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第Ⅰ章 平穏90%・歪度10%
brocen 3 堕天:悪魔の精を受け取ること
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次の日は一日彼の看病をしていた。
朝に二回、夜に二回血をあげて、できるかぎりの魔力を使ってお腹の傷を治す。でもいろいろな悪魔に何度も切りつけられているせいで、一向に治る兆しが見えなかった。角や翼、顔、脚、腕も怪我をしている。全部治すのに半年くらいかかっちゃいそう。
悪魔は「気にしなくていい」と笑っていたけれど、今も痛いはずだ。
痛みを堪えるのは天使も得意で、そのメカニズムは悪魔も天使も変わらない。体に残ったわずかな魔力を、すべて痛覚の緩和に使っているのだ。
天使はどんなに苦しくても立ちあがれるように、悪魔はどんなに酷い怪我をしても諦めないように、神様がそうお創りになられた。
だから彼も、重い怪我のわりにはふつうに笑ったり喋ったりしていられるんだけど……それがむしろ異常に見えて、胸が苦しくなった。
それに、痛みがまったくなくなるわけじゃない。我慢しているだけで、人間なら卒倒しているくらいの痛みが今も襲っているはず──。ごめんね、わたしがもっと格上の天使なら。
「じゃあ、わたしは明日仕事だから。おやすみ」
「本当にソファでいいのか?」
「うん、大丈夫」
少し寝苦しかったけど、彼のほうが辛いはずだ。わたしの体は健康そのものだし、多少寝不足でよろよろしてしまっても頑張れる!
そうして朝から出かけて、夕方帰り、血をあげて治癒を施した。
「本当に酷い怪我だね」
「いろいろ、呪いとかかけられたんだと思う」
悪魔が強い悪魔を完全に殺すのは難しい。呪詛魔法や毒魔法、ありとあらゆる魔法を駆使して傷を付けなければいけない。強い恨みを買っちゃったんだね。
「天使じゃなかったら治せなかったよ?」
彼は笑う。「もう死ぬつもりだったから。俺は悪魔だし」
悪魔だから死んでいいと、そう寂しげに零す。かわいそうに思えて、何を言えばいいかわからなくなってしまった。
「えと……ごめんね。わたしが天使で」
「そういう意味じゃねえよ」
彼は緩く首を振り、そばにあった天使の羽根を手に取った。
「むしろ嬉しいよ。こんなふうに天使と話せるなんて」
「ほんとう?」
「ああ。天使はみんなお前みたいな性格なのか?」
わたしは少し首をかしげ、他の天使たちのことを思い出した。
「そんなことはないかも。人間みたいに少しずつ性格が違うよ。でも、みんな優しいし、困っている人を助けるのは好きだと思う」
「へえ。じゃあお前じゃなくても助けてもらえたのかな」
それはどうだろう、と思ってしまった。対抗するつもりじゃないけれど、知り合いの天使には、もっと悪魔や悪に厳しい姿勢の人もいる。全員助けるとは言い難いかもしれない。
「ザカリエルっていう男の天使がいるんだけど。彼は厳しいから……助けてくれなかったかも」
悪魔が目を合わせる。目尻に細く皺が寄った。
「そっか。じゃあやっぱ、セラエルに見つけてもらえてよかった」
「えへへ」
照れくさくて髪を手で梳いた。金の長髪が艶めく。
「お前はお洒落とかしねえんだな。いや、天使がしないのか?」
「うん。天使はみんな同じような格好をしてるよ」
「髪も……そんな綺麗なのに」
彼の目線が顔から腰元に下っていく。見られていることに恥ずかしくなった。わざと髪を背中側に流す。
「悪魔は着飾ってたんだね。……あなたも、かな」
彼は小さく口を尖らせ、悪戯っぽい声を漏らした。
「名前忘れた?」
