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第1章 OMT編
第46話 腕と頭脳と
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メック・カリソン。魔法技術科に所属。技術科では魔法を使って、人々の暮らしを豊かにする道具や、国の軍事力に貢献するような機械などを造っている。そして、ここ、オーガン第二魔法学校の中でメックは頭ひとつ抜けていた。
彼女は、たった一人で人型ロボットを造り上げたり、また、小さい頃には魔法の新エネルギー発見を先駆けた人物。オーガンからだけでなく、彼女は世界中のエンジニアから注目されていた。
ナータ・ジェフセム。魔法研究科に所属。研究科では主に魔法に関する教養を学び、マナそのものの新たな可能性を日々追究している。メック同様、ナータもその分野ではこの学校でトップの成績を取っていた。
そして彼は、魔法世界筆記試験という、魔国を除く全ての国で行われたテストでは2位の実績を持つ。
朝食の焼き魚を食べながらそんな話を聞いた翔太は、どうも凄い人たちに話しかけられた、と緊張し出す。同時に、真正面から熱い眼差しで見つめてくるメックには恐怖を覚えていた。
「あ、あの、そんなに俺が気になる……んですか?」
翔太は無意識に敬語で話してしまう。
「そりゃあ、少ないマナをあれだけビッグな魔法にするんだもん。あんな能力初めて見た。あたしあなたのこと、もっと知りたい」
そう言ってメックはまた純粋無垢な目を翔太に向けた。翔太はますます、自分の昨日の活躍は目立っていたのだと気づかされる。
「だからって、食事時にそんなまじまじと見る必要があるんですか?」
「あは! ない!」
ナータの指摘をメックは気にも留めない。
ナータはため息をひとつ、そして翔太に質問をした。
「ちなみに、翔太さんは魔眼じゃなかったんですね」
唐突な話題に、一瞬翔太は魔眼とは何だったかと思い出し、箸を止める。
「……まるで、俺が当然魔眼持ちだと思ってた口ぶりですね」
「はい。翔太さんのマナの容量があまりにも大きかったのでそう思ってたんですけど、違ったみたいです」
ナータの発言にロレンが横槍を入れる。
「おい、魔眼はほとんど遺伝なんだろ。こいつは地球っていう別世界からやって来たんだ。魔眼を持ってる訳ないぜ」
ナータはすこし眉をひそめながらロレンに言い返した。
「いえ。最近、魔眼発現の原因は見直されてきてるんですよ。遺伝だと言う研究には信憑性が無い、とね」
「また出やがった。秀才うんちく」
ロレンは顔をしかめ、顔の前で手を振った。それから、もう相手にしないという態度でご飯をかきこむ。
「でも俺、魔眼どころか力眼すらできないんですよ。練習してもできなくて」
と、翔太がナータとの話を続ける。
「力眼はまた話が違いますよ。あれは想像以上に鍛練が必要です」
翔太とナータの会話の横で、メックは長方形の薄い端末をポケットから取り出し、テーブルの上でその画面を見始めた。
「メック、それは……?」
翔太には見覚えのある物。だが、まさかこの世界にもあるわけが無いと思っていた。その黒く光る物体を、翔太は強い違和感とともに凝視する。
「これ? “ス魔法”だよ、“ス魔法”。知らないの?」
翔太の頭の中が混乱する。明らかに“スマホ”とこの耳で聞こえた。ここは異世界。元の世界とは全く別な世界のはずじゃないのかと、翔太は困惑した。そして、まさか、まだここが夢の世界なのではないかと錯覚し始める。今思い返せば、この世界に来たのも学校の机に突っ伏して寝た直後だった。
そして、翔太は今までこの世界で見てきた様々な人工物全てに既視感があったことにも気づく。異世界に来たというのに、元の世界とは魔法があるという違いがあるだけで、他は真新しい物が見えない。学校があり、寮もあり、テストもあって、今のこの料理も調理法や見た目が元の世界と酷似している。
翔太は一瞬自分の頬を強くつねってみたが、ただ痛みを覚えるだけ。彼にはここが夢ではないことくらい、今までの意識の鮮明さから分かりきっていた。
