5 / 48
第一章 霧雨レイン
第4話 対 地球 契約概要①
しおりを挟む
私から、霧雨レインという男をもう少し補足させてもらうわ。彼は身長が180を超えるでかい男で、身体は筋肉質でガッチリとしている。髪は、白と黒が混じってボサボサとしている。目は切れ長で、睨まれるだけで、もう地の果てまで追いかけてきそうな殺気を感じられる。だが、そんな怖い印象とは程遠く、肌は白くてツヤがあり、まさに好青年といった印象の方も強く感じられる。年齢は不詳。本人以外誰にも分からない。誰もが彼の貫禄さと、厳粛さ、気品さは、たった数十年程では培われないものだろうと思うだろう。それでも彼の若さが溢れるその顔から、彼は今まで100年以上は生きてきた不老不死なのではないかと、疑いの念が生まれるほどの人物であった。それでは、皆さん、フルアール!
レインは、ビリビリとそのプロミス社から持ってきた封書を破いていく。開け口が上の部分にちゃんとあるにも関わらず、彼は封筒の真ん中から開け始めた。
「汚い開け方」
サニが口を突っ込むが、レインは聞いていない。サニは、そんなに無我夢中になっているのかと呆れかけていたが、実際は違っていた。レインの行動は、一見乱暴に見えるが、冷静だった。レインは、ある程度封筒を破くと、ピタと手を止め、ゆっくりとその破られた封筒の裏に指を入れた。パリ…と音がして、レインはその封筒の裏から何かを取り出す。水風船だった。透明な風船に、無色透明な液体が入っている。
「何それ?」
サニは、恐らく大事な書類が入っているその封筒に、何故水風船が入っているのか不思議でならなかった。レインは答える。
「多分、……アルキルアルミニウムかな。」
「アルキ……なにそれ」
サニには、初めて聞いた単語だった。
「サニも気を付けた方がいいよ~。酸素に触れただけで燃えちゃう奴だからねえ」
レインはその水風船をつまみながら、奥の自分の部屋に入っていった。ドアは開けたままにして、電気も点けずに何か作業をしている。サニは、また保管か、と思った。遠くでレインは話し続ける。
「真空状態に保管されてあったから、まさかとは思ってたけど。いやあ、流石プロミス社だ」
案の定、保管を終えたであろう帰ってきたレインの手には、もう水風船は無かった。
「普通に開けてたら破裂する所だったよ」
「……逃げて来たんだよね? よく潰さなかったね、風船」
また元のイスに座ったレインに、サニは言う。すると、レインは左手の人差し指を机の上でぴんと立たせ、振り子のように動かした。サニは、この動きをよく知っている。意味は、「おれをなめるな」だ。別に舐めているわけじゃないのに、とサニは口を尖らす。
「さて、気を取り直して見てみようか」
レインはその乱雑になった封筒から書類を出し、机上に置いた。厚さは数ミリ程度だった。表紙に、『対 地球 契約概要』と太字ででかでかと書かれている。サニは、最初、プロミス社の書類と聞いて息を飲んでいたが、その書いてある字の意味を、真剣には受け取れなかった。
「対、……地球?」
「やっぱりな」
サニは眉をひそめ、レインは口に手をあてて頷いている。サニは、自分だけ置いてけぼりにされているように感じ、すかさずレインに質問した。
「この地球って、どういうこと?」
「そのままの意味さ。……奴ら、『プロミス社』は地球と、ある契約をしている。詳しいことは、見れば分かるだろう」
そう言って、ペラ、とレインは書類を一枚めくる。
『対 地球 契約概要
責任者 アキレス腱三郎五右衛門破
この事項は、主に、我が社のプロミス規約第52条に則り作られたものである。
1.契約者
2.契約内容
3.契約達成に伴う準備
4.例外的な契約であることについて』
二ページ目には、そんな事が書かれてあった。サニがレインの目を見ると、レインも見返してきて、「覚悟はいいな?」というような視線を送ってきた。サニは応えるように、目線を下の書類の方へと落とす。レインはまた、それに応えるように、ページをめくった。
レインは、ビリビリとそのプロミス社から持ってきた封書を破いていく。開け口が上の部分にちゃんとあるにも関わらず、彼は封筒の真ん中から開け始めた。
「汚い開け方」
サニが口を突っ込むが、レインは聞いていない。サニは、そんなに無我夢中になっているのかと呆れかけていたが、実際は違っていた。レインの行動は、一見乱暴に見えるが、冷静だった。レインは、ある程度封筒を破くと、ピタと手を止め、ゆっくりとその破られた封筒の裏に指を入れた。パリ…と音がして、レインはその封筒の裏から何かを取り出す。水風船だった。透明な風船に、無色透明な液体が入っている。
「何それ?」
サニは、恐らく大事な書類が入っているその封筒に、何故水風船が入っているのか不思議でならなかった。レインは答える。
「多分、……アルキルアルミニウムかな。」
「アルキ……なにそれ」
サニには、初めて聞いた単語だった。
「サニも気を付けた方がいいよ~。酸素に触れただけで燃えちゃう奴だからねえ」
レインはその水風船をつまみながら、奥の自分の部屋に入っていった。ドアは開けたままにして、電気も点けずに何か作業をしている。サニは、また保管か、と思った。遠くでレインは話し続ける。
「真空状態に保管されてあったから、まさかとは思ってたけど。いやあ、流石プロミス社だ」
案の定、保管を終えたであろう帰ってきたレインの手には、もう水風船は無かった。
「普通に開けてたら破裂する所だったよ」
「……逃げて来たんだよね? よく潰さなかったね、風船」
また元のイスに座ったレインに、サニは言う。すると、レインは左手の人差し指を机の上でぴんと立たせ、振り子のように動かした。サニは、この動きをよく知っている。意味は、「おれをなめるな」だ。別に舐めているわけじゃないのに、とサニは口を尖らす。
「さて、気を取り直して見てみようか」
レインはその乱雑になった封筒から書類を出し、机上に置いた。厚さは数ミリ程度だった。表紙に、『対 地球 契約概要』と太字ででかでかと書かれている。サニは、最初、プロミス社の書類と聞いて息を飲んでいたが、その書いてある字の意味を、真剣には受け取れなかった。
「対、……地球?」
「やっぱりな」
サニは眉をひそめ、レインは口に手をあてて頷いている。サニは、自分だけ置いてけぼりにされているように感じ、すかさずレインに質問した。
「この地球って、どういうこと?」
「そのままの意味さ。……奴ら、『プロミス社』は地球と、ある契約をしている。詳しいことは、見れば分かるだろう」
そう言って、ペラ、とレインは書類を一枚めくる。
『対 地球 契約概要
責任者 アキレス腱三郎五右衛門破
この事項は、主に、我が社のプロミス規約第52条に則り作られたものである。
1.契約者
2.契約内容
3.契約達成に伴う準備
4.例外的な契約であることについて』
二ページ目には、そんな事が書かれてあった。サニがレインの目を見ると、レインも見返してきて、「覚悟はいいな?」というような視線を送ってきた。サニは応えるように、目線を下の書類の方へと落とす。レインはまた、それに応えるように、ページをめくった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
学園ミステリ~桐木純架
よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。
そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。
血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。
新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。
『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。
友よ、お前は何故死んだのか?
