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2章3部フィナールの街編

18話 昇格

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草ネズミ駆除の依頼を達成する為、畑に来たミレイアとアルセリオは、畑の持ち主のブルーノに草ネズミのあぶり出し方を教わり、その後効率の良い方法を見つけ、今までに無い数の草ネズミを駆除する事が出来た。ルシアナとベルナルドはマジックポーチのお陰で早々に依頼を達成し、アルミス達の居る孤児院に向かい、一緒に炊き出しと治療ボランティアを行い、孤児院に遊びに行く約束をし、ギルドへ戻って行き、ギルドの入り口で同じく戻って来ていたアルセリオ達と合流し、ギルドへと入って行った。

「これでAランクになれるのね。」

「そうだな、早いところ依頼の達成報告して昇格しちゃおうぜ。」

「あら、タケルさんはまだなのね。」

「タケるんが戻って来る前に昇格して、帰って来たらギルドカード見せてあげようよ。」

クシーナがそう言うと、全員が同意し、達成報告をするためにカウンターに並んだ。

「達成報告をしたいのですが。」

アルセリオがカウンターの奥で書類を見ていた女性に話し掛けた。

「はい、達成報告ですね、依頼書とギルドカードをお願い致します。」

アルセリオはマジックポーチからギルドカードと依頼書を取り出すと、受付の女性に渡した。すると、受付の女性はカードと依頼書を見ると、何かの資料を見てアルセリオに声を掛けた。

「えっと、アルセリオさんですね、それと後ろの方々はお仲間ですね、申し訳有りませんが、皆様は別室にお通しする事になっておりますので、付いてきて頂けますか?」

女性はそう言うとカウンターから出て来てアルセリオ達を登録するときに使った部屋に案内した。

「こちらでお座りになってお待ち下さい。ギルドマスターがお話が有るそうなので、只今呼んで参ります。」

女性はそうアルセリオ達に伝えると、ギルドマスターのビエントを呼びに部屋を出ていった。 

「なんだ?何か問題でも有るのかな?」

別室に通された事を不安に感じたアルセリオが椅子に腰を下ろしながらそう言った。

「お兄様、私達はAランクに昇格なんですよ、カンウターで受付をしたら騒ぎになるからじゃないですか。」

「ああ。そうか、それもそうだな。」   

ミレイアにそう言われ、アルセリオは納得したようであったが、どこか落ち着きが無くソワソワとしていた。すると、部屋のドアがノックされ、受付の女性とギルドマスターのビエントが入ってきた。

「やあ、お待たせ。すまなかったね、わざわざ別室に来てもらって。」

「いいえ、おじさま。カウンターでは騒ぎになってしまいますから、仕方有りませんわ。」

ミレイアがそう言うと、ビエントは少しだけ驚いたような顔をしたが、直ぐに笑顔で話始めた。

「流石ミレイアちゃんだな、その通りだ。流石にこの人数がいきなりAランクになったら騒ぎになるからね。ではみんなの依頼達成の確認をしようか。ルアーナ。」

ビエントが、そう言うとルアーナと言われた受付の女性がみんなの依頼書とギルドカードを受け取りビエントに渡すと、次にアルセリオとミレイアの採集した薬草とルブロムの実、ホーンラビットの討伐の証の角を篭に入れると、検品するために別室に持って行った。

「あれ?ミレイアあんな実をいつ採集したんだ?」

「森に点在してたから、歩きながら採集したのよ、お兄様。それに薬草の群生地にも有りましたわよ。」

「え?全然気付かなかった、そうだったんだ。」

二人のやり取りを見てビエントが笑いながら話し掛けた。

「ハッハッハッ!でも1日で3つの依頼を全て終わらせるとは流石だな、パッと見たところ薬草もルブロムの実も品質も状態もかなり良かったな、恐らく問題無いだろう。」

そう言うとビエントはアルセリオとミレイアの書類を暫く見ていると、少し驚いたようにミレイアの方を見た。

「ミレイアちゃん、この草ネズミの駆除は一人でこなしたのか?」

「いいえ、お兄様と一緒にでしたわ、おじ様。」

「そうか、そうだとしても、あのブルーノから達成評価Sを貰ってくるとは・・・一体何匹位の草ネズミを駆除したんだ?」

驚くビエントにそう言われ、ミレイアの代わりにマジックポーチに草ネズミを仕舞っていたアルセリオがポーチを確認して答えた。

「えっと、大体500匹くらいですね。」

「な?500?!」

「ええ、偶然大量にあぶり出す方法を発見したんですわ、おじ様。」

「それは一体どんな方法なんだ?」

ミレイアは偶然発見した草ネズミを大量に発見する方法をビエントに説明した。しかし、ビエントはその方法を聞いて少し残念そうな顔をした。

「そうか、しかしその方法は君達だから出来た方法だな、他の駆け出しのGやFランクの冒険者には出来ない芸当だな。しかしサンダー系の魔法が有効なのは新たな発見だ、有り難う、二人とも。」

そこへ検品を終えたルアーナがもどって来て、ビエントに一枚のメモを渡した。ビエントはそのメモを見て笑顔になり、二人に話し掛けた。

「品質も状態も最高だそうだ、流石だな。文句無く依頼達成だ。」

「え?じ、じゃあ。」

「ああ、後でギルドカードを更新したら晴れてAランクに昇格だ。」

「おおおお、やった!」

アルセリオは机の上でガッツポーズを作り声を上げて喜んでいた。その後、ルシアナやミレイア達も依頼書を確認してもらい、文句無く依頼達成となった。

「今カードを持ってくるから魔力を通してくれ、そうしたら晴れて君達はAランクの冒険者だ。」

その後ルアーナが全員のカードと水晶の魔道具を持ってきて、全員が順番に魔力を通し、カードを受け取った。

「やった!すげー。タケルと一緒のAランクだぜ!」

全員がカードを手に歓んでいると、タケルから念話が入った。

『アルミス!今どこに居る?』

『ルシアナさん達全員とギルドに居ますが。』

『丁度良かった、ビエントさんに部屋を用意してもらうようにお願いして!人を助けたんだ、今連れて行く。』   

『判りました。お任せ下さい。』

アルミスはビエントに事情を話し、部屋を用意してもらい、タケルに念話で連絡を入れた。

『タケル様、ギルドに登録するときに使った部屋を使って良いそうです。』

『分かったわ。あと少しで戻る。』

アルミス達は部屋の机や椅子を片付け、タケルが戻るのを待った。


     □□□□□□□□□□□□□□


空を飛び、反応の有った場所に近づくと、魔物に襲われている馬車の一団が見えて来た。

「あんなに居たのか、くそ!マップを広域にしておけば・・・」

タケルは空中で雲斬丸を取り出すと、そのまま魔物に向かい、降り立つと同時に魔物の首を切り落とした。先程から何匹も狩っている新種の魔物であった。予知よりも早いスピードだった為にタケルの存在に気付いた時には首を落とされていた。 

「大丈夫ですか?」

しかし倒れて居る女性と護衛であろう男性は気を失い返事は無かった。

「生きてるな、怪我も無さそうだ。」

タケルは気絶している人物に歩み寄り、確認するとそう呟いた。 

「それにしても・・・貴族なのかな?護衛らしいのも沢山居るし、馬車も豪華だな。取り敢えず、宿かギルドに連れて行こう、アルミスはもう依頼終えたかな。」

タケルはそう呟くと、アルミスに念話で連絡を取った。

『アルミス!今どこに居る?』

アルミスは丁度ギルドにおり、ビエントに話をしてもらい、部屋を確保する事が出来た。

「よし、後は残骸と亡くなった人を回収して戻ろう。」

タケルは魔物に破壊され、散乱している荷物や馬車の残骸を回収し、魔物に殺され横たわっている何人もの兵士の死体を回収した。

「さて、戻るか。」

タケルは気絶している三人を並べると、範囲指定してギルドの部屋に転移した。

「ただいま。この人達が魔物に襲われてたんだ。」

タケルは戻って来るなり、みんなを見るとそう言って気絶している三人を指し示した。

「タケル!この人達・・・大丈夫なのか?」

「ああ、生きてるよ。今は気絶してるみたいだね、魔物の威圧なのか馬車が破壊された時の衝撃かは判らないけど、怪我は無いみたいだね。」

「タケル君、この人達はどこで保護したんだい?」

ビエントが気絶している人達の側にしゃがみ、状態を確認しながらタケルに聞いてきた。

「静寂の谷近くの街道です、そこで魔物に襲われていたんですよ。」

タケルからそう話を聞いて、ビエントは首を傾げて険しい顔をしていた。

「そうか、あの街道は最近は使われなくなった街道なんだがな、何故そんな所を馬車で移動してたのか・・・」   

すると、タケルが思い出したようにビエントに話し掛けた。

「ビエントさん、そう言えばワイバーンの巣の調査の事ですが、幾ら探しても見付からなかったんですよ、かなり広範囲で索敵しましたが、ワイバーンの姿すら確認出来ませんでした、その代わり、ドラゴンとグリフォンの中間みたいな魔物が居たんですよ、恐らく新種の魔物ですね。」

タケルの話を聞くと、ビエントの顔は険しくなり、タケルに話し掛けた。

「新種だと?タケル君、ドラゴンとグリフォンの中間・・・それはいったい・・・」

「あ、それなら実物が有ります、倉庫に行きましょう。」

「ああ、そうだな。では行こうか。」

「アルミス、ちょっとビエントさんに新種の魔物を見せて来るから、何か有ったら念話で知らせて。」

「はい。分かりました、タケルから様。」

タケルはアルミス達にその場を任せると、ビエントに新種を見せる為にいつもの倉庫に向かった。

「タケル君、先程念話と言っていたが、君は念話も使えるのか?」

「ええ、使えますよ、今はかなり特殊な形態で使ってますがね。」

「そうなのか、念話も使えるのか・・・」

「え?どうかしたんですか?」

「いや、もう何も言うまい、忘れてくれ。それよりも、例の新種の魔物を見せて貰っていいか。」

ビエントは倉庫に着いたからか、タケルの規格外さに呆れたからなのか、念話の事を途中で切りあげ、それよりも新種の魔物を見せ欲しいと言った。

「そこそこの数が有るんですが、取り敢えず一体だけ出しますよ。」

「一匹じゃ無いのか・・・・」

タケルは新種の魔物が一匹じゃない事に驚くビエントをよそに、新種の魔物の死体を一体取り出した。

「ビエントさん、これがそうなんですけど、見たこと有りますか?」

「これは・・・・いや、こんな魔物見たこと無い。これが静寂の谷に複数居たのか?」

魔物死体を見たビエントは驚きながらも近くに歩み寄ると、しゃがんで魔物を触りながら、険しい顔をしてそう言った。

「ええ、そうです。それでコイツは結構厄介な能力を持ってるんですよ。」

「厄介な能力?それは一体・・・」

「コイツらはドラゴンみたいにブレスを吐くんですが、単純に炎のブレスじゃなく、幾つかの種類のブレスを吐くんですよ。」

タケルの話を聞いて、ビエントの顔は更に険しい顔になり、顔を青くしていた。

「なっ・・・複数の種類のブレスを・・・なんと厄介な・・・」

「しかし、それよりも厄介な能力があるんですが」

「まだあるのか!」

ビエントはタケルが話してる途中であったが、更に厄介な能力が有ると聞き、驚いて声を上げた。

「え、ええ。そうなんですよ、コイツは【予知】というスキルを持っていて、攻撃をかわすんですよ。」

「【予知】のスキルだと!ブレスだけでも厄介なのに、【予知】のスキルまで有るとは・・・コイツら全部がそのスキルを持って居るのか?」

「そうです。」

「そうか、判った、遭遇した魔物はコイツらだけか?」

「いえ、ロックワームやルビーアント、アイアンイーター等、色々居ましたよ。」

「そうか、どれも珍しいが、静寂の谷でなら遭遇しても不思議では無いな。では他の魔物もまた売るかね、新種は暫く調べないと金額が出せないが、それでも構わなければ出して貰えるか。」

「構いませんよ。すぐにハーピーのお金も入りますからね。全部出しますよ。」

そう言うとタケルはアイテムボックスから魔物を取り出し倉庫の床に並べた。

「毎回大量だな、職人も忙しいが儲かると嬉しい悲鳴を上げていたよ。」

「そうですか、それなら良かったです。」

「では、あの新種の魔物はギルドで調査に入る事になる。もしかしたらまたタケル君に話を聞く事になるかもしれんが、その時は頼む。」

「分かりました、出来る限り協力させて頂きます。」

「では戻ろうか、おーい。スマンが、後は頼む。」

今回はタケルが魔物を出した時点で解体職人が下に降りて来ていて、既に新種の魔物の周りにたむろしていてので、ビエントは声を掛けるとタケルと共にギルドの部屋に戻って行った。

「どう?様子は。」

「ああ、タケル、まだ目覚めて無いな、そっちの用事はもう良いのか?」

「うん、ギルドの調査が入る事になったけどね。」

「そうか、それよりこの人達はどうするんだ?このまま目覚めるのを待つのか?」

アルセリオが寝かされている3人を指し示し、そう聞いてきた。

「本当はそれが良いんだろうけど、いつまでも待ってられないから、ちょっと起こそうか。」

タケルは【再起動】の魔法を使ってみることにみてみた。

「これでどうかな?」

タケルは寝かされている3人に【再起動】の魔法を使ったが、目を覚まさなかった。

「駄目か、違う方法を考えないといけないな。」

タケルはマジッククリエイションを使い【再起動】の魔法を改造する事にした。

マジッククリエイション開始

魔法名 【再起動改】

[効果]

ショックを受け思考を停止してしまった者を通常状態に戻す。
気絶状態から通常状態に復帰させる。
外的要因が有る場合はそれをケアし復帰させる事が出来る。

マジッククリエイション完了

「よし、これでやってみよう。」

タケルは【再起動】を改造して作った【再起動改】を寝かされている3人に使ってみた。すると3人の体が淡く光り、徐々に光が消えて行った。

「どうだ?」

「あっ、動いたぞ!」

寝かされているうちの一人、一番豪華な服を着た身分の高そうな女性の眉が動き、徐々に手や足が動いてきた。

「う、うん、ここは・・・ハッ!サラ!サラ!」

気が付いた女性は隣で気を失っている女性の体をゆすり、何度も名前を呼んだ。


「サラ!起きて頂戴!サラ!サラ!」

すると、サラと言われた女性が目を覚ました。

「ん、んん・・・ハッ!エルネスティーナ様!」

サラと言われた女性が目を覚ますと、隣に寝かされていた男性も目を覚ました。

「う、エルネスティーナ様・・・サラ・・・逃げろ・・・ハ!ここは!」

男性が体を起こして辺りを見渡し、キョロキョロとして、タケル達に気付くと口を開いた。

「貴殿らは・・・それにここは・・・あの魔物はどうしたのだ?!」

女性の護衛であろうか、鎧を身に付けた男性はタケル達に尋ねた。

「落ち着いて下さい、ここはフィナールの街の冒険者ギルドの建物の中です。こちらがギルドマスターのビエントさんです。」

タケルに紹介され、ビエントが一歩前に出てしゃがむと男性と話をしはじめた。

「フィナールの街の冒険者ギルドのギルドマスターのビエントだ。ここで話すのもなんだし、私の部屋に行こう、座って話をしよう。そちらの女性も私の部屋へ。タケル君、君も一緒に頼む、状況を説明してやって欲しい。他の皆は申し訳ないが、食事でもして待っててくれ。」

ビエントはそうそう言うと、まだ状況が解らず困惑している3人を連れてタケルと共に部屋を出ていった。




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