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2章3部フィナールの街編
35話 イビルエイプ達の里で宴
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タケルの従魔のなったグレーターエイプキングのジライヤの願いで宴に参加するためにイビルエイプ達の里にやって来たタケル達。棲家となっている岩山から出た石ころがミスリル鉱石だと気付いたタケル。テオドルと共にジライヤに話を聞き、石ころ捨て場に案内してもらった。石ころ捨て場には大量の希少鉱石が石ころと共に山になっていた。その後それらの希少鉱石を使いタケルはジライヤ用の武器を作り上げた。そしてその作り上げた武器に如意棒と名前を付けると雲斬丸の時と同様に光り輝き、テオドルを驚かせた。その後、宴の準備が出来たと呼びに来たジライヤに案内されて宴の会場に来たタケルとテオドルは驚いた。
「凄いなこれは・・・」
テオドルは宴の会場を見て思わずそう呟いた。
そして会場を見渡すと、アルセリオ達が少し高い所に座っており、会場全体が色とりどりの花で飾り付けられていた。そして会場の中央では大きなワイルドボアが丸太のような串に刺され、クルクルと回され丸焼きにされていた。
「火を使うんだ・・・」
タケルはイビルエイプ達が火を使う事に驚いていた。
「主殿、お席へご案内致します。」
ジライヤがそう言ってタケルを席に案内した。
「えっ。ここ?」
「はい。主殿の席は特別に用意致しました。」
そう言ってジライヤが指し示したタケルの席は一番高い場所に有り、まるで玉座のような石で出来た立派な椅子が有りその周りを色とりどりの花で飾り付けられていた。そしてその脇には二匹のイビルエイプが座っていた。
(え?なに?メスっぽいけどもしかして接待させるつもりなのかな?)
「あのさ、皆と同じ場所にしてくれない?」
「主殿、お気に召さなかったですか?急いで変えさせます!」
ジライヤはそう言うとタケルの席の脇に座っていたメスを退かして、違うメスを呼ぼうとしていた。
「あ、いや、ジライヤ!そうじゃないんだ。俺は仲間と一緒に座りたいんだよ。」
タケルは慌ててジライヤにメスが気に入らなかった訳じゃない事を説明をした。
(気に入る気に入らない以前の問題だから嘘じゃないよね。)
「そうでありましたか、承知致しました。それではお仲間と一緒の場所にお席をご用意致しますので、今暫くお待ち下され。」
ジライヤはそう言って頭を下げると他のイビルエイプ達に指示を出し始めた。
「おい!主殿はお仲間と一緒にお食事をなさりたいそうだ!急いで椅子をお仲間の元へ運ぶのだ!」
ジライヤは玉座みたいな椅子をアルセリオ達の近くへ運ぶよう指示を出していた。その指示の内容にタケルは慌ててジライヤに話し掛けた。
「ジライヤ!いいっていいって!皆と同じで問題無いから!そんな特別扱いはやめてよ!」
「いや、しかし主殿は我の主。イビルエイプの王であるこの我の主なのですから、これでも足りないくらいだと・・・」
特別扱いはやめてくれと言うタケルに対し、ジライヤは王の主だから当然だと言っていたが、タケルの願いも聞き入れたいという思いも有り困惑していた。
「大丈夫だよ、そんなの気にしなくても。それに言ったよね、俺が欲しいのは仲間だって。高いところでふんぞり返ってたら仲間意識なんて芽生えないでしょ。そうだ!どうせならみんなと一緒に食べよう!あのワイルドボアの丸焼きを囲んでさ。」
タケルはそう言ってワイルドボアの丸焼きをしている場所を指差した。
「主殿!本当に我らを仲間だと・・・判りました!そう致しましょう!」
ジライヤはそう言うとイビルエイプ達に向かって声を上げて話始めた。