河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」
幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。
だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。
それは洋壱の死の報せであった。
朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。
悲しみの最中、朝倉から提案をされる。
──それは、捜査協力の要請。
ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。
──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?
眼異探偵
知人さん
ミステリー
両目で色が違うオッドアイの名探偵が
眼に備わっている特殊な能力を使って
親友を救うために難事件を
解決していく物語。
だが、1番の難事件である助手の謎を
解決しようとするが、助手の運命は...
誰何の夢から覚める時
多摩翔子
ミステリー
「隠し事のある探偵」×「記憶喪失の喫茶店マスター」×「忘れられた怪異の少女」による、"美珠町の怪異"に迫るホラー・ミステリー!
舞台はC部N県美珠町は人口一万人程度の田舎町
僕こと"すいか"は”静寂潮”という探偵に山の中で倒れているところを助けられた。
自分が”喫茶まほろば”のマスターだったこと、名前が”すいか”であること、コーヒーは水色のマグに入れること……と次々と脳内で少女の声が響き、”認識”が与えられるが、それを知るまでの”記憶”が抜け落ちていた。
部屋に残された「記憶を食べる代わりに願いを叶える怪異、みたま様」のスクラップブックを見つけてしまう。
現状を掴めないまま眠りにつくと、夢の中で「自分そっくりの顔を持つ天使の少女、みたま様」に出会い……
「あなたが記憶を思い出せないのは、この世界で”みたま様”が忘れられてしまったから」
忘れられた怪異の行方を追うため、すいかは喫茶オーナー兼駆け出し探偵助手となり、探偵静寂潮と共に、この町に隠された謎と、自分の記憶に隠された秘密を暴くため動き出す。
___例え、その先にどんな真実があろうとも
◇◇◇
こちらの作品は書き手がBLを好んでいるためそういった表現は意識していませんが、一部BLのように受け取れる可能性があります。
舞姫【後編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
彼らには思いもかけない縁(えにし)があった。
巨大財閥を起点とする親と子の遺恨が幾多の歯車となる。
誰が幸せを掴むのか。
•剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
•兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
•津田みちる
20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われ、ストリップダンサーとなる。
•桑名麗子
保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。
•津田(郡司)武
星児と保の故郷を残忍な形で消した男。星児と保は復讐の為に追う。
「鏡像のイデア」 難解な推理小説
葉羽
ミステリー
豪邸に一人暮らしする天才高校生、神藤葉羽(しんどう はね)。幼馴染の望月彩由美との平穏な日常は、一枚の奇妙な鏡によって破られる。鏡に映る自分は、確かに自分自身なのに、どこか異質な存在感を放っていた。やがて葉羽は、鏡像と現実が融合する禁断の現象、「鏡像融合」に巻き込まれていく。時を同じくして街では異形の存在が目撃され、空間に歪みが生じ始める。鏡像、異次元、そして幼馴染の少女。複雑に絡み合う謎を解き明かそうとする葉羽の前に、想像を絶する恐怖が待ち受けていた。
ファクト ~真実~
華ノ月
ミステリー
主人公、水無月 奏(みなづき かなで)はひょんな事件から警察の特殊捜査官に任命される。
そして、同じ特殊捜査班である、透(とおる)、紅蓮(ぐれん)、槙(しん)、そして、室長の冴子(さえこ)と共に、事件の「真実」を暴き出す。
その事件がなぜ起こったのか?
本当の「悪」は誰なのか?
そして、その事件と別で最終章に繋がるある真実……。
こちらは全部で第七章で構成されています。第七章が最終章となりますので、どうぞ、最後までお読みいただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたしますm(__)m
夜人形は闇に笑う
秋月 忍
ミステリー
隣国プラームド帝国の親善使節を招いた夜会の警備をしていたラスは、不審人物を発見する。
それは、強い魔力物質で暗示をかけられた『夜人形』であった。
夜人形に暗示をかけ刺客をつくりだすのは、誰か。
そして、『夜人形』を作るための魔力物質を作る製法を記した『夜人形の書』はどこにあるのか。
ラセイトス警察のラスと相棒のディックは、謎を追い始める。
※なろうからの転載です。カクヨムにも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる