えっ!?俺が神様になるの? チートで異世界修行物語。

偵察部隊  元リーコン

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2章 少年期 1部シーバムの大森林編

28話 アルセリオ

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気絶していたミレイアの目が覚めたと連絡が有り戻って来たタケル達、目覚めたミレイアはとても聡明で4歳児とは思えない程大人びていた。タケルと今後の事についても話し合ったのもミレイアであった。その後この時代に合うように服を作り着替えてもらう間にタケルはアルセリオの腕前の話をするが、ミレイア達の着替えも終わり、昼食も完成し、全員で昼食を食べる事にしたが、アルセリオは時折タケルを睨み付けていた、しかしタケルをは気にせず食事を続け、今は全員昼食を食べ終わり、片付けも済まして今は紅茶を飲んで寛いでいた。
 そんな中、タケルとアルセリオはソファーに向かい合って座り、先程の話の続きをしていた。

「それで、タケル、お前は何が言いたいんだ?」

アルセリオは余程先程の事が気になっているのだろうか、タケルを睨み付け前のめりになり、タケルに問い掛けた。しかしタケルは全く動じずに世間話でもするかのように受け答えた。

「簡単に判りやすく言うと、アルセリオ君、今の君ではルシアナさんとミレイアさんを守り切れないということ、つまりキミは弱いって事だよ。」

アルセリオはタケルに弱いと言われ顔付きが変わった、まだ少年とはいえ父親である国王にその実力を認められ騎士団への入団が認められていたからであった。

「なんだと!貴様!この俺が弱いと言うのか、魔法使いに剣士の何が判る!お前のような魔法使いは魔法が使えないと何も出来ないくせに!それに呪文永昌の間に剣士に守って貰わなければ闘う事も出来ない癖に何を言うか!」

アルセリオは立ち上がりタケルを怒鳴りつけた、怒鳴り声を聞き、アルミスとルシアナが駆け寄ろうとしたが、タケルが無言で手を突き出し、二人を制止した。

「じゃあ少し手合わせでもする?俺は魔法は使わないよ、それで俺が負けたらアルセリオ、キミを弱い言った事を謝罪しよう、その上で何でも言う事を聞いてあげるよ。」

アルセリオはニヤリと笑みを浮かべた、タケルの事を魔法使いと思っていたアルセリオは、魔法を使えないタケルには負ける筈が無いと思っていたからだ。

「良いだろう、その言葉を忘れるなよ、俺が勝ったら貴様は俺の家来になって貰う!もし俺が負けたら逆に何でも言う事を聞いてやろう。」

「じゃあベルナルドさん、アルミス、ちょっと立ち会い人お願い。」

タケルは敢えて立ち会い人と言った、本来手合わせなら立ち会い人は不要である、しかし敢えて立ち会い人と言いそれを付ける事で後で文句を言われないようにした。
 タケルは異空間で手合わせをしようと、扉を出現させ中に入ろうとするとアルセリオが声を掛けてきた。

「おい、ちょっと待て、そこは貴様が作った空間では無いのか?そんな所では手合わせは出来ん!どんな細工をされるか分からんからな。」

アルセリオがタケルの異空間では手合わせは出来ないと言い、中に入るのを拒否してきた、タケルが小細工をする事は無いが、アルセリオは自分が不利になるような、些細な可能性を無くす為に した発言であった。タケルはアルセリオの言葉を聞いて特に動じる事無く、異空間への扉を消した。

「判った、じゃあ森でやるかい?」

タケルはアルセリオに森で手合わせをすることを提案した。アルセリオは森で手合わせをする提案を受け入れ、自信満々で笑みを浮かべた。

「良いだろう。森でなら小細工も出来ないだろうからな。」

「判った、じゃあ行こうか。」

タケルは扉を出現させ、中へと入って行くと、そこは宮殿の謁見の間であった、タケルが最後にセールゾーンに戻ったのがここであった為だ、タケルはアルセリオ達が扉を通り全員揃った所で範囲指定し、宮殿の外に転移した。

「さて、ここなら良いかな?」

「良いだろう。勝敗は個人が敗けを認めるか、立ち会い人による判定で決める、武器はお互いに好きな物を使う、勿論真剣も有りだ、死んだり怪我をしても文句は言わない。それで良いな?」

「うん、それで構わないよ。」

タケルはアルセリオの提案を受け入れると、アイテムボックスから木剣を取り出した。それを見たアルセリオは驚き、声を上げた。

「なっ!貴様!そんな木の剣でやると言うのか!こっちは真剣なんだぞ!」

「ああ、構わないよ。寧ろ位だよ。」

タケルはアルセリオの言葉に木剣で十分だと言い、それを聞いたアルセリオは声を荒げ剣を抜き構えた。

「貴様~!バカにしおって!!多少痛め付ける位で許してやろうと思ったが、腕の一本や二本は覚悟しろよ。」

「能書きは良いから早く来れば?」

タケルは剣を肩に乗せるような格好のまま手を突き出し、掌を上に向け、指をクイクイっとまげて仮想現実が舞台の主人公のように挑発した。それを見たアルセリオは怒りタケルに向かって飛び出した。

「貴様~!!」

アルセリオが剣を振りかぶりタケルに斬りかかる、しかしタケルは一歩も動かずに剣を受け流し、体勢を崩したアルセリオの首もとに木剣を突き付けた。

「なっ、今のは偶然だ!もう一度だ!」

アルセリオは少し距離を取ると再びタケルに斬りかかる、しかしまたもタケルは一歩も動かずアルセリオの剣を受け流し、体勢を崩したアルセリオの首もとに木剣を突き付けた。

「くっ!まだだ!今のは躓いただけだ!」

アルセリオは立ち会い人であるベルナルドの方を見た、ベルナルドは表情を変えずにただ二人をジッと見ているだけであった。

アルセリオはニヤリと笑い、またもタケルに斬りかかる。本来立ち会い人であるベルナルドがアルセリオの敗けを認めれば立ち会いは終了であるが、ベルナルドもアルミスもそうはしなかった、アルセリオはベルナルドが自分の味方だから負けの判定をしなかったと思っていたが、そうでは無かった、ベルナルドとアルミスは判っていたのである。今のアルセリオでは絶対にタケルに勝てないと、そしてアルセリオはただ負けただけでは負けを認めない事を、だから完全に負けを認めるまで、ボロボロになるまでやって負けてもらおうと思っていたのである。

「うおー!!」

またも同じ結果である。
そしてタケルがまたもクイクイっと手招きするように挑発した。

「くそー!」

「振りが大きい!」

そう言ってタケルは一本も動かずアルセリオの胴に木剣を打ち付けた。アルセリオは数メートル吹き飛び悶えていた。

「ぐ、くそ。」

アルセリオは腹部を押さえヨロヨロと立ち上がった。

「来なよ、もっとあそんであげるよ。」

アルセリオが痛みを堪えタケルに向かって行く。が、結果は変わらなかった。

「脇が甘い!」

今度はアルセリオの脇に木剣を打ち込む、その後も何度も同じ事を繰り返し、その度にアルセリオは吹き飛ばされた。

「この・・・負けない、俺は・・・負けない・・・」

「アルセリオ様・・・」

ベルナルドが目に涙を溜めて呟いた。その時、アルセリオが前のめりに倒れ気を失なった。ベルナルドはアルセリオに駆け寄り、抱き抱えるとアルセリオの手から剣を離そうとしたが、固く握られており、なかなか手から離す事が出来なかった、そんなアルセリオにベルナルドは涙を流し、気を失っているアルセリオに語りかけた。

「アルセリオ様、よくぞ諦めず立ち向かわれました。アルセリオ様の想い、このベルナルドはよく判りました、明日からは共に強くなって行きましょう。」

そこへタケルが歩み寄って来てベルナルドに声を掛けた。

「剣の腕前は全然だけど、根性は結構有るね、家族を守るって想いは本物のようだね。」

タケルはベルナルドにそう言うとアルセリオにヒールを掛けた、するとアルセリオが目を覚ました。

「う、う、俺は・・・そうか、気を失って・・・」

その時であった、上空からシルヴァが舞い降りて来た、地上付近でスピードを緩め、フワリと地面に降り立った。ベルナルドに抱えられ、仰向けになっていたアルセリオが呟いた。

「美しい・・・」

以前のアルセリオはシルヴァを見て腰を抜かしていたが、今回はシルヴァの美しい姿に見とれていた。

「主よ、帰ったと思ったが、剣の稽古をしに来たのであったか。」

「ああ、シルヴァ、稽古というか・・・まあ、そうだね。」

「そうであるか、主よ。」

シルヴァは頷くとアルセリオの事をジッと見つめ始めた、一方アルセリオも未だシルヴァに見とれていた。暫くアルセリオを見つめていたシルヴァが口を開き、アルセリオに話しかけ始めた。

「少年よ、我が主に心を開くが良い、主はそなたが思うような方では無い、主は少年の家族を思う気持ちは十分理解している、お主の事を家族を守れるくらい強くしようとも考えておられる。」

シルヴァの話を聞いたアルセリオの目には涙が流れていた。そしてアルセリオはポツポツと語り始めた。

「ああ、判っている、しかし国王が・・・父が居ない今は俺が家族を支え、国を再建しなければならないんだ・・・それに、あの時の光景が今でも・・・怖い、怖かったんだ!だから俺は強がって・・・」

