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2章3部フィナールの街編

31話 それぞれの戦い方。

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フィデル達と鍛冶師のテオドルとレベル上げの翌日、アルミス達全員と森に来たタケル達は再び黒狼達を呼び、全員が黒狼を選んだ。その後レベル上げの為に森を走ると魔物の群の反応が有り、黒狼に乗って向かった。魔物の群れはイビルエイプと言う魔物で、凶暴な猿の魔物であった。タケルはアルセリオに指揮を任せる事にし、アルセリオの作戦と指揮の元、小さい群れを次々と潰して行ったが、300匹居たイビルモンキーも半数近くに減った所で気付かれ、アルセリオの作戦で森の木を斬り倒し広場を作り、迎え打つ事にした。戦いが始まると、ミレイア達の戦いぶりにフィデル達は驚いた。自分達は気を抜く事が出来ずに居たが、ミレイア達は真剣ではあるが、話をしたりどこか余裕があったからだ。

「くっ、昨日のレベル上げで強くなったと思っていたけど、まだまだだな。俺達も。」

フィデルがそう言いながら斬撃を放っていると、レナーテが声を掛けて来た。

「でもこれでまた強くなれるわよ!」

そう言うとレナーテは蒼牙に指示を出しイビルモンキーを倒して行った。その時、一体のイビルモンキーが攻撃ようの合間をすり抜け、レナーテに襲い掛かろうとした。横に居たフィデルやシーラが間に合わないと思った瞬間、イビルエイプの攻撃が止まった。

「いい子ね、敵はこっちじゃ無いわ、あの猿よ。」

レナーテのスキル、【特殊調教】により、目を見ただけで言うことを聞かせたのだ。特殊調教によりレナーテの下僕しもべとなったイビルエイプは顔から凶悪さが抜けたかと思うと、他のイビルエイプを攻撃し始めた。 

「おお、もう駄目かと思ったよ!」

「私もそう思ったわ!」

「正面からなら私に攻撃を出来る魔物なんて居ないわ。」

レナーテはそう言って再び蒼牙に指示を出した。

(そうか、良く考えたらかなり使えるスキルだったんだな。)

タケルは離れた場所にいたが、超聴覚で会話を聞いており、そう考えていた。

(新種の魔物にも利くかな?)

タケルはアルセリオ達からは死角になる場所のイビルエイプを仕留めながらそう考えていた。

「誰か一発で良いです、ファイヤーボールを僕に放って下さい。」

ジラルドがそう言うと、タケルがファイヤーボールを優しく放った。

「判った!これで良いかい?」

タケルから放たれたファイヤーボールはジラルドの目の前で止まった。

「有り難う御座います!タケルさん!」

ジラルドがそう言うと、ファイヤーボールの形が変わり十字の形になると回転を始めた。すると、ジラルドが一匹のイビルエイプを指し示すと、指し示した方に飛んで行き、イビルエイプを両断した。そしてジラルドが指をパチンと鳴らすと、炎が2つに別れ同じように回転しイビルエイプを両断していった。ジラルドの操る炎は2つに別れても小さくならず、まるで分身のように同じ大きさのままであった。

「広場なら炎を使っても大丈夫だし、操作出来るから大丈夫だよね。」

ジラルドはそう言いってイビルエイプを倒し続けた。

「ほら、いくわよ!そっちも!」

エステルは鞭を生き物のように自在に操り、イビルエイプをむちゃくちゃで締め付け引き裂いていた。

「扱えるのは一本じゃないのよ!」

エステルがそう言うと手にした鞭が質量を無視し、何本にも別れてそれぞれが生き物のように動いてイビルエイプを締め付けては引き裂いていった。

「1、2、3、4、5・・・」

エステルは黙々と魔力の矢を放ちイビルエイプを射抜いていた。

「次から次と、面倒ね。」

エステルはそう言うと、弓を引く溜めを少し長くしてから弓を放った、すると放たれた魔力の矢が幾つにも分裂し、イビルエイプを貫いた。

「フン!オラ!」

フィデルは斬撃を飛ばし、そして自在に操りイビルエイプを両断していた。時折攻撃を抜けて抜けて来る個体を直接大剣で攻撃する事もあったが斬撃を飛ばして倒す事が殆どだった。

