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第1章 OMT編
第17話 勝算
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眼を赤く光らせる怪物を前に、ロレンは一人で立ち向かう。唯一、彼が考えられる勝算は存在していた。だがそれは、あまりにもロレンの身体をも蝕む危険な技。彼はその技をする覚悟がまだできない。
怪物がその場で回し蹴りを繰り出す。ロレンは十分に間合いを取っていた、はずだった。
ドッッ!!!
怪物の蹴りがロレンの脇腹に入る。人間の反射速度を超える攻撃で、ロレンは体の液状化が間に合わない。彼はそこで蹴りを跳ね返すよりも、そのまま飛ばされた方が良いと判断した。
流れに身を任せながら、ロレンは空中で体勢を整える。が、怪物はさらに追い打ちをかけていた。飛んでいるロレンに追いついた怪物は彼の頭を鷲掴みにし、そのまま木の幹に勢いよく打ち付ける。
間一髪。頭を液状化させ、ロレンはダメージを最小限に抑えられていた。
ロレンはそこで確信した。迷っている暇なんてない。今、あの技をやらなければ確実に殺される、と。
ロレンは全身を液体にし、怪物の顔面に飛んだ。怪物は対処できずロレンの攻撃を食らう。ロレンは、怪物の口内に入り込んでいた。そう、これが彼の策。残された勝算。
ロレンは怪物の食道の途中、ちょうど肺や心臓が位置するであろう場所で止まった。
「デカブツよぉ……オメェはこれでおしめぇだ……!!」
ロレンは液体の身体のまま、大きく、激しい収縮運動を始めた。
「ガッ!? ガァァアアアッ!!!」
怪物は、その攻撃により心臓と肺を圧迫され、激痛に苦しみ出す。
ロレンは徐々にその運動の強さ、速さの程度を上げていった。だが、これはロレンの生命にも大きな負荷がかかる。怪物の心の臓が弾けるのが先か、ロレンの命が散るのが先か。その決着は近い。
しかし、怪物もそのままやられはしなかった。ある振動を境に、ロレンは怪物の体内から飛び出してしまう。ロレンはすぐには状況が飲み込めなかった。命からがら、ロレンは呼吸を乱しながらその怪物の方を見上げる。
怪物は、先程よりも姿を大きく変えていた。5メートルどころではない。その倍の10メートル、怪物の身体は巨大化していた。
と思うと、怪物はまたすぐに遭遇時と同じ身体の大きさに戻った。
「まさかこいつ……! 身体を自由自在に伸縮させられるのか……?」
もしそうならば、ロレンは全ての辻褄が合うと考えた。
まずさっきの、十分に間合いを取っていたのに回し蹴りを食らってしまったのは、怪物の脚がその時に伸長していたから。そして、今なぜ自分が怪物の外に出てしまったのか。それは、怪物が身体を大きくし、食道の幅を広げたことで、自分の攻撃が空振ってしまったということ。その勢いのまま、自分は体外に出されたのだ。
ただ、ロレンのその分析は自身にさらなる絶望を与えるものだった。どう、この怪物に勝てるというのか。戦っても相手に手負いを負わせられない。今このまま逃げようとしても追い付かれる。その上ロレンは体内のマナが少なくなり、意識が朦朧としていた。
「もう、ここで終わりか……」
ロレンが諦めかけたその時、一人の男の声が天から聞こえた。
「ロレン! 離れろ!!」
ロレンが見上げるとそこには、上空から降りてくる翔太の姿が見えた。
翔太は地面に向かって拳を突き出し、青い波紋を出現させた。
「おいおい、嘘だろあいつ……」
ロレンは思わず声が漏れる。青い波紋は、翔太がテスト見学の時に出したものよりも遥かに大きくなっていた。
ロレンはすかさずその場から離れる。怪物は、翔太の攻撃への反応が遅れていた。
「くらええぇぇっ!!!」
キュィィィイイイン!!
翔太自身の、そして辺りのマナが集束し始め、解き放たれる。
怪物がその場で回し蹴りを繰り出す。ロレンは十分に間合いを取っていた、はずだった。
ドッッ!!!
怪物の蹴りがロレンの脇腹に入る。人間の反射速度を超える攻撃で、ロレンは体の液状化が間に合わない。彼はそこで蹴りを跳ね返すよりも、そのまま飛ばされた方が良いと判断した。
流れに身を任せながら、ロレンは空中で体勢を整える。が、怪物はさらに追い打ちをかけていた。飛んでいるロレンに追いついた怪物は彼の頭を鷲掴みにし、そのまま木の幹に勢いよく打ち付ける。
間一髪。頭を液状化させ、ロレンはダメージを最小限に抑えられていた。
ロレンはそこで確信した。迷っている暇なんてない。今、あの技をやらなければ確実に殺される、と。
ロレンは全身を液体にし、怪物の顔面に飛んだ。怪物は対処できずロレンの攻撃を食らう。ロレンは、怪物の口内に入り込んでいた。そう、これが彼の策。残された勝算。
ロレンは怪物の食道の途中、ちょうど肺や心臓が位置するであろう場所で止まった。
「デカブツよぉ……オメェはこれでおしめぇだ……!!」
ロレンは液体の身体のまま、大きく、激しい収縮運動を始めた。
「ガッ!? ガァァアアアッ!!!」
怪物は、その攻撃により心臓と肺を圧迫され、激痛に苦しみ出す。
ロレンは徐々にその運動の強さ、速さの程度を上げていった。だが、これはロレンの生命にも大きな負荷がかかる。怪物の心の臓が弾けるのが先か、ロレンの命が散るのが先か。その決着は近い。
しかし、怪物もそのままやられはしなかった。ある振動を境に、ロレンは怪物の体内から飛び出してしまう。ロレンはすぐには状況が飲み込めなかった。命からがら、ロレンは呼吸を乱しながらその怪物の方を見上げる。
怪物は、先程よりも姿を大きく変えていた。5メートルどころではない。その倍の10メートル、怪物の身体は巨大化していた。
と思うと、怪物はまたすぐに遭遇時と同じ身体の大きさに戻った。
「まさかこいつ……! 身体を自由自在に伸縮させられるのか……?」
もしそうならば、ロレンは全ての辻褄が合うと考えた。
まずさっきの、十分に間合いを取っていたのに回し蹴りを食らってしまったのは、怪物の脚がその時に伸長していたから。そして、今なぜ自分が怪物の外に出てしまったのか。それは、怪物が身体を大きくし、食道の幅を広げたことで、自分の攻撃が空振ってしまったということ。その勢いのまま、自分は体外に出されたのだ。
ただ、ロレンのその分析は自身にさらなる絶望を与えるものだった。どう、この怪物に勝てるというのか。戦っても相手に手負いを負わせられない。今このまま逃げようとしても追い付かれる。その上ロレンは体内のマナが少なくなり、意識が朦朧としていた。
「もう、ここで終わりか……」
ロレンが諦めかけたその時、一人の男の声が天から聞こえた。
「ロレン! 離れろ!!」
ロレンが見上げるとそこには、上空から降りてくる翔太の姿が見えた。
翔太は地面に向かって拳を突き出し、青い波紋を出現させた。
「おいおい、嘘だろあいつ……」
ロレンは思わず声が漏れる。青い波紋は、翔太がテスト見学の時に出したものよりも遥かに大きくなっていた。
ロレンはすかさずその場から離れる。怪物は、翔太の攻撃への反応が遅れていた。
「くらええぇぇっ!!!」
キュィィィイイイン!!
翔太自身の、そして辺りのマナが集束し始め、解き放たれる。
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