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2章 少年期 1部シーバムの大森林編

31話 ゴーレム馬

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アルセリオのレベル上げの為、オークのコロニーに行き、その洞窟でアルセリオがオーク十匹を相手に勝利し、ルシアナとミレイアは加護のお陰で特訓は順調であった。
食事後全員で風呂に入り、その後早めに寝た一同は、朝目覚めてから全員が朝食前にリビングに揃っており、目覚めの紅茶を飲んでいた。

「今日はどうするんだ?タケル。」

アルセリオがまたオークを倒しに行くのかと思いタケルに尋ねた。

「ああ、今日は俺はちょっと馬車を作りたいんだよね。」

「馬車?何でまた。」

「大人数での移動とここへの扉を出現させるのに馬車の中なら上手く隠せるかなと思って。」

「成る程。」

タケルの返答にアルセリオは頷いて納得していた。

「まあ、多分馬車はすぐに出来るんだけど、馬を探すのに時間が掛かるかなと思って。」

タケルの言葉にサビオが少し考え込むと、難しい顔をして答えた。

「ほっ。馬か、確かに野生の馬を見つけるのは難しいな。」

「やっぱりそうですか。馬に似た魔物とか居ないですかね。」

タケルの問にサビオが考え込んで居ると、アルバが口を開いた。

「ナイトメアやスプレイニルは?」

アルバの提案にサビオはまた考え込んでいた。

「ナイトメアか、探すのに時間が掛かるし、スプレイニルは少し目立ち過ぎるの。」

そこへアルミスが提案を出してきた。

「ゴーレムでは駄目なんですか?」

「ほっ、ゴーレムか、確かに有りかもしれんの。」

話を聞いてタケルは不思議に思った。

「え?ゴーレムで馬車を引くんですか?」

「ああ、そうだの、馬の形をしたゴーレムで引くんだ、タケル殿と会う少し前から使われ始めた物で、恐らくまだそんなには普及してないだろうな。」

「そうなんですか?」

「ああ、何せ魔法使いではない人間が扱えないと意味がないからな、だから手間と費用が凄い掛かるんだ、だから気軽に買える物ではないんだの。」

「タケル!ゴーレムにしよう!ゴーレム!」

アルセリオは馬のゴーレムで馬車を引くというのに目を輝かせ、興奮しながらタケルに言っていた。

「ゴーレムか・・・」

タケルは少し考え込み、ポンッと手を叩くと声をあげた。

「あっ!そうか。よしっゴーレム馬を作る事にしよう!」

「おお!そうか、ゴーレムにするのか!・・・え?タケルはゴーレムも作れるの?」

「え?うん、作れるよ。」

「全く何でもアリだな、タケルは。」

「そうでも無いよ、確かに人より沢山出来るとは思うけどね。」

タケルがそう言って紅茶を一口飲んだところで、朝食の準備が出来たようだ。

「は~い。朝食が出来たよ~ん。」

クシーナが料理を運んで来た。全員で料理を運び、朝食を食べると、タケルは異空間に行き【メイクアイテム】の魔法で馬車を作った。
タケルが魔法で作った馬車は二台で、1代は幌馬車で、もう一台は木製のワゴンタイプである、そして勿論サスペンション付きであるが、タイヤはまだ材料が見つかって無いので木製のままである。

「馬車はこんなもんかな、内装は後でクッションを追加すれば良いかな。」

タケルは馬車を一通り点検すると、馬車をアイテムボックスに仕舞った。

「ゴーレム・・・の前に魔法だな。」

タケルはそう呟くと【マジッククリエイション】を使い魔法をつくり始めた。

マジッククリエイション 開始

魔法名  【メイクゴーレム】

[効果]

無機物、有機物問わずゴーレムを作れる。
材料はアイテムボックス内でも使用可能。
学習型の頭脳回路を搭載する。
力や能力は素材と作成時の魔力に依存し、変化する。
何度でも改造可能。

