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第1章 OMT編
第101話 本物
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試合開始前に立てた、ギースたちの作戦は順調に進んでいたはずだった。ギースは本物のロボットを暗闇に閉じ込めて守りながらセナを探し、最終的には相手にその本物を破壊させた。そして、敵の本物はスタート地点の、壁に囲まれた中にあるだろうと踏んでいた。
しかし、違った。
「ほんとに……ダミーだった……気づけば良かった……ダミーはネジを巻かないと止まること……忘れてたんだ……」
血を吹き出しながらも、翔太はギースに事実を伝える。ギースは翔太を回復させながら頭を働かせた。
なら、本物は何処にある? レナードは膨大な量のマナを使って僕たちを騙してきていた。だがこれは、もし事前にダミーだと気づかれたら無駄になる程の仕掛け。本物はフィールド上に野放しにしているはずもない。なら、相手はもう一つ策を用意しているはず。ギースはそこまで考えて、今までの情報を推理し始めた。
敵のスタート地点のロボットはダミーだった。だが、それを懸命に守り、あたかも本物が入っているように見せたのはレナード。もう倒された彼が、いまだなお別の場所で本物を匿っているとは思えない。
ガンタロは魔力の暴走を早々に使い、攻撃に徹していたイメージがある。彼が身体など、どこかに隠し持っているとは考えにくい。もし持っていたとしても、対峙したミアが気付くはず。
メルサは僕たちを捕まえるために動いていた。だがもしかすると、彼女が本物を持っている可能性が出てくるが……。
そこでふと、ギースは闘技場内を見渡す。霧が段々と晴れてきて、あらかた遠くまで見ることができるようになっていた。ギースは目を凝らした先に、地面に倒れているグレイトとメルサの姿を見つけた。
「ダークホールセット。スワロウ」
倒れた二人の下に穴を投げ置き、ギースは彼らを、今いる敵のスタート地点までワープさせて引き寄せる。傷だらけの二人の体を探してみるが、どうも本物は見当たらない。メルサの身体を厳重に縛っている鎖を解いても、そこには何も無かった。
「……待てよ……?」
ギースは思い出す。この鎖を体に身につけていたのはメルサだけじゃなかったことを。ギースは呼吸を整えている翔太に聞く。
「翔太くん、確か、セナは最初にダミーを投げつけて攻撃してきたと言ってたね?」
「あ……ああ」
「その戦法が、僕たちにはリスクのあるものだと感じられた。だから敵はもしかしたら、本物は簡単に取られる心配の無い壁の中に入れたと、そう思い込んでいた。……もしこれが、根本から間違いだったとしたら……」
「まさか……」
「……ちょっと、セナを探してくる。もう敵は勝利条件を満たせない。あとはゆっくり探せば……」
そう言って立ち上がったギースは、霧の奥に見えたものに目を疑った。そこには、右手に青色のロボットを持ったミアの姿があった。青はオーガン第二のロボット。ダミーを持っているかと考えたが、ダミーは触れたら爆発する。その手に握られているのは、間違いなく本物……。
「まさか、直したっていうのか……? まずい……っ!」
セナがギースたちの方へと向かって走り出した。敵のスタート地点に本物を運ばれたら負け。なんとか阻止しなければならない!
