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2章3部フィナールの街編

49話 シーバム国王

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封印石に触り、またも過去の記憶を見ることになったタケル。記憶を見ていくと屋敷に有った封印石は、アルセリオの父シーバム国王が封印されている事が判った。そして家臣のヒルベルトが魔物に襲われた宮殿から持ち出し、精霊のピアンタと出会い、自らの死後石を託した。およそ千年後にサカリアスの生まれ変わりがピアンタの元に訪れてピアンタと共に石を屋敷に持ち帰った事が判った。過去の記憶が終わり、タケルはすぐさまルシアナ達を連れてきて、目の前に有る封印石に封印されているのはシーバム国王だと告げた。しかしルシアナ達はすぐに意味を理解する事が出来なかった。

「タケル、父上の遺体が封印されているか?」

最初に口を開いたのはアルセリオであった。しかしサカリアスに封印される時に王はその場に居なかった。そしてその後すぐに死亡している。アルセリオ達を封印後に王を封印する事は出来ない筈だである。なのでアルセリオは王が生きて封印されているとは考えられなかったのである。

「ちょっと、タケル。もう少し詳しく話してくれないと判らないわよ。」

ミレイアがタケルにそう言うと、ルシアナも真意を確かめたいという感じでタケルを見つめていた。

「アル、ミレイア、ルシアナさん。俺が宮殿の謁見の間で見た、過去の記憶の事は話しましたよね、実はこの封印石を触った時にまた過去の記憶が見えたんです。今から詳細を話します。」

タケルはその場で見てきた事を詳細に説明した。王が最後まで戦った事や、どうして封印され、それがどうしてここに有るのか等を漏らさず伝えた。

「まさか、父上が生きてるなんて、ヒルベルト、サカリアス・・・有り難う。」

アルセリオは涙を流しその場で崩れ落ちるように膝を付いて泣き始めた。そしてミレイアもアルセリオの背に抱き付いて泣き、ルシアナは二人を抱くようにし泣いていた。 

「陛下が、陛下が・・・」

ベルナルドは立ったまま封印石を見つめ、そう言って涙を流していた。
 タケルとサビオとアルミスは涙を流しているアルセリオ達を静かに見守っていた。そして少し落ち着いて来た頃にタケルが話し掛けた。

「アル、王様は生きて封印されているけど、直前に重症を負ってる。ここで封印を解除するのは危険だから寝室へ持っていこう。」

「す、すぐに出来るのか?」

「うん、この屋敷は幸いな事に、状態保存の魔法が掛けられていて、寝具とかがすぐに使える状態だからね。セーフティゾーンでも良いんだけど、ここの方が混乱が少ないだろうからね。」

「タケル、すぐに出来るなら早くお願い。」

タケルがそう説明をすると、ミレイアが懇願するかのかのようにタケルにお願いしてきた。

「うん。じゃあ一番広い寝室に行こう。」

タケルは封印石をそっと持ち上げるとアイテムボックスに仕舞い、先程調査の際に見た広い寝室へ全員を連れて転移で移動した。

「じゃあ、始めるよ。」

タケルは寝室のベッドの上に封印石をそっと置いた。

『サポート、このまま復活させても大丈夫か?』

タケルは念の為【サポート】の魔法にそのまま封印を解除しても大丈夫か尋ねた。

『大丈夫だと思われますが、マスターの見た過去の記憶によると瀕死の重症ですので、解除とヒールを同時に使用して下さい』

『そうか、ヒールだけで大丈夫そうか?』

『大丈夫とは思いますが、対象の状態は私が注視しておきますので、マスターは魔法の行使に集中して下さい。』

『判った。』

(何だかしゃべり方が人間っぽくなったな・・・)

タケルは【サポート】の話し方が変わったと少し思ったが、今は封印の解除に専念することにした。
 タケルはベッドの上の封印石を見つめ集中すると、まず封印石の封印を解除してすぐにヒールを掛けた。すると、封印石が光り輝き、剣を握ったままの王の姿が現れた。王の体には魔物に付けられた大きな傷があったが、徐々に治って行くのが確認出来た。