マジッククリエイション 完了

「良い感じだ、制限も殆んど掛からなかったし、これでリアルな馬型ゴーレムが作れるぞ!」

タケルは早速【メイクゴーレム】の魔法を使い馬型ゴーレムを作成し始めた。すると、タケルの目の前のじめんが光り、そこからまるで水中から浮き出て来るように馬型ゴーレムが姿を現した。
その体は大きく、ワゴンタイプの大きな馬車でも軽々と引けそうだ、体表には短い毛が生えており、筋肉も本物の馬のようだ。
たてがみや蹄もちゃんと有り、まるで本物の馬のようであった。
ただ、幾つか違う点が有り、ゴーレム馬は目が小さい魔石で出来ており、呼吸を必要とせず、心臓も無い、代わりに魔石が魔力を循環させる仕組みだ、そして魔力を補充しなくても周囲の魔素を取り込み動き続ける事が出来る、まさにタケルににしか作れない生体ゴーレム馬であった。

「んん~。ちょっとやり過ぎたかな・・・世紀末の黒い馬みたいだな・・・」

そこでゴーレムを作るところを見たいと言っていたアルセリオが声をあげた。

「た、タケル!なんだその馬!どこで捕まえたんだ?!」

「え?なに言ってるんだよ、アル、これは馬型ゴーレムだよ、正確には生体ゴーレム馬だね。」

タケルの説明を聞きアルセリオは目を輝かせゴーレム馬に走り寄った。

「生体ゴーレム馬?!凄い!肌触りは本当の馬みたいだな!それにしても大きいな!なあ、タケル!早速馬車に繋いでみようぜ!」

アルセリオの提案にタケルも笑顔で同意し、アイテムボックスから馬車を取りだして馬車にゴーレム馬を繋いだ。

「おおお!カッコいいな!タケル!」

「そうだな!」

「乗ってみよう。」

そして二人して馬車に乗り込んだ。

「タケル!二人とも中に乗ったら動かせないだろ!俺は馬車の操縦なんて出来ないからタケルやってくれよ。」

アルセリオの言葉を聞くと、タケルはニヤリとして笑い始めた。

「フフフ、馬車の操縦なんて俺も出来ない。しかし!この馬車は御者なんて必要無いのさ!」

タケルの、言葉にアルセリオは首を傾げてタケルに質問をした。

「え?どういう事だ?」

「まあ見てなって。おーい、取り敢えず少しゆっくり歩いて見てくれ!」

タケルがそう言うと馬車がゆっくりと動き始めた。その様子をみたアルセリオの目は一段と輝き、興奮していた。

「おお!言葉で動いてくれるのか!」

「それだけじゃないぜ、あのゴーレム馬は学習するよう作ってあるからね、今は無理だけど、行き先を言うだけで連れてってくれるようになるよ。」

それを聞いたアルセリオの、興奮は最高潮に達したようで雄叫びを上げていた。

「ふおおおおお!凄いな!名前は何て名前なんだ?」

「あ、名前か、考えて無かったな、アル、名前を考えてくれよ、アルが名前を付けてやってくれ。」

「い、良いのか?タケル!俺が名前を付けて!」

アルセリオは自分が名前を付けて良いと言われ喜んでいたが、なかなか良い名前が思い付かず悩んでいた。

「んん~。いざ名前を付けるとなると悩むな。んん~。」

ゴーレム馬の名付けがなかなか決まらないので、タケルはもう一頭ゴーレム馬を作る事にした。
新たに現れたゴーレム馬は、大きさは通常よりも少しだけ大きく、体の色は葦毛のような色でグレーっぽいゴーレム馬であった。

「うん、これなら普通で良いかな。こいつの名前は・・・アルミスに付けて貰おう。」

タケルはゴーレ馬をアイテムボックスに仕舞おうとしたが仕舞えなく困惑した。

「マジか、生き物認定されちゃったよ。何か凄い事しちゃった気がしてきた・・・」

タケルは仕方なく、普段修行で使ってる異空間にゴーレム馬を置いておき、召喚で呼び出せるようにした。
そこでアルセリオがタケルに声を掛けて来た。

「なあ、タケル。希望って名付けようかと思うんだけど、どうも響きが良くなくてな、タケルの国の言葉で何て言うんだ?」

「うーん、俺の国だと"希望"だけど、こっちもそんなに響きは良くないだろ、んん~。違う国の言葉だけど、エスペランサって言葉が同じ意味であるけど、どう?」

タケルはスペイン語のESPERANZA(エスペランサ)はどうかと提案した。すると、アルセリオはその名前を気に入ったようであった。

「エスペランサ・・・いいな、エスペランサ!こいつの名前はエスペランサだ!」

アルセリオはゴーレム馬にエスペランサと名前を付けて、そのエスペランサに抱きつき嬉しそうにしていた。そしてエスペランサに抱きついたまま振り返り、タケルに話しかけた。

「タケル、準備は整ったんじゃないか?」

「そうだね、早速戻って出発しよう。」

タケルは扉を出現させ、セーフゾーンへ戻ろうとすると、アルセリオがタケルに質問をしてきた。

「あれ?タケル、エスペランサは連れて行かないのか?」

「ああ、ここに置いて召喚出来るようにした。」

「おお、そうか、便利だな。」

そしてタケル達はセーフゾーンへと戻って行った。

「ほっ、タケル殿、馬車とゴーレムは完成したのかの。」

サビオが戻って来たタケルに尋ねると、タケルは笑みを浮かべて答えた。

「ええ、カッコいいのが出来ましたよ。な!アル。」

「ああ。凄いカッコ良かった!みんなもきっと気に入ると思うよ。」

「あら、そうなの?楽しみだわ。」

ルシアナが年相応の子供のようにはしゃぐアルセリオを見て微笑みながら答えた。

「皆で行く必要は無いけど、どうする?馬車は二台作ったから全員で移動出来るけど。」

「あら、折角だから馬車で行きたいわ。」

「私も馬車が良いわ!」

「ほっ、そうだな、馬車も良いかも知れないな。」

その後も全員が馬車で行きたいと言ったので、二台に分乗し、全員で馬車で街に向かう事にした。

「おお、結構ギリギリだな。」

タケル達が居る場所は森の外れ近くで、細い獣道が有り両脇は藪だけなので、それに沿って馬車を走らせる事にした。
 そしてタケルが馬車を出し、ゴーレム馬を繋ぐと全員から驚きの声が上がった。

「あら、本当に素敵ね。」

「お兄様、本当にな馬ですね。」

「タケル様、あれは本当にゴーレムなんですか?」

ルシアナとミレイアが素敵な馬だと言う一方で、アルミスは目の前のゴーレム馬が本当の馬に見えたらしく、タケルに確認していた。

「うん、そうだよ、アルミス。生体ゴーレム馬なんだよ。」

タケルがアルミスの問に答えるとアルミスは目を輝かせ、間近で葦毛のゴーレム馬を見ていた。そんなアルミスを見てタケルは微笑み、名前の件をアルミスに伝えた。

「アルミスはそっちのゴーレム馬が気に入ったみたいだね、良かった、丁度アルミスに名前を付けて貰おうと思ってたんだよ。」

ゴーレム馬の名前を自分が付けて良いと聞き、アルミスの目はより一層輝き、嬉しそうにしていた。そしてアルミスは少し落ち着くと、ゴーレム馬の体を触り、次に首、そして顔を触りゴーレム馬の顔を見つめると、ゴーレム馬に話し掛け始めた。

「お前は凄く速そうだな、まるで風のように走れそうだな。そうだ、激しく吹く風のように、ハヤテ、お前の名前はハヤテが良いな。タケル様、ハヤテなんてどうでしょうか。」

タケルはアルミスが考えた名前を聞いて少しだけ驚いた。

「こっちの言葉とはいえ、疾風か。良いね!アルミス、俺の国では疾風って戦闘機、あ~、空飛ぶ乗り物があって、それに疾風って言う名前の物が有ったんだ、字はこれ"疾風"こう書いてハヤテって読むんだ。」

タケルは戦闘機の疾風の説明をし、地面に疾風と漢字で書いた、それを見たアルミスは疾風という字面をいたく気に入り、ゴーレム馬の名前を疾風とした。

「タケル様、とても素敵です!この子の名前は疾風にします!」

アルミスがゴーレム馬に疾風と名前を付けると、ゴーレム馬の目が光り輝き、光が収まったかと思うと、疾風と名付けられたそれは、まるで本物の馬のように首を上下に振った。

「ウフフ。疾風、名前か気に入ったの?ヨシヨシ。」

アルミスは疾風が動いた事に驚かず、名前を気に入ってくれたと思い疾風の顔を撫でていた。
 一方、驚いたのはタケルであった、確かに学習型の回路を搭載した生体ゴーレム馬を作ったが、そこまで本物の馬のように反応するとは思っていなかったからである。そして驚いているタケルの横から声を掛けられた。

「タケル殿、またトンデモナイ物を作り上げたの、国宝級を飛び越えて伝説級の代物だの・・・・」

タケルは振り向き、サビオの方をみると、困惑した表情で話し始めた。

「少しやり過ぎちゃったみたいです。実はアイテムボックスにも入れられないんですよ。」

その話を聞いてサビオも目を丸くして驚いていた。

「なっ!まさか、それじゃあ、あれは生き物と認識されたと言う事か!」

「そうみたいですね。」

「タケル殿、少々あの目は目立つからブリンカーを着けた方がいいの。あれがゴーレム馬と知られるのはマズイの。」

サビオの言うブリンカーとは遮眼革とも言い、馬の視界を前方のみに制限する半目隠しみたいなものである。そしてサビオは魔石で出来た目立つ目を、ブリンカーで隠し、ゴーレム馬だと判らないようにした方が良いとタケルに言った、そう言われたタケルは少し考え込むと、疾風とエスペランサに対し【メイクゴーレム】の魔法を使い始めた。疾風とエスペランサの目が光だし、赤かった魔石で出来て目の色が、段々と黒くなっていった。
 光が収まると、エスペランサの目は黒いが透明感が有り、良く見るとキラキラと光る結晶が見てとれた。
 疾風の目も黒いが、エスペランサに比べ透明感が強く、見る角度によっては紫っぽく感じる色であった。

「んん~。よし!」

タケルはエスペランサと疾風の目の色を魔法で変えると、満足そうに腕を組んでいた。

「タケル様!疾風の目が!」

いきなり疾風の目の色が変わったのでアルミスがタケルに慌てて尋ねた。

「ああ、今魔法で黒く変えたんだよ、より馬に近付けようと思ってね。」

「そうだったんですね、ビックリしました。」

アルミスはそう言うと疾風の頬を撫で、微笑みながら、色が変わった疾風の目を見つめていた。
 ゴーレム馬に名前も付け、馬車にも接続し終わり、タケルが声を上げた。

「よし、じゃあ、エスペランサの引くワゴンタイプにはアルセリオ、ルシアナさん、ミレイア、ベルナルドさん、サビオさん、アルバの6人が乗って!疾風の引く幌馬車は俺、アルミス、クシーナの三人で行く。御者は必要無いけど、御者席には誰か座ってね。じゃあ乗って!出発するよ!」

タケルが割り振ると、全員がそれぞれ馬車に乗り込み、アルセリオがエスペランサの御者席に、アルミスが疾風の御者席に座った。

「よし、じゃあ出発しよう!」

タケルが声を張り上げると、アルセリオがエスペランサに向かって話しかけた。

「エスペランサ、宜しくな、出発だ!」

エスペランサはゆっくりと歩きだし馬車が動き出した。

「疾風、私達も行くわよ、行きましょう。」

エスペランサに少し遅れて疾風も歩きだし、幌馬車も順調に動き始めた。

「ほっ、この馬車は揺れが少なくて乗り心地が良いな。」

サビオが言うと、ルシアナも同意した。

「本当ね、内装は質素だけど、王宮の馬車より揺れが少なくて快適だわ。」

『みんな、乗り心地はどうかな?トイレなんかはそのまま扉を使って小屋に行けるから止まらないでこのまま行くよ。』

『あら、何かしら、タケルさんの声が聞こえるわ。』

『あ、念話ですよ、ルシアナさん。頭の中で考えるようにして会話が出来ます。』

『ウフフ、判ったわ。このまま後ろの馬車ともお話が出来るのね。』

『ええ、そうですよ。何かあったら教えてください。』

そうしてタケル達は森を進んで行った、端から見ればとても静かな馬車の移動であったが、一同は念話で会話を交わし、とても賑やかな移動であった。

そして二台の馬車は長く続く獣道を進み、やがて開けたばしょに出た。
そこは薄暗かった森と違い、太陽の陽射しが明るく辺りを照らし、空は抜けるように青く、白い雲が所々浮かんでおり、爽やかな風が馬車の幌を優しく揺らし、御者席のアルセリオとアルミスの頬を撫でた。
 タケル達は深く広大なシーバムの大森林を抜けたのである、暫く草原を進むと街道と思われる道に出た、二台の馬車は街を目指して街道を進んで行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

漸く森を抜ける事が出来ました、いよいよ街を目指して進んで行きます。
まだ大筋だけで完全にノープランですが、次回は二章第2部となります、どんな話しになるか、お楽しみに!

それでは、今後もよろしくお願いいたします。



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