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2章3部フィナールの街編

67話 宴と初夜

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結婚式場となる学校の校庭に作られた祭壇に到着したタケル達は簡単に打ち合わせをし、式が開催された。タケルが祭壇に現れると大きな拍手が沸き上がり、そしてアルミスが現れると皆その美しさに見とれてしまった。伯爵が式の司会進行を勤めその力の入れようを認識し、剣を女神像に捧げるという儀式を行った後にタケルとアルミスが口付けを交わすと女神像に捧げた剣が光り輝き、女神フレイアが姿を現して二人を祝福した。その後タケルとアルミスは馬車に乗り街をパレードして回り、パレード中に宴の会場へと模様替えされた学校の校庭へ戻って来ていた。

「ふう、凄い人だったね。」

「そうですね、みんながタケル様と私の結婚を祝ってくれてると思ったら嬉しくなってしまいました。」

アルミスはそう言うと嬉しそうに微笑んでタケルの腕にしがみつき肩に頭を乗せて来た。

「さ、これからが大変だよ。2日間も通しで宴会が行われるんだ。頑張ろうね。」

「はい。タケル様と一緒なら大丈夫です。」

「アルミス・・・」

タケルはそう言うアルミスの顎を持ち上げキスをした。

「おいおい、まだ早いんじゃないのか?どうせ何回もキスを披露するようになるだから今は我慢しておけよ。」

アルセリオが笑いながらそう言って二人の肩に手をポンと置いた。

「えっ、ああ。そ、そうだね。アルミスが可愛くてつい・・・」

「か~!ノロケちゃって。夫婦になった途端にそれかよ。仲が良いのは結構だけど、皆待ってるぜ。」

アルセリオはそう言うこと、二人の背中を押して祭壇へと続く階段へ二人を誘導して行った。

「俺は祭壇下に居るからさ、何か有ったらすぐに声を掛けてくれな。じゃあ行ってらっしゃい。」

アルセリオはそう言って二人の背中をポンと叩くと祭壇の向こう側へ小走りで走って行った。

「じゃあ、行こうか。」

「はい、タケル様。」 

その時、丁度演奏が始まり音楽が流れ始め、二人は演奏に合わせてゆっくりと階段を登って行った。

 その後フィナール伯爵が簡単に挨拶をしてタケルとアルミスの結婚を祝う宴が開催された。式の間ずっと楽団による演奏が交代で行われ、時折大道芸や踊り子による躍りが披露され、非常に賑やかなものであった。

「とても楽しい宴ですね。」

タケルとアルミスの元へ、1人の女性がお祝いの言葉を掛けにやって来た。そしてタケルとアルミスはその女性の事を見て驚いた。

「め、女神様!えっ、えっ?」

「・・・・」

タケルは思わずそう言って立ち上がり、アルミスは料理を口に頬張ったまま呆然と女神を見つめていた。

「あれ?誰も気付いてない・・・?」

「うふふ。他の人達には今は只の街娘にしか見えてないですよ。」

どうやら女神はタケルとアルミスだけには判るようにし、正体を隠して宴に参加しているようであった。

「そ、そうなんですか。でもどうして・・・」

「それは勿論タケルさん達を祝福しに来たんですよ。」

そう言って笑う女神の手には、料理が山盛りに盛られた皿とこの日の為にタケルが作ったスパークリングワインが持たれていた。

(料理を食べたかったのかな?そう言えば女神様には振る舞った事無かったな。)

「うふふ。そうですよ、テルサスやメディオクルスからプリンの話を聞いて私も食べに来たんです。タケルさんは私にはちっとも会いに来てくれませんからね。」

女神はにそう言ってにこやかに微笑んでいたが、タケルはその微笑みの奥にただならぬ物を感じていた。

「あ、す、すいません。でも、どうやって会いに行けば良いのか知らなくて・・・」

タケルは慌てて女神に謝罪をして、会いに行けなかった理由を説明した。

「・・・そうでしたね、話すのを忘れていました。教会でお祈りをすればいつでも会いに来られますよ、教会ならどこの街でも有りますからね。小さな村で教会が無ければ女神像でも構いませんよ。」