「皆の者!よく聞け!此度の宴、我が主が皆と一緒に食事をしたいと申しておられる!我が主は我らを仲間として見て下さるお優しいお方だ!皆遠慮無く仲良くしてくれ!」
ジライヤがそう言うとイビルエイプ達から歓声のような鳴き声が沸き上がった。
その後タケル達はイビルエイプ達の元に降りて、ワイルドボアの丸焼きを共に囲んで宴が始まり、タケル達の元にイビルエイプ達の子供が大きな葉に料理乗せて運んで来た。料理と言っても木の実や果物、ワイルドボアの丸焼きの肉と、ヤシの実のように中にジュースが入った大きな実であった。
「きゃあ♪カワイイ♪」
イビルエイプの子供を見てレナーテが声を上げた。レナーテは料理を受けとるとその子供を膝の上に座らせ、一緒に料理を食べ始めた。するとそれを見たアルセリオやアルミスに料理を運んでいた子供が羨ましそうにしていたので、全員が子供を膝の上や胡座をかいた上に座らせいっしょに食べる事となった。そして黒狼達は少し大きいイビルエイプの子供達と走り回って遊んでいた。
「ん?なあに?え?コレを食べろって?ん?」
「それを先に食べた方が美味しいらしいですよ。」
イビルエイプの子供に木の実を勧められ、一生懸命に会話をしているアルミスにレナーテが通訳をしていた。
「こっちも何言ってるか解るか?」
アルセリオが困ったようにレナーテに聞いてきた。
「えっと、早く食べ終わって遊んで欲しいみたいです。」
アチコチから通訳を頼まれアタフタしているレナーテを見てタケルが何かを作り始めた。
「ん?タケル。それはなんだ?イビルエイプ達へのプレゼントか?」
「いや、これはみんなにだよ。その子達と会話が出来るようにと思ってね、このネックレスを着けてみてよ。通訳されて聞こえる筈だよ。」
タケルはその場で作り上げた魔石で出来た通訳のネックレスを皆に手渡した。
「お?なになに?食べ終わったら魔法を見せて欲しいって?良いぞ!じゃあ君も早く大きくなるように沢山食べるんだぞ。」
アルセリオがネックレスを着けてイビルエイプの子供と会話を始めると、みんなもそれぞれに会話を初め、イビルエイプの子供達とコミュニケーションをとっていた。
「おお!主殿。何と素晴らしい!我のように進化せずとも会話が出来るとは!」
ジライヤはタケルが作ったネックレスの素晴らしさに感動していた。
「あ、そうだ!ジライヤ。君にプレゼントが有るんだ。」
タケルはそう言うとアイテムボックスから如意棒を取り出した。
「主殿、その小さな棒は何に使うのですか?」
「良いから、取り敢えずコレを持って武器として丁度良い長さを思い浮かべてみてよ。」
タケルはそう言ってジライヤに如意棒を手渡した。ジライヤは受け取った如意棒を不思議そうに見つめ、言われた通り武器として丁度良い大きさを思い浮かべると、如意棒の大きさが変化してジライヤが持つのに丁度良い太さと長さに変化した。
「おお!これは!」
ジライヤは突然大きさが変化した如意棒に驚いていた。
「それは棍棒として使う武器で里に有った鉱石で作ったんだよ、そしてその棍棒の名前は如意棒。ジライヤの思う通りの大きさに変化してくれる棍棒なんだ。ちょっと試してみてよ。」
タケルの説明を聞いたジライヤは嬉しそうにして、少し離れた所に移動すると如意棒をクルクルと回し始め、中国武術のように華麗に棒術を披露して見せた。
「おお、カッコいいよ!ジライヤ。」
タケルはそう言ってジライヤに拍手を贈った。そしてタケルの拍手に釣られるようにイビルエイプ達が跳び跳ねて喜び、かん高い鳴き声で声援のような物を贈り沸き上がっていた。
「本当に西遊記の孫悟空みたいだな。やっぱ。名前を孫悟空にすれば良かったかなあ・・・そうだ!」
タケルはそう言うと、ジライヤの演舞を視界の片隅で確認しながら有る物を作り始めた。
「どうせなら機能を沢山付けよう。」
