13 / 48
第一章 霧雨レイン
第12話 プロミス社侵入作戦
しおりを挟む
「この作戦の目的は、プロミス社地下内部の把握、及び、対地球契約についての情報の入手を目的とする。それ以外の身勝手な行動は厳禁とする。
各人員の役割について
レイン・ラウディ
→最上階から地下潜入までをルートとした動き。情報収集が目的。
リオン・スノウ
→1階から潜入し、地下への出入口確保。
恭子
→外で見張りを続け、随時、状況を連絡。
サニ
→近くの海で釣り。
作戦実行は明日の夜11時とする。
各自、自分の役割を把握した上での準備をすること。
ーーーー以上。」
レインが打ったそのメールの文面を、片手に持ったスマホから見るサニ。そのもう片方の手には、釣竿が握られていた。
サニは、今までに無いくらいの不満に満ちた形相であった。
「おかしいよ、これ絶対。何? 釣りって。意味無いよこんなの……!!」
ブツブツ愚痴をこぼしながら、夜の港の堤防に座り込む。後ろを向くと、高くそびえ立つプロミス社が見ることができる。
サニは3000円の、2メートル程ある釣竿を乱暴に振っていた。ここに来る前レインは、サニが買ったこの釣竿を手に取り、ベタベタと触ったあと、「あっ、いいね(笑)」とだけ言い残して、自分の持ち場につきに行った。
サニは今、非常に苛立っている。
「早く終わんないかな……」
サニは、灯台に照らされる海の向こうの地平線を、ただただ眺めているのであった……。
レイン・ラウディ班
「こちら、ラウディ。屋上に到着。どうぞ」
「はーい! 分かったよラウディ!」
「分かったよ、じゃない。スノウ、そっちの状況はどうなんだ?」
リオン・スノウ班
「入口の警報は全部壊したし、一人いた係員も眠らせたよ。」
「……!」
リオンは度肝を抜かれていた。
この日、リオンは初対面の、スノウと名乗る小学生のような少年と行動することになっていた。その少年はプロミス社に入るやいなや、入口の警備員を速業で倒し、倒れた警備員の上にあぐらをかいて座ったのだ。監視カメラも、リオンが遅れて入った時には壊されていた。
彼は一体何者なんだ……!?
リオンは口をあんぐりと開く。
「あっ、じゃあまた後で合流ね、気をつけて~」
スノウは無線機の電源を切る。
「き、君は一体……?」
リオンは、その少年に恐る恐る聞いてみる。
「シベリア生まれのただの少年さ」
スノウは答え、立ち上がり、リオンの方へ歩み寄る。
「両親がいなくってね……ある日雪山で遭難していたら、レインに会ったんだ」
スノウは軽く、流暢に話したが、リオンにはあまりにも唐突で重すぎる話だった。リオンは、少年がレインに会うまでの生活がどのようなものだったのか、不憫に想像してしまった。
「レインはボクのお父さんみたいな人さ! ボクの業は全部レインに教えられた……」
スノウは、おもむろに自分の手を見つめる。彼の手はその年相応の可愛らしい手ではなく、年季の入った、ごつくて頼もしい立派な手であった。
突としてスノウはリオンを睨む。
「てか、おじさんのせいでこんなに焦っちゃったんだからね? プロミス社に着くまで、なんでこんなにも迷うのさ!?」
「えっ……! あっ、ごめん……」
「レインもこんな弟子貰って大変だよねえ。おじさん、何を教わってきたの? 身体能力も知能も、ボクより低そうだし」
リオンはグウの音も出ない。リオンは、屈辱を味わうと同時に、そりゃレインさんに長年育てられた人には敵わないよ、とも思った。
「まあいいよ。足、引っ張んないでね」
「わ、分かった」
レイン・ラウディ班
「さて……」
ラウディは無線機の電源を切る。
黒いジャケットに身を包んだ男二人が、プロミス社の屋上にひっそりと佇んでいる。
「さすがに高ぇな、ここは」
ラウディが、屋上からの街の景色を凝望する。
「ラウディ、長居は出来ない。早く準備しろ」
「はいよ」
レインとラウディは、持ってきたリュックや鞄の中から武器を取り出し、黒いジャケットの中に隠していく。
「最初から気を引き締めて行くぞ。立ち入り禁止だった、最上階から……」
ラウディは、レインのその言葉を強く了解した。
各人員の役割について
レイン・ラウディ
→最上階から地下潜入までをルートとした動き。情報収集が目的。
リオン・スノウ
→1階から潜入し、地下への出入口確保。
恭子
→外で見張りを続け、随時、状況を連絡。
サニ
→近くの海で釣り。
作戦実行は明日の夜11時とする。