「え? あ、ごめんなさい。たしかディ……デランチャとか……」
「ディアンシャ」
彼の眼が鏡のように冷たく白み、一瞬空気が重苦しい影をまとったような気がした。わたしは前髪を引っ張り、妙な緊張に背筋を伸ばす。
「名前……呼んだほうがいい?」
「呼ばねえの?」
奇妙に彼の眼が細まる。
名前を呼び合うのって……なんとなく必要以上に親しくなってしまう気がして、ちょっぴり躊躇ってしまう。いいのかな。治療しているとはいえ、名前は呼ばなくてもお話できる。彼は自由に呼んでるみたいだけど……。
頬杖をつき、流し目にした眼差しがこちらを捉える。
「さみしいな」
涼やかな眦がまろく歪み、物憂げな表情が声を甘く降ろす。目が惹きつけられ、誤魔化すように髪をかいた。
「あの、え。と……」
「まあ天使が嫌がることをさせたくはねえが」
すいと逸れた青眼に、もどかしいような気持ちになって口に掛ける。そっと大事な言葉を唱えるみたいに言った。
「ディアン、シャ」
彼は首を傾げ、瞬く銀髪をさらりと流していく。上目で尋ねた。
「呼んでくれるの?」
「ん。うん。さみしいのは……かわいそうだから」
「ありがと」
ほどよい塩梅に跳ねた短髪は、セットをしているのかと思っていたけど、そうじゃないらしい。猫毛みたいに柔らかそうで、天使のものみたいに触り心地がよさそうだ。
視線に気づいて、彼がわたしの手を取った。冷たい指先を絡め、そのまま自分の頭へ引き寄せる。
「これって、その……」
「触りたそうにしてたから」
彼の手が外れる。どきまぎしながら銀の髪に指を通した。思っていたよりは硬いけど、男の人にしては滑らかな髪質だ。彼の手と同じく、どこかひんやりとしていて体の熱が奪われそうだった。
「さらさらだね」
「お前のが綺麗だろ」
そう言ってすらりとした指を伸ばす。思わず目で追いかけると、彼は囁くように言った。
「触ってい?」
ひそやかな声色に胸が瞬く。自分も触ってしまったのにいまさら断れなくて、そもそもこれくらい許さないのも可哀想な気がして、こくりと首を下ろした。
骨のラインに沿う、くびれた指がわたしの髪をすいていく。たまに冷たい指の腹が頭皮を撫で、鋭い爪が擽るように通りすぎる。肩過ぎの髪をとかしたあと、頬の横の髪を一房掴んではいたずらに流した。たまに頬を手の甲がこすり、冷ややかな感触に皮膚が粟立つ。
髪にそそがれる青い視線と、何度ももてあそぶ指の動きに心が落ちつかない。体が固くなり、唾を飲みこんだ。
「そんな警戒しなくても」
「警戒じゃない、よ? こんなことされたことないから……緊張してるだけ」
彼はくつりと笑って手を離した。ほっと息を吐いた。自分が自分じゃなくなっちゃいそうだった。
「悪魔と話すのは初めて?」
「うん。地上でも遠くにいるのを見たことがあるくらいで……。名前を呼んだのも初めてだよ」
「へえ」
ディアンシャは妖しい笑みを作って、目を細めた。
「セラエル」
鼓膜を震わせる繊細な音が、ひやりと心臓に触れた気がした。
「なあに?」
「呼んだだけ」
「なにそれ」
わたしはくすくすと笑う。おかしな人。こういうやり取りも天界では珍しい。智天使は意味のない冗談やお喋りはしないのだ。
「明日は一日家にいるんだっけ?」
「うん。仕事はだいたい一日置きだよ。熾天使様に伝えればお休みはもらえるけど……。特にやることはないから」
「いつもはなにしてんだ?」
「んー……あの森に出かけて花を見たり」
あの森とは、彼が倒れていた森のことだ。家から近い場所にあって、心地よい木漏れ日が差し風が気持ちいい。この場所に家を建てることにした理由のひとつでもある。
「家で本を読んだり……かな」
「つまんなそう」
さらっと呟かれた言葉に目を瞬く。そんなこと初めて言われた。
