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2章3部フィナールの街編

62話 娼婦卒業

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マチルダと話をするうちに元締めというのは存在せず、マチルダが纏め役である事が判った。その後タケルはある考えが有り建物の所有者が誰なのかを尋ねるが、マチルダも判らないと言うので街を治めるフィナール伯爵に聞きに行く事にした。フィナール伯爵に聞いても所有者は居ないという事しか判らなかった。フィナール伯爵に今度は何をするのかと尋ねられ、タケルが組合を作り女性達を守るという話をすると、組合に所有者を移す事を約束してくれた。マチルダの元に戻ったタケルは組合を作る為に行動を始め、最初にマチルダが可愛がっているミランダに話をすると、ミランダはマチルダの言う事だから従うがタケルの言う新しい技を実際に自分に試してみろとタケルを挑発してきていた。

「どうなの?私を納得させられるのかしら?ぼうや。」

ミランダは顎から喉元まで下げた指を再び顎まで戻しながらそうタケルに尋ね、顎を摘まむように持つとキスしてしまいそうな程顔を近付けて妖艶に笑っていた。

(近いな・・・・)

「良いですよ。但し、実際にお相手するのは俺じゃないです。」

タケルはそう言うと、摘まむように顎を持った指をそっと外してミランダの後ろを指差した。

「マチルダねえでもなくぼうやでもなく他に誰が居るって・・・・」

そう言いながらミランダは振り返ると驚いて固まっていた。そこにはマチルダそっくりのゴーレムが、水面から顔を出すかのように浮き出て来ていた。

「これは様々な技を記憶させてあるゴーレムです。お相手はこのゴーレムがしますので。」

タケルはニッコリと笑ってそう言うと軽く会釈をして部屋を出て行った。

「えっ、ちょっ。ぼうや・・・あんっ」

ミランダが部屋を出ていくタケルを呼び止めようとすると、ゴーレムがミランダの首筋を撫でて動きを止めた。

「うふ♪じゃあミランダ、すんごいわよ♪たっぷり楽しんでね。」

「えっ、マチルダ姉、楽しんでって・・・まっあんっ。」

マチルダはミランダにそう言うと、イタズラっぽい顔をしてウィンクをして部屋を出て行った。

「も~!何なのよ!二人とも・・・んっ!あああ・・・」

ミランダは戸惑いながらもゴーレムの技に抗う事が出来ず、快楽の沼へと沈んでいった。

(ちょっぴり羨ましいかも・・・私もまた出来ないかしら・・・)

マチルダは少しミランダの事を羨ましがっていたが、気持ちを切り替えてタケルに話し掛けた。

「暫く時間が掛かるし、終わるまでどうするのかしら?」 

「そうですね。ゴーレムは何体でも作れるのでこのまま違う女性にも話をしに行きましょう。」

「何体も・・・ぼうやったら実は凄い魔法使いなのね。」

「人より少しだけ得意なだけですよ。」

タケルはいつものように答えると、ニッコリと笑っていた。

「そんな素敵な笑顔でサラッと言っても誤魔化されないわよ。でもそんなのどうでも良いわね、次のを探して来るわ。あっ、もしかして複数でも構わないのかしら?」

「ええ、大丈夫ですよ。それじゃあお願いします。俺はまた準備をしておきますので。」

「じゃあ行って来るわね。」

ミランダはそう言うとタケルにウィンクをして通りに出て行った。

「さて、忙しくなりそうだな。」

タケルはそう言うと幾つかの用具を新たに魔法で揃え、ゴーレムも何体か作っておく事にした。  
 その後マチルダが連れて来た女性達にも話をし、その後ミランダ同様ゴーレムで技を体験してもらった。結局その日は5人程の女性が話を聞き技を体験して貰った。ゴーレムにより技を経験した女性達は、全員マチルダの時のように復帰まで時間が掛かったが、復帰後は協力的になっていた。そして5人全員が試しに客に試した所、様々な効果が出る事が判った。ミランダはマチルダの時のように男性が体力と気力が漲り元気になり、他の4名のうち2名は凄く癒され安らぎを得られたようだ。残りの2名は安らぎと活力両方であったが効果は半分程のようであった。それでも全ての男性が今迄に無い程の喜びようで帰って行ったのである。