タケルはイビルエイプエイプ達の死体から回収した魔石を使いシルヴァの時同様に宝玉を作ると、更にそれを使い何かを作り始めた。
「えっと、エリア通訳と、影移動と、マジックポーチの機能も付けよう。それと・・・」
タケルはジライヤの演舞そっちのけで作業に没頭した。作業と言っても【メイクアイテム】の魔法を使い作り上げる物に機能をイメージして組み込んで行くだけなので、端から見たらボーッとしてるようにも見えた。
「よし、出来た!」
タケルは完成した物を手にし満足そうな表情を浮かべていた。それは西遊記の三蔵法師が孫悟空の頭に着けた緊箍児に良く似た作りの物で、額の部分には宝玉がはめ込まれており、そこからカーブを描いた形で一周する形になっており、全体的に如意棒と同じ装飾が施されていた。
「コレを着ければほぼ孫悟空だな、毛を分身にする代わりに影魔法で仲間を呼び出せるし。ヤバい、楽しくなって来ちゃった。」
タケルは緊箍児モドキを眺め、満足そうな表情から次第にニヤニヤとした笑い顔に変わっていった。
「おい、タケル!その冠みたいなのを見て何1人でニヤニヤしてるんだよ。」
タケルの様子を見てアルセリオがそう声を掛けて来た。
「え?そんな顔してた?ちょっと考え事してただけなんだけど。」
(いけね、顔に出てたみたいだな。)
「ああ、何だかニヤニヤしてて気味悪かったぞ。」
「え、そんなに?」
「冗談だよ。でもニヤニヤしてたのは事実だぞ。その冠見たいのがどうかしたのか?」
「これ?これはジライヤ用に作った物だよ。シルヴァの宝玉のネックレスと同じだね。」
「おお、アレか!今度は形を変えたんだな。」
「そうそう。ジライヤにはこっちが似合うと思ってね。」
「でも、それじゃちょっと小さくないか?」
アルセリオが言うのはもっともで、タケルが手にしている緊箍児モドキは普通の人間サイズの物であった。
「フフフ。大丈夫、そこはちゃんと考えてあるから。ちょっと実際に着けてみようか。」
タケルはそう言うと、歓声に気を良くし未だに演舞を披露しているたジライヤを呼んだ。
「ジライヤ!演舞はそれくらいにしてこっち来てよ!」
タケルがそう声を掛けると、ジライヤはタケルの方へ跳躍し、タケルのそばにそっと着地した。
「主殿!この如意棒と言う棍棒は凄いですな!我の意のままに形を変え、重さまで変化させられる。大変気に入りました。」
「そっか。気に入ってくれて良かったよ。あともう一つ渡したい物が有るんだ、頭を下げてくれるかい?」
「頭を?こうで宜しいですか?」
「うん、丁度良いね。」
タケルはジライヤに頭を下げさせると、そう言って緊箍児モドキをジライヤの頭の上に乗せた。
「これは何でありますか?何か頭に乗っておりますが・・・」
「ちょっと動かないでそのまま待ってて。」
タケルがそう言うと、緊箍児モドキが淡く光っりどんどん大きくなっていき、ジライヤの頭より少し大きくなると額の辺りまで落ちて少し縮まりピタッと止まった。
「おお、これは!」
「それは緊箍児って言うんだけど、機能は本来の用途意外のを沢山着けた物なんだ、王冠みたいでカッコいいでしょ?」
「む、んん。自分では判りませぬな。」
ジライヤは必死に頭に装着された緊箍児を見ようとしていたが、どうしても見られずに諦めたようで、そう言って嘉多を落としていた。
「そうか、自分じゃ見られないよね。ちょっと待ってて。」
タケルはそう言うと、転移でその場から消えたかと思うと直ぐにまた現れた。
「えっと、ここら辺で良いかな。」
タケルはそう言うと、崖の部分に巨大な一枚の金属製の板を取り出して立て掛けた。
「なっ!あれはミスリル!おいタケル、なんて勿体無い使い方をするんだ。」
タケルが取り出したのはミスリルで造られた一枚の板で、表面が平らでツルツルになっており鏡のようになっていた。テオドルは一目見てそれがミスリルで出来ていると判り、それを鏡の代わりに使った事に驚いて思わず声を上げたのだ。