「悪い言葉は言っちゃだめなんだよ」
「これ悪い言葉か?」
「人によっては……傷つく言葉でしょう?」
「そっか。悪りい」
素直に謝る悪魔がかわいくて、つい頬が綻んだ。別に怒ったわけじゃない。悪魔と天使で生活してきた環境も文化も違うし、多目に見てあげないと。
「あなたが……あ。ディアン、シャが。いるから、少し普段と違っていて楽しいよ」
「そ? よかった」彼が寝室の時計に目を向ける。「そろそろ寝るか?」
「うん。おやすみ、また明日ね」
魔法で電気を消して、わたしは寝室から出ていった。居間のソファの上で毛布を被り丸くなる。
別のベッドを魔法で出せばいいんだけど、今の家には収まる場所がなかった。家を建て替えるのは申請が必要だからやるつもりはない。あまり天使は家の模様替えをしないのだ。
家の立て替えには魔力もたくさん使うことになるから、しばらく治療もできなくなっちゃう。いちばんいいのは、今ある家具を何か消すことかなぁ……。でもどれも気に入ってるんだよね。
明日か明明後日か、また考えようっと。
次の日は一日看病をしたりひとりで本を読んだりして、そしてまたその次、仕事に出かけた。それをあともう一回くらい続けたところで、とうとうわたしの体に不調が出てきた。
二回目の血のグラスを持ち帰るため、椅子から立ちあがる。ベッドのほうへ体が倒れかかった。
「おい!」
「あはは……」
布団の上で手をつく。バランスを取ってもう一度立ちあがろうとすると、目眩でまた視界が揺れた。
治療のために魔力をほとんど使ってしまっているから、余計に体が弱っちゃったみたい。血を抜いているせいもあるかな。魔力の源だからね。
へらと笑みを作った。
「大丈夫だよ。びっくりさせてごめんね」
「寝てねえよな? 三時間は寝ないといけないんだろ? 一時間とか……それくらいしか寝てないように見える」
すごい観察力だ。顔の前で手を振った。
「ベッドを出せばいいんだけど……置き場所がなくて。明日休みだから、また考えるよ」
「いいよ。俺がソファで寝ればいいだけだろ」
「でも怪我人だから……」
「じゃあお前もここで寝ろ。大きいし、ふたりでも寝れるだろ」
「え? 一緒に寝るってこと!?」
意識しているのはわたしだけなの? 彼はいたって真面目な顔つきでこちらを見ている。
「だ、だめだよ……。堕天……」
「は?」
彼は顔を顰めて目を細めたあと、呆れたように言う。
「堕天は〝交われば〟だろ? ベッドが同じくらいじゃ何も起こらねえよ」
「ま、交わればって……」
「もしかして具体的なことは知らない?」
怖々と辺りを見渡した。こんな会話、他の智天使とは絶対にしない。『交わる』とか『具体的な方法』とか。
し、知らないわけないじゃん。一応知ってるもん。堕天に関わる話をするだけで、心がぞわぞわする。誰かに怒られそうだ。
「男のほうの……あれを……。女の人の……」
彼は訝しげに首を傾げる。
「男が悪魔の場合は、〝天使の体に精を注いだら〟だろ」
「そ、うです……。でもその、体が繋がるのが、その行為、だから……」
「そうなんだ?」
「そうだよ!?」
悪魔のほうが聞いてきたのに、知らないの? どうしよう、それは困る。熾天使様たちに聞いたように、ちゃんと説明しておかなきゃ。
「えっと。だから、ベッドで裸になって、キスして、体を……繋げて。それも悪魔と天使がしたらだめなことだよ」
「あとは?」
彼は無垢な表情でそう尋ねた。
「あと? もうないよ。悪魔の精が天使の体に入るっていうので、本当に……堕天しちゃうから。念のため、その前の行為もだめってこと」
「ん、わかった」彼はベッドを見る。「じゃあ今回のは問題ねえだろ」
