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第2章 現実世界
24話 迷い
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グリーンウルフを倒してから数時間後の事である。次の場所へと移動中の空で異変が起きた。空中に黒い渦のような物があったのだ。
「なんだありゃ」
「あれは確か……」
「茜?どうした」
茜は黒い渦に驚く訳でもなく難しい顔をしていた。
「思い出した!気を引き締めて、モンスターが出てくる」
「モンスター!?」
茜の忠告通り黒い渦からモンスターが現れそれと同時に黒い渦は消滅する。そのモンスターは馬の姿をしているが純白の翼と額には大きな角があり、更に驚くべき事に体長が30m以上もある。≪魔眼≫スキルによるとその神話に登場しそうなモンスターは『ペガサスキング』、Sランクモンスターだ。更に、『シュアル』という個体名まである。名前があるモンスターは通常より強い特徴がある。それに気になるのが『空王の眷属』という一文なのだが空王って誰だ?眷属って事は更に上のボスがいることになるが……
見渡す限り現れたのはこの『ペガサスキング』一体だ。
「ヒヒィィ~~ン」
何の前触れも無くペガサスキングは馬の鳴き声のような雄叫びを上げ突進してくる。
「おっと」
「私達を狙っている」
難なく突進を躱す。
茜の言う通りなら、先手必勝だ!
「≪フレイムカノン≫」
「炎、収束。『光線』射出」
二つの炎の光線がペガサスキングに向かって放たれる。
「ヒヒィィ~~ン」
だが全く効いていない。それどころか。
「な!」
「ッ!」
白い光線が幾つも発射される。その攻撃は俺達を狙っているというより無差別に放たれていた。攻撃を必死に躱すが数が多すぎる。
「くっそ。≪竜化:30%≫」
角と尻尾が生え、力が増す。
だが、それでも躱しきれず、ついには攻撃を喰らってしまう。
「ぐ。まだだ≪竜化:50%≫」
今度は腕と足が姿を変え鋭い爪に黒い鱗の竜の手足になる。同時に力も更に増す。
攻撃が落ち着いたタイミングを見計らい懐に潜り込む。
「≪サンダーフィスト≫」
雷を纏った拳、しかも50%分の力で増強された状態、それが放たれる。
「ッ!」
思わず息を飲む。何しろ無傷、びくともしていないのだから。
「ヒヒィィィ」
ペガサスキングは俺が怯んだその一瞬の間に位置を変え前足を振り下ろし俺を踏む。
当たらない様に下に逃げるが……
「グハッ」
足には当たっていない。だけど衝撃波的なもので攻撃を喰らってしまった。
「強い」
ランクだけで見れば俺の方が上だ。だが実際にはぼろ負けだ。やはりゲームと現実では違うのか。
「ヒヒィィィ」
またもや光線の無差別攻撃。だけどもう躱しきれる自信が無い。
「『炎の纏い・炎鳥』」
突如として俺の周りに炎が現れる。
「何しているの」
それは茜の炎だった。その炎は鳥の形を模り茜と俺を包んでいた。
「貴方も早く竜化して」
「竜化ならしている」
「まだ半分。もう半分、100%の力を出して」
「それは」
分かっている。相手はSランク。ゲームでも≪竜化:100%≫を使わなければ勝てない。
でも怖いんだ。これはゲームじゃない。もしドラゴンの姿になって戻れなかったらって考えると使えない。いや、それ以上に人間を辞める様な気がするんだ。
「貴方は死にたいの」
「ッ!」
「ゲームじゃ無いからこそどんな手を使っても生き延びないといけない。だから……
怖いなら逃げて。私が時間を稼ぐわ」
「な!」
「大丈夫。『ガーディアン』は元々モンスターと敵対している。だから居場所を突き止めてやって来る筈。私達が居る事に気付いているかどうかは知らないけど」
それは詰まり援軍が来たところで味方とは限らないという事だ。逆に逃走中の俺達が自ら居場所を教えている様な物だ。
「ふー、はー。ふー、はー」
落ち着け。深呼吸だ。
選択肢は2つ。
1つは茜の言う通り逃げる。だけど、それは詰まり茜を見捨てる事になる。いや2人で逃げれば良い。成功率は下がるが茜を見捨てる事は出来ない。
もう1つは『ペガサスキング』を倒す。それには≪竜化:100%≫を使わなければならない。これまで一週間色々なスキルを使ってきたがゲーム通り使えてる。だからこのスキルも普通に使える筈だ。だけどこれまでとスケールが違いすぎて失敗した場合の不安が大きいのだ。
「俺は……」
「なんだありゃ」
「あれは確か……」
「茜?どうした」
茜は黒い渦に驚く訳でもなく難しい顔をしていた。
「思い出した!気を引き締めて、モンスターが出てくる」
「モンスター!?」
茜の忠告通り黒い渦からモンスターが現れそれと同時に黒い渦は消滅する。そのモンスターは馬の姿をしているが純白の翼と額には大きな角があり、更に驚くべき事に体長が30m以上もある。≪魔眼≫スキルによるとその神話に登場しそうなモンスターは『ペガサスキング』、Sランクモンスターだ。更に、『シュアル』という個体名まである。名前があるモンスターは通常より強い特徴がある。それに気になるのが『空王の眷属』という一文なのだが空王って誰だ?眷属って事は更に上のボスがいることになるが……
見渡す限り現れたのはこの『ペガサスキング』一体だ。
「ヒヒィィ~~ン」
何の前触れも無くペガサスキングは馬の鳴き声のような雄叫びを上げ突進してくる。
「おっと」
「私達を狙っている」
難なく突進を躱す。
茜の言う通りなら、先手必勝だ!