「おお、こうやって出て来るのか。なるほどな。」

突然聞いた事が無い声が発せられて、アルセリオ達は驚いた。封印石に集中していて気付かなかったが、そこには髪の色が木の若葉のような緑で、緩やかなウェーブの掛かった感じで肩まで伸びていた。そして顔はどことなくクシーナに似ており美しい顔立ちで、目の色は鮮やかなエメラルドグリーンであった。服装は植物のような物が体から生えており、服を着ているように見えた。そして性別は中性的でどちらか判らなかったが、一目で精霊と判る者が立っており、タケルが封印の解除をするのを見ていた。

「う、うう・・・」

「ち、父上!」

「アナタ!」

「お父様!」

「陛下!」

アルセリオ達は驚いていたが、王が封印から解かれとかれ、うめき声を上げたので、精霊を横目にベッドへ駆け寄り王に声を掛けた。

「へえ、石から人間が出て来るなんて面白いな。」

「君はピアンタかい?」

王の封印の解除が終わり、タケルが振り返り突然現れたピアンタに声を掛けた。

「そうだよ、君がサカリアスの言ってた解除をしてくれる者か。」

「うん、タケルって言うんだ。ちょっと話をしたいんだけど、今は王様の様子を診なくちゃいけないから待っててくれるかい?」

タケルはピアンタに沢山聞きたい事が有ったのたが、それよりも今は王様の事が気になったので、ピアンタに待っててくれるように言った。

「ああ良いよ。終わったらオイラの部屋へ来てくれ。」

「ピアンタの部屋って?」

「植物が沢山生えてた部屋がオイラの部屋だよ。」

「そうなんだ、判った。」

タケルがそう返事をすると、ピアンタはスゥッと姿を消して居なくなってしまった。

(転移魔法とは少し違うな。っと王様!)

タケルはまた振り返り、王が眠るうに横たわって居るベッドへ歩み寄った。

『サポート、どんな感じだ?』

『はい、マスター。現在対象は封印前に受けた魔物の攻撃により、単に失神しているだけです。傷はマスターの魔法で回復しており問題有りません。』

  『そうか、良かった。』

タケルは【サポート】に容態を聞いて安心すると、アルセリオ達に話し掛けた。

「アル、王様は今魔物に攻撃されたばかりの状態で気絶してるんだ。傷は治したから問題無いけど、どうする?魔法で目覚めさせる事も出来るけど。」

アルセリオはタケルの話を聞いて迷っていた。すぐにでも父と話がしたい、自分達が無事なのを報告したいと思った。しかし魔法で強制的に起こすよりも、寝かせてあげたいとも思っていたからである。そしてアルセリオがミレイアとルシアナに視線を送ると、ルシアナとミレイアはゆっくりと首を横に振った。ルシアナとミレイアもゆっくりと寝かせてあげたいと思っていたようである。

「いや、大事だ。ゆっくり寝かせてあげたい。」

「そっか。じゃあ俺はさっきの精霊と話をしてくるから、王様が気が付いたら教えて。」

タケルはそう言うとサビオとアルミスに目配せをし、一緒に寝室を出てアルセリオ達だけにしてあげる事にした。そして精霊のピアンタと話をするために植物が生えている部屋へと向かった。

「ピアンタ、良いかい?」

タケルは部屋に入ると誰も居ない部屋に向かって声を掛けた、すると目の前にスゥッとピアンタが姿を表した。

「もう終わったかい?」

「一応ね。後は家族だけにしてあげたくてね、ベルナルドさんも居るけど。」

「そうか、ところで話ってなんだ?」

ピアンタはそう言うと大きな葉の上に腰かけた。アルミスが真似をして葉を確かめたが、とても座れそうに無く残念そうにしていた。どうやら精霊であるピアンタだから出来るようである。