「ちょっと贅沢な作りですけど、これだけ使ってもまだまだ山程有るんだから良いじゃないですか。」
「そ、そうだったな。山程有るんだったな。それくらい大した事無いか。」
タケルがそう言うと、テオドルは納得したようでそれ以上は何も言わなかった。
「ジライヤ、この板の前に立ってごらん。」
「なんですかこれは・・・なっ、なんと!これは我の姿!しかもこんなにはっきりと!」
ジライヤはミスリルの鏡を見て驚いていた。今まで水辺で水面に写る自分の姿を見た事は有ったが、ここまでハッキリと自分の姿を見た事は無かった。そしてタケルの従魔となって体が変化してからは自分の姿を見ていなかったので、ミスリルの鏡に写った自分の姿を色々な角度で写し確認していた。
「おお、何とも素晴らしい。我の生体武具と如意棒と緊箍児が見事な迄に合っておりますな。」
ジライヤは最終的に正面で自分の姿を確認すると、そう言って満足そうにしていた。
「喜んで貰えて良かったよ。」
タケルはジライヤが如意棒と緊箍児を気に入った事が判り嬉しそうにしていた。その後イビルエイプの子供達が鏡の元に集まり自分の姿を写し、色々なポーズを取っては全く同じに動く姿見て喜んでいた。
(ジライヤが鏡を認識出来るのは分かるとして、他のイビルエイプ、まして子供までか認識出来るって事は知能が高いんだな。)
タケルは鏡を見て遊ぶ子供達を見てそう考えていた。鏡を認識出来るのは知能が高い証拠、地球でも一部の類人猿や、イルカ、ゾウ、他に幾つかの種類しか認識出来ないと言うのを日本に居た頃にテレビの番組でやっていたのを見ていて知っていたからである。
「ジライヤ、緊箍児の機能の説明をしておくよ。」
タケルはそう言うとジライヤに緊箍児で出来る事を説明した。
「おお。そんなに色々出来るのですか!素晴らしいですな。」
ジライヤはその後、如意棒を出したり仕舞ったり仲間を影魔法で呼び出してみたり等色々機能を試していた。
そして宴は楽しく行われ、森が暗くなった頃に終了となった。
「ジライヤ、もう遅いしそろそろ帰るよ。」
「主殿、名残惜しいですが致し方有りませんぬな、用が有る時は何時でも言って下され。直ぐに駆けつけます故。」
「うん。頼むよ。」
タケルが別れの挨拶をしていると、アルセリオ達も子供達とお別れをしていた。
「じゃあまたな。ジライヤの言うことを良く聞くんだぞ!」
「じゃあね、また遊びに来るからね。」
そう言って満足アルセリオ達の足にしがみつき別れを惜しんでいる子供達の頭を撫でた。
「じゃあジライヤも何か有ったら念話を使って連絡するんだよ。それじゃあ行くね。」
タケルはそう言うと宿の裏手に転移で戻った。タケルはみんなに挨拶を済ませ部屋に戻るとベッドに寝転がり呟いた。
「ああ。觔斗雲も作れば完璧だったな・・・」
タケルはそう呟いたのち、すぐに寝息を立てて夢の中に旅立って行った。
「凄いなこれは・・・」
テオドルは宴の会場を見て思わずそう呟いた。
そして会場を見渡すと、アルセリオ達が少し高い所に座っており、会場全体が色とりどりの花で飾り付けられていた。そして会場の中央では大きなワイルドボアが丸太のような串に刺され、クルクルと回され丸焼きにされていた。
「火を使うんだ・・・」
タケルはイビルエイプ達が火を使う事に驚いていた。
「主殿、お席へご案内致します。」
ジライヤがそう言ってタケルを席に案内した。
「えっ。ここ?」
「はい。主殿の席は特別に用意致しました。」
そう言ってジライヤが指し示したタケルの席は一番高い場所に有り、まるで玉座のような石で出来た立派な椅子が有りその周りを色とりどりの花で飾り付けられていた。そしてその脇には二匹のイビルエイプが座っていた。
(え?なに?メスっぽいけどもしかして接待させるつもりなのかな?)
