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2章3部フィナールの街編

24話 再登録

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奴隷商にうっかり入ってしまったタケルは、奴隷商の会頭エドガルドが強くする為の人材を探している事を知っているのに驚き、思わず殺気を込めてしまった。その後エドガルドの説明に納得し、商品として見せられた奴隷を鑑定して気に入ったタケルは全員を購入した。しかし購入した奴隷達は普通の事を受け入れられず、奴隷として行動しうとすることに疲れ、ベッドに入るとタケルはすぐに寝てしまった。

「うん・・・寝ちゃったか。」

日の出よりも少し遅れて起きたタケルは、フィデル達の様子を見に行った。
 ドアを開けると、まだ寝ていたフィデル達であったが、タケルが部屋に入るとベッドから飛び起きて挨拶をしてきた。

「おはよう御座います。ごしゅじ・・・タケル様。」

「ああ、ごめん、起こしちゃったね、朝食を食べたら出掛けるから、これで食堂で食事をしておいて。」

そう言ってタケルは小金貨を1枚テーブルに置いた。 

「好きな物を食べて良いからね。ちゃんと食べて力を付けておいてね。」

「判りました、タケル様。」

「んん~、様付けも禁止ね。」

タケルがそう言うと、フィデル達は困惑していた。タケルはフィデル達の様子を見ると嘆息し、フィデル達に話し掛けた。

「分かったよ、じゃあタケルさんでお願い。」

「はい、タケルさん。」

「じゃあ、必ずちゃんと食べてよね。」 

タケルはそう言うと次にエステル達の部屋へ様子を見に行った、扉をノックするとすぐに扉が空いてエステル達が並んで挨拶をしてきた。

「おはよう御座います。ご主人様。」

「お、おはよう。早いね、朝食なんだけど、コレで下の食堂で食事してきて、好きなのを食べて良いからね、遠慮しないでちゃんと食べるんだよ。食べ終わったら出掛けるからね、部屋で待っててよ、後で呼びに来るから。」

「はい、判りました、ご主人様。」

「あ、次からはタケルさんって呼んでね。じやあ、後でね。」

タケルはそう言い残し、自室に戻るとセーフティゾーンへ行き、アルセリオ達と一緒に朝食を食べる事にした。

「タケル、さっき違う部屋に入って行ったけど、知り合いか?」

アルセリオが食事をしながら聞いてきた。

「え?ああ。あの人達は奴隷なんだ、昨日の夜散策をしてたら成り行きで購入する事になってね。」

「えええ?奴隷を買った?なんで奴隷なんて買ったんだよ!」

アルセリオは驚いて大きな声を出し、そして少し怒ったようにタケルに問い詰めて来た。

「どう言う事だよ!説明しろよ!」

怒るアルセリオに対し、タケルは冷静に淡々と説明し出した。

「昨夜詮索中にたまたま入った建物が奴隷商でね、そこの会頭が俺が今新種の魔物対策で強くする人を探してるのを知っててね、面白いスキルや職業だったから購入したんだ。紋章士のスキルと魔法もコピーしたから簡単に解放出来るしね。」

「じゃあ、奴隷として扱う為に買った訳じゃないんだな?」

「ああ、勿論だよ、本当はすぐに解放してアル達と強くなって貰おうと思ったんだけど、奴隷としての行動が思ったよりも厄介でね、普通の感覚を無理矢理にでも身に付けさせてからじゃないと大変だからさ、解放は様子を見ながらだね。」

「そうなのか?」

「ほっ、奴隷となった者はまず、奴隷としての心得を徹底的に叩き込まれるからの、それから売りに出されるんだ、だからすぐには普通の感覚に戻れないんだ。」

タケルがアルセリオに説明していると、サビオが奴隷の行動について説明をしてきた。

「すぐに解放しなくて正解だったかもしれんの。主従関係があれば普通の感覚を身に付けさせるのはそう難しくは無いからな。」

「成る程。」

「そうそう、昨日だって奴隷の服のままじゃ可哀想だと思って服をあげたら、こんな上等な服を着ても良いのかって着るのを戸惑っているから、仕方無く命令で着させたんだよ。食事も放っておいたら床で食べそうな感じだし、女性なんて夕食を渡しに言ったら夜伽の準備と言って全裸で待ってたからね、ビックリしたよ。」

「そうなのか、それで?どうしたんだ?」

タケルの話を聞いて、アルセリオがニヤニヤしながら聞いてきた。

「何を言いたいんだ?アル。言っとくけど、すぐに服を着させて食事をさせただけで、何もしてないからな。第一俺は成人するまではしないって決めてるんだ、それに初めてはアルミスとって決めてるんだ!って何を言わせんるだよ。」

「アハハ、自分で言い出したんじゃないか。」

「あらあら、仲が良いわね、二人とも。うふふ。」

みんながタケルとアルセリオの話を聞いて笑っていたが、アルミスだけは食事をする手を止めて、顔を真っ赤にして俯いていた。

「まったく・・・あっそうだ、アル!今日ギルドに行った後に彼らの装備を買いに行きたいだ、一緒に行かないか?」

「ああ、良いぜ。一人で買いに行くのもつまらないと思っていたんだよ。」

「なんだアル。寂しかったのか?正直に言えよ。」

「い、いや、そんなんじゃ無いって、俺はただつまらないと思って・・・」

「ハハハ、まあどっちでも良いけど、宜しくな。」

そうしてタケル達は楽しく食事を終え、タケルとアルセリオはフィデル達を迎えに宿に戻った。

「ちゃんと食事したかな~。」

タケルはそう呟きながら扉をノックした。

「入るよ~。」

タケルが扉を開けて入ると、フィデル達は直立してタケル達を迎えた。

「あ、別にいちいち直立しなくて良いよ。それと、朝食はちゃんと食べた?」

「はい。食堂で食事を頂きました。」

どうやら食事はちゃんと食べたようで、タケルはホッとして、笑顔で話し掛けた。

「ここの食堂は美味しかったでしょ?」

「はい、とても美味しかったです。」

「そう、良かった。じゃあ、エステル達を呼んで出掛けようか。」

タケルはエステル達の部屋へ行き、同じように食事を食べたか確認すると、きちんと食べたようなので、エステル達も連れてギルドへ向かった。

「あ、みんな、彼はアルセリオ。俺の仲間なんだ、宜しくね。他にも大勢居るから今度紹介するね。アル、彼がフィデル、剣士なんだ。隣がジラルド、魔操術士って言って少し変わった術を使うんだ、その後ろがエステル、それと、鞭士って言って鞭を操るんだ。その隣がシーラ、魔弓手と言って魔力を弓にして撃てるんだ、最後がレナーテ、特殊調教師なんだ。」

タケルが一人一人紹介すると、アルセリオは笑顔で1人ずつ挨拶をしていた。そして、フィデル立ち上がった5人は、顔を見合せ驚いていた。昨夜タケルに買われてから、一度も自分達の事を話した事は無かった、話した事と言えば服の事や食事の事などだけであったからだ。

「あの、申し訳有りません。タケルさん、何故私達の事をご存知なのですか?」

テイマーのレナーテが恐る恐る聞いてきた。

「ああ。そうだったね、昨日みんなを鑑定したんだよ。」

「え?でも・・・」

レナーテ達が驚くのも無理は無い。通常、鑑定を行うと、鑑定された側は鑑定された事に気づくのである、しかし昨夜から今までそんな気配など一切無かったからである。

「俺の鑑定はちょっと特殊だからね、鑑定を行使しても気付かれない特殊な鑑定なんだよ。」

タケルがそう説明すると、レナーテ達は驚きながらも納得していた。

「なあタケル。ところで、みんな冒険者登録は初めてなのかな?」

タケルはアルセリオに言われ初めてその事に気が付いてハッとして振り返り、質問した。

「そうか、そう言えばどうなの?」

タケルがそう質問すると、フィデルが少し前に出て来て話し始めた。

「はい、私共は皆、昔は冒険者でしたが、奴隷となった時点で冒険者登録は抹消されております。奴隷となった者が再び冒険者登録をするには、奴隷の主が許可するか、奴隷から解放されないとなりません。」

「そうなんだ。じゃあ登録は出来るんだね。」

「良かったな、タケル。」

「そうだね。」

タケル達がそう話していると、ギルドの建物が見えて来た。

「あ、ホラ!アレがこの街の冒険者ギルドだよ。」

そう言ってアルセリオが振り返り、ギルドだよ。建物を指差した。

「そう言えばみんなはここの冒険者ギルドへ来た事はあるのかな?」

タケルがそう聞くと、フィデルが答えた。

「いえ、私共は皆、奴隷となってからこの街に来ましたので、来た事は有りません。」

「そっか、でも登録の仕方は同じでしょ?」

「ええ、そうだと思います。」

「そっか、まあ行ってみれば判るから良いか。」

そう話していると、タケル達はギルドの建物に到着した。

「主の許可が有ればって事は俺も一緒に居ないとダメか。」

タケルはフィデル達の登録を、アルセリオに任せてビエントに会いに行きたかったが、諦めて登録に同行することにした。

「おはよう御座います。」

タケルが挨拶をすると、カウンターの向こうであくびをしていたリリアーナが、タケルに気付き、顔を赤くして挨拶を返して来た。

「ファ~。ハッ!タケルさん、お、おはよう御座います、早いですね。」

「ハハハ、そうですね。今日はこの人達の登録と、ハーピーの代金を受け取りに来たんですが。」

タケルがそう言うと、リリアーナはタケルの後ろに控えているフィデル達を確認して、立ち上がった。

「タケルさん、ではまた別室にて受付致しますね。」

そう言うとリリアーナはタケル達を別室に案内した。

「ではここでお待ち下さいね。」

そう言うとリリアーナは部屋から出て行き、暫くすると、登録用の水晶を持ち、ギルドマスターのビエントと共に戻って来た。

「やあ、タケル君、おはよう。」

「おはよう御座います、ビエントさん。」

「今日はどうしたんだ?また大勢で登録なんて、新しい仲間か?」

ビエントは顎を触りながらフィデル達を見るとそう言ってタケルの前の椅子に座った。

「実は昨夜成り行きで奴隷を買うことになりまして・・・」

タケルが奴隷を買ったという事を伝えると、リリアーナがショックを受けたような表情をし、口を手で押さえていた。 

「ほう、奴隷をな。どこの商会で買ったんだ?」

ビエントは特に驚く事も無く、どこで買ったのかを聞いてきた。

「エドガルド商会です。あっ、そう言えば、会頭のエドガルドさんが今回の人集めの件を知ってたんですよ、帰って来てからそんなに時間が経ってないのにですよ!」

タケルはエドガルドが情報を知っていた事をビエントに伝えると、特には驚かなかったが、代わりに溜め息をついた。

「はぁ。またか、なぜかアイツはいつも知る筈の無い情報を知っているんだ。どこかに密偵や、潜んでる者が居るのかと調べてみたが、見つからない、一体どうやって調べているのやら・・・」

どうやらビエントも同じような目に合った事が有ったようで、その事を思い出したのか、暗い顔をしていた。

「しかし情報を仕入れていても、それを悪用したりはしないからな、まあ黙認状態ってやつだ。」

「そうなんですか。ビエントさんも有るんですね。」

「ああ、しかしタケル君が奴の所で奴隷を買うとはね、理由はどうあれ、良い所で買ったな、あそこは違法奴隷は扱わないし、扱う奴隷の質も良い。彼らも何か良い所が有ったから買ったんじゃないのか?」

「そうなんです、皆かなり珍しい職業やスキルなんですよ。」

タケルが嬉しそうにそう言うと、リリアーナが話し掛けて来た。

「あの!登録を始めたいんですけど良いですか?」

奴隷を買った事の変な誤解は解けたようであったが、一向に話が進まなかった為に少し怒って話し掛けて来た。

「ああ、スマン。では始めようか。」

「ごめんなさい、始めましょう。」

リリアーナは頬を膨らまして腕を組んで二人を睨むように見ていた。

「もう、話したい事が有るなら終わってからにして下さいね。」

リリアーナはそう言って書類をタケルとビエントに見せつけるようにヒラヒラとさせると、フィデル達の前に書類を並べた。

「皆さんお待たせしました、ではこちらに必要事項を記入して下さいね。」

リリアーナがそう言うと、フィデル達はペンを取り記入を始めた。

「書き終わった方から渡して下さいね。」

フィデル達は全員ほぼ同時に書き終え、リリアーナに書類を渡した。

「はい、それでは少々お待ち下さいね。」

リリアーナはそう言うと、石板をトントンと叩き始めた。リリアーナは次々に書類を入力し終わると、タケルの方を向いて水晶を指し示した。

「タケルさん、全員一度登録済なのですが、奴隷になった事で登録が一時抹消されています。再登録にはタケルさんの許可が必要なので、この水晶に魔力を流して下さい。」

タケルは言われた通り水晶に魔力を流した。

「はい、結構です。これで主であるタケルさんの許可は取れましたので、今度は皆さんの魔力を流して下さい。」

リリアーナはそう言うと、皆に水晶に魔力を流させた。

「はい、これで完了ですが、皆様は奴隷になってから、依頼をお受けになっておりませんので、ランクが1つ下がっております。」

そう言ってリリアーナはフィデル達に1人ずつギルドカードを手渡していった。

「はい、フィデルさんはCランクになります、ジラルドさんはDランクですね、エステルさんもDランクで、シーラさんはCランク、レナーテさんはEランクですね。」

5人はギルドカードを受け取ると、皆カードを見つめ、懐かしむようにカードを撫でたり、カードを持つ手に力を入れたりしていた。

(お、やっぱ嬉しいんだな、良かった。)

「終わったみたいだな。数は少ないが奴隷でも冒険者として活躍してるものはちゃんと居る、頑張ってくれ。」

「はい!」

皆が一斉に返事をした、その顔は先程迄と違い、希望が宿ったように見えた。

「さて、タケル君。ハーピーの代金だったね。今回もまた凄い金額になったよ。」

ビエントはそう言うとアイテムボックスから革袋と明細を取り出すと、革袋をタケルの前に置に置き、明細をタケルに手渡した。

ハーピー 1815万ベルク 内訳、買い取り10万×121匹+討伐報酬10万×121匹

オキュペテー 1億2530万 ベルク 内訳、買い取り50万×203匹+討伐報酬10×203匹

アエロー 1億1625ベルク 内訳買い取り100万+討伐報酬 25万×93匹

その他、(死体無し討伐報酬)8250万ベルク

合計3億4245万ベルク

タケルは明細を小声で読み上げた、するとフィデル達は目をまるくしてその金額に驚いていた。

「みんなもすぐにこれくらい稼げるようになるよ。」

フィデル達は、そこで初めて自分達はとんでもない人物に買われたのだと気が付いたのであった。












  
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