各自、自分の役割を把握した上での準備をすること。
ーーーー以上。」
レインが打ったそのメールの文面を、片手に持ったスマホから見るサニ。そのもう片方の手には、釣竿が握られていた。
サニは、今までに無いくらいの不満に満ちた形相であった。
「おかしいよ、これ絶対。何? 釣りって。意味無いよこんなの……!!」
ブツブツ愚痴をこぼしながら、夜の港の堤防に座り込む。後ろを向くと、高くそびえ立つプロミス社が見ることができる。
サニは3000円の、2メートル程ある釣竿を乱暴に振っていた。ここに来る前レインは、サニが買ったこの釣竿を手に取り、ベタベタと触ったあと、「あっ、いいね(笑)」とだけ言い残して、自分の持ち場につきに行った。
サニは今、非常に苛立っている。
「早く終わんないかな……」
サニは、灯台に照らされる海の向こうの地平線を、ただただ眺めているのであった……。
レイン・ラウディ班
「こちら、ラウディ。屋上に到着。どうぞ」
「はーい! 分かったよラウディ!」
「分かったよ、じゃない。スノウ、そっちの状況はどうなんだ?」
リオン・スノウ班
「入口の警報は全部壊したし、一人いた係員も眠らせたよ。」
「……!」
リオンは度肝を抜かれていた。
この日、リオンは初対面の、スノウと名乗る小学生のような少年と行動することになっていた。その少年はプロミス社に入るやいなや、入口の警備員を速業で倒し、倒れた警備員の上にあぐらをかいて座ったのだ。監視カメラも、リオンが遅れて入った時には壊されていた。
彼は一体何者なんだ……!?
リオンは口をあんぐりと開く。
「あっ、じゃあまた後で合流ね、気をつけて~」
スノウは無線機の電源を切る。
「き、君は一体……?」
リオンは、その少年に恐る恐る聞いてみる。
「シベリア生まれのただの少年さ」
スノウは答え、立ち上がり、リオンの方へ歩み寄る。
「両親がいなくってね……ある日雪山で遭難していたら、レインに会ったんだ」
スノウは軽く、流暢に話したが、リオンにはあまりにも唐突で重すぎる話だった。リオンは、少年がレインに会うまでの生活がどのようなものだったのか、不憫に想像してしまった。
「レインはボクのお父さんみたいな人さ! ボクの業は全部レインに教えられた……」
スノウは、おもむろに自分の手を見つめる。彼の手はその年相応の可愛らしい手ではなく、年季の入った、ごつくて頼もしい立派な手であった。
突としてスノウはリオンを睨む。
「てか、おじさんのせいでこんなに焦っちゃったんだからね? プロミス社に着くまで、なんでこんなにも迷うのさ!?」
「えっ……! あっ、ごめん……」
「レインもこんな弟子貰って大変だよねえ。おじさん、何を教わってきたの? 身体能力も知能も、ボクより低そうだし」
リオンはグウの音も出ない。リオンは、屈辱を味わうと同時に、そりゃレインさんに長年育てられた人には敵わないよ、とも思った。
「まあいいよ。足、引っ張んないでね」
「わ、分かった」
レイン・ラウディ班
「さて……」
ラウディは無線機の電源を切る。
黒いジャケットに身を包んだ男二人が、プロミス社の屋上にひっそりと佇んでいる。
「さすがに高ぇな、ここは」
ラウディが、屋上からの街の景色を凝望する。
「ラウディ、長居は出来ない。早く準備しろ」
「はいよ」
レインとラウディは、持ってきたリュックや鞄の中から武器を取り出し、黒いジャケットの中に隠していく。
「最初から気を引き締めて行くぞ。立ち入り禁止だった、最上階から……」
ラウディは、レインのその言葉を強く了解した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
学園ミステリ~桐木純架
よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。
そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。
血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。
新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。
『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。
友よ、お前は何故死んだのか?