シルヴァはどこか優しい顔をしてアルセリオの話を静かに聞いていた。

「俺は・・・王として強く在ろうと、威厳を保とうと・・・しかしどうやら俺は間違っていたようだな、今の俺にはまだその資格は、いや資質は無いと言う事か・・・」

静かに話を聞いていたシルヴァがアルセリオのすぐ近く間で顔を近付け、鼻息をアルセリオに吹き掛けた。

「少年よ、我が主に忠誠を誓えば我がお主に加護を授けよう。主よ、構わぬか?」

タケルはシルヴァの問い掛けに対し、静かに首を降った。それを見たアルセリオは落胆の表情を見せたが、自分の味方今までの言動を振り返り、それも仕方無いと首を降た。

「別に忠誠なんて要らないよ、俺が欲しいのは仲間だからね、ただ信頼してくれて仲間になってくれればそれでいいよ。」

タケルの言葉を聞きシルヴァはアルセリオの方に向き直り、再び鼻息を吹き掛け、アルセリオに問い掛けた。

「少年よ、我が主の言葉を聞いたか、そなたはどうするのだ。」

タケルとシルヴァの話を聞いたアルセリオはヨロヨロ立ち上がり、タケルの方に歩み寄って来た。そして、涙を流しタケルに語り掛けた。

「タケルよ、お前はあのような事をした俺を仲間にしたいと言うのか、信頼する仲間にすると・・・」

タケルはアルセリオの言葉に頷いた。

「ああ、俺もこの世界では元々一人だったからな、同じではないが、多少気持ちは判る。それにアルセリオ君、キミに敵意や悪意が無いのは判っていたしね。よろしくな。」

そう言ってタケルは右手を差し出した、アルセリオは差し出した手を両手で握り固く握手を交わした。

「そうか、全部判っていたのか、何だか恥ずかしいな。」

「ハハハ。まあ長男だら気合いが入ってたって事にしてあげるよ、空回りしてたけどな。」

「ハハハ、確かにそうだな、母上やミレイアにも要らん心配を掛けたかもしれんな、宜しく頼む、タケル殿。」

「止めてくれよ、タケル殿とか、アルセリオ君、キミにそう言われると痒くなる。」

「それはこっちも同じだ、アルセリオ君って気持ち悪いぞ、アルと呼んでくれ。」

「俺も、タケルって呼んでくれ。改めて、宜しくな。」

「ああ、宜しく頼む!」

二人は握手していた手を胸の前で握り帰った、ガシッとお互いに握り締めた。

「少年よ、今は良い顔をしているぞ。」

成り行きを見守っていたシルヴァがアルセリオにそう語り掛けた。次にタケルの方に向き直り話始めた。

「では主よ、この少年に加護を授けても構わないな。」

タケルは笑顔で答え頷いた。

「ああ、頼む。」

タケルがそう言うと、シルヴァは息を吸い込み、アルセリオに向かってそっと息を吹き掛けた、するとアルセリオの体が淡く光りだし、そして体に吸い込まれるように消えた。 

「おお、なんだ?!体の奥から力が漲って来る。これならタケルに勝てるかもしれないな。」

アルセリオが漲る力に昂りたかぶり思わず口走った言葉にシルヴァが口を挟んだ。

「ハハハッ!少年よ、我の加護を受けた位で我が主に勝てる筈が無かろう、主は我に素手で勝ち、従魔の契約をしたのだぞ、そして主の魔力により我は聖獣となれたのだ、今でも全力では無い主にすら勝てる気はせん、無謀な事は考えぬ事だ。」

シルヴァの話を聞き、驚いたアルセリオはタケルを見たが、タケルは両手を広げおどけただけであった、次にベルナルドを見ると、ベルナルドは大きく頷いた。

「タケル、お前はバケモンか?」

「おいおい、俺は人よりちょっと強いだけだよ。」

「ちょっと強い位でドラゴンを素手で倒せるかよ!」

「まあ、そうかもな。」

「ハハハ!お前ってやつは面白い奴だな。」

そう言ってアルセリオはタケルの首に腕を回した。

「アハハ、そろそろ帰ろうか、ルシアナさん達が心配してるだろうからさ。」

「そうだな。」

その時、ベルナルドがタケルに声を掛けた。

「タケル殿、ちょっと待って下さらんか。」

タケルはベルナルドの声に振り返り、立ち止まった。するとベルナルドはシルヴァに駆け寄り、声を掛けた。

「シルヴァ殿、私にも出来れば加護を授けて下さらんか。」

ベルナルドの願いを聞いたシルヴァは静かに首を降った。

「お主はベルナルドと言ったか、お主は我の加護が必要無い位に強い。加護を授けても多少耐性が上がる程度だが構わぬか?」

「か、構わぬ!ほんの少しでも強くなれるなら、強くなる助けになるのなら!頼む!」

ベルナルドは少しでも強くなるならとシルヴァに頭を下げた。シルヴァはタケルの方を少し見るとタケルが無言で頷いていた。

「あまり効果は出来んが、良かろう。」

そう言ってシルヴァがベルナルドに息を吹き掛けると、ベルナルドの体が光り、光りは体に吸い込まれるように消えた。

「お、少しだけだが、上がりましたぞ!シルヴァ殿、ありがとう!」

そう言ってベルナルドは握手の代わりにシルヴァの太い指を擦った。

「ありがとうシルヴァ、じゃあ俺達は戻るからさ、引き続き頼むよ!」

「ああ、承知した、主よ。」

シルヴァの言葉を聞いたタケルはシルヴァに手を振り、扉を通りセーフゾーンへ帰っていった。
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