彼はあくまで飄々と言い、少し体をずらした。
「裸にもなってねえし、キスもしてない。お前が倒れたら、治るもんも治らなくなるよ」
「……それはそう、だね。だけど、翼がふたつあったら邪魔じゃない?」
「たしかに」
悪魔は悪戯っぽく笑う。彼の折れた翼に触れたら大変だ。
「とりあえずは大丈夫だから」
そう言いきると彼はもう口を閉じ、微睡んでいった。わたしはグラスを戻しに行ったあと、彼のベッドのそばの椅子に腰掛け本を読みはじめた。
ディアンシャはたまに悪夢で魘されることがあって、そういうときは魔法を使って悪夢を飛ばしたり、起こして汗を拭いたりしてあげるのだ。悪魔も天使も本当は汗をかかないんだけど……深い傷を負っているせいで、体の器官がおかしくなってしまっている。
本から顔を上げると、布団から出た悪魔の腕が目に入った。
手首から肘まで、ごっそり肉を剥ぎとられていた。削れた骨が見え隠れし、半分の細さの腕は痛々しいどころかグロテスクだ。今も銀色の血や魔力が流れおちている。
魔法のおかげで布団が血を吸収し汚らしいことにはなっていないけど、本当に痛そうだった。睡眠の必要がない悪魔がこんなに寝ているのも、怪我の酷さを物語っている。
わたしは泣きそうになりながら、はみ出した腕に布団をかけた。
早く治してあげなきゃ。
でも数分経つと溜まっていた寝不足のせいで眠気が襲いはじめ、膝から本が落ちていった。
目が覚め、気づくと見慣れた天井が視界に入った。布団が柔らかい。いつものソファじゃない……。
起きあがればわたしはひとりベッドで寝ていて、悪魔のディアンシャは椅子に腰掛けて目を瞑っていた。
「ディアンシャ。動かしたの?」
彼はおもむろに顔を上げる。
「ああ。起きるかと思ったんだが、かなり疲れてたんだな」
「怪我は? 運んだりしたら悪化しちゃうよ?」
「お前のおかげでちょちょいのちょいだよ」
悪魔は緩やかに笑う。嘘だ。きっとすごく大変な思いをしたに違いない。
「もう」
起きあがって自分の翼を何度か動かす。ふわりと甘い香りが漂った。
「だめだよ。寝よう?」
「お前も寝て」
「でも」
悪魔は目を伏せ、不機嫌そうに語った。
「悪魔である俺のせいで……天使のお前の具合が悪くなるのは嫌だ。俺の怪我は自分のせいだ、セラエルが不利益を被るのは間違ってるだろ」
ディアンシャは自分が悪魔であることに強いコンプレックスがあるみたいだ。今天使のわたしと接しているから、余計に苦しいのかもしれない。あんまり優しくするのも、彼に気を遣わせつづけちゃうのかも。
「でも……」
悪魔と天使が同衾するって──いいのかな。
青眼がわたしを捉える。真っ直ぐな視線が柔らかく微笑んだ。
「おねがい。言うこと聞いて?」
どきどきと鼓動が早まる。素っ気なく冷淡にみえる目許が、わたしを慈しむように華やぐ。何も言えなくなってしまって、しぶしぶ頷いた。
「じゃあ、ディアンシャも……」
「ん。俺も寝る」
彼はよろよろと立ちあがり、ベッドボードに手をついて布団をめくった。顔が近くなって、その蝋のように白い肌とか、薄く伏せられた長い睫毛とか、よく見えるようになって急いで顔を背けた。黒い翼がばさりと音を立てる。ぎょっとして右端まで距離を取った。
悪魔はそれに気づかず、そのまま布団を被った。
「寝てい?」
「あ、うん」
キングサイズのベッドだ。十分ふたり寝られる余裕はあった。幸い大きな怪我をしている翼は逆側にあったので、彼のそれを潰すことはなさそうだ。
自分の翼を少し折って、どきまぎしながら目を閉じる。
わたしが気にしすぎなんだ。気にしてるほうがおかしい。彼を信じていないみたいだし、〝そうなる〟と期待してるみたいじゃん。ディアンシャのようにただ何も気にせず眠ればいいんだよね。