「あのさ、皆と同じ場所にしてくれない?」
「主殿、お気に召さなかったですか?急いで変えさせます!」
ジライヤはそう言うとタケルの席の脇に座っていたメスを退かして、違うメスを呼ぼうとしていた。
「あ、いや、ジライヤ!そうじゃないんだ。俺は仲間と一緒に座りたいんだよ。」
タケルは慌ててジライヤにメスが気に入らなかった訳じゃない事を説明をした。
(気に入る気に入らない以前の問題だから嘘じゃないよね。)
「そうでありましたか、承知致しました。それではお仲間と一緒の場所にお席をご用意致しますので、今暫くお待ち下され。」
ジライヤはそう言って頭を下げると他のイビルエイプ達に指示を出し始めた。
「おい!主殿はお仲間と一緒にお食事をなさりたいそうだ!急いで椅子をお仲間の元へ運ぶのだ!」
ジライヤは玉座みたいな椅子をアルセリオ達の近くへ運ぶよう指示を出していた。その指示の内容にタケルは慌ててジライヤに話し掛けた。
「ジライヤ!いいっていいって!皆と同じで問題無いから!そんな特別扱いはやめてよ!」
「いや、しかし主殿は我の主。イビルエイプの王であるこの我の主なのですから、これでも足りないくらいだと・・・」
特別扱いはやめてくれと言うタケルに対し、ジライヤは王の主だから当然だと言っていたが、タケルの願いも聞き入れたいという思いも有り困惑していた。
「大丈夫だよ、そんなの気にしなくても。それに言ったよね、俺が欲しいのは仲間だって。高いところでふんぞり返ってたら仲間意識なんて芽生えないでしょ。そうだ!どうせならみんなと一緒に食べよう!あのワイルドボアの丸焼きを囲んでさ。」
タケルはそう言ってワイルドボアの丸焼きをしている場所を指差した。
「主殿!本当に我らを仲間だと・・・判りました!そう致しましょう!」
ジライヤはそう言うとイビルエイプ達に向かって声を上げて話始めた。
「皆の者!よく聞け!此度の宴、我が主が皆と一緒に食事をしたいと申しておられる!我が主は我らを仲間として見て下さるお優しいお方だ!皆遠慮無く仲良くしてくれ!」
ジライヤがそう言うとイビルエイプ達から歓声のような鳴き声が沸き上がった。
その後タケル達はイビルエイプ達の元に降りて、ワイルドボアの丸焼きを共に囲んで宴が始まり、タケル達の元にイビルエイプ達の子供が大きな葉に料理乗せて運んで来た。料理と言っても木の実や果物、ワイルドボアの丸焼きの肉と、ヤシの実のように中にジュースが入った大きな実であった。
「きゃあ♪カワイイ♪」
イビルエイプの子供を見てレナーテが声を上げた。レナーテは料理を受けとるとその子供を膝の上に座らせ、一緒に料理を食べ始めた。するとそれを見たアルセリオやアルミスに料理を運んでいた子供が羨ましそうにしていたので、全員が子供を膝の上や胡座をかいた上に座らせいっしょに食べる事となった。そして黒狼達は少し大きいイビルエイプの子供達と走り回って遊んでいた。
「ん?なあに?え?コレを食べろって?ん?」
「それを先に食べた方が美味しいらしいですよ。」
イビルエイプの子供に木の実を勧められ、一生懸命に会話をしているアルミスにレナーテが通訳をしていた。
「こっちも何言ってるか解るか?」
アルセリオが困ったようにレナーテに聞いてきた。
「えっと、早く食べ終わって遊んで欲しいみたいです。」
アチコチから通訳を頼まれアタフタしているレナーテを見てタケルが何かを作り始めた。
「ん?タケル。それはなんだ?イビルエイプ達へのプレゼントか?」
「いや、これはみんなにだよ。その子達と会話が出来るようにと思ってね、このネックレスを着けてみてよ。通訳されて聞こえる筈だよ。」
タケルはその場で作り上げた魔石で出来た通訳のネックレスを皆に手渡した。
「お?なになに?食べ終わったら魔法を見せて欲しいって?良いぞ!じゃあ君も早く大きくなるように沢山食べるんだぞ。」
アルセリオがネックレスを着けてイビルエイプの子供と会話を始めると、みんなもそれぞれに会話を初め、イビルエイプの子供達とコミュニケーションをとっていた。
「おお!主殿。何と素晴らしい!我のように進化せずとも会話が出来るとは!」
ジライヤはタケルが作ったネックレスの素晴らしさに感動していた。
「あ、そうだ!ジライヤ。君にプレゼントが有るんだ。」
タケルはそう言うとアイテムボックスから如意棒を取り出した。
「主殿、その小さな棒は何に使うのですか?」
「良いから、取り敢えずコレを持って武器として丁度良い長さを思い浮かべてみてよ。」
