世界滅亡の因子たち

じゃったん

文字の大きさ
上 下
8 / 48
第一章 霧雨レイン

第7話 リオンとの対話②

しおりを挟む
「何ですか、これ。地球契約……概要」

「プロミス社の下請け会社の所から盗ってきた。見てみろ」

  リオンは重いまぶたを最大限に開いて、その書類に目を通す。だが次第にその目は細まり、リオンの眉間にはシワが寄っていった。

「これ本当ですか?」

「馬鹿馬鹿しい話だよなあ。俺らはクロノス社からこんなことを調べるために依頼されたんだ」

「こんなのデタラメに決まってます!  話がぶっ跳んでるじゃないですか……!」

「デタラメ……だといいよなあ。でもリオン、クロノス社の社員が何て言ってたか覚えてるか?」

「……」

  心当たりを探したが、リオンには思い出せなかった。

「地球が危ないかもしれない、と、言っていた。この計画を、ある程度クロノス社は把握していたのかもしれない」

  レインはリオンを見つめる。もうここまで言ったら分かるだろう、という顔で。

「……それなら本当に、この書類がデタラメだと思うか?  プロミス社とは違う会社が、見事この計画を立てていることを見破ったんだぞ?  お前が言う〝デタラメ〟が真実なら、プロミス社とクロノス社はグルとでも言うのか?  え?」

  レインは椅子から立ち上がる。

「この書類に書かれてあることが真実だ。お前が今手に持っているのは嘘偽り無い物なんだよ」

  リオンは俯いて、じっとその書類の内容を見つめている。その紙に書かれた一文字一文字とにらめっこしては、思考することを拒絶するリオン。リオンにはどうしてもこの事実を受け止められないようだ。

「今の日本に、こんな技術があるって言うんですか」

「ああ、そう認めざるをえないのかもな」

「俺が行ったあの街の、あのいつもと変わらないビルが本当に……?」

「よく息を潜めていると思うよ。裏社会にすら情報が来ないのが珍し。」

「大体、何なんですか本当にこの書類はァ!  誰だよアキレス腱三郎五右衛門破ってぇ!!  明らかに人の名前じゃねえし!!!」

  リオンは近くにあった机に、書類を強く叩きつけた。

「り、リオン、落ち着け。確かにその責任者の名前はイカレているな。うん。この書類はな……とても、扱いにくい物なんだよ」

  レインが机に叩きつけられた書類を手に取る。

「この、一般人に見せても誰も信じなさそうな内容、絶対に有り得ない責任者の名前など、あらゆる要素からこの書類は、世間から相手にされない物なんだ。つまり、この書類をマスコミなどに提供しても無意味。逆にそれでプロミス社に勘づかれて、目を付けられたりでもしたら殺されるだろうな。世界を滅亡させるほどの力を持っているのだから、俺もあっさりと消されるかもしれない。だから、この書類は俺たちの中で保管することにする。……この書類の価値は、もっと別なことにあったってわけだな」

  レインはまた、机の上に書類を置く。

「別なことって……?」

「この書類は、謎を呼んできてくれた。俺たちの、謎を究明する欲求を掻きたたせた。お前も、真実を確かめたくなっただろう?  ……なら、いくしかないだろ。プロミス本社に」

  リオンに強いショックが襲う。全身の力が抜けるようだった。今すぐにでも寝たい、いや、もうこの身体をあと数十度後ろに傾ければ、この世界からおさらばして、永遠の眠りにつける自信がリオンにはあった。

「リオン、お前も今回特別に連れて行ってやろう。たまには刺激も与えんとな」

  嫌だ。絶対に、寿命が、十年は縮む。
  プロミス社にいく、と、普通に聞けばおかしい部分はないが、レインの言う「いく」の意味は違う。危険なセキュリティをかいくぐって、潜入する、いわゆる「逝く」の方に近い意味だ。その言葉の意味を、リオンは深く深く承知していた。