しばらくすると彼の寝息が聞こえてきた。本当に本当に、彼のほうはなにも考えてない。じゃあ、きっと大丈夫。
朝に二回、夜に二回血をあげて、できるかぎりの魔力を使ってお腹の傷を治す。でもいろいろな悪魔に何度も切りつけられているせいで、一向に治る兆しが見えなかった。角や翼、顔、脚、腕も怪我をしている。全部治すのに半年くらいかかっちゃいそう。
悪魔は「気にしなくていい」と笑っていたけれど、今も痛いはずだ。
痛みを堪えるのは天使も得意で、そのメカニズムは悪魔も天使も変わらない。体に残ったわずかな魔力を、すべて痛覚の緩和に使っているのだ。
天使はどんなに苦しくても立ちあがれるように、悪魔はどんなに酷い怪我をしても諦めないように、神様がそうお創りになられた。
だから彼も、重い怪我のわりにはふつうに笑ったり喋ったりしていられるんだけど……それがむしろ異常に見えて、胸が苦しくなった。
それに、痛みがまったくなくなるわけじゃない。我慢しているだけで、人間なら卒倒しているくらいの痛みが今も襲っているはず──。ごめんね、わたしがもっと格上の天使なら。
「じゃあ、わたしは明日仕事だから。おやすみ」
「本当にソファでいいのか?」
「うん、大丈夫」
少し寝苦しかったけど、彼のほうが辛いはずだ。わたしの体は健康そのものだし、多少寝不足でよろよろしてしまっても頑張れる!
そうして朝から出かけて、夕方帰り、血をあげて治癒を施した。
「本当に酷い怪我だね」
「いろいろ、呪いとかかけられたんだと思う」
悪魔が強い悪魔を完全に殺すのは難しい。呪詛魔法や毒魔法、ありとあらゆる魔法を駆使して傷を付けなければいけない。強い恨みを買っちゃったんだね。
「天使じゃなかったら治せなかったよ?」
彼は笑う。「もう死ぬつもりだったから。俺は悪魔だし」
悪魔だから死んでいいと、そう寂しげに零す。かわいそうに思えて、何を言えばいいかわからなくなってしまった。
「えと……ごめんね。わたしが天使で」
「そういう意味じゃねえよ」
彼は緩く首を振り、そばにあった天使の羽根を手に取った。
「むしろ嬉しいよ。こんなふうに天使と話せるなんて」
「ほんとう?」
「ああ。天使はみんなお前みたいな性格なのか?」
わたしは少し首をかしげ、他の天使たちのことを思い出した。
「そんなことはないかも。人間みたいに少しずつ性格が違うよ。でも、みんな優しいし、困っている人を助けるのは好きだと思う」
「へえ。じゃあお前じゃなくても助けてもらえたのかな」
それはどうだろう、と思ってしまった。対抗するつもりじゃないけれど、知り合いの天使には、もっと悪魔や悪に厳しい姿勢の人もいる。全員助けるとは言い難いかもしれない。
「ザカリエルっていう男の天使がいるんだけど。彼は厳しいから……助けてくれなかったかも」
悪魔が目を合わせる。目尻に細く皺が寄った。
「そっか。じゃあやっぱ、セラエルに見つけてもらえてよかった」
「えへへ」
照れくさくて髪を手で梳いた。金の長髪が艶めく。
「お前はお洒落とかしねえんだな。いや、天使がしないのか?」
「うん。天使はみんな同じような格好をしてるよ」
「髪も……そんな綺麗なのに」
彼の目線が顔から腰元に下っていく。見られていることに恥ずかしくなった。わざと髪を背中側に流す。
「悪魔は着飾ってたんだね。……あなたも、かな」
彼は小さく口を尖らせ、悪戯っぽい声を漏らした。
「名前忘れた?」
「え? あ、ごめんなさい。たしかディ……デランチャとか……」
「ディアンシャ」
彼の眼が鏡のように冷たく白み、一瞬空気が重苦しい影をまとったような気がした。わたしは前髪を引っ張り、妙な緊張に背筋を伸ばす。
「名前……呼んだほうがいい?」