タケルはそう言ってジライヤに如意棒を手渡した。ジライヤは受け取った如意棒を不思議そうに見つめ、言われた通り武器として丁度良い大きさを思い浮かべると、如意棒の大きさが変化してジライヤが持つのに丁度良い太さと長さに変化した。
「おお!これは!」
ジライヤは突然大きさが変化した如意棒に驚いていた。
「それは棍棒として使う武器で里に有った鉱石で作ったんだよ、そしてその棍棒の名前は如意棒。ジライヤの思う通りの大きさに変化してくれる棍棒なんだ。ちょっと試してみてよ。」
タケルの説明を聞いたジライヤは嬉しそうにして、少し離れた所に移動すると如意棒をクルクルと回し始め、中国武術のように華麗に棒術を披露して見せた。
「おお、カッコいいよ!ジライヤ。」
タケルはそう言ってジライヤに拍手を贈った。そしてタケルの拍手に釣られるようにイビルエイプ達が跳び跳ねて喜び、かん高い鳴き声で声援のような物を贈り沸き上がっていた。
「本当に西遊記の孫悟空みたいだな。やっぱ。名前を孫悟空にすれば良かったかなあ・・・そうだ!」
タケルはそう言うと、ジライヤの演舞を視界の片隅で確認しながら有る物を作り始めた。
「どうせなら機能を沢山付けよう。」
タケルはイビルエイプエイプ達の死体から回収した魔石を使いシルヴァの時同様に宝玉を作ると、更にそれを使い何かを作り始めた。
「えっと、エリア通訳と、影移動と、マジックポーチの機能も付けよう。それと・・・」
タケルはジライヤの演舞そっちのけで作業に没頭した。作業と言っても【メイクアイテム】の魔法を使い作り上げる物に機能をイメージして組み込んで行くだけなので、端から見たらボーッとしてるようにも見えた。
「よし、出来た!」
タケルは完成した物を手にし満足そうな表情を浮かべていた。それは西遊記の三蔵法師が孫悟空の頭に着けた緊箍児に良く似た作りの物で、額の部分には宝玉がはめ込まれており、そこからカーブを描いた形で一周する形になっており、全体的に如意棒と同じ装飾が施されていた。
「コレを着ければほぼ孫悟空だな、毛を分身にする代わりに影魔法で仲間を呼び出せるし。ヤバい、楽しくなって来ちゃった。」
タケルは緊箍児モドキを眺め、満足そうな表情から次第にニヤニヤとした笑い顔に変わっていった。
「おい、タケル!その冠みたいなのを見て何1人でニヤニヤしてるんだよ。」
タケルの様子を見てアルセリオがそう声を掛けて来た。
「え?そんな顔してた?ちょっと考え事してただけなんだけど。」
(いけね、顔に出てたみたいだな。)
「ああ、何だかニヤニヤしてて気味悪かったぞ。」
「え、そんなに?」
「冗談だよ。でもニヤニヤしてたのは事実だぞ。その冠見たいのがどうかしたのか?」
「これ?これはジライヤ用に作った物だよ。シルヴァの宝玉のネックレスと同じだね。」
「おお、アレか!今度は形を変えたんだな。」
「そうそう。ジライヤにはこっちが似合うと思ってね。」
「でも、それじゃちょっと小さくないか?」
アルセリオが言うのはもっともで、タケルが手にしている緊箍児モドキは普通の人間サイズの物であった。
「フフフ。大丈夫、そこはちゃんと考えてあるから。ちょっと実際に着けてみようか。」
タケルはそう言うと、歓声に気を良くし未だに演舞を披露しているたジライヤを呼んだ。
「ジライヤ!演舞はそれくらいにしてこっち来てよ!」
タケルがそう声を掛けると、ジライヤはタケルの方へ跳躍し、タケルのそばにそっと着地した。
「主殿!この如意棒と言う棍棒は凄いですな!我の意のままに形を変え、重さまで変化させられる。大変気に入りました。」
「そっか。気に入ってくれて良かったよ。あともう一つ渡したい物が有るんだ、頭を下げてくれるかい?」
「頭を?こうで宜しいですか?」
「うん、丁度良いね。」
タケルはジライヤに頭を下げさせると、そう言って緊箍児モドキをジライヤの頭の上に乗せた。
「これは何でありますか?何か頭に乗っておりますが・・・」
「ちょっと動かないでそのまま待ってて。」
タケルがそう言うと、緊箍児モドキが淡く光っりどんどん大きくなっていき、ジライヤの頭より少し大きくなると額の辺りまで落ちて少し縮まりピタッと止まった。
「おお、これは!」
「それは緊箍児って言うんだけど、機能は本来の用途意外のを沢山着けた物なんだ、王冠みたいでカッコいいでしょ?」
「む、んん。自分では判りませぬな。」
ジライヤは必死に頭に装着された緊箍児を見ようとしていたが、どうしても見られずに諦めたようで、そう言って嘉多を落としていた。
「そうか、自分じゃ見られないよね。ちょっと待ってて。」
