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第1章 OMT編
第105話 旧友と師
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ー ギース 休息 ー
ギースたちは、昼食も含めた一時間半後にまた控え室に戻り、オーガン第一との対決に向けて作戦を練ることにした。
ギースはその時間まで、OMT会場ロビーのソファで体と心を休める。大勢の人が、会場内のレストランに足を運んだり、技術部門、研究部門の会場へと向かうためロビーを行き来していた。
そんな人混みを眺めているギースに、アレスが声をかけた。
「ギース、お疲れ」
「……お、アレス」
アレスは空いていたギースの右隣に座る。
「P1ルーム、完成したんだな」
「まぁ、まだ荒削りだけどな」
ギースは戦闘における発想が優れていた。その発想は戦略だけでなく、魔法のP1にも強さが現れていたため、彼はP1ルームの習得にも精を出してきていた。
アレスが頭を振る。
「俺もそれくらい、目に見える進歩がしたいよ。俺はますます、お前に離された気分だ」
ギースのことを昔からライバル視していたアレスは、もはや悔しさを通り越して尊敬の念を抱くようになっていた。
「でもアレス、君はそんな事言っていつも、僕に追いついてくるじゃないか」
そう、ギースが笑う。
「あぁ。もちろんそのつもりだ」
見透かされていたか、と、アレスも口の端を上げた。
「まぁ、まだアレスに見せたことが無い魔法を用意してるよ。僕が今までずっと、研究してた魔法をね。……分かるだろ?」
心当たりのあったアレスは、溢れた好奇心で胸が熱くなる。目の前にいるギースという男の、底知れぬ強さに一瞬、体が震えた。
そんな二人の会話に、またもう一人の人物が入ってくる。
「よう、ギース、アレス。久しぶりだな」
ソファに座っていた二人は声のした方へと顔を上げた。そこで、アレスは懐かしさを覚え、ギースは感激のあまりすぐさま立ち上がった。
「オメガさん!!」
話しかけてきたのは、オーガン第二魔法学校OBのオメガ・クリスフィス。ギースたちの代の一つ上の先輩で、ギースは去年、彼とOMTに出場していた。
アレスももちろん世話になっていた先輩ではあるが、ギースが一番彼のことを尊敬しており、憧れていた。ギースの冷静な判断能力は、このオメガに養われたと言っても過言では無い。
「良い試合だったな、ギース。また次も期待してるよ」
ギースはその言葉だけで、今までの疲労と、心身にかかっていた重圧が全て吹っ切れた気がした。
「はい、期待しててください。今年こそは……オーガン第二が優勝するので」
「……楽しみだ」
ギースは憧れの人と久しぶりに話せたこと、オメガは大事にしていた後輩が元気にしていたことに頬がほころんでいた。それから、他愛もない世間話に移っていた二人を横目に、アレスはそっとその場から立ち去る。
____アレスはロビー全体を純正力眼で見渡した。ロビーには多くの人がいたが、それら一人一人の動きの数秒後の未来がアレスには視えていた。彼は数秒後の未来の映像と、実際に数秒経った現実の映像を時間差で擦り合わせていく。予測はあくまでも、「一般人ならどう動くか」というアレスの経験に基づく基準で行われていた。だからもし、映像の擦り合わせに大きな差異があった場合、それはアレスが予測できなかった人の動き、つまり「一般人ではない」不審な者が動いたということになる。
視える未来と、実際の人の動きに大きな違いは現れない。本当に、黒豹がこの中に居るのか。できれば居ないでいて欲しい。だがもし居るというのなら、一刻も早く奴らの尾を掴みたい。
アレスは時折目を休ませながら、OMT会場を行き交う人々を監視していった____。
ギースたちは、昼食も含めた一時間半後にまた控え室に戻り、オーガン第一との対決に向けて作戦を練ることにした。
ギースはその時間まで、OMT会場ロビーのソファで体と心を休める。大勢の人が、会場内のレストランに足を運んだり、技術部門、研究部門の会場へと向かうためロビーを行き来していた。
そんな人混みを眺めているギースに、アレスが声をかけた。
「ギース、お疲れ」
「……お、アレス」
アレスは空いていたギースの右隣に座る。
「P1ルーム、完成したんだな」
「まぁ、まだ荒削りだけどな」
ギースは戦闘における発想が優れていた。その発想は戦略だけでなく、魔法のP1にも強さが現れていたため、彼はP1ルームの習得にも精を出してきていた。
アレスが頭を振る。
「俺もそれくらい、目に見える進歩がしたいよ。俺はますます、お前に離された気分だ」
ギースのことを昔からライバル視していたアレスは、もはや悔しさを通り越して尊敬の念を抱くようになっていた。
「でもアレス、君はそんな事言っていつも、僕に追いついてくるじゃないか」
そう、ギースが笑う。
「あぁ。もちろんそのつもりだ」
見透かされていたか、と、アレスも口の端を上げた。
「まぁ、まだアレスに見せたことが無い魔法を用意してるよ。僕が今までずっと、研究してた魔法をね。……分かるだろ?」
心当たりのあったアレスは、溢れた好奇心で胸が熱くなる。目の前にいるギースという男の、底知れぬ強さに一瞬、体が震えた。
そんな二人の会話に、またもう一人の人物が入ってくる。
「よう、ギース、アレス。久しぶりだな」
ソファに座っていた二人は声のした方へと顔を上げた。そこで、アレスは懐かしさを覚え、ギースは感激のあまりすぐさま立ち上がった。
「オメガさん!!」
話しかけてきたのは、オーガン第二魔法学校OBのオメガ・クリスフィス。ギースたちの代の一つ上の先輩で、ギースは去年、彼とOMTに出場していた。
アレスももちろん世話になっていた先輩ではあるが、ギースが一番彼のことを尊敬しており、憧れていた。ギースの冷静な判断能力は、このオメガに養われたと言っても過言では無い。
「良い試合だったな、ギース。また次も期待してるよ」
ギースはその言葉だけで、今までの疲労と、心身にかかっていた重圧が全て吹っ切れた気がした。
「はい、期待しててください。今年こそは……オーガン第二が優勝するので」
「……楽しみだ」
ギースは憧れの人と久しぶりに話せたこと、オメガは大事にしていた後輩が元気にしていたことに頬がほころんでいた。それから、他愛もない世間話に移っていた二人を横目に、アレスはそっとその場から立ち去る。
____アレスはロビー全体を純正力眼で見渡した。ロビーには多くの人がいたが、それら一人一人の動きの数秒後の未来がアレスには視えていた。彼は数秒後の未来の映像と、実際に数秒経った現実の映像を時間差で擦り合わせていく。予測はあくまでも、「一般人ならどう動くか」というアレスの経験に基づく基準で行われていた。だからもし、映像の擦り合わせに大きな差異があった場合、それはアレスが予測できなかった人の動き、つまり「一般人ではない」不審な者が動いたということになる。
視える未来と、実際の人の動きに大きな違いは現れない。本当に、黒豹がこの中に居るのか。できれば居ないでいて欲しい。だがもし居るというのなら、一刻も早く奴らの尾を掴みたい。
アレスは時折目を休ませながら、OMT会場を行き交う人々を監視していった____。
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