「呼ばねえの?」
奇妙に彼の眼が細まる。
名前を呼び合うのって……なんとなく必要以上に親しくなってしまう気がして、ちょっぴり躊躇ってしまう。いいのかな。治療しているとはいえ、名前は呼ばなくてもお話できる。彼は自由に呼んでるみたいだけど……。
頬杖をつき、流し目にした眼差しがこちらを捉える。
「さみしいな」
涼やかな眦がまろく歪み、物憂げな表情が声を甘く降ろす。目が惹きつけられ、誤魔化すように髪をかいた。
「あの、え。と……」
「まあ天使が嫌がることをさせたくはねえが」
すいと逸れた青眼に、もどかしいような気持ちになって口に掛ける。そっと大事な言葉を唱えるみたいに言った。
「ディアン、シャ」
彼は首を傾げ、瞬く銀髪をさらりと流していく。上目で尋ねた。
「呼んでくれるの?」
「ん。うん。さみしいのは……かわいそうだから」
「ありがと」
ほどよい塩梅に跳ねた短髪は、セットをしているのかと思っていたけど、そうじゃないらしい。猫毛みたいに柔らかそうで、天使のものみたいに触り心地がよさそうだ。
視線に気づいて、彼がわたしの手を取った。冷たい指先を絡め、そのまま自分の頭へ引き寄せる。
「これって、その……」
「触りたそうにしてたから」
彼の手が外れる。どきまぎしながら銀の髪に指を通した。思っていたよりは硬いけど、男の人にしては滑らかな髪質だ。彼の手と同じく、どこかひんやりとしていて体の熱が奪われそうだった。
「さらさらだね」
「お前のが綺麗だろ」
そう言ってすらりとした指を伸ばす。思わず目で追いかけると、彼は囁くように言った。
「触ってい?」
ひそやかな声色に胸が瞬く。自分も触ってしまったのにいまさら断れなくて、そもそもこれくらい許さないのも可哀想な気がして、こくりと首を下ろした。
骨のラインに沿う、くびれた指がわたしの髪をすいていく。たまに冷たい指の腹が頭皮を撫で、鋭い爪が擽るように通りすぎる。肩過ぎの髪をとかしたあと、頬の横の髪を一房掴んではいたずらに流した。たまに頬を手の甲がこすり、冷ややかな感触に皮膚が粟立つ。
髪にそそがれる青い視線と、何度ももてあそぶ指の動きに心が落ちつかない。体が固くなり、唾を飲みこんだ。
「そんな警戒しなくても」
「警戒じゃない、よ? こんなことされたことないから……緊張してるだけ」
彼はくつりと笑って手を離した。ほっと息を吐いた。自分が自分じゃなくなっちゃいそうだった。
「悪魔と話すのは初めて?」
「うん。地上でも遠くにいるのを見たことがあるくらいで……。名前を呼んだのも初めてだよ」
「へえ」
ディアンシャは妖しい笑みを作って、目を細めた。
「セラエル」
鼓膜を震わせる繊細な音が、ひやりと心臓に触れた気がした。
「なあに?」
「呼んだだけ」
「なにそれ」
わたしはくすくすと笑う。おかしな人。こういうやり取りも天界では珍しい。智天使は意味のない冗談やお喋りはしないのだ。
「明日は一日家にいるんだっけ?」
「うん。仕事はだいたい一日置きだよ。熾天使様に伝えればお休みはもらえるけど……。特にやることはないから」
「いつもはなにしてんだ?」
「んー……あの森に出かけて花を見たり」
あの森とは、彼が倒れていた森のことだ。家から近い場所にあって、心地よい木漏れ日が差し風が気持ちいい。この場所に家を建てることにした理由のひとつでもある。
「家で本を読んだり……かな」
「つまんなそう」
さらっと呟かれた言葉に目を瞬く。そんなこと初めて言われた。
「悪い言葉は言っちゃだめなんだよ」
「これ悪い言葉か?」
「人によっては……傷つく言葉でしょう?」
「そっか。悪りい」
素直に謝る悪魔がかわいくて、つい頬が綻んだ。別に怒ったわけじゃない。悪魔と天使で生活してきた環境も文化も違うし、多目に見てあげないと。
