしを騙していて、最後まで悪魔で、今もこうしてわたしを惑わそうとしているのだから、殺されてもいいのかもしれない。でも彼が悪事を働いたのはわたしにだけだ。ただ生き残りたくて、死にたくなくてわたしを頼った。それは……生存本能がある人間や悪魔なら自然なことだろう。
天使の翼で与えられる幸せなどたかが知れている。ほんの少し心を慰め、落ちつかせ、緩やかな平穏を贈るだけだ。恋人に愛される幸せにも、夢が成功を結ぶ幸せにも、家族とクリスマスを過ごす幸せにも勝てない。
それなのに彼は……あれを初めての平穏と言って、……本心から、感謝した。
かわいそうだと思ってしまった。
いつもそうだ、初めに彼を助けたときと同じだ。
悪魔である彼が可哀想で、あんなことで「ありがとう」を口にできる境遇が哀れで──。
わかってるのに。
悪魔は。悪魔は、悪い人で、悪魔は。
わたしは布団を引き剥がし、駆けて部屋を出た。ソファに座って本を読むディアンシャに迫る。持っていた本を机に置いて、頬を引っぱたいた。
「悪魔! 最低。最低!」
彼はぱちぱちと目を瞬いたあと、頬に手を当て、またこちらを向いた。赤くなった頬はすぐに引いてしまっている。もう一度叩いた。
「なんであんなこと言うの? わかってて言ったの? 最低だよ、酷い。どうして……」
「人に引っぱたかれたの、初めてだ」
「これは……罰です」
「そうだな、たしかに」
力が抜けて、よろよろと蹲った。
「わたし……殺せないよ。あなたを助けるくらい甘いのに、あなたを殺す選択なんて」
彼は頬杖をつき、しゃがんでいるわたしを見下ろした。
「お前、俺に地獄を滅ぼしてほしかったのか?」
「え……」
きょとんとして悪魔を見つめる。
「だって、地獄の悪魔が減るのはいいことかなって思ったから」
「じゃあ俺が完治して地獄に戻ったら、今いる悪魔の半数を殺そう。いや、もっとがいいか?」
「え、なんで? どういう……こと?」
彼は呆れたように笑う。
「少しは頭を使え。黙って悪魔を返すのは天使としてはまずいだろ。だからお前も苦しんでる。だが、殺したくても殺せない。だよな?」
「……うん」
「じゃあ今引っぱたいたみたいに、俺に罰を与えればいいだろ」
そっか。どうして思いつかなかったんだろう。
急に光明が差して、思考がクリアになった。
わたしは立ちあがって、ゆっくりとソファに座った。靄のかかった悩みを奥に押しこみ、深呼吸をして冷静さを取りもどす。大丈夫、できる。翼を畳むと、体がどこかひんやりとして、昂っていた感情が潮が引くように消えていった。これも天使の機能なのかな。
「あなたに怪我をさせるような罰を与えるのは……本末転倒だから。天界や人間のためになることをすればいいのか」
悪魔本人に教えられたのは癪だけど、彼も自分が助かるために必死なのだろう。
「悪魔を倒すだけじゃなくて……地上に降りて、人間に感謝されることを百年に千回行いなさい。あなたならそれくらい容易いでしょ?」
「おい、待て」
彼は慌てて体勢を変え、わたしの体を自分のほうへ向けた。
「百年に千回は多くねえか? わざわざ地上に降りて?」
「千人を助ければいいんだよ? 人間は地上にあんなにいるじゃない」
「感謝って……どの程度のことを?」
「えっと……あの」
わたしは首を傾げた。
「焦ってるの?」
「え? あ……」
いや、と答えようとしたのだろう。無理なことに気づいて、堪忍したように肩を竦めた。
「まあ、焦ってる」
初めて彼を負かした気がして、思わず口元が緩んでしまった。
悪魔が言う。
「百年に千回じゃなくて、ただの一万回とか……十万とか……。つまりこれ、永遠に善行を積むってことだよな?」
「そう。生かしてあげるんだから、いい悪魔になるの。心根がいい悪魔でなくとも、いいことをするなら……多少はマシでしょ。それと、人間に悪いことを──」
「いやいやいや。本当にそれはやめて」
彼はわたしの体を揺らす。
「俺なにもできなくなっちゃう。お前だって、人間に善行を積むのをやめろって言われたら困るだろ?」
「それは……そう、だけど」
「生き地獄みたいなことするなよ。なら死んだほうがいい」
わたしは顔を顰めた。
「そんなに人間に酷いことをしてるの?」
「いや……あ」
また薬のことを忘れていたらしい。
「結果的にしてる……が、趣味として行うことはほとんどない。ともかく、制限されると困る」
「本当に、悪事を制限されるくらいなら死んだほうがいいの?」
彼はいたって真面目に、真っ直ぐとこちらを見て言った。
「ああ。このまま天界で死なせてくれ」
「地獄に戻って……自分で死んだら?」
「意外と容赦ねえな?」
悪魔は視線を揺らした。
「地獄に戻ったら絶望しそうだから……嫌だ」
「わたしは今日、絶望したのに」
「それはさ……」
彼は言いにくそうに口篭ったあと、上目遣いで言った。
「頼む。善行は積むから」
「えー……」
「俺が地獄で死んだら、善行を積む悪魔がいなくなるぜ。いいのか? 生きてれば百年ごとに善行を積んでるんだから、人間のためになってるだろ?」
「それは……うーん……」
悪行を禁止したら、本気で死ぬつもりらしい。
「じゃあ、善行の数だけ悪行を増やすことはしない? そうなったら意味がないもん」
「しねえよ。そんな暇じゃない。これまでどおり生きるし、そこに百年に……千回」彼はそこで溜息を吐いた。「人間に感謝されればいいんだろ。やるよ……」
初めは百年に千回も渋っていたのだ。それなら、及第点かな?
わたしは棚から羊皮紙をだして、魔法の杖を作った。さらさらと契約内容を記していく。
隣で悪魔が溜息をついているので、本当に堪える契約内容だったんだろう。
たしかに、悪魔を殺すのは地獄で行えばいいから簡単だけど、地上へ百年ごとに善行を積みにいくのは……彼にとっては面倒くさそうだ。
書き終わって、彼に魔法の杖を渡した。さっと目を通している。
「これにサインすれば、俺を最後まで治してくれるんだな? それでちゃんと地獄へ返してくれる?」
「そう書いてあるでしょ」
「途中で裏切って、熾天使に言わねえか?」
むっとして翼を動かした。
「わたしは悪魔じゃない。嘘はつかない」
「じゃあ、熾天使からもちゃんと隠してくれるよな?」
「そう言ってるでしょ。わたしのできる範囲で隠すし、最後まで治療するよ。完治したら、地獄に戻って、あなたはここに書いてあることをずっとやっていくの」
「はー、わかった」
小声でぼやいている。
「条件を出せばいいとか、言わなきゃよかった」
「うふふ」
はっとして手を当てた。さっきまで落ちこんでいたけど、むしろいい悪魔をひとり作ったと思ったら、少し嬉しくなれた。
彼は笑ったわたしに気づいて、髪をくしゃりと回した。
「笑うと天使っぽいな」
はっとして顔を逸らした。真実薬を飲ませてもこういう顔はできるんだ。本当に……悪魔だ。
そのあと、悪魔はちゃんと紙にサインをした。間違いないかよくチェックをして、魔法を発動させる。金に光った羊皮紙は宙でくるくると巻かれていき、虹色の鱗粉に変わって弾けた。魔法がかかった。
「で。いい加減、真実薬を解いてくんねえか?」
体が苦しいんだろう。聞きたいことはすべて聞いたし、事も片付いたのでわたしはすんなり頷いた。コップに水を入れ、そこに魔法をかける。彼は初めと同じように飲み干した。
肩を上げて落とし、悪魔の翼を何度か開いたり閉じたりしている。わたしを見て、少し考えるように目線をずらしたあと口を開いた。
「セラエル」
「なに?」
青い目が一直線にこちらを見つめている。
「かわいい。愛してる」
「……は?」
悪魔は納得したように頷いて、「うん。ちゃんと戻った」と呟いた。
「ねぇ、そんな言葉で試さないでよ?」
一歩進んで彼の腕を掴むと、見下ろした眼がからかうように曲がった。
「わかりやすくていいじゃん。もうお前も間違えないだろ? さんざん説明したんだから」
「そういう問題じゃない……」
「どんな問題? 困ってんのもかわいいな」
本当にこの悪魔は流れるように嘘をつきたいらしい。わたしは彼の腕を強く掴んで、寝室まで連れていった。
