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2章 少年期 1部シーバムの大森林編

30話 オーク

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手合わせから戻って来たタケルとアルセリオは仲が良くなっていた、その後ルシアナとミレイアも戦う力が欲しいと言い、アルセリオの竜の加護に気付いたアルバに全員に加護を付けてもらった。ルシアナとミレイアはサビオとアルバと残り特訓、タケルとアルミス、アルセリオ、ベルナルドの四人はアルセリオのレベルを上げるべく森を進んで居るとオークのコロニーを発見し、タケルが一人で狩りに行く。向かって来るオークの首を跳ね、アイテムボックスに収納するタケルに警戒し、出て来なくなったオークを狩る為、タケルはまたも一人で洞窟へと歩いて行き、入り口付近で警戒しているオークの頭に雲斬丸を突き刺した。

「ふむ、短槍にするか。」

タケルは刀である雲斬丸よりも短槍の方が使いやすいと思い、雲斬丸をアイテムボックスに仕舞い、短槍を取り出した。

「んん~。振り回せないけどまあ、突きならこっちの方が向いてるからね。」 

タケルは独り言を言い、短槍を構え歩き出した。洞窟の内部は思いの外明るく、所々松明のように光る魔石が壁にぶら下げられていた。

「へえ、思ったより知能が有るのかな。言語機能切っておいて良かった。」

タケルは辺りを見回しながら歩いて行きながら次々にオークをの額を短槍で貫き、アイテムボックスに収納していった。

「お?魔力反応、メイジが居るのかな?」

タケルがそう言うと、奥からファイヤーボールの火球が飛んで来た。

「全く、こんな洞窟でファイヤーボールなんて使って酸欠になったらどうするんだよ。」

タケルはそう言うとアイスバレットを幾つか頭上に展開し、洞窟の奥に撃ち放った。するとドサッと何かが倒れる音がして幾つか有った魔力の反応が無くなった。タケルがマップで確認すると、洞窟の一番奥の方に十匹程の反応を残す程となった。

「そろそろ良いかな。」

タケルはこれ位ならアルセリオ一人でも大丈夫だと思い呼ぶことにした。

『アル、もう良いよ、残り十匹程しか居ないから一人でも大丈夫なんじゃないかな。』

『俺一人でか?幾らなんでも』

『判りました、タケル様、今すぐに連れて行きます。』

アルセリオが躊躇し、喋り終わる前にアルミスが会話を遮った。

『おわっな、何を!』

『大人しくして下さい。タケル様の元へ向かいます。』

そう念話での会話が聞こえたかと思うと、すぐ後ろから足音が聞こえてきた、姿が見えると、そこにはアルミスと、アルミスの脇に抱えられ運ばれてきたアルセリオの姿であった。そしてベルナルドが後から小走りで追い付いてきた。

