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2章3部フィナールの街編

1話 フィナールの街

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パルブス村の発展の為に様々な物を作り、大精霊の泉まで作った。洞窟で助けた女性達はパルブス村に残る事になり、タケル達は元の顔ぶれでフィナールの街を目指し馬車を走らせていた。

『なあ、タケル。もしかしてタケルならわざわざ馬車で移動しなくても街まで行けるんじゃないか?』

アルセリオが念話で素朴な疑問としてタケルに聞いて来た。

『多分ね、行った事は無いから転移は使えないけど、目視出来る範囲は飛べるからね、それを繰り返せば行けるんじゃないかな。』

『やっぱりか、転移で行けばすぐに行けるのに何でわざわざ馬車で移動してるんだ?』

『何故って俺達は旅をしてるんだよ、旅ってそういうもんだろ?』

『そういうもんね・・・・俺には理解出来ない考えだな。』

タケルはその気になればもっとずっと早く目的地に着く事が出来るが、タケルは敢えて馬車での移動を望んだ、この世界をゆっくりみて回り、楽しみたいと思ったからだ、前世では遠くに旅行をするほど家は裕福では無く、社会人になったら時間が無く、やはり旅行に行くことは殆ど無かった、その為今回はゆっくりと移動を楽しみたいと思って居たのである。

『ほっ、でもそのお陰で大森林の中の遺跡を発見して、アルセリオ殿達を復活させる事が出来たんだの。』

『う、そうだな、タケルが旅を楽しまなかったら、まだ封印されてたかもしれないんだな。』

サビオに言われアルセリオはタケルが旅を楽しんでくれて良かったと改めて感じていた。

『それに、馬車で移動したお陰でフェリシアさんやルチアさんを助ける事が出来て、カルロスさんとも知り合えたしね。馬車で行くのんびりした旅も捨てたもんじゃ無いよね。』

タケルが呑気にそう言うと、サビオがタケルに話し掛けた。

『ほっ、タケル殿、この馬車の移動速度は全然のんびりでは無いぞ、本来なら一日に何度か馬を休ませなければならないからな。しかしゴーレム馬であるエスペランサと疾風は休憩要らずでずっと走り続けられるからな、だから通常の馬車での移動と比べて何倍も移動してるんだ。』

『あれ?そう、アハハハハ・・・・』

タケルはサビオに言われ笑って誤魔化した。

『タケル様、街が見えて来ました。』

『え?どこ?何も見えないよ。』

アルミスがタケルに報告すると、アルセリオはまだ見えないと行って遠くを目を凝らして眺めていた。しかしアルミスのスキル鷹の目や、魔法の遠視が無いと見えない距離であり。アルセリオは暫く遠くを眺めていた。

『あっ!俺にも見えて来たぞ!結構大きいな、お?壁の外にも畑が有るんだな、平和なのかな?』

『森からは随分と離れてるからね、さっき街道から離れた所に遠見のやぐらも有ったし、安全には気を使ってるようだね。』

『なるほどな、出来た領主のようだな。』

アルセリオは王族である為か、そういった細かい施策等が気になるようであった。

『さて、みんなステータスの偽装は大丈夫かな?』

タケルが確認すると、全員以前に改ざんしたままで残っていた、タケルは問題が無い事を確認すると、みんなに念話で話し掛けた。

『ステータスは問題無いみたいだね、後はサビオさんとアルミス以外は身分証を持って無いから、田舎の出身だと言って誤魔化してね。』

『ああ、分かった。』

アルセリオを筆頭に全員が返事をして、街へ入る準備が整い、ゆっくりと馬車を走らせ、街の入り口のすぐ近くまでやって来た。

街の壁はそこそこ高く、パルブス村の倍の六メートルはある壁が街をぐるりと囲っていた、壁の周りは堀になっており、濁った水が貯まって深さは判らなかったが、かなり深そうであった。堀に橋が掛けられており、大型の馬車がすれ違える程に大きい、そしてその先の門も大きく、橋と同じ位の幅で高さは三メートル程であるが、頑丈そうな鉄の扉が持ち上げられており、有事の際は一気に落として門を閉じる仕組みのようだ。
 そして橋の手前には兵士の詰所と検問所が有り、街へ出入りする人々をチェックしていた。街から出ていく者はそのまま素通りの者も居れば、一旦詰所に入ってから外へ出て行く者が居たが基本自由に出られるようであった。
しかし街へ入るのは厳しく制限され、一人一人兵士が話を聞き、身分証を皆が見せており、馬車の中まで調べていた。その為、街へ入る人達の列が長く続いていた。

『結構しっかり調べるんだな。この分だと随分と時間掛かりそうだね。』

タケルは自分達の番になるまで時間がまだ掛かると思い、馬車から降りて少し歩いてみる事にした。

「へえ、色んな人が居るなあ、あれは商人かな?お、こっちは冒険者のパーティーかな?ベテランから駆け出しまで様々だな。普通の住人っぽい人も居るな。あれは・・・随分と痩せてるな・・・」

タケルは一通り列を眺めて馬車に帰ろうとすると、タケルに声を掛けて来る者が居た。

「おい、お前!」

タケルは自分の中の事だとは思わずスタスタと歩いていた。

「おい、お前だ!そこの歩いているお前!」

それは門の周辺を警備している兵士であった、兵士はタケルの肩を掴み、振り向かせようとしたがビクともしなかった。

「なっ!くっ!」

兵士はタケルが反抗したと思い、怒りだした。

「貴様!反抗するのか!」

そこで初めてタケルは自分の事を呼んでいたと判り、振り向いた。

「え?何でしょう?」

タケルが振り向くと、兵士は剣を抜きタケルに向けて構えていた。

「貴様、さっきから呼んでいるのにも係わらず、立ち止まらず、呼び止めたら反抗しただろ!何者だ!」

タケルは兵士が何を言ってるか判らなかったが、どうやら何か勘違いして怒っている事は判った。

「あ、ごめんなさい。田舎者なもんで色々珍しくて見てて気付かなかったんですよ。」

「なんだと?そんな言い訳が通ると思ってるのか!」

兵士は聞く耳を持たずにドンドン一人でヒートアップしていっていた。

(面倒くせーな・・・・)

「本当にすいません。どうかこの通りです。」

タケルは兵士の機嫌を直そうと、ワザとらしくペコペコと頭を下げた。しかし兵士のヒートアップアップした感情は収まる事は無かった。

(どんだけ短気なんだコイツ・・・)

街に入るために並んでいる人々が、だんだんとタケルと兵士のやり取りに気付き、ザワつき始めた。

「あの少年、厄介な奴に目を付けられたな。」

「またアイツか、俺の知り合いもアイツに絡まれて大変だったって言ってたよ。」

タケルは周囲の声を聞いて、成る程。と納得した。

(コイツはこうやって嫌がらせするのが趣味のようだな・・・)

兵士が、周囲のざわつきに気付き、事を早めに終わらそうとしてきた。

「チッ、そろそろ潮時か、おい!貴様!見逃してやるから置いてくもの置いて行きな。」

兵士は遠回しに金目の物を寄越せと言ってきた、その立場を利用して強盗まがいの事をいつもしているようである。

(は?何言ってんだ?コイツ・・・)

「あの、兵隊さん、どういう事でしょうか?」

「あ?貴様!俺様の言う事が聞けないってのか?よし、お前は諜報活動を行った罪で拘束してやる、逆らったら斬り殺して魔物のエサにしてやる。」

兵士はすぐに自分の言う事を聞かないタケルが気に入らないらしく、タケルを罪人に仕立てようとしてきた。

「はあ、穏便に済ませようとしたら調子に乗っちゃって。おっさん、こんな事続けていたらいつか痛い目を見るよ。悪い事は言わないから早く仕事に戻りなよ。」

タケルは少しだけ威圧を使い兵士に向かって話し掛けた。

「ぐ、き、貴様!何て威圧だ!さては本当に他国の諜報員だな、もう言い訳は出来んぞ!死ね!」

兵士はタケルに向かい斬りかかって来た。

「遅いな、アクビが出そうだ。」

タケルは剣が振り下ろされ、当たる寸前までその剣をジッと見ていた。それでもタケルはその剣を避けられる自信があったからである。
 その時であった、振り下ろされた剣にナイフが当たり、剣士の剣が弾かれた。

「おい、あんた。ずっと見てたが言い掛かりにも程が有るぞ。」

長い列の中から一人の屈強な男性が歩み出てきて兵士に対し声をあげた。 どうやらこの男性の仲間がナイフを投げたようだ。男性の後ろで投擲し終わったポーズをしていたローブの人物が居た。

「なっ!貴様!何を!さては貴様達もコイツの仲間だな!良いだろう、お前も一緒に切り捨ててやる!」

兵士は男性がタケルの仲間がだとして男性に向け剣を構えた。

「おいおい、そんなんで俺を殺せると思うのか?」

男性は剣を向けられても全く怯むこと無く、兵士向かって話し掛けた。

「うるさい!黙れ!この諜報員め!」

兵士が男性に斬りかかったが、男性はヒラリと剣をかわし、すれ違いざまに兵士の足を引っ掛けると、兵士は顔から地面に突っ込んで転んだ。

「バッ・・・ぐっ、貴様、良くもやったな!」

そこへ騒ぎに気付いた他の兵士が駆け付けて来た。

「そこ!何をやっている!」

「良いところに来た。おい!コイツらは他国の諜報員だ!その証拠に俺を殺そうとしたんだ!殺してしまえ!」

兵士は駆け付けた応援の兵士向かいそう叫んだ、駆け付けて来た兵士は訳が分からず剣を抜き、男性に向け剣を構えた。

(何だかテンプレッぽくなってきたぞ。)

「そこの男性、詳細は判らないが、ウチの兵士が倒れてるんだ、詳しく話を聞く為に武器を捨ててこっちへ来て貰おうか。」

応援の兵士が男性に言うと、男声は呆れたように嘆息し、応援の兵士に向かい話し掛けた。

「はあ~、全く、お前は新人か?俺の知り合いも事を知らんとは・・・それに、俺はそこの少年がコイツに因縁を付けられてたから助けただけだぜ。それにコイツは何もしてない少年に斬りかかったんだぞ!とっちが悪者なんだか。」

男性は応援の兵士に事のあらましを話した、しかし応援の兵士は剣を下げる事は無かった。どちらが本当の事を言ってるのか判らずに、応援の兵士は迷っていたのである。

「おい!何をしている!やめんか!」

少し年配の兵士がやって来て、応援の兵士に対し声をあげた。

「た、隊長!実はこの者は他国の諜報員との嫌疑が有りまして。」

隊長と言われた男性は応援の兵士が言う男性を見ると。応援の兵士を怒鳴り付けた。

「バカもん!お前はこの街で兵士をやっていてフォルティスを知らんのか!」

「え?フォルティスってAランク冒険者で、あの剛剣のフォルティスですか?」

応援の兵士は驚いていた、フォルティスはフィナールの街を拠点として活動するAランクの冒険者でその実力はワイバーンとも互角に戦えると言われている実力者であり、自分が剣を向けている男性がそのフォルティスだと知ったからだ。

「も、申し訳ありません。剛剣のフォルティスさんだとは知らず失礼致しました。」

応援の兵士は剣を鞘に納めるとフォルティスに頭を下げた。

「いや。良いんだよ、あんたは自分の仕事を忠実にこなしただけだ、悪いのはアイツかな。」

フォルティスは転んだまま、未だに地面に寝転がっている兵士を指差した。指差された兵士は男性がフォルティスだと知り青ざめていた、他国の諜報員どころか、男性はその名を誰もが一度は聞いた事がある程の有名人、剛剣のフォルティスだったからである。

「いや、俺は、その・・・」

「マルコス、立て、いつまで寝てるつもりだ!」

隊長が寝転がっている兵士、マルコスにそう言うと、マルコスは青ざめた顔のまま立ち上がり、プルプルと震えて下を向いていた。

「マルコス、事の詳細を話して貰おうか。」

隊長がマルコスに詰め寄るが、マルコスは下を向いたまま何も話そうとしたなかった。

「その人は俺に言い掛かりで因縁を付けてきて、置いてくもの置いてけと言ったんで、聞き返したら俺の事を諜報員だと騒ぎ始めて、ついには斬りかかって来たんですよ。」

タケルはこのままではらちが明かないと思い、隊長に事のあらましを話した。すると、タケルの話を聞いた隊長の顔が険しくなり、マルコスに問い詰めた。

「本当か?マルコス、黙ってちゃわからんだろ!」

「大勢の人が見てたんです、周りの人に聞いて見て下さい、それでフォルティスさんが最初から見ていたそうで、危ない所を助けてくれたんですよ。」

隊長は列に並んでる人々に視線を移すと、多くの人が隊長を見てコクコクと頷いていた。隊長はそれを見て、フォルティスに視線を移すと、フォルティスも同様に頷いた。隊長はマルコスの方を見て静かに話始めた。

「マルコス、お前の良くない噂は俺の耳にも入って来ている。フォルティスもこう言ってるんだ、これ以上看過出来ない。事と次第によってはお前は処罰されるだろう。おい、マルコスを連れて行け。」

隊長は応援の兵士にマルコスを連れて行くよう命令すると、応援の兵士はマルコスの腕を掴み後ろ手に回し、鎧の襟部分を掴んで門の方へマルコスを連れて行った。

「ミゲルのおっさん、相変わらず苦労してるな。」

フォルティスが隊長に向かいそう言うと、ミゲル隊長は短い溜め息をつくと、話し始めた。

「ああ、兵士は安月給だからな、ああいう輩が後を絶たん。」

ミゲル隊長はそう嘆くと、タケルの方を向いてニコッと笑った。

「少年、迷惑を掛けたな、ケガは無いか?」

「ええ、お陰さまで、何ともありません。」

「少年はこの街の住人では無さそうだな、一人か?」

隊長は辺りを見渡してタケルに聞いて来た。

「あ、いえ。列の後ろの方に連れが居ます、田舎者なんでウロウロと見て回ってたらこんな事になってしまって。」

「そうか、あまりウロウロすると危ないからな、この辺りも魔物が出る事も有る、その連れとなるべく一緒に居た方が良い。フォルティス、お前も大人しくしていてくれよ。」

「おいおい、ミゲルのおっさん勘弁してくれよ、俺はもう落ち着いたんだよ。」

「ハッハッハッ、そうだな。しかしお前みたいなのが暴れたらこの街に止められるヤツは居ないんだ、頼むぞ。」

ミゲル隊長はそう言って笑いながら門の方へ戻って行った。
 タケルはミゲル隊長に軽く会釈をして見送ると、フォルティスの方を向いて頭を下げた。

「あの、危ない所をありがとうございました。」

「ん?おう、気にするな、ケガが無くて良かったな。早く連れの所に戻った方が良いぞ、列が動く。」

「はい、ありがとうございました。」

タケルは再び頭を下げ、馬車の方に戻って行った。
フォルティスも列に戻ると仲間のローブを着た人物に話し掛けた。

「珍しいな、お前が他人の厄介事に首を突っ込むなんて。」

「ああでもしないと、アナタが兵士を殺しかねなかったからよ。」

ローブの人物は声と喋り方で女性だと判った、その女性が更に話を続けた。

「でも、私が助けたのは少年じゃなくてあの兵士よ。」

「あ?俺はアイツを殺そうとしたりしてないぞ。」

フォルティスが女性に言うと、女性は鼻で笑ってその後黙ってしまった。

「フッ。」

「なっ、おい、今鼻で笑ったな。おい」・・・・・

フォルティスが一人喚いて居るのを他所に置いて女性は考え事をしていた。

「あの少年、何者だ?上手く隠しては居たが、恐らくフォルティスよりも強い。そして何故精霊の気配が・・・」

女性はタケルの強さに気付いていた、そしてタケルから精霊の気配を感じ取り、不思議に感じていた。

タケルは馬車に戻るとアルミスに話し掛けた。

「色んな人が居るね~。楽しみだよ。」

タケルは何事も無かったように、街の中に入る事を楽しみにしていた。
 そして列が動き、街へ少しずつ近付いて行った。

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ようやくフィナールの街に着く事が出来ました。次回は冒険者ギルドが出せれば良いな。

それでは、今後も宜しくお願い致します。
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