「からかわないでよ。もう信じないよ」
無理に押してベッドに座らせた。
「信じてもらおうと思って言ってねえよ」
見上げた目がきらきら輝いている。
「じゃあなに?」
「なんだろうな、俺の性?」
彼は部屋を見渡した。
「それより、なんで連れてきたんだ? ああ、また抱きしめてほしくて? いいよ?」
立っているわたしの腕を掴み、ぐいと引っ張られる。もう少しというところで離れた。
「ち、違う! 本当に……本当に、まったく反省してないんだね。わたしがあんなに泣いてたのに、少しも悪いと思わないの?」
「泣いてたから、抱きしめて慰めてやったじゃん」
「全部あなたのせいだよ?」
「だから俺が慰めるんだろ? あ、謝ってなかったな。ごめんな」
真実薬のせいで、ろくに謝ることもできなかったんだろう。
あんなことがあってもまったく普段通りの悪魔に、呆れたらいいのか、傷ついたらいいのかわからなくなってきた。大きな溜息を落とした。彼に浄化魔法をかける。
「今日は……疲れたから。血は明日ね」
「ああ」
ベッドに残して部屋を出ていこうとすると、後ろから声がかかった。
「お前は寝ないのか?」
「わたしはソファで寝る」
「なんで」
「嫌だよ。もう」
「そ」
翼がはためく音が聞こえる。翼を畳み、ベッドに入ったらしい。寝室を出て、リビングに戻った。さっき彼が飲んだグラスが机に残っている。
どっと疲れが出て、倒れるようにソファに横たわった。徒にグラスを取りあげ、自分の顔を映し見つめる。
天使としてやるべきことはやったはずだ。悪魔を助ける代わりに、地獄の悪魔の数を減らさせて、地上の人間が少しでも幸せになるようにした。千回なんて、人間の数に比べたらたいしたことはない。少ないくらいだ。だけど……他ならぬ悪魔に善行を積ませるのは、きっと私にしかできなかったはずだ。
抑えていた感情が少しづつ漏れだしていく。しくしくと涙を流す。
そうは言っても、悲しかった。
そう。これはただのわたしの問題で、わたしが辛いだけ。
……彼は天使になりたいんだと思っていたのに。一緒に天使になれると思ったのに。彼に裏切られたのが、夢を見ているのがわたしだけだったことが、悔しくて、悲しかった。
それに、楽しいと思っていたのもわたしだけだった。少なからずよく思ってくれていると……思ったのに。
〝なにも思ってない〟
心臓に刺さった棘がじゅぐじゅくと埋もれて、一生抜けてしまいそうになかった。
でも、感謝はしていると言っていた。わたしを抱きしめると、翼のおかげで平穏を初めて知れたと。一緒にいるのが新鮮だとも聞いた。
元より悪魔に好かれるなんて夢みたいな出来事なのだから、もう忘れてしまえばいい。最初に告白されたときはむしろ困っていたくらいなんだから。
それでも心につかえた棘は何かを、どこかを刺激していて、たしかに芽生えていた何かを……。わたしの知らない何かを苦しめていて、……痛くて辛くて、仕方なかった。
――――――――――――――――
このあたりとてもお気に入りの話です♡ 性癖同じ方はぜひいいねしておいてください!
以下より匿名でコメントを送れますので、よければ使ってください! コメント内容も私しか見れません。感想をいただけるととても幸せな気持ちになります…! もちろん何回でも嬉しいです。
一話ごとの感想、特定のシーンだけの感想でも大歓迎です♡ セリフやキャラ名などを間違えていたり、シーンやシチュ、キャラたちの感情を誤解していても、全然気にしないタイプです! 「良き!」と思ってくださった方は、気楽に投げていただけたらと思います。
https://herrealmyth.studio.site/thoughts
この話は、『小説家になろう ムーンライト』では完結しています。
https://novel18.syosetu.com/n1801il/
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