「ブルー・バースト!!」
震えながらも起き上がった翔太が槍を放つ。だが速度が落ちており、セナは半身にその攻撃を避けた。その時、ギースの予想が確信へと変わる。
セナの腰に何重にも巻かれた鎖は、後ろでロボットが落ちないように縛りつける役目をしていた。ほとんどが攻撃用のダミー。しかしその中に一つだけ、もがき暴れるロボットが含まれているのをギースは捉えた。本物のロボットは“触ると暴れ出す”という性質を持つことから、セナたちは鎖で縛って固定していたのだろう。
「もっと早く気付いていれば……!」
木を隠すなら森の中。ギースたちは、セナが持っているロボットは全てダミーだと思い込まされていた。そのわずかな勘違いが今、勝負を大きく左右する要因にまでなったのだ。意識が確かになってきた翔太も、事の重大さに気づき始める。
「ギース……どうする……!」
「……っ!!」
しかし、違った。
「ほんとに……ダミーだった……気づけば良かった……ダミーはネジを巻かないと止まること……忘れてたんだ……」
血を吹き出しながらも、翔太はギースに事実を伝える。ギースは翔太を回復させながら頭を働かせた。
なら、本物は何処にある? レナードは膨大な量のマナを使って僕たちを騙してきていた。だがこれは、もし事前にダミーだと気づかれたら無駄になる程の仕掛け。本物はフィールド上に野放しにしているはずもない。なら、相手はもう一つ策を用意しているはず。ギースはそこまで考えて、今までの情報を推理し始めた。
敵のスタート地点のロボットはダミーだった。だが、それを懸命に守り、あたかも本物が入っているように見せたのはレナード。もう倒された彼が、いまだなお別の場所で本物を匿っているとは思えない。
ガンタロは魔力の暴走を早々に使い、攻撃に徹していたイメージがある。彼が身体など、どこかに隠し持っているとは考えにくい。もし持っていたとしても、対峙したミアが気付くはず。
メルサは僕たちを捕まえるために動いていた。だがもしかすると、彼女が本物を持っている可能性が出てくるが……。
そこでふと、ギースは闘技場内を見渡す。霧が段々と晴れてきて、あらかた遠くまで見ることができるようになっていた。ギースは目を凝らした先に、地面に倒れているグレイトとメルサの姿を見つけた。
「ダークホールセット。スワロウ」
倒れた二人の下に穴を投げ置き、ギースは彼らを、今いる敵のスタート地点までワープさせて引き寄せる。傷だらけの二人の体を探してみるが、どうも本物は見当たらない。メルサの身体を厳重に縛っている鎖を解いても、そこには何も無かった。
「……待てよ……?」
ギースは思い出す。この鎖を体に身につけていたのはメルサだけじゃなかったことを。ギースは呼吸を整えている翔太に聞く。
「翔太くん、確か、セナは最初にダミーを投げつけて攻撃してきたと言ってたね?」
「あ……ああ」
「その戦法が、僕たちにはリスクのあるものだと感じられた。だから敵はもしかしたら、本物は簡単に取られる心配の無い壁の中に入れたと、そう思い込んでいた。……もしこれが、根本から間違いだったとしたら……」
「まさか……」
「……ちょっと、セナを探してくる。もう敵は勝利条件を満たせない。あとはゆっくり探せば……」
そう言って立ち上がったギースは、霧の奥に見えたものに目を疑った。そこには、右手に青色のロボットを持ったミアの姿があった。青はオーガン第二のロボット。ダミーを持っているかと考えたが、ダミーは触れたら爆発する。その手に握られているのは、間違いなく本物……。
「まさか、直したっていうのか……? まずい……っ!」
セナがギースたちの方へと向かって走り出した。敵のスタート地点に本物を運ばれたら負け。なんとか阻止しなければならない!
「ブルー・バースト!!」
震えながらも起き上がった翔太が槍を放つ。だが速度が落ちており、セナは半身にその攻撃を避けた。その時、ギースの予想が確信へと変わる。
セナの腰に何重にも巻かれた鎖は、後ろでロボットが落ちないように縛りつける役目をしていた。ほとんどが攻撃用のダミー。しかしその中に一つだけ、もがき暴れるロボットが含まれているのをギースは捉えた。本物のロボットは“触ると暴れ出す”という性質を持つことから、セナたちは鎖で縛って固定していたのだろう。
「もっと早く気付いていれば……!」
木を隠すなら森の中。ギースたちは、セナが持っているロボットは全てダミーだと思い込まされていた。そのわずかな勘違いが今、勝負を大きく左右する要因にまでなったのだ。意識が確かになってきた翔太も、事の重大さに気づき始める。
「ギース……どうする……!」
「……っ!!」
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