「えっ、それで良かったんですか?」

女神に会う事がそんなに簡単に出来るとは思わず、タケルは思わず聞き返した。

「うふふ。そうですよ。」

「あの、女神像って何でも良いんですかね?」

「ええ、何でも構いませんよ。そうだ、これを渡しておきましょう。」

女神はそう言うと小さな宝石の付いたネックレスをタケルに手渡した。

「これは・・・」

タケルネックレスを手に取り宝石を触りながら女神に尋ねた。ネックレスに付いた宝石は表面が綺麗に磨かれており、中には何か紋章のような物が浮かび上がってゆっくりと回っていた。

「それを握り締めて念じればいつでも私と会話が出来ます。直接会うには女神像か教会でお祈りをして下さいね。」

「判りました。」

タケルはネックレスを首に掛けそう返事をして女神を見ると、スパークリングワインを一気に飲み干していた。

「!」

「あら、うふふ。このお酒は美味しいわね。みんなも喜んでいますよ。」

女神はそう言ってある方向に視線を移した。そこには見た事ある人物が数人と、知らない人物が楽しそうに料理を摘まみ酒を飲んでいた。

「あっ!あれは・・・」

タケルがその人物に気付くと一団もタケルの方を見て手を振っていた。

「テルサス様に精霊王様まで・・・他の人はもしかして・・・」

「うふふ、そうですよ。メディオクルスとテルサスは既に会ってましたよね、他は火の大精霊に土の大精霊、風の大精霊、木の大精霊、闇の大精霊、光の大精霊です。他にも大精霊は居るんですが、全員で来たら凄い人数になってしまいますからね。」

「大精霊があんなに・・・バレたら大騒ぎになるな・・・」

タケルは大精霊達が居る方を見て思わずそう呟いた。

「大丈夫ですよ、彼らも街の住民にしか見えてませんからね。」

「そうですか、それなら良いんですが・・・」

「うふふ。そろそろ皆と合流しますね、他にもタケルさんとお話したい人が待ってるようですしね。あ、アルミスさん。」

女神はそう言って立ち去り際にアルミスの手に触れて数秒アルミスの事を見ていた。そして女神が手を放すとアルミスは顔を赤くして俯いてしまった。

「うふふ。それではお二人ともお幸せに。」

女神はそう言うと大精霊達の元へ行き、皆でタケルに向かい手を振ったかと思うとフッとその場から姿を消してしまった。そしてよく見ると先程までテーブルに大量に有った料理とお酒も一緒に消えていた。

(みんなして飯を食いに来たのか・・・まあ構わないけど・・・)

「ところでアルミス、顔を赤くしてどうしたの?」

「あ、いえ。何でも無いです。」

アルミスはそう言うと先程よりも顔を赤くして下を向いて何故か照れていた。

(いったい女神様はアルミスに何を・・・)

その時、少し足元がフラついてる者が近付いてきた。

「よう、タケル。飲んでるか~。」

アルセリオが酒ビンを持ちながら顔を赤くしてタケルの元にやって来た。

「おいおいアル、何か有ったらすぐに声を掛けてくれって良いながら随分と酔ってるじゃないか。」

「ん?少しだけだよ、すこ~しだけ。これくらいで酔ったりなんかしないって。」

そう言ったアルセリオの顔は赤く、目も少しトロンとしており、喋り方も酔っ払いの喋り方であった。

(いや、十分酔ってるよ・・・)

「タケル~、改めておめでとう!お前は本当に凄い奴だ。」

アルセリオはそう言いながらタケルの座っている椅子に腰を掛けて来て、最終的にタケルと半分ずつという形で座ってしまった。

「アル~、狭いよ。」

「ん?良いだろ、今日はめでたい日なんだ。」

「いやそうだけどさ、何で一緒の椅子に座るかな、意味が判らないよ。」

タケルは笑いながらそう言ってアルセリオを椅子からどかそうとしたが、アルセリオはどこうとせずに椅子に座り続けたら。

(まあ良いか・・・)