「成る程。これは思わぬ収穫ですね、それぞれ違った効果が有るっていうのは売りになりますね。」

女性達の話を聞いたタケルは頷きながらそう言うと、マチルダの顔を見ると暫くそのまま見つめていた。

「えっ、ぼうやったら、なによ。そんなに見つめられたら照れるじゃない。」

マチルダはタケルに見つめられ、両手を頬に当てて顔を赤らめながらそう言って少女のように照れていた。

「!」

「!」

ミランダや他の女性達がマチルダのそんな様子を見て驚き、その後はニヤニヤとマチルダの事を見ていた。

「ちょっと、何よ!みんなしてニヤニヤして。」

マチルダが女性達の視線に気付き、慌ててそう言って誤魔化していた。

「マチルダ姉のあんな顔初めて見たよ~。」

「ね~、本当。私も初めて見た。」

「マチルダ姉もしかして、ぼうやの事?」

女性達はマチルダの普段見せない表情を見た事で揃ってマチルダを冷やかしていた。

「もう!そんなんじゃ無いわよ!ぼうやはまだ未成年だし!それに婚約者も居るのよ!」

「え~、私達にはそんなの関係無いじゃない、奥さんが居たって来る人も沢山居るし。」

ミランダがマチルダの反論に対し、頭の腕で腕を組みながら横を向いて口を尖らせながらそう言っていた。

「そうね、所詮私達は娼婦なんですものね。お金さえ貰えれば家庭が有ろうが彼女が居ようが関係無いものね。」

「そうね、でも今回ぼうやがやろうとしている事が成功すれば安全に仕事が出来るようになるからね。」

「でも娼婦である事には変わらないけどね。」

ミランダの話を切っ掛けに明るかった場がいつの間にか少し暗く自分達を卑下するような会話に変わっていった。いくらこの世界で売春が違法では無いと言っても、好き好んでなる者はまずおらず、やはり世間の目は厳しく自然と女性達も負い目のような物を感じていた。

「もしかすると娼婦じゃ無くなるかもしれませんよ。」

全員が暗くなりかけた時にタケルが突然そう言って立ち上がった。

「えっ?どういう事?」

タケルの言ってる事が理解出来ずにキョトンとするなか、マチルダがタケルにそう問い掛けた。

「今回皆さんには試しにお客を取って貰い技を試して貰いましたが、その話を聞いて思ったんですよ。」

「え?何でかしら?新しい技を使ったけど、する事はしたわよ?」

「では、男性が何回も果てたうちの何回が実際に性交渉を行って果てた回数ですか?」

タケルがそう言うと、マチルダを始め全員がハッとしていた。

「私は1回だったわ。」

「私も!」

「私もよ!」

女性達は全員が同じ事を言っていた。そして全員で顔を見合せて驚いていた。

「もしかして、技の一貫として実際に性交渉をしただけで、男性からしたいと言われていないのでは?」

タケルがそう言うと、またしても女性達はハッとして顔を見合せていた。

「そう!その通り。」

女性が声を揃えてそう答えた。

「成る程。マチルダさん、お願いが有るんですが。」

タケルがそう言うと、マチルダは手をタケルの顔の前に突き出してタケルの話を止めた。

「良いわよ、試して来るわ。むしろ私が試してみたいの。」

「私も!」

「私も試してみる!」

マチルダがそう言うとミランダも自分も試してみたいと言って立ち上がり、続いて他の女性全員も試したいと言って立ち上がった。

「そう言う事だから、ぼうやは待ってて頂戴。」

そう言うと女性達は一斉に部屋を出て行った。その顔はどこか希望に満ちており、自らを卑下するような部分は感じられなかった。

「待っててって言ったて、電話も無いのにそんなにすぐに客が捕まるのかな?」

タケルがそう言って何気なく窓の外を見ると、建物から出てきたマチルダ達が見えた。マチルダ達は男性達に声を掛けると直ぐに全員が男性と腕を組み、男性を引っ張るように建物の中に入って行った。

