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第3章 偽りの平和

40話 被害と戦況と

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これは夢だ、そうに違いない。と思いたかった。思っていたかった。だけど現実はそうは行かない。だって、目の前で沢山の尻尾を持つ巨大な狐と、黒いドラゴンが戦っているのだから。しかもドラゴンの元の姿は人間、リュウ君なのだから。間違いない。リュウ君はあろうことか人の波に逆らいあの化け物に向かって行き、その後すぐにゲームでよく見るリュウ君のドラゴン姿が現れたのだから。

「≪ドラゴンサンダーフィスト≫」

「ギャァァァ!」

巨大生物同士の戦いは凄まじく、その余波で地面が揺れ、風が荒れ、立っているのもやっと。中には物に当たって怪我をしている人もいる。

「危ない!」

遠くでそんな声が聴こえた気がした。
だけどその声は私に向けられた物だった。それに気付いた頃には何処からか飛んできた木製の看板が目の前にあった。

「≪アイスショット≫」

その声と共に白い光が視界を過る。その光は看板に当たると弾け、看板が氷る。看板は氷った事で重くなり私に当たることは無くその手前に落ちた。

「大丈夫?」

声のする方を向くとそこには1人の女の子がいた。

「華蓮ちゃん!?」

ゲーム内で出会い、週に一度は現実で会う様になった私の友達だった。

「もう大丈夫だからね」

「え、え?」

華蓮ちゃんにお姫様抱っこをされた。華蓮ちゃんって案外力持ちなんだ。

「あ。遅いですよ、隊長」

「あははは。まぁコハクちゃんは強いからね。弱い僕達は人命救助するにしても慎重に見極める必要があるからね」

華蓮ちゃんと男の人はこんな状況にも関わらず平然と話している。

「さてと、救助開始だ」

「「「「「はい!」」」」」

男の人がそう声をかけると突如として軍服の様な服を着た人達が現れる。その人達はこの地震と強風の中、この場にいる学生や教員を抱えて連れ去る。だけど男の人は救助だと言っていたから恐らく大丈夫。どういう繋がりか華蓮ちゃんも親しく話していたし。


 ◆ ◆ ◆


 「≪ドラゴンフレイムフィスト≫」

「ギャァァァ!」

互いの拳がぶつかり合い、その余波で突風が吹く。先程からそれの繰り返し。ただ殴り合うだけの闘いが続いている。決め手となる大技を出そうにも一般人への被害を考えるとなかなか撃てない。せめて空中戦に持っていけば周りを気にしなくても良いんだけどな。だが、≪魔眼≫によると九尾は飛べないらしい。飛べない相手との空中戦は無理がある。

「どうすれば……」

「なら、をしなければ良い『炎虎<炎蹴火>』」

突如九尾の足元に炎が現れ、みるみる内に獣の足のように変化する。その足は勢い良く九尾の体を蹴り、空高くまで吹っ飛ばされる。成る程、確かにこれなら周りを気にしなくて良い。ちょっと卑怯な気もするけど……。
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