河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」
幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。
だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。
それは洋壱の死の報せであった。
朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。
悲しみの最中、朝倉から提案をされる。
──それは、捜査協力の要請。
ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。
──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?
眼異探偵
知人さん
ミステリー
両目で色が違うオッドアイの名探偵が
眼に備わっている特殊な能力を使って
親友を救うために難事件を
解決していく物語。
だが、1番の難事件である助手の謎を
解決しようとするが、助手の運命は...
誰何の夢から覚める時
多摩翔子
ミステリー
「隠し事のある探偵」×「記憶喪失の喫茶店マスター」×「忘れられた怪異の少女」による、"美珠町の怪異"に迫るホラー・ミステリー!
舞台はC部N県美珠町は人口一万人程度の田舎町
僕こと"すいか"は”静寂潮”という探偵に山の中で倒れているところを助けられた。
自分が”喫茶まほろば”のマスターだったこと、名前が”すいか”であること、コーヒーは水色のマグに入れること……と次々と脳内で少女の声が響き、”認識”が与えられるが、それを知るまでの”記憶”が抜け落ちていた。
部屋に残された「記憶を食べる代わりに願いを叶える怪異、みたま様」のスクラップブックを見つけてしまう。
現状を掴めないまま眠りにつくと、夢の中で「自分そっくりの顔を持つ天使の少女、みたま様」に出会い……
「あなたが記憶を思い出せないのは、この世界で”みたま様”が忘れられてしまったから」
忘れられた怪異の行方を追うため、すいかは喫茶オーナー兼駆け出し探偵助手となり、探偵静寂潮と共に、この町に隠された謎と、自分の記憶に隠された秘密を暴くため動き出す。
___例え、その先にどんな真実があろうとも
◇◇◇
こちらの作品は書き手がBLを好んでいるためそういった表現は意識していませんが、一部BLのように受け取れる可能性があります。
舞姫【後編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
彼らには思いもかけない縁(えにし)があった。
巨大財閥を起点とする親と子の遺恨が幾多の歯車となる。
誰が幸せを掴むのか。
•剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
•兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
•津田みちる
20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われ、ストリップダンサーとなる。
•桑名麗子
保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。
•津田(郡司)武
星児と保の故郷を残忍な形で消した男。星児と保は復讐の為に追う。
「鏡像のイデア」 難解な推理小説
葉羽
ミステリー
豪邸に一人暮らしする天才高校生、神藤葉羽(しんどう はね)。幼馴染の望月彩由美との平穏な日常は、一枚の奇妙な鏡によって破られる。鏡に映る自分は、確かに自分自身なのに、どこか異質な存在感を放っていた。やがて葉羽は、鏡像と現実が融合する禁断の現象、「鏡像融合」に巻き込まれていく。時を同じくして街では異形の存在が目撃され、空間に歪みが生じ始める。鏡像、異次元、そして幼馴染の少女。複雑に絡み合う謎を解き明かそうとする葉羽の前に、想像を絶する恐怖が待ち受けていた。
ファクト ~真実~
華ノ月
ミステリー
主人公、水無月 奏(みなづき かなで)はひょんな事件から警察の特殊捜査官に任命される。
そして、同じ特殊捜査班である、透(とおる)、紅蓮(ぐれん)、槙(しん)、そして、室長の冴子(さえこ)と共に、事件の「真実」を暴き出す。
その事件がなぜ起こったのか?
本当の「悪」は誰なのか?
そして、その事件と別で最終章に繋がるある真実……。
こちらは全部で第七章で構成されています。第七章が最終章となりますので、どうぞ、最後までお読みいただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたしますm(__)m
夜人形は闇に笑う
秋月 忍
ミステリー
隣国プラームド帝国の親善使節を招いた夜会の警備をしていたラスは、不審人物を発見する。
それは、強い魔力物質で暗示をかけられた『夜人形』であった。
夜人形に暗示をかけ刺客をつくりだすのは、誰か。
そして、『夜人形』を作るための魔力物質を作る製法を記した『夜人形の書』はどこにあるのか。
ラセイトス警察のラスと相棒のディックは、謎を追い始める。
※なろうからの転載です。カクヨムにも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる