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第1章 OMT編

第82話 奇襲

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 閃光とともに、突然鳴り響く爆音。霧の中から舞ってくる硬い塵に、グレイトとミアは腕で顔を覆った。その塵は、バラバラになった金属片。赤色の線が所々に入ってるのを見る限り、それが相手のロボットの残骸だとすぐに分かった。

 そして、二人の間に翔太が倒れ込む。爆撃により、顔面の至るところから血を吹き出す彼を見て、ミアは思わず口を押さえたが、すぐに治療に取り掛かった。

「姿を現せ……」

 その間、グレイトは敵の攻撃を見張る。刀の柄に手を掛け、意識を集中させた。

「もしかして……当たったの。足音がバタバタしてたから、適当に投げたんだけど」

 ハスキーで、大人しそうな女性の声が霧の奥から聞こえてくるが、グレイトはその姿を捉えられない。

「じゃあ、これでも多分、何発かは当たるよね」

 女性がそう言った直後、グレイトは視界の奥で火花の光を捉えた。そんな遠くはない。斬撃を飛ばせば当たる距離。グレイトは腰を落として刀を抜きかけた。だが、

「……ぐっ!?」

 グレイトの右肩に激痛が走る。氷の刃で肉が引き裂かれたような感覚。その傷を癒すかのように、熱湯のように沸いた血が右肩から溢れ出た。グレイトが怯んでいる間にも、火花の光は断続的に霧の奥にちらついた。そして、グレイトだけでない、三人全員が聞き覚えのある音が同時に鳴る。それは、銃撃音だった。

 弾の飛んでくる間隔を考えて、それがライフルかマシンガンによるセミオート、またはフルオートの発砲であることが分かる。グレイトは右肩の痛みを忘れて刀を抜き、見えもしない弾道を予測して空を斬り始めた。

 ミアも、これはグレイトだけでは防ぎ切れないと感じ、流れ弾をマナ・グラブで防いでいった。

 刀と弾とが擦れる音。それは、フィールド全体に響き渡る勢いで、ミアはこれ以上長居するのは危険だと察知する。

「グレイト! これ以上やり合うと危険! 逃げて態勢を立て直そう!」

「御意」

 ミアが翔太の体を持ち上げ、数メートル後ろに走り出したのを確認してから、グレイトは上に飛び上がり、

「一閃 飛月」

 フィールドを縦に大きく分断するような斬撃を飛ばす。視界がやや晴れたかと思ったのも束の間、またフィールドは濃い霧に包まれた。

 着地したグレイトはすぐさま踵を返し、ミアたちの後を追う。もう敵は斬撃に気を取られたのか、マナが枯渇したのか分からないが、それ以上の攻撃はしてこなかった。

 三人はスタート地点付近で合流する。グレイトが合流したときにはもう、翔太は起き上がれるくらいには意識が回復していた。

「大丈夫か、翔太殿」

「ああ。大丈夫だ」

「何が起きたか分かるか? 相手の奇襲がどんなものだったか……」

「奴は、ダミーのロボットを投げてきた。多分、足音がした方向にデタラメに。不意すぎて、リフレクションも何もいじってなかったからモロに食らったんだ」

 ミアが疑問を口にする。

「でも、ダミーって触ったら爆発するんでしょ? ならなんで相手は投げるなんてことできたのか……」

「恐らく、ルール文面の裏の意味を読んだのだ」

 その疑問にグレイトが答える。

「あのルールでは、拙者たちは自チームのダミーのゼンマイを巻けるようになっている。つまり、自分たちのダミーを触っても爆発はしない仕組みなのだろう。それを相手は逆手に取って攻撃手段として用いてきた。単純に考えれば思い付く手法であった……」

「だ、だったらさ! 今からでも遅くないよ! その作戦盗んでさ、私たちもやろうよ!」

 ミアの提案は一見良い手のように思えるが、グレイトは首を縦に振らない。

「しかし、これにはデメリットもある。ダミーの数が限られている以上、ダミーを減らしていくこの作戦は、本物を見つけやすくさせることにもなるぞ」

「でも、本物のことはギースが『任せてくれ』って言ってたよね?」

「あぁ。だから、確認するべきことがある。ギース殿と合流しよう」

「あの……さ」

 再出発しようとしたグレイトとミアを翔太が呼び止めた。

「どうした? 翔太殿」

「こんな大舞台で、そんなリスキーな作戦、普通するわけ無いだろ? ってことは逆に言えば相手は、本物が持ち出されない自信があるから、ダミーを減らせるんじゃないか……って思ったんだけど、有り得るよな?」

 グレイトとミアは心の中で、翔太の発言が的を得ていることを認めた。

「一筋縄ではいかない、ということだな……」

 三人は、一回戦だからといって舐めてかかってはいけないと、改めて気を引き締め直した。
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