「≪フレイムカノン≫」
「炎、収束。『光線』射出」
二つの炎の光線がペガサスキングに向かって放たれる。
「ヒヒィィ~~ン」
だが全く効いていない。それどころか。
「な!」
「ッ!」
白い光線が幾つも発射される。その攻撃は俺達を狙っているというより無差別に放たれていた。攻撃を必死に躱すが数が多すぎる。
「くっそ。≪竜化:30%≫」
角と尻尾が生え、力が増す。
だが、それでも躱しきれず、ついには攻撃を喰らってしまう。
「ぐ。まだだ≪竜化:50%≫」
今度は腕と足が姿を変え鋭い爪に黒い鱗の竜の手足になる。同時に力も更に増す。
攻撃が落ち着いたタイミングを見計らい懐に潜り込む。
「≪サンダーフィスト≫」
雷を纏った拳、しかも50%分の力で増強された状態、それが放たれる。
「ッ!」
思わず息を飲む。何しろ無傷、びくともしていないのだから。
「ヒヒィィィ」
ペガサスキングは俺が怯んだその一瞬の間に位置を変え前足を振り下ろし俺を踏む。
当たらない様に下に逃げるが……
「グハッ」
足には当たっていない。だけど衝撃波的なもので攻撃を喰らってしまった。
「強い」
ランクだけで見れば俺の方が上だ。だが実際にはぼろ負けだ。やはりゲームと現実では違うのか。
「ヒヒィィィ」
またもや光線の無差別攻撃。だけどもう躱しきれる自信が無い。
「『炎の纏い・炎鳥』」
突如として俺の周りに炎が現れる。
「何しているの」
それは茜の炎だった。その炎は鳥の形を模り茜と俺を包んでいた。
「貴方も早く竜化して」
「竜化ならしている」
「まだ半分。もう半分、100%の力を出して」
「それは」
分かっている。相手はSランク。ゲームでも≪竜化:100%≫を使わなければ勝てない。
でも怖いんだ。これはゲームじゃない。もしドラゴンの姿になって戻れなかったらって考えると使えない。いや、それ以上に人間を辞める様な気がするんだ。
「貴方は死にたいの」
「ッ!」
「ゲームじゃ無いからこそどんな手を使っても生き延びないといけない。だから……
怖いなら逃げて。私が時間を稼ぐわ」
「な!」
「大丈夫。『ガーディアン』は元々モンスターと敵対している。だから居場所を突き止めてやって来る筈。私達が居る事に気付いているかどうかは知らないけど」
それは詰まり援軍が来たところで味方とは限らないという事だ。逆に逃走中の俺達が自ら居場所を教えている様な物だ。
「ふー、はー。ふー、はー」
落ち着け。深呼吸だ。
選択肢は2つ。
1つは茜の言う通り逃げる。だけど、それは詰まり茜を見捨てる事になる。いや2人で逃げれば良い。成功率は下がるが茜を見捨てる事は出来ない。
もう1つは『ペガサスキング』を倒す。それには≪竜化:100%≫を使わなければならない。これまで一週間色々なスキルを使ってきたがゲーム通り使えてる。だからこのスキルも普通に使える筈だ。だけどこれまでとスケールが違いすぎて失敗した場合の不安が大きいのだ。
「俺は……」
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