タケルはそう言うと、転移でその場から消えたかと思うと直ぐにまた現れた。
「えっと、ここら辺で良いかな。」
タケルはそう言うと、崖の部分に巨大な一枚の金属製の板を取り出して立て掛けた。
「なっ!あれはミスリル!おいタケル、なんて勿体無い使い方をするんだ。」
タケルが取り出したのはミスリルで造られた一枚の板で、表面が平らでツルツルになっており鏡のようになっていた。テオドルは一目見てそれがミスリルで出来ていると判り、それを鏡の代わりに使った事に驚いて思わず声を上げたのだ。
「ちょっと贅沢な作りですけど、これだけ使ってもまだまだ山程有るんだから良いじゃないですか。」
「そ、そうだったな。山程有るんだったな。それくらい大した事無いか。」
タケルがそう言うと、テオドルは納得したようでそれ以上は何も言わなかった。
「ジライヤ、この板の前に立ってごらん。」
「なんですかこれは・・・なっ、なんと!これは我の姿!しかもこんなにはっきりと!」
ジライヤはミスリルの鏡を見て驚いていた。今まで水辺で水面に写る自分の姿を見た事は有ったが、ここまでハッキリと自分の姿を見た事は無かった。そしてタケルの従魔となって体が変化してからは自分の姿を見ていなかったので、ミスリルの鏡に写った自分の姿を色々な角度で写し確認していた。
「おお、何とも素晴らしい。我の生体武具と如意棒と緊箍児が見事な迄に合っておりますな。」
ジライヤは最終的に正面で自分の姿を確認すると、そう言って満足そうにしていた。
「喜んで貰えて良かったよ。」
タケルはジライヤが如意棒と緊箍児を気に入った事が判り嬉しそうにしていた。その後イビルエイプの子供達が鏡の元に集まり自分の姿を写し、色々なポーズを取っては全く同じに動く姿見て喜んでいた。
(ジライヤが鏡を認識出来るのは分かるとして、他のイビルエイプ、まして子供までか認識出来るって事は知能が高いんだな。)
タケルは鏡を見て遊ぶ子供達を見てそう考えていた。鏡を認識出来るのは知能が高い証拠、地球でも一部の類人猿や、イルカ、ゾウ、他に幾つかの種類しか認識出来ないと言うのを日本に居た頃にテレビの番組でやっていたのを見ていて知っていたからである。
「ジライヤ、緊箍児の機能の説明をしておくよ。」
タケルはそう言うとジライヤに緊箍児で出来る事を説明した。
「おお。そんなに色々出来るのですか!素晴らしいですな。」
ジライヤはその後、如意棒を出したり仕舞ったり仲間を影魔法で呼び出してみたり等色々機能を試していた。
そして宴は楽しく行われ、森が暗くなった頃に終了となった。
「ジライヤ、もう遅いしそろそろ帰るよ。」
「主殿、名残惜しいですが致し方有りませんぬな、用が有る時は何時でも言って下され。直ぐに駆けつけます故。」
「うん。頼むよ。」
タケルが別れの挨拶をしていると、アルセリオ達も子供達とお別れをしていた。
「じゃあまたな。ジライヤの言うことを良く聞くんだぞ!」
「じゃあね、また遊びに来るからね。」
そう言って満足アルセリオ達の足にしがみつき別れを惜しんでいる子供達の頭を撫でた。
「じゃあジライヤも何か有ったら念話を使って連絡するんだよ。それじゃあ行くね。」
タケルはそう言うと宿の裏手に転移で戻った。タケルはみんなに挨拶を済ませ部屋に戻るとベッドに寝転がり呟いた。
「ああ。觔斗雲も作れば完璧だったな・・・」
タケルはそう呟いたのち、すぐに寝息を立てて夢の中に旅立って行った。
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ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。
しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。
その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。
まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた!
そして、その美少女達とパーティを組むことにも!
パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく!
泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!
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