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第一章 霧雨レイン
第18話 君は、神崎 透だ
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サニは相変わらず、静かに波立つ青藍の流れを目で追って、特に何もせず待ち続けた。
こんな真夜中に釣りなんてバカバカしい。レイン達の身の安全が心配だ。サニはそう悶々としていた。皆が身の危険を呈して任務をしているにも関わらず、自分だけ何をやっているのか、と自責の念を覚えていた。
ふと、サニは立ち上がり、今いる堤防からプロミス社のビルを見上げた。そしてサニは、全力で幇助する覚悟を持って、一歩踏み出そうとする。
出来ない。
自分が行っても何になるのだろうか。足でまといになるのではないか。そもそも任務は順調に進んでいて、そこに自分が行っても何の役にも立たずに終わるのではないか。
そんな真偽の確かめようのない考えが、サニをその場に留めさせる。
初めから、私はこの任務には要らない存在だったのではないか。私は女で、それでいて未成年で、恭子さんとは立場が全く違う。今まで自分は結構酷い仕打ちをレインにされてきたと思っていたが、それは大きな間違いなのではないか。ヘリに乗らされたり、迷宮のような軍事施設に入れられたりしてきたのも、全て私の身の安全が何らかの形でレインに立証されてから、やらされていたのではないか。
サニの心が段々と苦悶に満ちていく。
サニはいつの間にか、レインの見えない優しさを感じていた。酷い男だけど、本当は自分は守られているのだ、と。だから、この任務に自分は参加させられていないのだ……と。
だがその考えは、一層サニの思考を苦悩に没頭させた。
仲間と一緒に、邪悪な敵に立ち向かっているレイン達……彼らの本当の苦労を知らずに、自分は無駄な時間を過ごしている……このままで、本当にいいのか……?
サニの目から、自然と涙が溢れていた。閑散とした沿岸港で、サニは人知れずむせび泣いた。
早く、この時間が終わって。夜よ、明けて。レイン、いつも通りの笑顔で帰ってきて……!
ウ~~~~~~!!
サニの耳に、聞き慣れたサイレンが入る。サニは涙を拭いながら、過敏にその音に反応して顔を上げた。
まさか、いやまさか。そんな筈ない。この音は、レイン達を捕まえる音じゃない。
サニはそう強く願った。
ザバアアァァンッ!!
街の方角を向いていたサニは、その音に振り向かされる。
海だ。海が、突如大きな水しぶきを上げたのだ。
サニの鼓動が速まっていく。街から聴こえるサイレンの音が、サニの悪感を駆り立たせていく。
サニはその音の正体を捜しに行く。水しぶきが立った場所から、僅かに泡が出ているのが分かった。そして、やがて海面に物体は浮かび上がる。
サニの目に映ったのは、紛れもない、霧雨レインの姿だった。
「ぶはぁっ!! がはっ!」
「レイン!? レイン!!」
仰向けで浮いていたレインは、辛うじて息を継げるも、深刻な状態にあった。
「サニ! 大丈夫か!?」
そこに、ラウディ達が駆けつけてきた。
「……!! ラウディさん! 無事だったんですね……!」
サニの顔は、涙でしわくちゃになっていた。
「私は無事です!……それより早く、レインを……!!」
「……ああ!」
ラウディの手から、黒い綿がモクモクと生まれていく。
「行け。レインを助けろ」
ラウディのその言葉で、黒い綿はやがて大きな〝雲〟となり、海に浮くレインの元へ発進した。
そしてその雲は、満身創痍のレインを堤防まで連れて来ることに成功した。
「そんな……! レイン! レイン!」
サニは泣き崩れていた。目を閉じたままのレインの横で、彼の手を取って泣いていた。隣にスノウも寄り添った。スノウも、レインの腹、腕、脚にかけての無数の傷を見てギョッとしたが、なんとか平静を保とうとする。
「恭子!! 今すぐ車を出せ! 例の港だ!」
ラウディが恭子に連絡する。場は、混乱状態であった。
レインのお気に入りのジャケットは、いつの間にか海の底に沈んでいた。レインの意識も、どんどん、どんどん、沈んでゆくーーーー
やあ。君は、霧雨レインだね? こんにちは。ご機嫌いかがかな? 私? 私は、名乗るほどの者ではありませんよ。特に現時点では。それはそうとレイン君。君の運命を変えて差し上げよう。なあに、心配はいらない。どうせすぐ戻る。君の魂を一時的に異動させるだけだからね。これは、君の為の大事な儀式であり、約束なんだよ。いいかい?