「実は過去の記憶を見てね。ヒルベルトの事やサカリアスの事を知ってるんだ。」

「そうなのか!そうかお前、精霊王と大精霊だけじゃなく、女神の加護も持ってるんだな。」

ピアンタはサカリアスやヒルベルトの名前が出て来て驚いていたが、タケルが加護を持っていると判ると1人で納得していた。

「どうしてそう思うんだ?」

「過去の記憶を見るなんて、女神の加護が有る奴くらいしか出来ないからな。」

「そうか、ところでサカリアスの事なんだけど、どうやら俺が封印を解除することを知っていたみたいなんだけど、何か聞いてるかい?」

タケルは記憶の中で目が合った事や、会話の節々でサカリアスが自分の存在を判っていたような感じがしたので、何か知ってるかも知れないとピアンタに尋ねてみた。

「ああ、聞いてるよ。サカリアスは何度も転生している魔法使いなんだ。ちょっと前に男爵としても死んでしまったけど、もう転生してるんじゃないかな?」

「それってもしかして、毎回前世の記憶を引き継いでいるの?」

タケルは同じ転生者として、ピアンタが話すサカリアスの話には興味が有った。ただ転生してるの珍しくは無いが、サカリアスは前世の記憶が有るのは間違い無かったからだ。

「ああ、そんな事言ってたな。」

「そうなのか、凄いな。一体何回分の転生の記憶を持ってたんだろ。」

「詳しくは聞いてないけど、色々話を聞いてた時に5回目の時って話をしてたから、7回分は有るんじゃないか?」

「そうか、なるほど。そう言えばさっき、もう転生してるかもって言ってたけど、やっぱり記憶は有るのかな?それに記憶が有ったらここに戻ってくるかな?」

「ああ戻って来るぞ。その為に結界を施したんだからな。」

「そっか、じゃあこの家の事も考えないとな。」

タケルは戻って来るかも知れないサカリアスの為に家をそのまま残残しておこうと考えていた。

「その必要は無いぞ。サカリアスの望みは王の復活だからな。そに為にここを残して結界を施したんだ。戻って来て王が復活してれば喜んで家は手放すんじゃないか?」

「そうか、なるほど。」

その時、アルセリオが念話で話し掛けてきた。

『タケル、父上が目を覚ました。』

『判った。すぐに行くよ。』

「ピアンタ、王様が目を覚ましたみたい。ちょっと行かなくちゃいけないから、またあとでね。」

タケルがそう言うと、ピアンタは座った葉から降りて嬉しそうに話し始めた。

「オイラも行くぞ!ヒルベルトとサカリアスがあんなに慕ってた奴がどんな奴なのか見てみたい!」

「良いけど、王様は魔物に襲われたばかりで封印されたから、まだ混乱してると思うから、余計な事は言わないで静かにしててね。」

「判ったよ、早く行こう!」

ピアンタはまるで子供のように手をブンブンと振り、タケルに早く行こうと急かした。

「じゃあ一緒に行こう、近くに寄って。」

(そう言えば肝心な事を聞けてなかったな。)

タケルは何故サカリアスが自分の事を知っていたのかという疑問の答えを聞く事が出来ていない事に気付いたが、王の元へ行くことを優先させる事にした。そしてタケルはみんなを近くに寄せると、転移で王の居る寝室に移動した。

「おお、タケル、見てくれ。」

転移で現れたタケルにアルセリオが気付き、タケルから良く見えるようにそう言って体をズラした。

「う、こ、ここは・・・」

タケルが王に視線を移すと、王は目覚めたばかりなのか、自分が今居る場所が何処だか判らないからか、そう呟き視線だけを動かしていた。

「父上!判りますか!アルセリオです!」

「お父様、ミレイアよ!」

「アナタ!」

アルセリオ達はベッドの脇に移動して声を掛けていた。

「アルセリオ・・・ミレイア・・・ルシアナ・・・ハッ!お前達どうして!」

王はベッドの上で起き上がると、国外へ逃がした筈のアルセリオ達が目の前に居る事に驚き、そう言ってベッドの上で慌てて上半身を起こした。

「父上、落ち着いて下さい。」

「アルセリオ、どういう事なんだ。それにここは・・・あの者達は一体・・・魔物は!魔物どもはどうしたんだ!」

王は意識がハッキリとするにつれて混乱してきたようであった。先程まで魔物と激しい戦闘をしていたかと思うと、突然知らない寝室のベッドの上に居たのである。そしてもう会えないかと思っていたアルセリオ達が目の前に居るのである。