「予定が決まったらまた教えるから。心の準備しといてね」

  リオンの耳の遠くで、レインのその言葉が響く。
  リオンはもう、ベッドに身を任せて、深い眠りについていた……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『焼飯の金将社長射殺事件の黒幕を追え!~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.4』

M‐赤井翼
ミステリー
赤井です。 「元女子プロレスラー新人記者「安稀世《あす・きよ》」のスクープ日誌」シリーズも4作目! 『焼飯の金将社長射殺事件の黒幕を追え!』を公開させていただきます。 昨年末の「予告」から時間がかかった分、しっかりと書き込ませていただきました。 「ん?「焼飯の金将」?」って思われた方は12年前の12月の某上場企業の社長射殺事件を思い出してください! 実行犯は2022年に逮捕されたものの、黒幕はいまだ謎の事件をモチーフに、舞台を大阪と某県に置き換え稀世ちゃんたちが謎解きに挑みます! 門真、箱根、横浜そして中国の大連へ! 「新人記者「安稀世」シリーズ」初の海外ロケ(笑)です。100年の歴史の壁を越えての社長射殺事件の謎解きによろしかったらお付き合いください。 もちろん、いつものメンバーが総出演です! 直さん、なつ&陽菜、太田、副島、森に加えて今回の準主役は「林凜《りん・りん》」ちゃんという中国からの留学生も登場です。 「大人の事情」で現実事件との「登場人物対象表」は出せませんので、想像力を働かせてお読みいただければ幸いです。 今作は「48チャプター」、「400ぺージ」を超える長編になりますので、ゆるーくお付き合いください! 公開後は一応、いつも通り毎朝6時の毎日更新の予定です! それでは、月またぎになりますが、稀世ちゃんたちと一緒に謎解きの取材ツアーにご一緒ください! よ~ろ~ひ~こ~! (⋈◍>◡<◍)。✧💖

偏食の吸血鬼は人狼の血を好む

琥狗ハヤテ
BL
人類が未曽有の大災害により絶滅に瀕したとき救済の手を差し伸べたのは、不老不死として人間の文明の影で生きていた吸血鬼の一族だった。その現筆頭である吸血鬼の真祖・レオニス。彼は生き残った人類と協力し、長い時間をかけて文明の再建を果たした。 そして新たな世界を築き上げた頃、レオニスにはひとつ大きな悩みが生まれていた。 【吸血鬼であるのに、人の血にアレルギー反応を引き起こすということ】 そんな彼の前に、とても「美味しそうな」男が現れて―――…?! 【孤独でニヒルな(絶滅一歩手前)の人狼×紳士でちょっと天然(?)な吸血鬼】 ◆閲覧ありがとうございます。小説投稿は初めてですがのんびりと完結まで書いてゆけたらと思います。「pixiv」にも同時連載中。 ◆ダブル主人公・人狼と吸血鬼の一人称視点で交互に物語が進んでゆきます。 ◆現在・毎日17時頃更新。 ◆年齢制限の話数には(R)がつきます。ご注意ください。 ◆未来、部分的に挿絵や漫画で描けたらなと考えています☺

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【毎日更新】教室崩壊カメレオン【他サイトにてカテゴリー2位獲得作品】

めんつゆ
ミステリー
ーー「それ」がわかった時、物語はひっくり返る……。 真実に近づく為の伏線が張り巡らされています。 あなたは何章で気づけますか?ーー 舞台はとある田舎町の中学校。 平和だったはずのクラスは 裏サイトの「なりすまし」によって支配されていた。 容疑者はたった7人のクラスメイト。 いじめを生み出す黒幕は誰なのか? その目的は……? 「2人で犯人を見つけましょう」 そんな提案を持ちかけて来たのは よりによって1番怪しい転校生。 黒幕を追う中で明らかになる、クラスメイトの過去と罪。 それぞれのトラウマは交差し、思いもよらぬ「真相」に繋がっていく……。 中学生たちの繊細で歪な人間関係を描く青春ミステリー。

処理中です...