タケルは仕方無くそのままで過ごす事にした。暫くそのままで食事をしたり、お祝いの挨拶をしに来た人の対応をしていたが、アルセリオはその間ずっと一緒の椅子に座ったらままお酒を飲んでいた。

「タケル~、おめでとう~、俺は嬉しいよ。」

アルセリオはついには酒ビンを片手にラッパ飲みし、まるで泣いているかのようにタケルに話し掛けて来た。

「アル、飲み過ぎだよ・・・」

「大丈夫だって・・・タケル、俺はお前を親友だと思ってるんだよ~。」

(アルは泣き上戸なのか・・・)

「うん、俺もそう思ってるよ。」

タケルがそう言うと、アルセリオはまた酒をラッパ飲みしてタケルを下から覗き込むように見て話を続けて来た。

「でもな、タケル。俺はタケルの事を親友だと思ってるけど、お前は俺の恩人であり、師匠であり、憧れであり、ライバルなんだよ~。」

アルセリオは今迄密かに心に抱いていた思いを酒に酔った勢いで泣きながら明かしてきた。

「そんなタケルが結婚するんだ。嬉しくてよ~。」

「そっか、ありがとうな。」

タケルは酔った勢いとはいえ、アルセリオの本心を聞いて少し嬉しかった。前世でも親友は居たが、アルセリオ程濃密な付き合いをした者は居なかった、それ故タケルもアルセリオの事を一番の親友だと思っており、そのアルセリオが自分の事をそんな風に思っていたと初めて知ったからである。

「タケル、それとありがとうな、タケルが居なかったら俺はここには居なかったんだ、俺だけじゃないベルナルドも母上も父上もミレイアも・・・それにみんな凄く強くなった。全てタケルのお陰だよ、今迄ちゃんとお礼言って無かったけど、タケルには本当に感謝してる。有り難う。そして改めて言おう、おめでとう。」

「アル・・・」

タケルはアルセリオの言葉にグッと来て目に少しだけ涙を浮かべたその時であった。

「うっ!エロエロエロ・・・」

アルセリオがタケルの体に飲んだお酒をリバースしてしまったのである。

(アル・・・ちょっと感動したのに台無しだよ・・・)

タケルは慌てる事無くアルセリオが倒れないように支え、全て吐き終えたのを確認するとクリーンで吐瀉物としゃぶつを綺麗にすると、そのまま眠ってしまったアルセリオを抱えて祭壇の裏へ運んで行った。

「アル、お前って奴はどうして男前になりきれないんだ・・・でもありがとうな、お前は俺の一番の親友だよ。」

タケルはアイテムボックスからベッドを出してアルセリオを寝かせそう言うと、毛布を掛けて戻って行った。その後アルセリオと似たように酔ってタケルに感謝を伝える者が続いたが、伯爵まで酔って絡んで来た時は流石にタケルも困ってバルタサールに無言で助けを求めた。そして一番困ったのが癒しの館 女神の抱擁の女性達の時であった。

「タケルさ~ん。おめでとう~、綺麗な奥さんね~、でも成人したんだし1度で良いから店に遊びに来てよ~。なんなら奥さんも一緒でも良いわよ~。」

マチルダは酔ってタケルの膝の上に座り、首に腕を回してセクシーな声でそう言って何度も頬にキスをしてきたのだ。そしてマチルダだけでなく、女神の抱擁の女性達は代わる代わるタケルの元に来てはタケルの体を触りキスをしてきたのだ。タケルはアルミスが怒って居ないかヒヤヒヤしてながら女性達を何とかあしらい続けたのである。

 そして会場の客を何度か入れ替え、パルブス村の人達もお祝いに来ていたり、タケル達も休憩を取りながら宴は丸2日間続き、最後にサビオとミレイアが魔法で花火を打ち上げ終了となった。