「数を増やしてみるか!」

フィデルはそう言うと斬撃を飛ばす数を増やしていった。一振り、二振りと剣を振る毎に飛ばせる斬撃を増やせるのだが、負担も大きい為にフィデルは今まで3回剣を振り4個、時折4回振って8個の斬撃を飛ばすのがやっとであった。しかし先程から剣を振っていて、感じる負担が少ない事から斬撃の数を増やして見る事にしたのだ。

「オラァ!もう一回!」

フィデルは合計で6回剣を振り、32個の斬撃を飛ばし視界に入る全てのイビルエイプを斬り倒した。

「ちょっと!私の獲物を取らないでよ!」

横に居たエステルが文句を言って来た。

「ああ、す、スマン・・・3回までにしておくか。」

斬撃の数を増やし過ぎると仲間の邪魔になってしまう事から、折角出来るようになった6回目であったが、たった一度試しただけで今回は封印する事にした。
 そして最初はミレイア達のどこか余裕の有る戦いに驚いていたフィデル達であったが、本人達も気付かないうちに、いつの間にか自分達も会話をしながら戦えるようになっていた。

「みんな!だいぶ慣れて来たみたいだけど気を抜くなよ!あの爪でやられたらタダじゃ済まないぞ!」

普段のアルセリオとは違い、気を抜く事無く戦いに集中し、周囲にも気を使い激を飛ばしていた。

「へえ。やっぱり立場が違うと人は変わるもんだな。これからはいろんな人に指揮を執らせてみよう。」

タケルはアルセリオの成長ぶりに感心し、今後は他の仲間にも指揮を執らせてみようと考えていた。タケルは地球では小さいながらも会社を経営していた。その時の経験した事であるが、人は責任がある立場になると、おのずと責任感が芽生えるのである、現場仕事であったタケルは、安全ルールを守らない社員を敢えて安全担当に据えたところ、責任感が芽生え安全に対する意識も変わったという事も経験していた。今回アルセリオの成長を見て、タケルは改めて認識したのである。

タケルが前世での事を考えていると、マップに幾つか違う反応が現れ、イビルエイプと一緒に近付いて来ているのに気付いた。

(なんだろ?かなり反応が強いな。)

タケルがその反応を気にしていると、微かに遠くの方から振動を感じた。

(なんだ?この魔物の方からだな、今のはコイツの仕業か?)

タケルは少し気になり、空中に浮き上がって振動の方向を確認してみた。

「なんだあれ?」

タケルの視界に捉えたのは、森の木々が次々になぎ倒され、一本の道がどんどん出来上がり、タケル達の方に真っ直ぐ向かって来ている不思議な光景であった。シーバムの大森林の樹木はどれも太いく高い、その木々を小枝を折るが如くへし折り進んで来る者が居るのだ。

「恐らく相当デカいな、ドラゴンより大きいかも。」

タケルは木々が倒されて行く様を暫く眺めていた。すると木々の間から僅かに姿を確認する事が出来た。どうやらイビルエイプの上位種か大きい個体のようであった。

「アイツらの仲間か、かなりお怒りのようで。」

タケルはアルセリオ達の元に降り立ち、新たな魔物が近付いて来ている事を告げた。

「デカイのが来る!気を付けろ!」

「デカイってどれくらいだ?」

「あの木をへし折るくらいだ!」

「マジか!とんでもないのが来るな。」

アルセリオはそう言っていたが、かなり冷静であった。

「俺も参戦するよ、雑魚を片付けておかないと面倒だ。」

「雑魚って、コイツらオーガクラスなんだろ?」

タケルはイビルエイプの群れを雑魚と良い放った、確かにタケルにしてみれば雑魚ではあるが、本来であればイビルエイプは高ランク冒険者でなければ相手が出来ない魔物であった。しかしそれを突っ込んだアルセリオも、イビルエイプを雑魚のように次々と倒し、戦いながらタケルと会話をする事が出来る程に余裕が有り、アルセリオにとっても雑魚と化していた。