「早っ!いったいどんな風に誘ったんだ?」

あまりの早さにタケルが驚いていると、マチルダ達が男性を連れて部屋に入って行く音が次々に聞こえて来た。普通はdoaを静かに閉めるのだが、全員が勢いよくドアを閉めて大きな音を立てていた。

「なんだなんだ?何だか凄い事になってそうだな。」

暫くタケルがお茶を飲んで待っていると、部屋の外から声が聞こえて来た。

「おお、何だか元気が出てきた!明日も仕事頑張るぞ!」

「いや~、癒されたよ。今度はちゃんと料金払って来るよ。」

男性達が部屋を出て次々に大きな声で話していたのだ、通常は小声で女性と話をして出ていくか黙って出ていくかなのだが、全員が大きな声で女性達と話をして元気に帰って行った。

「・・・」

タケルが部屋の外から聞こえる声に唖然としてると、女性達が鼻息を荒くして次々に部屋に入って来た。

「凄いわよ!何回も果てたのに1度も性交渉はしないで済んだのよ!」

「私も!迫られもしなかったわ!」

「本当!信じられないわね。」

女性達はお互いに結果を報告し合うと、まるで盛り上がった女子会のようにじゃれあいながら喜んでいた。

「どうやら予想した通りだったみたいですね。これで皆さんは娼婦を卒業ですよ。」

タケルがそう言うと、じゃれあっていた女性達はピタッと動きを止めると、顔を見合せて同時に口を開いた。

「次の連れてくる!」

女性達はそう言うと、嬉しそうに笑みを浮かべながら小走りで部屋の外へ出て行った。
 その後組合設立、女性達の安全の確保、収入の確保の他に娼婦からの卒業という目標が加わり、10日程掛かると思われた組合設立加入の女性達への説明も3日程で全て終了した。マチルダを始め、最初の女性達が次々に女性を連れて来て、その女性達が更に女性を連れて来るといった具合になり、最終日は娼婦の女性達の間で噂になり、通りに行列が出来てしまった程であった。

「さて、お集まりの皆さん。今日集まって貰ったのは、事前にお話した組合と名義に関してですが、この付近の女性全員が加入表明して頂いたお陰で、無事組合設立となりました。それで組合の名前を付けたいと思うのですが、皆さんから募集したいと思います。何か案が有る方は居ませんか?」

タケルは女性達への説明も終わり、全員を集めて今後の事の話をしていた。まず組合の名前を募集したが、タケルからそう言われた女性達は皆首を傾げていた。

「あら、困ったわね。組合を作ることは考えていたけど名前の事まで考えていなかったわ。」

タケルの言葉にマチルダが頬に手を当ててそう言うと、他の女性達もウンウンと頷いていた。

「ねえ、ぼうやが何か考えてよ。私達はそれに従うからさ。」

ミランダが立ち上がり、タケルにウィンクをしながらそう言ってきた。そしてまたも女性達がウンウンと頷いてタケルを期待の目で見ていた。

「構わないですけど、皆さんの事なんですからね。さて、どうするか・・・娼婦では無くしたいし・・・男性を癒す・・・セラピー・・・セラピスト、いや療法士か?」

「セラピ?療法士?」

タケルの呟きを聞いてマチルダが聞き慣れない言葉に首を傾げていた。

「え?ああ。セラピストっていうのは様々な悩みを解決する人の事なんですが、それを応用して様々な意味で使われる職業の名前ですね。アロマという香りを使った癒しを行う人はアロマセラピストですし、体の悩みを解決する人はフィジカルセラピストって言うんですよ。」