「お父様!落ち着いて下さい!」

「そうよ、アナタ。落ち着いて、混乱するのは判るわ、私達もそうでしたもの。」

「ミレイア、ルシアナ、その服装はいったい・・・」

王はミレイアとルシアナに声を掛けられて視線を移し、二人の服装が違う事に気が付き二人にそう問い掛けた。

「お父様。お話しなくてはいけない事が沢山有るんです。順を追ってお話し致しますから、どうか落ち着いて下さい。」

ミレイアは様々な事に困惑する王の手を握り、懇願するように王の顔を見つめながらそう言って、何とか王を落ち着かせようとしていた。

「ミレイア・・・すまん、少し時間をくれ。」

王はそう言うと、ミレイアの手を握り返し、そっと目を瞑って深呼吸を始めた。部屋に居る全員が王の挙動を見守り、部屋には王の深呼吸の音だけが響いていた。

「すまん。見苦しい所を見せたな。ミレイア、ルシアナ、アルセリオ。無事で何よりだ。」

王は信号を終えて目を開けると、そう言いながらゆっくりとそれぞれに視線を移して行った。

「お父様!」

「父上!」

「あなた!」

いつもの冷静な王の姿になり、ミレイア達は堪らず王に抱き付き、再び涙を流して再開を喜んでいた。

「この温もり、この感触。夢では無いのだな・・・」

王は抱き付く3人をいっぺんに抱き締め、3人の温もりと感触を感じると、そう言って涙を流し始めた。
 暫くして、王もアルセリオ達も落ち着いて来たので食堂に移動してお茶を飲みながらゆっくり話をする事にした。

「どうぞ、紅茶です。」

「うむ、すまぬな。」

タケルは屋敷の食堂を使い全員分の紅茶を淹れると、話しやすいように王の前に座った。

「父上、今紅茶を淹れてくれた彼がタケルと言って、私達を助けてくれたのです。そして今は共に行動しております。詳しい話はタケルがしてくれます。」

王の隣に座ったアルセリオがタケルをそう紹介した。

「王様、座ったままで失礼します。タケル・サワムラと言います。タケルと呼んで下さい。」

タケルはそう言って王に向かい頭を下げた。

「うむ。余がアルバラード・フォン・テオバルド・シーバム。シーバム王国の国王である。」

王はタケルがどんな人物か判らないので、王として威厳を持った挨拶をした。

「父上・・・王国は・・・」

王に国がもう無い事を告げようとしたアルセリオであったが、タケルが手を振りそれを制した。

「王様、いえ。テオバルドさんと呼ばせて頂きますね。」

タケルがそう言うと、王は一瞬眉を動かしたが、そのまま話を聞いていた。

「まず、シーバム王国ですが、既に存在しません。そしてテオバルドさん、貴方を含め、アル・・・アルセリオ、ミレイア、ルシアナさん達はこの封印石に千年封印されて居たんです。」

タケルはそう言ってテーブルの上に4つの封印石を置いた。

「封印?まさか、そんな・・・・それにいったい誰が・・・何の為に・・・」

「サカリアスさんがみんなを守るために封印の魔法を作り上げたんです。」

「サカリアスが・・・そうか、そうであったか。」
 
王はサカリアスと聞いて全て悟ったようであった。王の命により、魔王軍に対抗する為の魔法を研究していたのがサカリアスであり、この中には魔王の封印の研究も含まれていたからである。
 そして、その後アルセリオの提案で現在の宮殿を王に見せる為にみんなで行くことになった。


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更新が遅れてしまいました。

お気に入りが2,500を越えました。有り難う御座います。そして皆様のお陰で、ファンタジー小説大賞は自分が確認した最終順位で28位でした。有り難う御座いました。

今後も宜しくお願い致します。
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