「まあ、確かにそうだけど、みんなも既に戦い方が雑魚扱いだよ。」

アルセリオはタケルにそう言われ、改めてみんなの戦っている姿を見てみた。

「確かにそうだな。なんだか的当てみたいになってるな。それにしてもコイツらはこれだけ仲間がやられてるのに、なぜ向って来るんだろうな。」

「恐らくその答えはもうすぐ判るよ。」

「何でだ?タケルは知ってるのか?」

アルセリオが、そうタケルに尋ねた。

「知ってると言うか、予想だね。」

タケルがそう言った時、先程の魔物が大きな声で吠え、タケル達の周囲の空気が震えた。そしてその声を聞いたイビルエイプは、怯えるようにビクッとすると、次々に吠え始めたかと思うと、何かに追われているかのように必死な感じで襲い掛かって来た。

「なんだ?吠え声が聞こえたかと思ったらコイツらの動きが激しくなったぞ?」

イビルエイプの激しくなった動きを見て不思議に思ったアルセリオがそう言ってタケルに声を掛けた。

「やっぱりね。アイツらは今から来るデカイのに恐怖を感じてるんだよ。その証拠にほら、アイツらチラチラとデカイのが来る方を見てるだろ。」

タケルそう言われ、アルセリオはイビルエイプ達の表情を見てみると、確かにチラチラと皆同じ方向を見ているのが確認出来た。

「恐らくデカイのがボスで、アイツらはボスが怖いんだよ。それで死を恐れずに襲い掛かって来るんだろうね。」

「成る程、恐怖で支配しているって事か。」

「恐らくね。」

その時であった。広場に大きな木が飛んで来て、広場に大きな音を立てて突き刺さり、土煙が舞った。

「みんな大丈夫かー!」

アルセリオが咄嗟にみんなに声を掛けた。

「大丈夫ですわ、お兄様。」

「私達も大丈夫です。」

みんなの無事を確認すると、アルセリオはタケルに話し掛けた。

「タケル、説明してくれ。」

アルセリオに言われ、タケルは頷くと念話でみんなに話し掛けた。

『みんな。今のはコイツらのボスの仕業だ、コイツらのボスはコイツらを恐怖で支配出来る程の力を持ってる。ソイツが近くまで来てて、今の大木を投げて来たんだ。一応みんなに防御魔法を掛けておくけど、十分に注意してね!』

タケルはそう言うと、みんなに魔法を幾つか掛けた。物理ダメージ軽減と自動で展開される障壁、などの防御魔法を重ねて掛けた。

その時、ボスらしき魔物と新たなイビルエイプの集団が森から飛び出してきた。イビルエイプの集団は、他のイビルエイプよりも一回り大きく、爪も牙も更に立派で、肩や肘、膝にも刃物のような形の角鹿生えていた。そしてボスは更に何倍も大きく、その身長は10mをゆうに越えていた。特徴的なのは身体の至る所を硬そうな物が、まるで鎧のように覆っているのである。頭まで兜を被っているかのようになっていた。そして、良く見ると新たに来た集団の体に小さな硬い出っ張りがあった。ボスの鎧のような部分と同じ材質に見える事から、皮膚から出た硬い部分が発達して鎧のようになったと言うのが判る。