「じゃあ私達はローションセラピスト?」

タケルの説明を聞いてミランダが首を傾げながらそう言ってきた。

「何だか語呂が悪いわね。」

マチルダがそう言うと、女性達がウンウンと頷いていた。

「ではセラピスト。意味は療法士って事でどうですか?」

タケルがそう言うと、女性達が目を輝かせた。娼婦から療法士という何だか凄そうな職業になる為、これで胸を張って職業を言えると考えたのである。

「それ良いわね。何だか治癒士みたいで偉くなった気がするわ。」

マチルダがそう言うと、女性達が目を輝かせながらウンウンと頷いていた。

「では組合の名前はセラピスト(療法士)組合で良いですね。」

「賛成よ。」

「うん、賛成!」

「賛成!」

女性達が組合の名前に賛同し、一世に手を挙げて声を上げた。

「分かりました。ではすぐに伯爵の元へ行って名義変更の手続きをして来ますね。あ、マチルダさん。初代組合長はマチルダさんがなって下さい。それでマチルダさんも一緒に伯爵の元へ行きましょう。」

マチルダは初代組合長になれと言われて戸惑っていたが、女性達もマチルダが適任だと口々に賛同し、満場一致でマチルダが初代組合長に就任する事となった。

「みんな・・・・分かったわ!みんなの為に頑張るわ。」

マチルダがそう決意を表すと、会場から拍手が涌き上がった。

「じゃあ皆さん。今からマチルダさんと伯爵の元へ行ってきますので、一旦解散とします。」

タケルは拍手が涌き上がるなか声を上げて女性達にそう告げるとマチルダと共に部屋を出て行った。

「ねえ、伯爵の所に行くのにこんな格好で大丈夫かしら・・・」

部屋を出た所でマチルダが手を広げながらそうタケルに聞いてきた。マチルダの服装はそんなに変では無いが、少し露出が多目の仕事用の服であった。

「別に大丈夫だと思いますが、気になるならこれを来て下さい。」

タケルはそう言うとアイテムボックスからルシアナ達に渡したのと同じような服をマチルダに手渡した。

「えっ、こんなに上等な服汚したりしたら・・・」

「大丈夫ですよ、差し上げますので気にせずに着て下さい。」

「え?でも・・・」

「良いんですよ。組合長就任のお祝いって事で受け取って下さい。」

「分かったわ。有り難く戴く事にするわ。」

その後タケルがあげた服に着替えたマチルダと共に転移で伯爵の元へ向かった。

「あらすごい、もう着いたのね。魔法って便利ね。」

転移を初めて経験したマチルダであったが、魔法とは縁が薄い為にその凄さが分からず、ただ魔法って便利だと言うだけであった。
 いつものようにバルタサールに案内して貰い、フィナール伯爵と挨拶を交わすと、タケルはマチルダをフィナール伯爵に紹介した。

「伯爵。今日は例の組合の件で来ました。こちらが組合長に就任したマチルダさんです。」

「おお、そうか。このような美しい女性が組合長なのか。マチルダ殿と言ったか、コレがあの場所の権利書だ、ここに組合の名前を書けば正式にあの場所は組合の物だ。それと、これにサインをしてくれるかな。」

フィナール伯爵は権利書の他に、ある書類を机の上に置いた。タケルはその書類を見て驚いていた。

「伯爵、これって・・・流石ですね、女性達もも喜びますよ。ねえ、マチルダさん。」

タケルがそう言ってマチルダを見ると、緊張と驚きでフリーズしてしまっていた。

「あれ、マチルダさん?」

「はっはっはっ。まあ仕方が無いね、私もドンドン話を進めちゃったからね。復帰するまでお茶でも飲んで待ってようか。」

フィナール伯爵はマチルダがフリーズしていると分かると、砕けた口調になりお茶を飲み始めた。

(魔法で復帰もさせられるけど・・・まあ良いか。)

「そうですね。あ、そうだ。実はこのセラピスト組合って名前ですが意味が有りまして、組合が出来た事によって今後彼女達は娼婦じゃ無くなるんですよ。」

「え?そうなのかい?タケル君、それだと街の性犯罪が・・・」

「安心してください。ちょっと順を追って説明しますね。」

その後タケルはマチルダが復帰するまでの間、セラピストという名称にするまでの経緯を話した。フィナール伯爵は性交渉をしなくても男性が何度も果て、且つ元気になると聞いて興味津々であったがどうにか平静を保っていた。

    
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