今日から君は、神崎 透だ。
こんな真夜中に釣りなんてバカバカしい。レイン達の身の安全が心配だ。サニはそう悶々としていた。皆が身の危険を呈して任務をしているにも関わらず、自分だけ何をやっているのか、と自責の念を覚えていた。
ふと、サニは立ち上がり、今いる堤防からプロミス社のビルを見上げた。そしてサニは、全力で幇助する覚悟を持って、一歩踏み出そうとする。
出来ない。
自分が行っても何になるのだろうか。足でまといになるのではないか。そもそも任務は順調に進んでいて、そこに自分が行っても何の役にも立たずに終わるのではないか。
そんな真偽の確かめようのない考えが、サニをその場に留めさせる。
初めから、私はこの任務には要らない存在だったのではないか。私は女で、それでいて未成年で、恭子さんとは立場が全く違う。今まで自分は結構酷い仕打ちをレインにされてきたと思っていたが、それは大きな間違いなのではないか。ヘリに乗らされたり、迷宮のような軍事施設に入れられたりしてきたのも、全て私の身の安全が何らかの形でレインに立証されてから、やらされていたのではないか。
サニの心が段々と苦悶に満ちていく。
サニはいつの間にか、レインの見えない優しさを感じていた。酷い男だけど、本当は自分は守られているのだ、と。だから、この任務に自分は参加させられていないのだ……と。
だがその考えは、一層サニの思考を苦悩に没頭させた。
仲間と一緒に、邪悪な敵に立ち向かっているレイン達……彼らの本当の苦労を知らずに、自分は無駄な時間を過ごしている……このままで、本当にいいのか……?
サニの目から、自然と涙が溢れていた。閑散とした沿岸港で、サニは人知れずむせび泣いた。
早く、この時間が終わって。夜よ、明けて。レイン、いつも通りの笑顔で帰ってきて……!
ウ~~~~~~!!
サニの耳に、聞き慣れたサイレンが入る。サニは涙を拭いながら、過敏にその音に反応して顔を上げた。
まさか、いやまさか。そんな筈ない。この音は、レイン達を捕まえる音じゃない。
サニはそう強く願った。
ザバアアァァンッ!!
街の方角を向いていたサニは、その音に振り向かされる。
海だ。海が、突如大きな水しぶきを上げたのだ。
サニの鼓動が速まっていく。街から聴こえるサイレンの音が、サニの悪感を駆り立たせていく。
サニはその音の正体を捜しに行く。水しぶきが立った場所から、僅かに泡が出ているのが分かった。そして、やがて海面に物体は浮かび上がる。
サニの目に映ったのは、紛れもない、霧雨レインの姿だった。
「ぶはぁっ!! がはっ!」
「レイン!? レイン!!」
仰向けで浮いていたレインは、辛うじて息を継げるも、深刻な状態にあった。
「サニ! 大丈夫か!?」
そこに、ラウディ達が駆けつけてきた。
「……!! ラウディさん! 無事だったんですね……!」
サニの顔は、涙でしわくちゃになっていた。
「私は無事です!……それより早く、レインを……!!」
「……ああ!」
ラウディの手から、黒い綿がモクモクと生まれていく。
「行け。レインを助けろ」
ラウディのその言葉で、黒い綿はやがて大きな〝雲〟となり、海に浮くレインの元へ発進した。
そしてその雲は、満身創痍のレインを堤防まで連れて来ることに成功した。
「そんな……! レイン! レイン!」
サニは泣き崩れていた。目を閉じたままのレインの横で、彼の手を取って泣いていた。隣にスノウも寄り添った。スノウも、レインの腹、腕、脚にかけての無数の傷を見てギョッとしたが、なんとか平静を保とうとする。
「恭子!! 今すぐ車を出せ! 例の港だ!」
ラウディが恭子に連絡する。場は、混乱状態であった。
レインのお気に入りのジャケットは、いつの間にか海の底に沈んでいた。レインの意識も、どんどん、どんどん、沈んでゆくーーーー
やあ。君は、霧雨レインだね? こんにちは。ご機嫌いかがかな? 私? 私は、名乗るほどの者ではありませんよ。特に現時点では。それはそうとレイン君。君の運命を変えて差し上げよう。なあに、心配はいらない。どうせすぐ戻る。君の魂を一時的に異動させるだけだからね。これは、君の為の大事な儀式であり、約束なんだよ。いいかい?
今日から君は、神崎 透だ。
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