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第1章 OMT編
第49話 翔太vs翔太
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「ミア、いいのか? いくらなんでも、翔太には危険なんじゃ……」
部屋の外でギースが心配そうに言う。
「もしもの時があれば緊急停止できるから大丈夫よ。それに、あなたたちだって見てみたいでしょ? 翔太とあのAIがどうぶつかるのか」
「それは……確かにそうだけど」
ギースは部屋の中を映し出すモニターに視線を移す。一体どんな戦いを繰り広げるのか、そんな期待をする反面、ギースはそのAIの驚異を知っているため固唾を飲んで見守った。
ロボットは至近距離で翔太に青い槍を撃ち込む。波紋が現れてから発動までの時間をよく理解している翔太は、それになんとか反応して避けられた。だが、間合いを空けない以上ロボットの連撃は続く。甲高い金属音が部屋中に響いては、槍によって壁が大きく揺れていた。
翔太は足の裏から波紋を出して大きく飛び退く。翔太が、やっと距離が空いたと安心するのも束の間、ロボットはその回避時間の間に大きな波紋を生み出していた。着地直後の、まだ足元がおぼつかない翔太は避けるのを無理だと察知する。
青光りの鋭利な一閃が、翔太の眉間に向かっていった。その速さを目で追える者はいない。部屋の外のギース、グレイト、緊急停止ボタンに手をかけていたミアでさえ、その光に反応できなかった。槍の先が翔太の眼前にまで迫る。
「……“圧縮”」
紙一重。ロボットの出した槍は、翔太の出していた波紋の前で進行を止め、収縮されていく。
「“解放”!!」
集まったマナの力を倍にして、翔太はロボットにカウンターを放った。その槍がロボットを射止めるのは一瞬で、それはまるで落雷のごとく。ロボットは反応できぬまま壁まで吹き飛ばされた。
「す、すごい……! 何が起きたの……!?」
部屋の外のミアたちは口を開き呆然とする。いつの間にかロボットがやられている光景に思考が追いついていなかった。
ただ、翔太も相手の攻撃を見てから反応していたわけではない。攻撃が来ると分かった瞬間、翔太は目の前に波紋を出してカウンターの機を窺っていただけだった。その波紋がなければ、今ごろ彼の頭は一本の槍に貫かれていた。
「お、終わりか……? 倒せたのか?」
翔太は、ロボットが飛んでいった壁の方を見ながらそう呟いた。ミアがマイクを使って話す。
「まだロボット生成用のマナは残ってる。翔太君がまだ戦いたいなら、そのまま残ってもいいけど……」
「……」
翔太は自分の手を見つめては、ロボットの倒れた姿を見てはを繰り返す。手応えが無い。正直、翔太はそう感じていた。翔太からしてみれば、ロボットはただ翔太のカウンター体勢に気づかず自滅していっただけ。こんなにも呆気なく決着が着くのは締まりが悪い。それに、何の学びも得られていない。翔太はまだそこに留まることを決めた。
「ミア、もう少しやらせてくれないか?」
「……分かった」
終了ボタンを押さないミアにギースが物言いする。
「ちょ、ちょっと。まだやらせるのかい? 今はたまたま翔太のカウンターが決まっただけで、次は分からないんだぞ? また僕らが反応できないような攻防が始まったら、誰が緊急停止ボタンを押せるって言うんだ?」
「これは翔太の意志だよ? もう少しやらせてあげてもいいじゃない」
「!……でも!」
二人の横で腕を組むグレイトが口を開く。
「お二人さん、もうそこまでにしときんさい。黙って見ようじゃありませんか。一人の漢が、時代の産物に立ち向かう勇敢なる姿を」
ロボットの周りにマナが集まり始め、徐々に破損部位を修復していく。
「ガクシュウチュウ。ガクシュウチュウ。LEVEL2ニハイリマス」
ゆっくりと立ち上がったロボットはまた、翔太と対峙する。
部屋の外でギースが心配そうに言う。
「もしもの時があれば緊急停止できるから大丈夫よ。それに、あなたたちだって見てみたいでしょ? 翔太とあのAIがどうぶつかるのか」
「それは……確かにそうだけど」
ギースは部屋の中を映し出すモニターに視線を移す。一体どんな戦いを繰り広げるのか、そんな期待をする反面、ギースはそのAIの驚異を知っているため固唾を飲んで見守った。
ロボットは至近距離で翔太に青い槍を撃ち込む。波紋が現れてから発動までの時間をよく理解している翔太は、それになんとか反応して避けられた。だが、間合いを空けない以上ロボットの連撃は続く。甲高い金属音が部屋中に響いては、槍によって壁が大きく揺れていた。
翔太は足の裏から波紋を出して大きく飛び退く。翔太が、やっと距離が空いたと安心するのも束の間、ロボットはその回避時間の間に大きな波紋を生み出していた。着地直後の、まだ足元がおぼつかない翔太は避けるのを無理だと察知する。
青光りの鋭利な一閃が、翔太の眉間に向かっていった。その速さを目で追える者はいない。部屋の外のギース、グレイト、緊急停止ボタンに手をかけていたミアでさえ、その光に反応できなかった。槍の先が翔太の眼前にまで迫る。
「……“圧縮”」
紙一重。ロボットの出した槍は、翔太の出していた波紋の前で進行を止め、収縮されていく。
「“解放”!!」
集まったマナの力を倍にして、翔太はロボットにカウンターを放った。その槍がロボットを射止めるのは一瞬で、それはまるで落雷のごとく。ロボットは反応できぬまま壁まで吹き飛ばされた。
「す、すごい……! 何が起きたの……!?」
部屋の外のミアたちは口を開き呆然とする。いつの間にかロボットがやられている光景に思考が追いついていなかった。
ただ、翔太も相手の攻撃を見てから反応していたわけではない。攻撃が来ると分かった瞬間、翔太は目の前に波紋を出してカウンターの機を窺っていただけだった。その波紋がなければ、今ごろ彼の頭は一本の槍に貫かれていた。
「お、終わりか……? 倒せたのか?」
翔太は、ロボットが飛んでいった壁の方を見ながらそう呟いた。ミアがマイクを使って話す。
「まだロボット生成用のマナは残ってる。翔太君がまだ戦いたいなら、そのまま残ってもいいけど……」
「……」
翔太は自分の手を見つめては、ロボットの倒れた姿を見てはを繰り返す。手応えが無い。正直、翔太はそう感じていた。翔太からしてみれば、ロボットはただ翔太のカウンター体勢に気づかず自滅していっただけ。こんなにも呆気なく決着が着くのは締まりが悪い。それに、何の学びも得られていない。翔太はまだそこに留まることを決めた。
「ミア、もう少しやらせてくれないか?」
「……分かった」
終了ボタンを押さないミアにギースが物言いする。
「ちょ、ちょっと。まだやらせるのかい? 今はたまたま翔太のカウンターが決まっただけで、次は分からないんだぞ? また僕らが反応できないような攻防が始まったら、誰が緊急停止ボタンを押せるって言うんだ?」
「これは翔太の意志だよ? もう少しやらせてあげてもいいじゃない」
「!……でも!」
二人の横で腕を組むグレイトが口を開く。
「お二人さん、もうそこまでにしときんさい。黙って見ようじゃありませんか。一人の漢が、時代の産物に立ち向かう勇敢なる姿を」
ロボットの周りにマナが集まり始め、徐々に破損部位を修復していく。
「ガクシュウチュウ。ガクシュウチュウ。LEVEL2ニハイリマス」
ゆっくりと立ち上がったロボットはまた、翔太と対峙する。
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