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2章3部フィナールの街編

12話 新米冒険者

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ギルドに魔物を販売した代金を取りに来たタケルは、ビエントから2億5千万もの大金を受け取った。その後パルブス村でタケルがやったことがバレるも、ビエントの興味はゴーレムに有ったようである、ハーピーを倉庫に出した後、ゴーレムを見せる為にビエントを異空間に連れて来て、ビエントにゴーレムと対戦して貰う事にしのである。

「ハァハァハァ・・・」

最初のゴーレムを倒し、更に強いゴーレムと戦い、3体目のゴーレムを倒したビエントは膝を付き、肩で息をしていた。

「流石ギルドマスター、結構やりますね。」

「これでも元Aランクの冒険者だったからな、しかし現役を退いて随分と経つからな、大精霊の加護が無かったら3体目は無理だったな。」

「そうでしたね、それでも充分強いですよ、まだ現役でもやれるんじゃないですか?」

膝を付きながらタケルと話すビエントに対し、ヒールを掛けながらタケルはそう話し掛けた。

「ああ、すまない、ありがとう。・・・タケル君、君達はこんな訓練をずっと続けて来たのか?」

「俺はずっとですが、皆は最近ですね。」

「そうか、どうりで皆強い訳だ。」

(本当はパワーレベリングのお陰なんだけどね。)

「そうかもしれませんね。」

ビエントはそこまで話をすると、少し考えるように黙り、ミレイア達のゴーレムでの訓練を見つめていたが、暫くするとタケルの方を向いて話始めた。

「タケル君、ギルドで新米冒険者の訓練をしているのをさっき話したな。」

「ええ。」

「新米冒険者が実力を付けるのはなかなか難しくてな、訓練を付けてやれる教官も不足しているし、強くなるには魔物を倒すのが早いが、それも新米のうちはままならん。」

「そうですね。」

「そこでだ。・・・・どうだろう、タケル君、あのゴーレムをギルドに貸してくれないだろうか?勿論タダでとは言わん、前金代わりと言ってはなんだが、条件付きだが、全員にAランク冒険者の資格を与えよう。」

「え?試験はしなくて良いんですか?」

先日の話では、高難易度の魔物を倒してそれで判断すると言っていたビエントであったが、いきなり全員にAランクの資格を与えると言って来たので、タケルは思わず聞き返した。

「ああ、それは構わない。私が苦戦したゴーレムをいとも容易く倒す君達を低ランクのままにしておく訳にはいかないからな。」

「それで、どんな条件なんですか?」

「流石に依頼を1つもこなさないで、全員がAランクになるのはマズイからな、何でも良いから以来を3つ受けて達成してくれれば昇格としよう。」

「成る程、判りました。それでその後のゴーレムの件はどうしますか?」

ビエントは腕を組み、俯いて考え込んでいるようであった、少ししてビエントは顔を上げると、タケルに提案をしてきた。

「タケル君、こういうのはどうだろうか。今後タケル君が持ち込む魔物の解体手数料はギルドが負担する。勿論、解体の職人にはちゃんと歩合を支払う。」

「良いですよ。じゃあ、何体かゴーレムを用意しますね、多少の破損なら自動修復で直りますが、念の為に作業用ゴーレムも付けますよ。」

「本当か、それは助かる。タケル君ありがとう。」

ビエントはそう言うとタケルに頭を下げた。

「いえ、こちらこそ、ありがとうございます。」

タケルが手を差し出すと、ビエントはタケルの手を取り、二人は握手を交わした。

「さて、タケル君。早速で悪いんだが、戻ってゴーレムの件をよろしく頼む。」

「ええ、判りました。」

タケルは扉を出現さると、ビエントと共にギルドの倉庫へ戻って行った。

「ではタケル君、闘技場へ行こう。そこにゴーレムを設置して貰いたいんだ。」

ビエントはそう言うと、ギルドの中に戻り、受付の女性と少し話をすると、表の通りへ出て歩き始めた。
 闘技場はギルドから少し話を離れた所にあり、一見大きめの普通の建物に見えた、中に入るともうひとつ入り口が有り、左右には壁沿いに階段が有り、右側は上へ上る階段で、左側は下へ下りる階段である。

「ここは入り口だけで、地下へ行くと控室なんかが有るんだ、右側は観客席に繋がってるんだ。」

ビエントは階段を指し示し、タケルに説明をすると、地下へ続く階段を降りて行った。

「闘技場は掘り下げてあって、その周りが控室や資材倉庫なんかになっているんだ。」

ビエントは地下の廊下を歩きながらタケルに色々と説明していた。闘技場の地価の廊下は魔石により照らされているが、シーバムの遺跡に比べるとかなり薄暗かった。廊下を歩いて行くと、訓練で使うものであろうか、木剣や木の盾など様々な物が置いてある倉庫が有り、扉が開いていたのでそれらが廊下の薄灯りに照されていた。暫く歩くと大きな扉が有り、ビエントがその、扉の前で立ち止まった。

「この扉が闘技場の入り口だ、丁度今は新米冒険者の訓練をしているところだ。」

ビエントが扉を開くと、眩しい光が地下の廊下に差し込んで来た。闘技場は少し狭いサッカーコートの半分程の広さが有り、吹き抜けになっている天井から幾つもの魔石が取り付けられた枠がぶら下げられており、闘技場全体を照らしていた。客席は闘技場をぐるりと囲うように設置してあり、一階席から四階席まであった。闘技場にはビエントが言うとおり、教官らしき人物の指導の元、新米冒険者であろうか、少年や少女達が木剣で打ち合っていた。

「結構居るんですね、みんな冒険者ですか?」

「ああ、そうだ。全員がGランクかFランクの者達だ。」

タケルがビエントと話をしていると、休憩時間になったのか、皆打ち合うのをやめて、その場に座る者、素振りを始める者、教官らしき人物に話しかける者、様々であった。

「ちょっと声でも掛けてくるか。」

ビエントはそう言うと新米冒険者達の方に向かい歩いて行った。

「あ、ギルドマスター。こんにちは!どうされました?」

教官らしき人物がビエントに気付き、挨拶をしてきた。

「ああ、訓練ご苦労様。どうかね?彼等の調子は。」

教官らしき人物はビエントに近付くと、少し険しい顔をして話始めた。

「それが・・・今回の奴らはどうも訓練に身が入って無い奴が多くて・・・自分の力不足と言うか、自分のランクがCランクなので馬鹿にされてるというのも有るかもしれませんね。」

「そうか。ああ、すまない、タケル君。彼は今回、新米冒険者の訓練を担当してくれたカルロ、Cランクの冒険者の剣士だ。」

ビエントに紹介され、カルロはタケルに目をやると、ビエントがカルロにタケルを紹介した。

「カルロ、彼はタケル君だ。」

カルロはビエントにタケルを紹介されると、驚いたようにタケルの事を見た。

「タケル?!黒髪に黒い瞳・・・それじゃあ、初日でAランクになった凄腕の冒険者のタケルですか?」

カルロはタケルの容姿を確認すると、興奮した様子でビエントに尋ねた。すると、それを見たタケルがビエントの方を見た、まるでなんでカルロが自分の事を知っているんだ?とでも言いたげな表情であった。

「あ、いや。私は言い触らしたりしてないぞ、しかし記録としてギルドには残ってるんだ、職員なら誰でも見ることが出来るし、きっとそこから漏れたんだろう。」

タケルはビエントの釈明を聞き、溜め息をつくと口を開いた。

「ハァ・・・まあ仕方無いですよね、あっ、カルロさんでしたっけ?タケルです。よろしく。」

タケルが握手をしようと手を差し出すと、カルロは掌を服で拭いてタケルの手を握った。

「か、カルロです、Cランクの冒険者をしてます。お、お会い出来て光栄です。 」

カルロは目を輝かせ、まるで憧れの人を見るかのようにタケルの事を見ていた。

(なんだかミケーレさんと同じ匂いがするな・・・)

「そ、そうですか。あ、あれですね。訓練大変ですね。」

タケルは当たり障りの無い話をしてやり過ごそうとしていた。

「そうなんですよ、自分がCランクだからなのか、どこか自分の言うことを真面目に聞いてないんですよね。」

「そうなんですか。大変ですね、頑張って下さい。」

タケルは早々に話を切り上げようとしたが、カルロが話を続けた。

「全く、人に物を教わる態度じゃ無いんですよ、冒険者は実力が無ければ死ぬ事も有る危険な職業だって言うのに!」

カルロの話を聞いていたビエントが話に入って来た、どうやら火が付いてしまったようである。

「そうなんだ、昔は冒険者になる者は覚悟を持ってなる者ばかりだったんだが、最近は高ランク冒険者の華やかな部分だけをみて、憧れや軽い気持ちでなる者が多くてな、そんなんだから初の魔物との戦闘で逃げ帰って来るものや、依頼を簡単に途中で放棄する奴も居るんだ。だからギルドが希望者に対し初心者講習も兼ねて訓練をしてるのに、それすらも真剣にやらない奴が多いんだ。」

ビエントも相当溜まっていたのであろうか、不満が次々に出てきた。

「タケル君。折角だから、彼等を少し揉んでやってくれないか?」

「え?俺がですか?」

「ああ、解体の手数料を今回のハーピーからにするから、頼む。」

ビエントはそう言って頭を下げた。

「別に良いですけど、もしトラウマとかを植え付けちゃったら御免なさいね、先に謝っておきます。」

タケルはビエントの話を聞き、少しだけ腹を立てていたのである。人に教えを乞うならもっと謙虚であるべきで、尊敬しろとは言わないが教えてくれる相手を敬う位の事はするべきだと考えていたからである。だからタケルはカルロの事を軽く見ている彼等に少し痛い目を見て貰おうと考えたのである。

「じゃあ、ちょっと行ってきますね。」

タケルは敢えて笑顔を浮かべ、新米冒険者達の元へゆっくりと歩いて行った。

「やあ、こんにちは。新米冒険者の一人達。」

タケルはわざとらしく新米冒険者達の事をそう呼んだ。そう言われた新米冒険者達は一斉にタケルの方を見た、特に気にする事も無くすぐに視線を戻す者、周囲と話ながらチラチラとタケルを見る者、あからさまにタケルを睨み付ける者。反応は様々であった。

「君達、少し身が入って無いんじゃない?そんなんじゃ冒険者として上のランクに上がる前に死ぬか引退するハメになるよ。ああ、冒険者だったっていう証だけが欲しかったのかな?でもGやFランクのギルドカード見せられてじまんされてもね、誰でもなれるよ!って思うよね。自分の命を守る為の講習を軽んじる位だから、きっとそうなんでしょ?」

タケルはわざとらしく新米冒険者達を煽った、何人かは下を向いていたが、ただ悔しがっているようであった。そして多くの者が睨み付けていた。すると数人が立ち上がり、タケルの元へ歩み寄って来た。その顔はタケルへの怒りに満ち溢れていた。

「おい!テメー!今なんつった?俺らがすぐに死ぬ?引退する?ふざけんな!俺はオメーみてーな奴と違ってすぐにBランク、いやAランクになるになるんだよ!」

「そうだよ、お前は何様だ?偉そうにベラベラと!」

タケルの元にやって来た新米冒険者は全員がタケルより年齢が少し上という感じであった。年下に言われ余程頭に来たのか、目を吊り上げタケルを睨み付け、今にもキスしてしまいそうな程に顔を近付けていた。

(おお、なんだかヤンキーに絡まれてるみたいだな、こっちでも同じような感じなんだな。)

「へえ、Aランクの冒険者にね、でもさっき少し見てたけど、訓練は全然真剣じゃ無かったし、休憩時間も寝転がってだらけてたよね。そんなんで強くなれると思ってるの?」

「はあ?ウルセーな!俺が訓練をどうやろうがオメーには関係ねーだろうが。」

「ああ、関係無いね、アンタが初の依頼で魔物に遭遇してケガをしようが、死のうが関係無いね。どうせ俺より弱いんだし、そんな奴の事なんか気にする訳ないよね。」

タケルが煽ると、一人がタケルの胸ぐらを掴んで声を上げた。

「あ?この俺がオメーみてーなガキより弱いってのかよ!ふざけるな!そこまで言うならかかって来いや!ぶっ飛ばしてやる!」

「え?やる?良いよ。アンタは真剣を使っても良いよ、俺はその木剣でもアンタを倒せるし、アンタの剣は当たらないから。」

「ふざけやがって!」

怒った新米冒険者は武器を取りに戻り、真剣を手に戻ってくると、タケルに剣を向け、先ほどまで使っていた木剣をタケルに投げ渡した。

「泣いて許しを乞いても許さないからな。」

「その言葉、そっくりそのまま返すよ。」

「舐めやがって!もう許さねー!腕の一本や二本は覚悟しろよ!」

そう言うと新米冒険者は剣を振り上げタケルに斬りかかった。

(遅い、遅すぎる、それに剣の持ち方もなってないし、ダメダメ過ぎるな。)

タケルはヒラリと避けると、木剣で冒険者の背中をトンと押した、すると新米冒険者は頭から倒れ込み、頭を打ったのか頭を抑え悶えていた。

(そんなんで痛がってたらやられちゃうじゃん、剣も手放してるし。)

タケルはその様子を暫くそのまま見ていた。新米冒険者は痛みが引いたのか、剣を拾うと再び斬りかかってきた。タケルは再びヒラリとかわすと、木剣を投げ捨てアイテムボックスから細い木の枝を取り出した。

「アンタに木剣はちょっと過ぎるからね、アンタにはこの木の枝で充分だよ。」

「くそっ!舐めやがって!おらあ!」

新米冒険者は変わらず同じように斬りかかってきた。しかしタケルは片手で枝を持ち新米冒険者の剣を弾いた。辛うじて剣を手離さなかったが、そのまま軽く新米冒険者の顔を枝で叩くとまたも剣を離し顔を抑えた。痛がる新米冒険者の顔にはうっすらと赤い筋が浮かび上がっていた。 

「ハア・・・また剣を離して・・・アンタ、相手が魔物だったら死んでるよ。」

タケルはすぐに剣を手放してしまう新米冒険者に呆れ、声を掛けた。
その後タケルは何度も斬りかかって来る新米冒険者の剣をその都度木の枝で弾き、最後に剣を弾き飛ばし、少し強めに木の枝で叩くと、新米冒険者は弾き飛ばされ、気を失ってしまった。 

「さて、アンタはどうする?」

タケルは気絶してる新米冒険者と共にタケルに歩み寄って来た奴らに向かい、木の枝を向けてそう問い掛けた。

「あ、いや。その・・・」

「どうした?怖いの?」

タケルは少しだけ威圧を使い話し掛けた。

「ひいっ!」

タケルに威圧を向けられた新米冒険者は尻餅を付いて失禁してしまい、ガタガタと震えてうずくまってしまった。

「さて、皆さん。今日のこの訓練は今後皆さんが命を落とすような事を少しでも減らすための訓練です、そこで気絶してる奴のように戦闘中に剣を手放してしまったり、相手の力量を見謝ると、相手が魔物だったら死んでしまいます。」・・・・ 

タケルは新米冒険者達にその後も話を続けた、訓練を真面目に行わない事が如何に愚かな事か、諭すように話し掛けた。

「と、言う訳で皆さん判って貰えたかな?」

タケルは話を終え、新米冒険者達の顔を見ると、真剣に話を聞く者、自分の愚かさに気付いたのか俯いてしまった者、自分は違うとでも言いたげな態度を取る者等反応は様々であった。

「ふむ。まだ解ってない人も居るようですね。仕方無い、少々手荒いけど皆さんに身の程を理解してもらいましょうか。」

タケルはそう言うと、しゃがんで地面に手を付くと、闘技場の地面の土を使い【メイクゴーレム】の魔法でオークですらそっくりのゴーレムを何体か作り上げた。

「さて、皆さんには即席でパーティーを組んで貰いこのオーク型のゴーレムと戦って貰います。」

タケルがそう言うと新米冒険者達は皆青い顔をしていた。
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