「あなたが……あ。ディアン、シャが。いるから、少し普段と違っていて楽しいよ」
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「うん。おやすみ、また明日ね」
魔法で電気を消して、わたしは寝室から出ていった。居間のソファの上で毛布を被り丸くなる。
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家の立て替えには魔力もたくさん使うことになるから、しばらく治療もできなくなっちゃう。いちばんいいのは、今ある家具を何か消すことかなぁ……。でもどれも気に入ってるんだよね。
明日か明明後日か、また考えようっと。
次の日は一日看病をしたりひとりで本を読んだりして、そしてまたその次、仕事に出かけた。それをあともう一回くらい続けたところで、とうとうわたしの体に不調が出てきた。
二回目の血のグラスを持ち帰るため、椅子から立ちあがる。ベッドのほうへ体が倒れかかった。
「おい!」
「あはは……」
布団の上で手をつく。バランスを取ってもう一度立ちあがろうとすると、目眩でまた視界が揺れた。
治療のために魔力をほとんど使ってしまっているから、余計に体が弱っちゃったみたい。血を抜いているせいもあるかな。魔力の源だからね。
へらと笑みを作った。
「大丈夫だよ。びっくりさせてごめんね」
「寝てねえよな? 三時間は寝ないといけないんだろ? 一時間とか……それくらいしか寝てないように見える」
すごい観察力だ。顔の前で手を振った。
「ベッドを出せばいいんだけど……置き場所がなくて。明日休みだから、また考えるよ」
「いいよ。俺がソファで寝ればいいだけだろ」
「でも怪我人だから……」
「じゃあお前もここで寝ろ。大きいし、ふたりでも寝れるだろ」
「え? 一緒に寝るってこと!?」
意識しているのはわたしだけなの? 彼はいたって真面目な顔つきでこちらを見ている。
「だ、だめだよ……。堕天……」
「は?」
彼は顔を顰めて目を細めたあと、呆れたように言う。
「堕天は〝交われば〟だろ? ベッドが同じくらいじゃ何も起こらねえよ」
「ま、交わればって……」
「もしかして具体的なことは知らない?」
怖々と辺りを見渡した。こんな会話、他の智天使とは絶対にしない。『交わる』とか『具体的な方法』とか。
し、知らないわけないじゃん。一応知ってるもん。堕天に関わる話をするだけで、心がぞわぞわする。誰かに怒られそうだ。
「男のほうの……あれを……。女の人の……」
彼は訝しげに首を傾げる。
「男が悪魔の場合は、〝天使の体に精を注いだら〟だろ」
「そ、うです……。でもその、体が繋がるのが、その行為、だから……」
「そうなんだ?」
「そうだよ!?」
悪魔のほうが聞いてきたのに、知らないの? どうしよう、それは困る。熾天使様たちに聞いたように、ちゃんと説明しておかなきゃ。
「えっと。だから、ベッドで裸になって、キスして、体を……繋げて。それも悪魔と天使がしたらだめなことだよ」
「あとは?」
彼は無垢な表情でそう尋ねた。
「あと? もうないよ。悪魔の精が天使の体に入るっていうので、本当に……堕天しちゃうから。念のため、その前の行為もだめってこと」
「ん、わかった」彼はベッドを見る。「じゃあ今回のは問題ねえだろ」
彼はあくまで飄々と言い、少し体をずらした。
「裸にもなってねえし、キスもしてない。お前が倒れたら、治るもんも治らなくなるよ」
「……それはそう、だね。だけど、翼がふたつあったら邪魔じゃない?」
「たしかに」
悪魔は悪戯っぽく笑う。彼の折れた翼に触れたら大変だ。