だが、ここまで受け入れやすい異世界が本当にあるのだろうか。夢ではないにしろ、もしやここは絶対的な異世界ではないのではないか。そんな疑念がぽつぽつと、翔太の心の中に生まれていった。
彼女は、たった一人で人型ロボットを造り上げたり、また、小さい頃には魔法の新エネルギー発見を先駆けた人物。オーガンからだけでなく、彼女は世界中のエンジニアから注目されていた。
ナータ・ジェフセム。魔法研究科に所属。研究科では主に魔法に関する教養を学び、マナそのものの新たな可能性を日々追究している。メック同様、ナータもその分野ではこの学校でトップの成績を取っていた。
そして彼は、魔法世界筆記試験という、魔国を除く全ての国で行われたテストでは2位の実績を持つ。
朝食の焼き魚を食べながらそんな話を聞いた翔太は、どうも凄い人たちに話しかけられた、と緊張し出す。同時に、真正面から熱い眼差しで見つめてくるメックには恐怖を覚えていた。
「あ、あの、そんなに俺が気になる……んですか?」
翔太は無意識に敬語で話してしまう。
「そりゃあ、少ないマナをあれだけビッグな魔法にするんだもん。あんな能力初めて見た。あたしあなたのこと、もっと知りたい」
そう言ってメックはまた純粋無垢な目を翔太に向けた。翔太はますます、自分の昨日の活躍は目立っていたのだと気づかされる。
「だからって、食事時にそんなまじまじと見る必要があるんですか?」
「あは! ない!」
ナータの指摘をメックは気にも留めない。
ナータはため息をひとつ、そして翔太に質問をした。
「ちなみに、翔太さんは魔眼じゃなかったんですね」
唐突な話題に、一瞬翔太は魔眼とは何だったかと思い出し、箸を止める。
「……まるで、俺が当然魔眼持ちだと思ってた口ぶりですね」
「はい。翔太さんのマナの容量があまりにも大きかったのでそう思ってたんですけど、違ったみたいです」
ナータの発言にロレンが横槍を入れる。
「おい、魔眼はほとんど遺伝なんだろ。こいつは地球っていう別世界からやって来たんだ。魔眼を持ってる訳ないぜ」
ナータはすこし眉をひそめながらロレンに言い返した。
「いえ。最近、魔眼発現の原因は見直されてきてるんですよ。遺伝だと言う研究には信憑性が無い、とね」
「また出やがった。秀才うんちく」
ロレンは顔をしかめ、顔の前で手を振った。それから、もう相手にしないという態度でご飯をかきこむ。
「でも俺、魔眼どころか力眼すらできないんですよ。練習してもできなくて」
と、翔太がナータとの話を続ける。
「力眼はまた話が違いますよ。あれは想像以上に鍛練が必要です」
翔太とナータの会話の横で、メックは長方形の薄い端末をポケットから取り出し、テーブルの上でその画面を見始めた。
「メック、それは……?」
翔太には見覚えのある物。だが、まさかこの世界にもあるわけが無いと思っていた。その黒く光る物体を、翔太は強い違和感とともに凝視する。
「これ? “ス魔法”だよ、“ス魔法”。知らないの?」
翔太の頭の中が混乱する。明らかに“スマホ”とこの耳で聞こえた。ここは異世界。元の世界とは全く別な世界のはずじゃないのかと、翔太は困惑した。そして、まさか、まだここが夢の世界なのではないかと錯覚し始める。今思い返せば、この世界に来たのも学校の机に突っ伏して寝た直後だった。
そして、翔太は今までこの世界で見てきた様々な人工物全てに既視感があったことにも気づく。異世界に来たというのに、元の世界とは魔法があるという違いがあるだけで、他は真新しい物が見えない。学校があり、寮もあり、テストもあって、今のこの料理も調理法や見た目が元の世界と酷似している。
翔太は一瞬自分の頬を強くつねってみたが、ただ痛みを覚えるだけ。彼にはここが夢ではないことくらい、今までの意識の鮮明さから分かりきっていた。
だが、ここまで受け入れやすい異世界が本当にあるのだろうか。夢ではないにしろ、もしやここは絶対的な異世界ではないのではないか。そんな疑念がぽつぽつと、翔太の心の中に生まれていった。
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