「ふう。疲れたね。」

「そうですね、でもとっても楽しかったです。料理もとても美味しかったですし。」

「そうだね、疲れたけど楽しかったね。みんなの言う通り盛大にして良かったね。」

「はい。」

タケルとアルミスは宴も終わり、誰にも邪魔されないようにセーフゾーンへ来ていた。それもいつものセーフゾーンでは無く、結婚から宴を丸2日したため本当の初夜では無いが初夜を過ごす為に、作り上げた場所であった。

「タケル様、何だか恥ずかしいです。」

アルミスはそう言ってセーフゾーンを見渡していた。

「そう?誰にも邪魔されないように特別に作ったんだ。ここは俺とアルミスしか来られない場所なんだよ。」

タケルはそう言って同じようにセーフゾーンを見渡した。タケル達が居るセーフゾーンは天涯付のとても大きなベッドが置いてあり、その周りは辺り一面が花畑になっていた。そして澄んだ青空が広がっており、まるで花畑の中にベッドが置いてあるかのような感じであった。

「明るいのが恥ずかしいのかな?もし気になるなら色々変えられるよ。」

タケルはそう言うと指をパチンと鳴らした。すると辺りが暗くなり星空に変化し、花畑では蛍のような虫が飛んでおりとても幻想的な雰囲気を醸し出していた。

「あの、そうでは無くて・・・」

「ん?表なのが恥ずかしいのかな?」

タケルはパチンと指を鳴らした。すると今度はとてもお洒落で広い部屋に変化した。

「た、タケル様。」

「ん?」

アルミスは少し潤んだ瞳でタケルを見つめ、顔を赤らめていた。

「あ、あの・・・恥ずかしいのは辺りの景色じゃなくて、その・・・」

「なに?」

「・・・から・・・です。」

「え?ごめん、恥ずかしいかもしれないけどもう一度言ってくれるかい。」

タケルは超聴覚を持っているので小さい声でも聞こえるが、アルミスは恥ずかしいのかちゃんと喋れておらず上手く聞き取れなかった為、タケルは優しくアルミスにもう一度言うように言った。するとアルミスはタケルに抱き付いて来てタケルの耳元で囁くように訳を言ってきた。

「あの・・・恥ずかしいのはこれからタケル様と交わると思ったからです。」

アルミスはそう言うと顔を真っ赤にして抱き付いた腕をギュッと絞めて来た。

「アルミス・・・」

タケルはそう言ったアルミスがとてもいとおしくて堪らなくなり、タケルもアルミスの事をぎっと抱き締めた。

「タケル様・・・」

「もう夫婦なんだ、様付けはやめようよ。」

「はい、た、タケルさん・・・」

「アルミス・・・」

二人は腕をほどいて見つめ合うと熱い口付けをすると、ベッドにゆっくりと倒れ込んだ。



「アルミス・・・やっぱり成人するまでアルミスとしないで正解だったよ。」

「どうしてですか?」

タケルとアルミスは1日中何度も愛し合い、そして今はベッドの上でタケルはアルミスを腕枕をしながら抱き寄せて話をしていた。

「あの時、お風呂で言った事覚えてる?」

「プロポーズしてくれた時の事ですか?」

「うん。もしあの時アルミスとしてたらやっぱりアルミスとの関係に溺れてたよ。間違いない。」

「なんでそう思うんですか?」

「だってあれだけ愛し合ったのにまだまだ愛し合いたいと思う位だもん。きっとあの時してたら今回みたいな結婚式は挙げられなかっただろうね。」

「なんでですか?」

「多分アルミスとの関係に溺れて他の人の事なんか考えられなくなってたと思うよ。それだけアルミスが魅力的だって事だね。」

「もう、タケルさんったら。」

タケルとアルミスは見つめ合いキスを交わすと、ベッドから出てタケルが魔法で作ったお風呂に一緒に入るとフィナールの街の屋敷へと戻って行った。


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何だか結婚式が長くなってしまいました。物語には別に必要無い気もしますが、書きたかったもので・・・
次回で多分フィナールの街編は終了です。

それでは今後も宜しくお願い致します。



















 
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