「とりあえずは大丈夫だから」
そう言いきると彼はもう口を閉じ、微睡んでいった。わたしはグラスを戻しに行ったあと、彼のベッドのそばの椅子に腰掛け本を読みはじめた。
ディアンシャはたまに悪夢で魘されることがあって、そういうときは魔法を使って悪夢を飛ばしたり、起こして汗を拭いたりしてあげるのだ。悪魔も天使も本当は汗をかかないんだけど……深い傷を負っているせいで、体の器官がおかしくなってしまっている。
本から顔を上げると、布団から出た悪魔の腕が目に入った。
手首から肘まで、ごっそり肉を剥ぎとられていた。削れた骨が見え隠れし、半分の細さの腕は痛々しいどころかグロテスクだ。今も銀色の血や魔力が流れおちている。
魔法のおかげで布団が血を吸収し汚らしいことにはなっていないけど、本当に痛そうだった。睡眠の必要がない悪魔がこんなに寝ているのも、怪我の酷さを物語っている。
わたしは泣きそうになりながら、はみ出した腕に布団をかけた。
早く治してあげなきゃ。
でも数分経つと溜まっていた寝不足のせいで眠気が襲いはじめ、膝から本が落ちていった。
目が覚め、気づくと見慣れた天井が視界に入った。布団が柔らかい。いつものソファじゃない……。
起きあがればわたしはひとりベッドで寝ていて、悪魔のディアンシャは椅子に腰掛けて目を瞑っていた。
「ディアンシャ。動かしたの?」
彼はおもむろに顔を上げる。
「ああ。起きるかと思ったんだが、かなり疲れてたんだな」
「怪我は? 運んだりしたら悪化しちゃうよ?」
「お前のおかげでちょちょいのちょいだよ」
悪魔は緩やかに笑う。嘘だ。きっとすごく大変な思いをしたに違いない。
「もう」
起きあがって自分の翼を何度か動かす。ふわりと甘い香りが漂った。
「だめだよ。寝よう?」
「お前も寝て」
「でも」
悪魔は目を伏せ、不機嫌そうに語った。
「悪魔である俺のせいで……天使のお前の具合が悪くなるのは嫌だ。俺の怪我は自分のせいだ、セラエルが不利益を被るのは間違ってるだろ」
ディアンシャは自分が悪魔であることに強いコンプレックスがあるみたいだ。今天使のわたしと接しているから、余計に苦しいのかもしれない。あんまり優しくするのも、彼に気を遣わせつづけちゃうのかも。
「でも……」
悪魔と天使が同衾するって──いいのかな。
青眼がわたしを捉える。真っ直ぐな視線が柔らかく微笑んだ。
「おねがい。言うこと聞いて?」
どきどきと鼓動が早まる。素っ気なく冷淡にみえる目許が、わたしを慈しむように華やぐ。何も言えなくなってしまって、しぶしぶ頷いた。
「じゃあ、ディアンシャも……」
「ん。俺も寝る」
彼はよろよろと立ちあがり、ベッドボードに手をついて布団をめくった。顔が近くなって、その蝋のように白い肌とか、薄く伏せられた長い睫毛とか、よく見えるようになって急いで顔を背けた。黒い翼がばさりと音を立てる。ぎょっとして右端まで距離を取った。
悪魔はそれに気づかず、そのまま布団を被った。
「寝てい?」
「あ、うん」
キングサイズのベッドだ。十分ふたり寝られる余裕はあった。幸い大きな怪我をしている翼は逆側にあったので、彼のそれを潰すことはなさそうだ。
自分の翼を少し折って、どきまぎしながら目を閉じる。
わたしが気にしすぎなんだ。気にしてるほうがおかしい。彼を信じていないみたいだし、〝そうなる〟と期待してるみたいじゃん。ディアンシャのようにただ何も気にせず眠ればいいんだよね。
しばらくすると彼の寝息が聞こえてきた。本当に本当に、彼のほうはなにも考えてない。じゃあ、きっと大丈夫。
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