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2章 少年期 1部シーバムの大森林編

27話 ミレイア

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復活した王妃とアルセリオに現在のシーバム王国の事を話したタケルは現在の様子を見て貰う為に王妃とアルセリオを宮殿へ転移で飛び連れていった、現在の宮殿の様子を目の当たりにし、漸く自分達の置かれた立場を理解し、千年も見守ってくれたベルナルドに感謝する王妃とアルセリオ。そんな時気絶していたミレイアが 目を覚ましましたとアルミスから念話が有り、小屋に戻って来たタケル達はミレイアの元へと駆け寄った。

「あ、お母様、お帰りなさい。」

ミレイアはソファーに座り紅茶を飲んでいた。

「ほっ、最初はお母様はどこ?と不安がっていたが、すぐに落ち着いてな、とても4歳とは思えないな、まるでタケル殿の小さい頃のようだ。」

サビオが戻って来たタケル達に経緯を説明し、ミレイアをタケルのようだと言って無い髭を触る仕草をし、顎を触っていた。

「ミレイア、良かった、何とも無いのね。」

「うん平気よ、お母様。お母様も紅茶を飲みましょう、美味しいですよ。」

タケルは唖然としていた、サビオの言うとおり、とても4歳児とは思えない口調と振る舞いであった。歳上のアルセリオよりも落ち着いて見える、そして自分も昔こんな感じです見られてたのかと思い、今更ながら少し恥ずかしくなった。

「お母様、王宮はどうなったんですか?」

ミレイアに促されソファーに座った王妃に向かいそう訪ね、それを聞いたタケルはまたも驚いた、そんなタケルの元にベルナルドが近寄り小声で話し掛けてきた。

「驚きましたか、タケル殿。ミレイア様はとても聡明でありましてな、幼子でありながら学問に関しては、アルセリオ様よりもお出来になる程なのであります、そして常に冷静でありましてな、私はあの方が泣いたのを見た事が無いくらいですな。」

タケルがベルナルドの話を聞いてウンウンと感心していると、ミレイアが声を掛けてきた。

「タケル様、貴方がここのリーダーのようですね、お話しを聞かせて頂けませんか。」

「あ、はい。」

タケルは思わず敬語で返事をし、ミレイアに促されソファーに座った、するとクシーナが紅茶をタケルの前にスッと置いた。

「この紅茶は美味しいですね、どうぞお飲みになって。」

(いや、ここ俺の小屋なんだけど・・・まあいいか。)

「ミレイア様、」

「様付けは要りませんわ、タケル様。」

話を始めようとしたタケルだが、ミレイアに制され、タケルは少し戸惑ってしまった。

「あ、ああ、はい。ではミレイアさん、何を話せば宜しいですか?」

ミレイアは持っていたカップを置きタケルの目を見て静かに口を開いた。

「タケル様、私にもお母様に話した事を話して下さいますか?」

ミレイアは全てを判っているかのように、そしてそれを確認する為だと言うかのようにタケルに静かに尋ねた。
 タケルは少し驚きミレイアのとなりの王妃を見ると、全て話して構わないと言うかの如く静かに頷いた。

「判りました。驚く事も多いかもしれませんが、お話しします。」

そう言ってタケルはミレイアに王妃やアルセリオに話したのと同じように全て話し、説明した。

「そうですか、千年も・・・」

全ての話を聞き終えたミレイアは、特に狼狽えたり悲しんだりすること無く、静かにそう言って、残り少なくなった紅茶を飲み干し、カップを置くと再びタケルの目を見つめ、話始めた。

「タケル様、では私達は暫くはタケル様達と行動を共にするという事ですね。」

「そうですね、王妃様やアルセリオ王子、勿論ミレイアさんが希望すればですが、もし別れて別行動を取ると言うので有れば、宮殿の財宝も回収してあるのでお渡ししますよ。」

タケルは折角手に入れたら財宝を王妃達に渡しても構わないと言った、元々王国の財宝だから王族である王妃達にその権利が有るとタケルは思ったようだ。
 タケルの申し出を聞き、ミレイアは少し考え込んでいるのか、空になったカップを手に持って見つめ、黙っていた。

「タケル様、王国の財宝を回収して頂き有り難うございます。しかし財宝はタケル様達に全て差し上げます、その代わりと言ってはなんですが、私達を一緒に連れて行って頂けませんか?」

「え、それは勿論構いませんが、財宝はかなりの量ですよ?」

「ええ、構いません。それよりも、私達は国を失い、頼る仲間も居ません、ベルナルドは居ますが、それだけでは力の無い私達は生きて行けないでしょう。ですからこの様な場所を作り上げる事が出来るタケル様に助けてい頂きたいのです。」

ミレイアはよく分かっていた、自分達がこの時代には本来存在しないという事を、例え大量の財宝が有ったとしても、何の後ろだても無く、この時代の知識も無く力もなく、ベルナルドが居るとはいえ家族のみで生きて行くのは難しいという事を。

「ええ、勿論ですよ、封印を解除して助けると決めた時からそう決めてましたから。」

ミレイアはカップ置きタケルの目を1度ジッと見つめると、深々と頭を下げた。

「タケル様、何から何まで有り難うございます。そしてこれから宜しくお願い致します。」

深々と頭を下げたミレイアにタケルは微笑み、手を差しのべた。

「ミレイアさん、頭を上げて下さい。今から俺達は共に旅をする仲間なんです、こちらこそ宜しく。それと困った事が有ったらなんでも言って下さい。」

ミレイアは差し出されたタケルの手を握り、握手を交わした。

「あらあら、ミレイアが全て決めてしまったのね。本当ミレイアには敵わないわね、でも私も同じ意見だから構わないけれどもね。」

王妃はタケルの元に歩み寄り、手を差し出し、自分も握手を求めた、タケルは立ち上がり王妃の手を握り握手を交わした。

「タケルさん、宜しくお願い致しますね。」

「こちらこそ、宜しくお願いします、王妃様。」

「あら、嫌だわ、タケルさん、私達はもう仲間なのでしょう?でしたら私の事はルシアナって呼んで下さるかしら?」

王妃は握手をしてる手に、もう片方の手も添えて明るく笑顔で笑った、その顔は王妃のそれではなく、一児の母のような明るい笑顔であった。

「そう言えばちゃんと自己紹介してませんでしたね。俺はタケル・オオサワ、あの髪の白い白虎族の女性がアルミス。剣士で剣聖の称号を持ってるんですよ。」

「まあ、凄い。」

ルシアナは手を口に当てて驚いていたが、タケルはそのまま紹介を続けた。

「あそこの格闘家っぽい男性はサビオ、見えませんが大賢者なんです、隣の白銀の髪の女性がアルバ、ホーリードラゴンなんです。そして紅茶を淹れてくれた緑の髪の女性がクシーナ、精霊王の料理を作ったりもする料理が得意な精霊です。」

ルシアナ達は驚いていた、今居る場所を作り上げるタケルの魔法も凄いが、剣聖に大賢者にドラゴンに精霊が仲間なのである、ベルナルドの時程では無かったが、3人供驚き固まっていた。

「ハッ!あまりの驚きに言葉を失ってしまったわ、やはりタケルの様に助力を求めて正解でしたね。」

ミレイアがいち早く復帰を果たし、タケルにそう告げた。するとタケルがミレイアに人差し指指を立てて見せ、左右に振った。

「チッチッチッ。ミレイア、あ、これからはミレイアと呼ばせてもらうよ、仲間なんだからタケル様は無いだろ、タケルって呼んでよ。」

ミレイアはタケルに言われ、少しだけキョトンとしたが、タケルにに向けて満面の笑みを浮かべた、その顔は大人びた様子では無く、4歳児らしいとても可愛らしい笑顔であった。

「ええ、わかったわ、タケル。」

その時、ミレイアのお腹がグ~っと大きな音で鳴った。ミレイアは顔を赤くし、照れ笑いをしながらお腹を押さえていた。

「お、随分と可愛いらしい音が聞こえたぞ。よし!昼食にしよう、クシーナ、食事の準備をお願い!」

タケルはミレイア達をテーブルで座って待つようにと言ってクシーナとメニューの話をし終わると、ミレイアの為に座面が高くなっている椅子を【メイクアイテム】作り、ミレイアを座らせた。

「ありがとう、タケル。」

タケルも席に付いて有ることに気付きルシアナや、ミレイアに話しかけた。

「ルシアナさんとミレイアさんの服も用意しないと行けませんね。流石にその格好で街に行くのはちょっとマズイ気がするので。」

タケルの話を聞きミレイアは少し首を傾げて質問をした。

「タケル、街が近いのであれば街で買えば良いのでは?」

「ミレイア、確かにそうだけど、その服で買いに行くの?ミレイアには普通の服に感じるかもしれないけど、その服は豪華過ぎるんだよね、俺達からすれば何処かの貴族か、王族かって言う感じだね。」

「そうかしら?」

ミレイアは自分の服を見ながらそう言うとタケルが話を続けた。

「その格好だと、変に悪目立ちする可能性が有るんだよね、それに恐らく今の時代だと古臭い形になるとおもうんだよね」

「古・・・じゃあなんとかしたいわね。」

ミレイアは古臭い形という言葉を聞くと、即座にそう答えた。やはりそこは女の子と言う事なのだろうか。タケルはそんなミレイアの為に【メイクアイテム】を少し改良し、ファッションが判らなくても作れるようにした。
何故ならタケルはこの世界のファッションは判らないし、アルミスとクシーナは格好を見れば判るようにファッションには疎そうだ。サビオも10年近く自分達以外と接して居ないし、女性のファッションには余り興味が無さそうだ、アルバもドラゴンだし、ベルナルドはミレイアと同じ時代の事しか判らない。
結局タケルもこの自体の一般人な服装な判らなかったからである。

「これでイケるかな、今着ている服は残した方が良いかな?それともその服を材料に作る事が出来るけど、どうする?」

タケルが尋ねるとミレイアはみずからの服を暫く見つめていた。

「この服は残したいわね。」

ミレイアは服を残したいと言った、逃げる時は着の身着のままであったので、自分達の物は今来ている物意外何も持っていなかったからだ、少しでも思い出の品を残しておきたかったのであろう。

「うん。わかった、素材は有るからそれで作るよ。」

タケルはそう言うとアイテムボックスからロックウールハウンドのウールハウンドを取りだし、ミレイアとルシアナの前に置き、【メイクアイテム】を使用しミレイアとルシアナの服を作り上げると、ルシアナ達は目を開き驚いていたが、ルシアナとミレイアは出来上がった服を見ると、手に取り喜び、嬉しそうに服を眺めていた。

「じゃあ、早速着替えてみる?」

「ええ、勿論!」

「じゃあ、ベルナルドさん、部屋まで案内してあげて貰えますか。」

タケルがそう言うと、ベルナルドはルシアナとミレイアを部屋に案内しに行った。

「さて、後はアルセリオ君、キミはどうする?」

タケルはベルナルドに案内されミレイアとルシアナが廊下の奥へ消えて行くのを確認すると、アルセリオに話しかけた。

「俺はこのままで構わん。13の誕生日に父上に頂いた大事な甲冑だからな。」

アルセリオは国王に貰った甲冑を脱ぎたくないようで、このままで良いと言ったがタケルは違う意味で聞いたようであった。

「まあ。アルセリオ君は男だし、甲冑姿なら色んな奴が居るだろうし良いんじゃないかな、でも俺が聞きたいのはそこじゃないんだよね。」

アルセリオは意味が判らないという感じで眉をしかめた。

「アルセリオ君、キミはこれからルシアナさんとミレイアさんを自分の手で守って行かなくてならない、それは判るよね?」

「ああ、勿論だ、母上とミレイアは俺が守る。」

アルセリオはタケルの問いに素っ気なく答えたが、その思いは本物のようで、腰にぶら下げてる剣の柄を力強く握っていた。

「でも、さっきシルヴァ・・・ドラゴンを見て腰を抜かしてたよね?」

アルセリオは少し焦った、あの時タケルはシルヴァの方を見ていて自分が腰を抜かした事は気が付かれて居ないと思っていたからだ。

「あ、あれは突然の事に驚いて躓いただけだ!」

「ふーん、そっか。まあそう言うことにしてあげるよ。」

と、そこでルシアナとミレイアが着替えを済ませ戻って来た。タケルが二人に作った服はドイツの民族衣装のディアンドルやチロルワンピースと呼ばれる物によく似ており、胸の下までの胴衣と言われるスカートと、胸元が大きく開いたブラウスのセットの服であった。

「どう、タケル、似合うでしょ。」

そう言ってミレイアはタケルの前でクルリと回ってみせた。

「この衣装は素敵ね、気に入ったわ。」

ルシアナも気に入ったようで服をいろいろなポーズを取り着心地を確認していた。
 そこへクシーナが皆に声を掛けてきた。

「ハイハーイ!料理が出来たよ~ん。」

クシーナがそう言って料理を運んで来た、タケルはアルセリオとの話を中断し、クシーナと料理を運びテーブルに並べると席に付いてルシアナ達に声を掛けた。

「ルシアナさん、ミレイアさん、二人供凄く似合ってますよ。アルセリオ君、後でまた。じゃあみんな、食べようか、いたただきます!」

タケルのことばで全員料理を食べ始めたが、アルセリオは先ほどの事が気になるのか、時折タケルの事をジッと睨み付けるように見ていたが、タケルは気にせずに食事を続け、ルシアナやミレイアに箸の事を聞かれ、教えたりして楽しく昼食の時間を過ごした。

  
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