『な、なんて事を、するんだ・・・』

『お待たせしました、タケル様。』

「もう念話じゃなくて良いよ、それとアルミス、もう下ろしてあげて。」

タケルに言われアルミスはハッとしてアルセリオを抱えている手を離し、アルセリオは地面に落とされてしまった。

「痛っ。いきなり手を離さないでくれ。」

「あ、申し訳ありません。」

アルミスは少し顔を赤くしていた。

「まあまあ。それより、ここから少し奥に行った所に十匹程の反応が有るんだ、少し上位種っぽいけどアルひとりにやって貰おうとおもって。」

アルセリオは再びタケルに泣き言を言い始めた。

「いや、幾らなんでもオークを十匹も一人でなんて無理だって、しかも上位種なんだろ?」

泣き言を言い、なかなか奥に行こうとしないアルセリオにベルナルドが語り始めた。

「アルセリオ様、タケル殿の言うことを信じて下され、タケル殿がオークを倒してくれたお陰でアルセリオ様は以前よりも強くなっている筈です。」

ベルナルドにそう言われたが、アルセリオは意味がよく解らなかったのか、ベルナルドに聞き返した。

「なんでタケルがオークを倒したら俺が強くなるんだよ、意味が解らないって!」

アルセリオが意味が解らないと少し声を上げると、アルミスがアルセリオの顔を掴み冷たい表情で語りかけた。

「貴様!タケル様が大丈夫だと言っているんだ!タケル様の言うことが信じられないならここで死ぬか?それともオークを倒しに行くか、どっちを選ぶんだ?」

アルセリオは青ざめ、両手を上げてプルプルと震えていた。

「ひゃい、い、行きまふ、オークを倒しに行くか行きまふ。」

アルミスの冷たく、冷酷な感じ目に恐怖を感じ、アルセリオはオークを倒しに行くと言った、そしてベルナルドもそんなアルミスを前に何も出来ないでいた。

「あ、アルミス、そんな怖い顔色したら可愛い顔が台無しだから止めようね、それとアルの事も離してあげようか。」

タケルがアルセリオを離すように言うと、アルミスはパッと手を離し、可愛い顔と言われた事に照れて頬に手を当てて照れていた。

(アルミスのまさかの一面だな、おい。ちょっと怖かったよ・・・)

「あ、アルミス、脅すような真似は駄目だからね。」

「しかしタケル様、アルセリオ様はタケル様の言う事を」

「ストップ!アルミス!良いんだよ、アルセリオはまだ俺達の事を良く解って無いんだから。これからは優しく教えてあげてね。俺はそんな優しいアルミスが好きなんだから。」

「ハイ♪タケル様。」

アルミスはタケルの言葉を聞き、顔を赤くし、また頬に手を当てて、体をクネクネして照れながら喜んでいた。

「タケル殿、流石ですな、私は背中に冷たい物を感じましたぞ。」

「俺は殺されるかと思ったぞ。」

ベルナルドとアルセリオがタケルに小声で話しかけた。

「アル、判ったから早く行きなよ、モタモタしてるとまたアルミスにお願いするよ。」

タケルがそう言うとアルセリオは顔を青くして、剣を構え洞窟の奥へと歩いて行った。

「そんなにアルミスが怖かったんだ。」

タケルがそう呟くと、アルセリオの少し先からオークをが飛び出して来た、アルセリオは自分でも驚く程素早く反応し、オークを袈裟斬りにした。

「な、何だ今のは!体が驚く程軽かったぞ。」

自分の動きに驚いているアルセリオに向かいますタケルが声を掛けた。

「何か強くなってる気がしたろ、このままドンドン行ってみようか。」

「あ、ああ・・・」

自分の体の変化に戸惑いつつも更に奥へと進んで行く、すると今度は三体オークがアルセリオの前に現れ、同時に飛び掛かって来た、アルセリオは冷静に反応し、一番近くのオークの武器をかち上げ、横一文字に斬りつけると、オークの体が上下に別れて崩れ落ちた。振り抜いた剣をそのまま斜め上に斬り上げると、オークの両腕が落ちたかと思うと、脇腹から胸を通り肩に抜け深い傷から血を吹き出し倒れた、そして振り上げた剣をそのまま振り下ろすと、オークの首が宙を舞った。

「ブハァ!凄い!俺がこんな!」

「まだ六匹居るから油断しない!」

三体同時に倒し、少し浮かれていたアルセリオに対し、タケルが油断しないように行った瞬間、アルセリオの目の前に戦斧が振り下ろされ、アルセリオの鼻先を掠め地面に突き刺さった。アルセリオは咄嗟に距離を取り、オークの喉に剣を突き刺した。

「はい、あと半分!」

その後は危なげ無く残りのオークを倒したアルセリオは座り込んでしまった。

「ふう。不思議と体は全然疲れて無いが、精神的に疲れた。」

「すぐに慣れますよ、次もこの調子で参りましょう、アルセリオ様。」

ベルナルドの言葉を聞きアルセリオが不満を漏らした。

「えええ、次も俺一人なの?一緒に倒そうよ。」

今度はアルセリオの言葉を聞きタケルが声を上げた。

「アルミス!アルがもう一人ではやりたくないそうだ。」

するとアルミスが一歩前に出た。

「わ、判った、判ったからやめて。」

アルセリオは余程アルミスが怖いのか両手を上げて次も一人でやると宣言した。

「ず、するいぞタケル!アルミスさんを使うなんて!」

「アハハハハ!でもそうしないとやろうとしないだろ?」

「そんな事無いって!」

「アハハハハ!判ってるよ、じゃあオークの溜め込んだお宝を回収して帰ろうか。」

そう言って全員でオークがどこからか奪って来たであろう財宝を回収しようと近くに歩み寄ると、アルセリオが在るものを拾いタケルに見せた。

「タケル!これ・・・・」

それは人骨であった、アルセリオが拾ったら物の他にも幾つもの人骨が有り、タケル達はそれを全て回収し、森に埋めてあげる事にした。

「こんな所にいつまでも放置されたら可哀想だからな。」

アルセリオは率先して人骨を集めて回った、自分の国も魔物に滅ぼされたからか、元々のやさしさなのか、アルセリオは人骨を見つける度に優しく声を掛けて物言わぬ人骨を労っていた。

「今ここから出してやるからな、待ってろよ。もう少しだからな。」

タケルもアルミスも人骨を黙って回収しながらアルセリオの言葉に耳を傾け、時折優しい目で見つめた。
 人骨を回収し終わると、タケルの土魔法で穴を堀り、人骨を穴に並べると、アルセリオはタケルに声を掛けた。

「タケル、意味は無いかもしれないが、浄化の魔法を掛けてやってくれないか。」

タケルは黙って頷くと浄化の魔法を掛けた後、土魔法で土を被せ、大きめの石を上に置いて墓石とした。
 アルセリオは片ヒザで跪き、片手を胸に当て軽く握り、頭を下げ呟いた。

「死者の魂に女神の祝福を。」

タケルはアルセリオの祈りを横目に見ながら手を合わせた。

「安らかに眠って下さい。」

そしてベルナルドはアルセリオと同じく立て膝で祈り、アルミスはタケルと同じように手を合わせていた。
  祈りを終えたのか、アルセリオが立ち上がった、それに合わせタケルが言葉を発した。

「さて、今日はこの辺で戻ろう、ルシアナさんとミレイアの特訓の成果も聞きたいしね。」

「そうだな。俺も今日の戦いを報告したいしな。」

タケルはセーフゾーンの扉を出現させ、みんなを先に戻すと、即席の墓石を少しの間見つめ、振り返り扉の中へ入って行った。

「ただいま~。あれ?サビオさん達まだ戻ってないんだ。」

すると廊下の奥からクシーナが出てきた。

「タケるん、お帰り~。」

「ああ、ただいま。サビオさん達はまだ戻ってないんだ?」

寝ていたのだろうか、クシーナは頭を掻きながら眠そうに答えた。

「うん。まだ帰って来てないと思うよ~。」

「そっか、判った。じゃあ夕食の準備しちゃおうか、あ、でも眠そうだけど大丈夫?」

すると、クシーナの顔が急にシャキッとし、タケルに返事をした。

「大丈夫!じゃあ戻って来たらすぐに食べられるようにするね。」

「うん、宜しくね。」

クシーナはキッチンに入り夕食の準備を始め、タケルは紅茶を淹れてソファーで寛ぐ事にした。

「それにしてもタケルの戦い方は桁外れに非常識だな。」

アルセリオが紅茶を飲みながらそう言うと、タケルは少し顔をしかめた。

「え?何かその言い方は嫌だな。」

「事実だから仕方無いだろ。」

「ヒドイ・・・」

二人の会話をアルミスとベルナルドは紅茶を飲みながら微笑ましく見ていた。
 そこへサビオの扉が出現し、扉が開くとミレイアがピョンっと飛び跳ねて入って来た。

「ただいま~。」

大人びたミレイアではなく、どこか楽しそうに笑顔を浮かべ、少し浮かれた感じであった。続いて入って来たルシアナも笑顔を浮かべていた、二人の表情で特訓が順調だというのが伺い知れる。

「お、ミレイアもルシアナさんも嬉しそうだね、どうやら順調に行ってるようだね。」

タケルが二人の表情をみて尋ねた。

「あ、タケル。ただいま、ええ順調よ。」

「あら、タケルさん、ただいま。それが驚く程順調で楽しくなっちゃって。」

二人とも思いの外、特訓が順調に進んで楽しそうに答えた。そこでアルバが言葉を発して来た。

「私の加護のお陰で成長しやしくなってるのよ。」

どうやらアルバの加護のお陰のようであった。

「みなさ~ん、お疲れ様でした~。料理が出来ましたよ~。」

丁度良いタイミングでクシーナが料理をし終わったようだ。

「わ~!美味しそう!私もうお腹ペコペコ!」

「私もお腹空いちゃったわ。」

ルシアナとミレイアは余程お腹が空いたのか、進んで料理を運び、ソファーで紅茶を飲んでるアルセリオ達をテーブルへと急かした。

「ほら、お兄様、早く食べましょう!」

ミレイア達に急かされたアルセリオは紅茶のカップを片付けると、急ぐ事無く席に着いた。
 全員が席に着いたのを確認すると、タケルが言葉を発した。

「みんな、午後からの特訓お疲れ様。みんな順調みたいだね。明日は恐らく森を抜けるから、しっかり食べて休んで明日に備えよう。では、いただきます。」

タケルの話が終わると一斉に夕食を食べ始めた、ルシアナとミレイアはタケル達に今日の成果を話し、楽しそうにしている、アルセリオも楽しそうに話を聞いているが、自分の事は話さなかった。

「ねえ、お兄様。お兄様は今日はどんな感じだったの?」

ミレイアに森での事を聞かれたアルセリオは少し暗い顔をしてミレイアに答えた。

「食事が終わったら話すよ・・・それより、本当に無詠唱で魔法を使えたのか?」

アルセリオは自分の事は食事中に話す事では無いと判断したのか、食後に話すと言い、話題を逸らす為か、ミレイアの無詠唱の話題を持ち出した。
 特訓をしていた為か、大量に有った料理があっという間に無くなった。

「ふ~、お腹いっぱい!」

「こら、はしたないわよ、ミレイア。」

「ハハハ、ルシアナさん、ここでは良いじゃ無いですか、仲間内なんだし、でもそろそろ街だから外食する時は気を付けようね、ミレイア。」

「判ったわ、タケル。」

食事を食べ終わると、タケルがアルセリオに声を掛けた。

「なあ、アル、風呂に入ろう。」

「え?俺がタケルと?男同士で嫌だよ。」

「え?嫌か?仕方ないな、一人ではいる」

「タケル様。ご一緒します。」

例の如くアルミスが一緒に入ると言ってきた。すると、アルセリオが驚きタケルき話しかけた。

「え、お前アルミスさんと一緒に入るのか?」

「ん?まあ、アルミスは俺の婚約者だしな。」

「ええ!お前婚約者が居たのか!俺でさえまだ居ないのに!」

すると、アルミスが話に入って来た。

「アルセリオ様もご一緒しますか?」

「え?あ、えっと。」

アルセリオは顔を赤くして照れていた。タケルはニヤリと笑い。一言発した。

「アルミス。」

その言葉で察したのか、アルミスはアルセリオをまたも脇に抱えタケルと共にお風呂へと入って来た行った。
 ルシアナとミレイアは唖然としていると、クシーナがみんなに声を掛けた。

「じゃあ、みんなで入ろうよ!」

そう言ってルシアナとミレイアの手を引きお風呂へと向かった。

「ベルるんもおいで、サビやんとアルバっちもね~。」

ベルナルドは王妃と一緒に入って良いものか戸惑っていたが、ルシアナがベルナルドを見て頷いたので一緒に入る事にした。サビオとアルバは顔を見合せ、笑いながら遅れて風呂へ向かって行った。

全員で和気あいあいとお風呂と露天風呂を楽しみ、明日に備えて全員早めに寝ることにした。


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