14 / 119
第1章 OMT編
第11話 ロレンvs翔太
しおりを挟む
魔法の稽古の約束をした翔太とロレンは、その次の日、朝早く学校に行き第一闘技場に向かった。
「闘技場はまだ他にもあるが、それらも壊されたらたまったもんじゃねえ。だから、まだ修復されてない第一闘技場で思う存分戦えばいい。その方がお前も気が楽だろ? 翔太」
「う、うん。そうだね」
そういう問題だろうか、何もない更地で戦えばいいではないか、という考えが浮かんだが、翔太はそれをグッと押さえ込んだ。ロレンの判断の一貫性は清々しいもので、それに身を任せれば何とかなると感じていたためだ。
闘技場に着くと、お互いその中央で向かい合う。
「いいか? 手加減は無しだぜ? 本気で来なきゃ正確な力が分からないからな」
「あぁ、分かったよロレン」
ロレンはのびのびとストレッチをして戦いに備えている。
「あ、そうだ。俺は翔太の能力知ってるのに、翔太は俺のこと知らないってのはフェアじゃねぇな。……俺の能力は……」
◎ロレン・ジークルス
能力:擬態《水》
特質した型:P2
「……だ。分かったな? じゃあチャッチャと……始めっか! スタート!」
「えっ!? あっ、もう!?」
翔太が心の準備を始める前に、ロレンは攻撃を開始した。地を強く蹴り、ロレンは翔太との間合いを一気に詰める。翔太は突然のことで、腕で顔を防ぐことしかできない。
「ボディーががら空きだ。SPLASH POWER!!」
ロレンの腕が水に変わり、渦を巻きながら翔太の腹に直撃する。その強烈な水圧に吹き飛ばされた翔太は、壁の瓦礫の山に背中を打ち付けた。
「おいおい、モロに食らったな。反射率も変えた様子がねぇ。……マジの初心者かよ……?」
「はっ!……ハァ、ハァ!!」
腹の激痛に耐えられず、翔太は息をすることもままならない。彼自身、もう今日は寮に帰りたいと思い始めた。
「翔太、こいよ。お前の番だ」
戦意喪失しかける翔太に構わず、ロレンはまだ勝負を楽しもうとしていた。
翔太は意識をどうにか保たせながら立ち上がり、今までやってきた通りに自分の魔法をイメージする。別に勝てなくてもいい、ロレンにはまず、一泡吹かせたい。今の翔太はそんな思いに突き動かされていた。
身構えるロレンの真正面に翔太は走り出す。右手の拳を握りしめ、ロレンの体を外さないように狙いを定める。
「正面突破か……いいね」
翔太の拳が青い光を纏いながら、ロレンの身の前に繰り出される。
キュイイイィィン!!
時間差で青い波紋が現れた。今の翔太は、ミアの説明があったからか、周りのマナを集めている感覚、力が一点に集中する感覚を味わえていた。
大きな衝撃音とともにその力は解き放たれる。だが、
「まぁ、回避するわな。前振りが長けりゃ……」
翔太が攻撃したのは、全身を水に変えたロレン。辺りには水しぶきだけが飛び散り、ロレンの身体は真っ二つに割れたが、翔太の攻撃に何の痛みも感じていなかった。
「小手調べはこれで終わりみてぇだ、翔太」
ロレンは勝負を決める攻撃態勢に入った。
「……それはどうかな」
「なに……?」
翔太は水に成り変わったロレンに、左の拳の第二撃を加える。青い波紋が現れると、たちまちロレンは水の体のまま、マナの圧縮に巻き込まれていく。
「なっ!? やめっ……!」
凝縮された液状のロレンは次の瞬間、闘技場の、まだ辛うじてそびえ立っていた壁に放たれ、激突した。
崩壊する壁とともに、ロレンは滴となって地に落ちていく。体を原形に戻すのにもマナを消費してしまうロレンは、元に戻った頃には息を切らしていた。
「はっ! ハァ、やってくれるじゃねえか、翔太ァ!……ハァ!」
「……ロレンこそ」
翔太は、自分がマナを圧縮する能力を持つのなら、それは自分だけのマナじゃなくてもいいのではないか、そして、水に変わったロレンの身体は、少なからずマナでできているのではないか、そんな推測でこの二段の攻撃を放った。一種の賭けである。
二人は薄く笑い合い、お互いが、この勝負がまだ面白くなるだろうことを予感する。
「ちょっと! あんたたち! 何やってんの!?」
突然、聞き慣れない甲高い声が校舎の方から聞こえた。
「み、ミア!?」
その声の正体はミア。彼女を見つけると、翔太はのんきに挨拶をし、反対にロレンは嫌そうに顔を歪めた。
「おい、翔太。奴はチクリ魔だ。逃げるぞ」
「えっ? えっ?」
ロレンは翔太の手を強引に引っ張った。
「闘技場はまだ他にもあるが、それらも壊されたらたまったもんじゃねえ。だから、まだ修復されてない第一闘技場で思う存分戦えばいい。その方がお前も気が楽だろ? 翔太」
「う、うん。そうだね」
そういう問題だろうか、何もない更地で戦えばいいではないか、という考えが浮かんだが、翔太はそれをグッと押さえ込んだ。ロレンの判断の一貫性は清々しいもので、それに身を任せれば何とかなると感じていたためだ。