『あの新しい集団はイビルエイプロードで上位種だね。そしてあのデカイのがイビルエイプキングだね。』

タケルがみんなにそう説明すると、アルセリオがタケルに質問をした。

『それで、注意する事はあるか?』

『総合的に全てが上だから、気合いを入れないと勝てないよ。キングは見た目よりも早いし、攻撃範囲が広い、俺が相手するけど、巻き込まれないようにね。』

タケルがそう説明すると、キングが再び吠えた。するとイビルエイプの攻撃がピタッと止み、イビルエイプは広場の少し外まで下がった。

「なんだ?アイツら襲って来なくなったぞ?」

「多分ジャマだからどかしたんだね。」

タケルがそう良い終えた時、キングが再び吠えた。するとイビルエイプロードが一斉に襲い掛かって来た。

「姿が変わったってやる事は同じよ!」

ミレイアはそう言って様々な属性のバレットを展開させて撃ち放った。

「えっ!?避けた!」

ミレイアの放ったバレットをイビルエイプロードが避けたのだ。

「けどまだまだよ!」

ミレイアは避けられたバレットを操作して、イビルエイプロードの背後からバレットを命中させた。

「やった!・・・・えっ!」

全てのバレットがイビルエイプロードに命中したが一撃で倒すには至らず、イビルエイプロードは傷を負いながらも襲い掛かって来た。

「やっぱり少しタフなのね。でも終わりよ。」

ミレイアは続けてバレットを放ち、イビルエイプロードにトドメを刺した。

「どんなもんよ!」

ミレイアはそう言うと次のイビルエイプロードにバレットを撃ち放った。

「くっ!流石に一度に複数は無理ね、一匹ずつ確実に仕留めて行くわよ!」

「そうだね、僕も速すぎて複数は狙えないよ。」

エステルとジラルドは多少手間取って居たが、一匹ずつ確実に倒していく戦法に変更し、イビルエイプロードを倒していった。

「もう!剣の方が早いわね!」

「そうですな、アルミス殿。我々は剣士ですからな。」

アルミスとベルナルドは魔法は補助的な使用のみに変更し、剣でイビルエイプロードを仕留めていった。

「くそ!俺も一撃って訳にはいかなくなってきた。」

「私もよ!私達も一匹ずつ仕留めていきましょう!」

「ああ、そうだな!」

フィデルとシーラはエステルやジラルドのように、一匹ずつ仕留める事にした。

「ほっ!は!ほっ。」

「・・・・」

サビオとアルバは少し陣形を離れ、背中合わせになりながら、魔法を使いつつ、格闘でイビルエイプロードを倒していた。

「流石サビオさんとアルバだな、凄く息が合ってる。」

アルセリオが二人の戦いを見てそう言って感心していた。

「クシーナさん、お願い。」

「はいはーい。」

ルシアナがそう言うと、クシーナは戦闘中とは思えない明るい口調でルシアナに歩み寄ると、魔力を流し、分け与えた。

「有り難う、助かるわ!」

「いえいえ~、いつでも言ってね~。」

クシーナは精霊なので、元々それなりに強かったが、今までのレベル上げによりかなり強くなってはいた。しかしクシーナの性格的にあまり戦闘に向いてない為、魔力の補充や、体力回復等のサポートに回る事が多かった。

その少し前、大きな吠え声でイビルエイプを下がらせ、イビルエイプロードをアルセリオ達に襲い掛からせたキングは、自らも戦いに参加しようと歩みを進めようとした。

「おい、大猿。お前の相手はこっちだ。」

タケルは言語理解を使用して話し掛けた。

「?」

一瞬動きを止めたキングであったが、まさか小さな人間に話し掛けられたとは思わず、そのまま歩みを進めようとした。

「あれ?気付かなかったかな?よし、それじゃあ。」

タケルは今使える最強の威圧を使用してキングに向けて放った。するとキングは大きな体をビクッとさせ、辺りを見渡した。そしてその威圧がタケルから放たれていると気付くと、タケルに向けて咆哮を放った。

「うるさい!」

タケルはキングの口元にジャンプすると、顎を殴り付け、強制的に口を閉じさせて咆哮を止めた。キングは一瞬何が起こったのか分からなかったが、小さな人間であるタケルに殴られたという事に気付くと、全身の毛を逆立たせ怒りに震えていた。

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ファンタジー小説大賞にエントリーしておりますので、宜しくお願い致します。



 
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