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第3章 偽りの平和

35話 vsくもグモ

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「うひゃぁー」

無邪気にはしゃぐ1人の少女。否、大地の様に広がる白い雲の上を駆ける1匹の白い毛並みの狼。獣化したコハクだ。

「≪シルバーフローズンブレス≫」

誰もいない空中に冷気を纏った咆哮を放つ。

「すごい本当に出た」

コハクはスキルが発動した事に驚く。それはこの一回に留まらず、空を飛んだ時、狼に変身した時、等々、スキルを使う度にこの反応だ。
まぁ分からんでも無い。俺もあんな状況だったから変に勘繰っていたが普通はこんな感じに驚いたり喜んだりするのだろうか。

「≪シルバーアイスキャノン≫」

またもやスキルを放つコハク。だけど今度は……。

「ギャァァァァ!」

突如として何も無い空の上で悲鳴が上がる。
その悲鳴がしたのは丁度コハクの≪シルバーアイスキャノン≫が当たった辺りだ。雲の形が見る見るうちに蜘蛛の形に変わっていく。それは雲であり蜘蛛なモンスター『くもグモ』だ。このモンスターの体は雲で出来ているため物理攻撃が効かない。その厄介さ故、EXランクに指定されている。

「モンスター?よし!行くよ!≪シルバーブリザード≫」

「ちょ、コハク!」

コハクはスキルでくもグモの回りに猛吹雪を発生させる、とそのままくもグモに向かって突撃して行く。

「はぁぁぁぁ!≪シルバーアイスクロー≫!」

その鋭利な爪でくもグモを切り裂く。

「ギャァァァ!」

「うっ」

くもグモは切り裂かれた痛みで悲鳴をあげる。しかし自己防衛の為に大量の白い煙を吐く。

「コハク!」

煙はコハクを飲み込み影すら見えなくなった。≪魔眼≫で確認した所、あの煙は毒だと判った。俺もコハクも≪毒耐性≫のスキルは持っているがEXランクとなれば流石に無効化とはいかない。

「≪ウィンドストーム≫」

風、と言うよりは嵐のような強風を煙に向けて放つ。

「っ!」

煙が晴れると見えたのは人間姿のコハクがくもグモに喰われる寸前の光景だった。その光景が見えた瞬間≪竜化:50%≫を使いコハクの元へ飛んでいく。

「間に合え!」

くもグモの大きく空いた口が勢いよく閉じる。

「大丈夫かコハク」

「えぇ何とか」

間一髪喰われなかった。コハクをお姫様抱っこしたままくもグモとの距離を取る。

「ぅう油断した。気持ち悪い」

「あんまりゲーム感覚で戦うな。痛みもあるし、負けるって事は死ぬって事だからな」

「わかってるわよ」

ならいいんだか。まぁ俺自身も注意出来た立場じゃ無いけど。

「≪竜化:100%≫」

「≪獣化≫」

俺とコハクは互いに変身系のスキルを発動させる。
俺は漆黒の鱗を全身に纏い二足歩行をする体長30mのドラゴンの姿になる。
コハクは全身を白い毛で覆い体長10mの狼の姿になる。

「もう油断はしない。行くわよリュウ」

「ああ」

くもグモは雲だから物理攻撃は効かない。そうは。詰まり物理攻撃じゃ無ければ良い。

「≪ドラゴンフレイムカノン≫」

「≪シルバーアイスキャノン≫」

俺とコハクの放った炎と氷の光線はくもグモを貫通し煙となって四散する。これでくもグモを倒した、事にはならない。どうやら攻撃が当たる前に自ら雲になったようだ。

「「ギャァァァ」」

「≪ドラゴンサンダーフィスト≫」

「≪シルバーアイスクロー≫」

くもグモは再び蜘蛛の姿となり攻撃を仕掛けてくる。不意打ちを突いたつもりだろうが≪魔眼≫でバレバレだ。コハクも似たようなスキルを持っているから同じ様に直ぐ様カウンター出来たようだ。

「ギシャァァァ!」

くもグモは甲高い叫び声を発し、体を勢いよく雲へと変える。その煙の量は多く、吹き出した様に溢れ返りあっという間に目の前が見えない程になった。

「≪ウィンドストーム≫」

さっきと同じ様に嵐の様な風で煙を飛ばそうとするが煙の量が多く一向に晴れない。

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