闘技場に着くと、お互いその中央で向かい合う。
「いいか? 手加減は無しだぜ? 本気で来なきゃ正確な力が分からないからな」
「あぁ、分かったよロレン」
ロレンはのびのびとストレッチをして戦いに備えている。
「あ、そうだ。俺は翔太の能力知ってるのに、翔太は俺のこと知らないってのはフェアじゃねぇな。……俺の能力は……」
◎ロレン・ジークルス
能力:擬態《水》
特質した型:P2
「……だ。分かったな? じゃあチャッチャと……始めっか! スタート!」
「えっ!? あっ、もう!?」
翔太が心の準備を始める前に、ロレンは攻撃を開始した。地を強く蹴り、ロレンは翔太との間合いを一気に詰める。翔太は突然のことで、腕で顔を防ぐことしかできない。
「ボディーががら空きだ。SPLASH POWER!!」
ロレンの腕が水に変わり、渦を巻きながら翔太の腹に直撃する。その強烈な水圧に吹き飛ばされた翔太は、壁の瓦礫の山に背中を打ち付けた。
「おいおい、モロに食らったな。反射率も変えた様子がねぇ。……マジの初心者かよ……?」
「はっ!……ハァ、ハァ!!」
腹の激痛に耐えられず、翔太は息をすることもままならない。彼自身、もう今日は寮に帰りたいと思い始めた。
「翔太、こいよ。お前の番だ」
戦意喪失しかける翔太に構わず、ロレンはまだ勝負を楽しもうとしていた。
翔太は意識をどうにか保たせながら立ち上がり、今までやってきた通りに自分の魔法をイメージする。別に勝てなくてもいい、ロレンにはまず、一泡吹かせたい。今の翔太はそんな思いに突き動かされていた。
身構えるロレンの真正面に翔太は走り出す。右手の拳を握りしめ、ロレンの体を外さないように狙いを定める。
「正面突破か……いいね」
翔太の拳が青い光を纏いながら、ロレンの身の前に繰り出される。
キュイイイィィン!!
時間差で青い波紋が現れた。今の翔太は、ミアの説明があったからか、周りのマナを集めている感覚、力が一点に集中する感覚を味わえていた。
大きな衝撃音とともにその力は解き放たれる。だが、
「まぁ、回避するわな。前振りが長けりゃ……」
翔太が攻撃したのは、全身を水に変えたロレン。辺りには水しぶきだけが飛び散り、ロレンの身体は真っ二つに割れたが、翔太の攻撃に何の痛みも感じていなかった。
「小手調べはこれで終わりみてぇだ、翔太」
ロレンは勝負を決める攻撃態勢に入った。
「……それはどうかな」
「なに……?」
翔太は水に成り変わったロレンに、左の拳の第二撃を加える。青い波紋が現れると、たちまちロレンは水の体のまま、マナの圧縮に巻き込まれていく。
「なっ!? やめっ……!」
凝縮された液状のロレンは次の瞬間、闘技場の、まだ辛うじてそびえ立っていた壁に放たれ、激突した。
崩壊する壁とともに、ロレンは滴となって地に落ちていく。体を原形に戻すのにもマナを消費してしまうロレンは、元に戻った頃には息を切らしていた。
「はっ! ハァ、やってくれるじゃねえか、翔太ァ!……ハァ!」
「……ロレンこそ」
翔太は、自分がマナを圧縮する能力を持つのなら、それは自分だけのマナじゃなくてもいいのではないか、そして、水に変わったロレンの身体は、少なからずマナでできているのではないか、そんな推測でこの二段の攻撃を放った。一種の賭けである。
二人は薄く笑い合い、お互いが、この勝負がまだ面白くなるだろうことを予感する。
「ちょっと! あんたたち! 何やってんの!?」
突然、聞き慣れない甲高い声が校舎の方から聞こえた。
「み、ミア!?」
その声の正体はミア。彼女を見つけると、翔太はのんきに挨拶をし、反対にロレンは嫌そうに顔を歪めた。
「おい、翔太。奴はチクリ魔だ。逃げるぞ」
「えっ? えっ?」
ロレンは翔太の手を強引に引っ張った。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
【書籍化進行中】魔法のトランクと異世界暮らし
猫野美羽
ファンタジー
※書籍化進行中です。
曾祖母の遺産を相続した海堂凛々(かいどうりり)は原因不明の虚弱体質に苦しめられていることもあり、しばらくは遺産として譲り受けた別荘で療養することに。
おとぎ話に出てくる魔女の家のような可愛らしい洋館で、凛々は曾祖母からの秘密の遺産を受け取った。
それは異世界への扉の鍵と魔法のトランク。
異世界の住人だった曾祖母の血を濃く引いた彼女だけが、魔法の道具の相続人だった。
異世界、たまに日本暮らしの楽しい二拠点生活が始まる──
◆◆◆
ほのぼのスローライフなお話です。
のんびりと生活拠点を整えたり、美味しいご飯を食べたり、お金を稼いでみたり、異世界旅を楽しむ物語。
※カクヨムでも掲載予定です。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる