えっ!?俺が神様になるの? チートで異世界修行物語。

偵察部隊  元リーコン

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2章 少年期 2部 パルブス村編

3話 浄化

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オークの洞窟で保護した女性達を家に送り届ける為にタケル達は出発した、しかし最初の村は魔物に襲われ廃墟と化していた、タケルが見て回ると一人の男性と出会った、男性はこの村の元住人で、この村に用が有る人向けに看板を取り付けに来ていた。男性はレイナルドと言いフェリシアと感動の再会を果たした。タケル達の馬車はフェリシアの母が住む新しいパルブス村へフェリシア達を送り届ける為に馬車を走らせていた。

「あの先に見える丘の上に新しいパルブス村が有るんですよ!」

先頭を行くレイナルドが後方のタケル達に聞こえるように大声で伝えて来た。タケルは手を上げ了解したことを伝えると、レイナルドも手を上げると、前を向いて手綱を握り直した。

「フェリシアさん、もう少しみたいですよ。ほら、あの丘の上らしいです。」

タケルの言葉にフェリシアは身を乗りだし丘の上を見つめていた、その目は不安と期待が入り交じっているのか、少しだけ悲しげに見えた。

「お母さん・・・」

丘の上を見つめフェリシアが呟いた。

「もうすぐですからね、余り身を乗りだして落ちないで下さいよ。」

はやる気持ちを抑えられないのか、フェリシアは先程よりも身を乗りだし、足がプラプラと浮いていた。

「ご、ごめんなさい。私ったら・・・」

「ハハハ。仕方有りませんよ、けど気を付けて下さいね。」

そんなやり取りをしている時、馬車は目的の丘の麓まで来た、道は麓から丘の頂上へ向かい斜めに続いており、なだらかな坂になっている。馬車は坂道をゆっくりと登って行き、村の入口に着き停車した。新しいパルブス村は以前の村と同じ位の木の壁で囲われており、門も木製でそんなに頑丈そうには見えなかった。

「魔物に襲われたらまた破られちゃうな。」

タケルは村の壁を見てポツリと呟いた、すると沢山の馬車が村の入口に停まった事で何事かと自警団らしき人物が数名馬車に歩み寄って来た、レイナルドがタケル達が乗る馬車を指差しながら一人の自警団らしき人物に何かを話して居るのが見えた、するとその人物は慌てて門の中に入って行った。
フェリシア達が馬車から降りてレイナルドの馬車に集まっていた、門番の男性は最近村にやって来た為、フェリシア達の事を知らず、門の外で待つように言われたからだ。暫くすると門の向こうが騒がしくなってきた、そして誰かが門の向こうから走り出して来た。そして辺りを見回すと何かに気付いたようにハッとして、大きな声をあげた。

「フェリシア!」

「お母さん。」

その人物はフェリシアの母親であった、フェリシアの母親はまた走り出すと、フェリシアもまた走りだし、二人は抱き合うと、お互いを強く抱きしめた。

「ああ、フェリシア、フェリシアなのね、まさか生きていたなんて、ああ女神様、ありがとう!」

「お母さん、私も村に行ったらあんな状態で・・・もう会えないと思った!!」

二人は抱き合いながら涙を流し、互いの無事を喜びあっていた。
 タケルはそんな二人を優しい目をして見つめていた。するとアルセリオがタケルの肩を叩き、タケルに話し掛けた。

「タケル。良かったな、あの二人出会えて。」

「ああ、そうだな。」

タケルがアルセリオの言葉に答えると、フェリシアと母親がタケル達の元に歩み寄って来た。

「お母さん、彼がタケルさん。タケルさん達に助けて貰ったのよ。」 

「ああ、アナタがフェリシアを、ありがとうありがとう・・・」

フェリシアの母親はタケルの手を握ると頭を下げ感謝していたが、感情が昂り、崩れ落ちるように膝を付き、タケルの手に頭を付けて泣き始めた。
 タケルは母親の泣き崩れて感謝している姿を見ると、自らも膝を付き母親に優しく話し掛けた。

「フェリシアさんのお母さん、良いんですよ、お礼の言葉は十分に頂きました。それよりもフェリシアさんを良く頑張ったと褒めてあげて下さい。」

タケルは母親にそう言うと、他の女性に達に視線を移した。
ラウラは両親と、リアナは父親と、エレナは兄弟と抱き合い喜んでいるのが目に入った。しかしパウラだけは一人で立ち竦み、他の女性の家族との再会を離れて見ていた。それを見たタケルはパウラの元へ近付こうとすると、一人の男性がパウラの元へ歩み寄りパウラに話し掛けたいた、その男性の話を聞いたパウラは顔を両手で抑えてその場に座り込んでしまった。
タケルがパウラに近付くと、パウラの泣き声が聞こえて来た。

「う、う、お父さん・・・お母さん・・・アベル・・・私一人でどうすれば・・・・」

どうやらパウラの両親と姉弟が亡くなり、パウラは一人になってしまったようであった、パウラと話をしていた男性は、パウラにどう接して良いか分からないと言う感じで、悲しそうな顔をしてパウラの事を見つめていた。
 すると、男性がタケルに気付き話し掛けて来た。

「君がパウラ達を助けてくれたのか?」

「ええ、たまたまですけど。」

「それでもありがとう、何とお礼を言ったら良いか、本当に感謝する。」

男性はタケルに対し頭を下げ感謝を述べた。

「良いんですよ、もう感謝の言葉は十分に頂きましたから。」

男性はタケルの言葉を聞くと頭をあげ、手を差し出してきた。

「いや、この感謝の気持ちはどれだけ言っても言い足りない位だ。ああ、自己紹介が遅れてしまったな、カルロスだ、今はこの新しいパルブス村の村長をしているんだ。」

タケルは差し出されたカルロスの手を握り握手を交わした。 

「タケルです。ちょっとお話が有るんですが、宜しいですか?」

「ん?なんだ?」

「いや、ちょっと人目につかない所でお願いします。」

タケルはカルロスに対し、真剣な眼差しで人目に付かない所をお願いした、するとカルロスはタケルの真剣な眼差しに何かを感じたのか、自分に家に来るよう言ってきた。

「判りました、あともう一人連れて行きます。アルミス!ちょっと来てくれる?」 

アルミスはタケルに呼ばれると凄い速さでタケルの元へやって来た。その早さにカルロスは見間違いなのかと目を擦っていた。

「はい、タケル様。」

「アルミス、こちら村長のカルロスさん。カルロスさん、アルミスです。アルミスは彼女達を見つけた時に一緒に居たものですから。」

カルロスはアルミスと握手を交わすとタケルに話し掛けた。

「判った。俺も話が有ったんだ、ちょうどいい、着いて来てくれ。」

『みんな、ちょっと村長と話をしてくるから待ってて。女性達の事も宜しく。』

タケルは村長の後を付いて行きながら、念話でみんなにお願いをした。パウラの事は勿論だが、馬車の女性達の事も気になっていたのである。
 暫くカルロスの後を付いていくと、一件の家の前で立ち止まり、カルロスが振り返った。

「着いたぞ、ここが俺の家だ。」

その家は平屋でまだ新しいが、村長の家としては少し小さいく感じられた。

「狭いが入ってくれ。」

カルロスは扉を開けるとタケル達を招き入れた、家の中は必要最小限の物しか無く、生活感が感じられなかった。

「村自体を新たに作ってるからな、忙しくて家の事まで手が回らなくてな。何も無いが取り敢えず座ってくれ。」

カルロスはタケル達に座るように言ったが、タケルは首を横に振った。

「カルロスさん、実は話って言うのはまず見て貰いたいが有るんですが」

「見て貰いたい事?なんだ?」

タケルは無言でオークの洞窟でオークに貪られていた女性の遺体を幾つか床に出して並べた。

「こっ、これは!アマンダ!そっちはカミラ・・・・」

「オークの洞窟で回収した女性達です。他に判る方は居ますか?」

「いや、知ってるのは二人だけだ・・・そうか、彼女達の事だったから見て貰いたい事だったんだな。」

「ええ、彼女達は物では有りませんからね。」

タケルは敢えて事と言ったのであった、人と言うには少し憚られはばかられたので、物では無く事と言ったのであった。

「でも良かった、身元が判って、何処の誰だか判らないまま埋葬するのは可哀想ですからね。」

「ワザワザ遺体も回収してきてくれたんだな、重ね重ね有り難う、感謝する。」

カルロスは再び頭を下げ感謝を伝えた、改めて椅子に座ると、カルロスは神妙な面持ちになり、タケルに問い掛け始めた。

「な、なあ、タケル君、君が回収してきてくれた彼女達の遺体なんだが、やけにキレイだったな、それに・・・パウラ達もその・・・」

カルロスは何か言いにくい事が有るのか、歯切れが悪く、なかなか話が進まなかった。

「・・・・ああ!くそ!思いきって聞くよ、タケル君。オークは通常拐った女性を犯して、自分達の子供を産ませるんだ、そしてその何処かの過程で女性が死んだら、その死体を貪り食うんだ、これは広く知られてる事で、俺は実際に見たことが有るから間違いないだろう。」

カルロスはオークに拐われた女性がどうなるかを知っていた、そして何かを確かめたいようで、カルロスは話を続けた。

「それで、そういった女性が希に助け出される事が有るんだが、その状態は酷いもので、助かっても後遺症が残ったり、精神に異常をきたしたり、中には自ら命を断つ者も居る。オークに拐われるとはそう言う事なんだ。」

タケルは静かにカルロスの話を聞いていた、タケルが見た物はまさしくそれで、タケルが懸念していた事は間違いでは無かった。カルロスが話を続けたのでタケルは引き続きカルロスの話しに耳を傾けた。

「しかし、パウラは、いや、フェリシア達も、それどころか馬車に居た全員がキレイな顔をしてるし、特に変わった所は無い、一体どうなってるんだ?」

タケルは少し返答に迷った、彼女達の今後を考えて記憶を消して改ざんしたのに、真実を知る人物を新たに作って良いものか悩んでいたからである。

「タケル君、もし何かを知っているなら、どうか全てを話して貰えないだろうか、真実を知った事で彼女達の事を差別したりはしないし、蔑んだりもしない事を村長として、女神様に誓って約束する。」

タケルはカルロスの誠実さを信じ、全てを話すことにした。

「判りました、俺がお話するのは村長であるカルロスさん、貴方だけです。貴方を信用してお話し致します、今後この話を話す相手はよく厳選して下さい。」

カルロスはタケルの目を見て静かに頷いた。

「俺がオークの居る洞窟で見たものは、複数のオークに犯されている女性達でした、中には死体を貪っているやつも居ました・・・・・・・」

タケルはカルロスに洞窟で見た事を全て話した、オークを殺した事、オークに孕まされ捕らわれていた事、そして保護した後に魔法で堕胎し、記憶も消して改ざんした事、セーフゾーンの事は伏せて殆ど全てを話した。
 タケルの話を聞いたカルロスは俯き、両手をテーブルの上で組み、静かに泣いていた。

「やはり、そうだったか、辛かったろうに・・・しかし生きて帰って来てくれて良かった、そして助けてくれたのがタケル君、君で良かった!」

カルロスは暫く静かに泣いていたが、やがて落ち着いて再び話をし始めた。

「オークの巣は時折見つかって殲滅されるんだが、その時見つかった女性の多くは家に帰される事は無いんだ。自分の名も言えなくなっている者が殆どだからな、オークにやられたケガが原因で死んでしまう者も居る。そして死ななくても、奴隷として売られたりするんだ。しかしオークは犯す時に殴ったりしていたぶる習性が有るんだ、その為顔は酷く傷だらけになる、貴族でも無い限り、高額な報酬が必要な治療魔法で治したりするなんて出来ないからな、奴隷となった女性にそんな事をしてあげる奴は居ないだろうからな。だからその後の人生は女性にとってとても辛い物になる。だから、彼女達がキレイな顔で戻ってきて、更にケガ1つしていない、奇跡かと思ったよ。」

「ただの魔法ですよ、奇跡なんかじゃ無いですよ。」

「いや、タケル君、そう言える君に助けられた事が奇跡なんだよ。そして、アルミスさんって言ったか、彼女達をケアしてくれたんだろう?ありがとう。」

「同じ女性として当然の事をしたまでです。」

アルミスは当然の事と言ったが、アルミスはとても親身になり、女性達をケアしていた。そしてそんなアルミス達も居た事も含め、カルロスは奇跡だと言った。

「今日は彼女達を埋葬して弔ったらお祝いをしたい、タケル君是非参加して貰いたい。勿論保護している女性達も含めてだ、どうだろうか。」

タケルは少し考えて返答を保留した。皆は賛同してくれるだろうが、保護した女性達はどうするか判らなかったからである。

「彼女達さえ良ければ構いませんよ、早く帰りたい人も居るかもしれませんし。」

「そうか、では早速聞いてみてくれ、俺はアマンダとカミラの親族に知らせて葬儀の段取りをしてくる。返事はレイナルドに伝えてくれれば良い。」

カルロスはそう言うと席を立ち、足早に表へ出掛けて行った。
 タケルは【メイクアイテム】を使い棺桶と他の女性達と同じように洋服を作りカミラとアマンダに着せてあげ、彼女達を棺桶に寝かせると蓋をそっと閉めてカルロスの家を後にし、皆が待つ村の入口へと戻って行った。
 タケルが皆にカルロスのからの提案を話し、意見を聞くと全員が是非参加したいと言ったので、タケルはその旨をレイナルドに伝え、レイナルド共にクシーナを連れてカルロスの元へ向かった。

 葬儀の準備をしていたカルロスがレイナルドと共に歩いてきたタケルに気付き声をあげた掛けてきた。

「おお、タケル君。あの棺はタケル君が用意してくれたのかい?助かったよ、そのまま焼くのも気が引けるからね。」

「火葬なんですか?」

「え?ああ、そのまま埋めると希にアンデッド化する事が有るからね、浄化する事が出来ればそのまま埋葬出来るんだけどね。」

この世界は魔素や瘴気が有るせいで死体をそのまま放置しておくとアンデッド化する事が有る、浄化してから埋葬すればアンデッド化はしないが、浄化が出来るのは教会の神官や神父などの聖職者だけというのが世間の認識であった。

「あの、カルロスさん、浄化なら出来るんで俺がしましょうか?」

「そ、そうなのか、タケル君。それなら是非お願いしたい!」

カルロスはタケルの肩を掴み、懇願するような顔付きでタケルに頼み込んだ。

「え、ええ。勿論構いませんよ。」

「そうか、ありがとう。料金は村の資金から出させて貰う、少ないがそれでもやってくれるか?」

カルロスは浄化をすると言ったタケルに料金を払うと言った。通常聖職者に頼むと高額な料金を払わなければならないからだ。

「え?要りませんよ、そんなの。」

「え、タケル君、何て言ったんだ?」

「だから、お金なんて要りませんよ、無料でやりますよ。」

カルロスは無料で良いと言われ、最初は理解が出来ずタケルに聞き返し、無料と言われ驚いていた。

「え、タケル君、浄化を無料でやってくれるって言うのか?ほ、本当に良いのか?」

「ええ、構いませんよ、もし気が引けるなら、俺からの香典だと思って下さい。」

「コウデン?それが何かは判らないが、タケル君の好意を有り難く受けさせて頂く。本当に有り難う。」

「じゃあ、葬儀には参列しますので、みんなに声を掛けて来ます。」 

「ねえ、タケるん、何で私を連れて来たの?私も浄化は出来るけど・・・・」

「あっ・・・」

タケルは宴会に参加する旨と、料理人としてクシーナを紹介しに行ったのをすっかり忘れていた。
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