59 / 155
2章 少年期 1部シーバムの大森林編
17話 サビオの願い。
しおりを挟む
ベルナルドの倒したオーガでポーチを作りそれをマジックポーチにしてベルナルドにプレゼントしたタケル、マジックポーチを貰ったベルナルドはまるで子供のように喜び一人で森へ狩りへと向かったが、魔力と殺気を垂れ流すベルナルドは獲物に遭遇する事は無かった。
同日、それを知ってはいたが放置する事にしたタケルとサビオはリビングで邪竜となったサビオと友である元聖獣の事について話をしていた。
「サビオさん、例の件ですが大体考えが纏まりました。」
「そうなのかの。一体どうやるのかの。」
「先日作った宝玉をまた作ります。それと今回は蘇生の魔法と、サビオさんが掛けた魔法の無効化と、瘴気の浄化、あと瘴気を閉じ込め浄化する結界の、魔法を作ります。」
「随分と手間が掛かるんだの。」
タケルが考えたのはまず宝玉を作り、サビオの掛けた命を奪う魔法を無効化し、同時に封印された魂を解放し、すぐに蘇生魔法を掛け、次に瘴気の浄化魔法をかけ、同時に障が漏れ出さないように結界を張る、そして全ての作業の補助と強化の為に宝玉を使うという方法だ。
「万全を期す為にこれくらい必要なんです。試しに以前に単純に邪竜を聖獣に戻す魔法を作ろうとしたんですけど、それは出来なかったんです。だから1つ1つ解決して行かなければならないんです。」
「タケル殿、大変かも知れんが宜しく頼むんだの。」
そう言ってサビオは頭を下げた、その姿を見てタケルはサビオの思いの深さを感じ、絶対に成功させると心に強く誓っていた。そんな二人をアルミスは静かに見つめていた。
「サビオさん、先に宝玉を作りますね。」
そう言ってタケルはアイテムボックスから魔石を幾つか取り出して【メイクアイテム】の魔法で1つに纏めた、そして出来上がった魔石に入るだけありったけの魔力を込める。すると前回作った時と色が違い、半透明で白く光輝く宝玉が出来上がった。
「た、タケル殿。これは・・・」
「聖なる宝玉ってなってますね。」
タケルは出来上がった宝玉を鑑定したらしい。結果は聖なる宝玉となっており、大変な力を持っている宝玉とだけ表示されていた。
「なんか浄化と蘇生を上手く行くように意識して魔力を込めたらこうなりました。」
「ほっほっほっ。タケル殿は本当に規格外なんだの。」
「流石タケル様ですね。」
サビオはタケルがした事がどんなに凄い事かを理解していたが、アルミスはタケルの事をを誉めてはいるものの、サビオの言動を見て凄い事をしたんだな、と思って発言しただけであった。
「あとは魔法を作らないとですね。」
タケルは【マジッククリエイション】を使用して魔法を作り始めた
マジッククリエイション 開始
魔法名
【リサスケイション(蘇生)】
[効果]
死亡してから24時間以内であれば蘇生させられる。(死亡してから時間停止を掛ければ蘇生可能時間を伸ばせる。)
寿命の場合は効果が無い。
肉体が残っていることが条件。
蘇生後HPやMPは1%だけ戻る。
マジッククリエイション 完了
「よし、いけた!条件が付いたけど今回の件では問題無いな。じゃあ次だ!」
魔法名
【ピュリフィケーション超級(浄化)】
[効果]
通常の浄化よりも範囲、効果ともに強力な浄化効果が得られる。
アンデッドモンスターに大きなダメージを与える。
マジッククリエイション 完了
「よし、次は結界かな。」
マジッククリエイション 開始
魔法名
【特殊結界】
[効果]
通常の結界と異なる、瘴気を通さない上に浄化の作用も有る。
この結界の中で浄化を使うと効果が上昇する。
マジッククリエイション 完了
「あともう少し。」
マジッククリエイション 開始
魔法名
【ディサブルマジック(魔法無効化)】
[効果]
発動された魔法の効果を無効にする。
マジッククリエイション 完了
「よし、完成かな。」
「タケル殿、これで聖獣に戻せるのかの。」
マジッククリエイションを使い一通りの魔法を完成させたタケルに対し、サビオは期待を込て問いかけた。しかしタケルはどこか不安げな顔をしており、タケルの顔を見たサビオは再びタケルに問いかけた。
「タケル殿、どうかしたのかの?」
「いや、何も無いですが。万全を期して複数の魔法を作りましたが、何かが足りない気がしまして・・・」
「そ、そうなんかの。一体何が足りないのかの。」
タケルは顎に手を当て首を傾げて考えていた。
「ちょっと、もう1つ魔法を作ります。万が一の時の為にサポート出来る魔法を作ります。」
タケルはそう言って再びマジッククリエイションを使い魔法を作り始めた。
マジッククリエイション 開始
魔法名
【マジックサポート】
[効果]
複雑な作業を行う際にサポートする。
実行したい事を登録し、全てを任せる事も出来る。
あくまでサポートであり、この魔法単体では何も出来ない。
マジッククリエイション 完了
「ん、少し条件が付いたけど問題無いな。」
「タケル殿、これで安心して出来そうなのかの。」
先程と違い、満足そうなタケルの顔を見て今度こそ大丈夫そうだと感じタケルに問いかけた。
「そうですね。何か有ってもどうすれば良いのかサポートしてくれる筈です。」
「そうか、それなら安心なんだの。」
タケルは宝玉をアイテムボックスに仕舞い、聖獣に戻す作業に入る前にリラックスしようと紅茶を飲んで一休みする事にした。
「ふう。少し緊張するな。」
「タケル様が緊張されるなんて珍しいですね。」
「ほっほっほっ。そうだの、確かに珍しいの。」
タケルはリラックスする為に紅茶を飲んでいたがまだ緊張が取れずにいた、こちらの世界に来てからずっと傍で自分を支えてくれたサビオ、そのサビオの長年の願いを叶える為の作業をしようとしているのだ、もし失敗したらどれだけサビオを悲しませてしまうか判らない、それ故にどうしても緊張してしまうのであった。
「そうだね、こんなに緊張したのは始めてかもしれないね。」
そう言って紅茶を飲むタケルの隣にアルミスが座り、そっと手を握りタケルの目を見つめて話始めた。
「タケル様、タケル様なら絶対に大丈夫です、今までも沢山私達を驚かせて来たじゃないですか、剣も極めてこれ以上強くなるのは難しいと思っていた私が更に強くなる事も出来ました。全てタケル様が居たから出来た事です、大丈夫ですいつものように軽々と成功させられますよ、それにタケル様は私の将来の旦那様になるんですから、その緊張は私も半分受け持ちますよ、だから今回も絶対に上手く行きます。」
そう言ってアルミスはタケルの頬にキスをした。
「どうですか?タケル様、まだ緊張取れませんか?」
アルミスにそう尋ねられたタケルの顔は先程までと違い、緊張も取れて決意のこもった凛々しい顔付きになっていた。
「ありがとう、アルミス。お陰で余計な緊張が取れたよ。」
「ほっほっほっ。それではタケル殿、アルミス殿、宜しく頼むんだの。」
サビオはそう言ってにこやかに笑い頭を下げた。
「はい!任せて下さい!サビオさん。」
「そうよ、私達に任せておいて、サビオ爺。」
タケルは爽やかに、しかし決意溢れる目でサビオに応えた。
「ではサビオさん、俺の異空間に行きますか。」
タケルは扉を出現させて異空間へと入っていった。
「最初に結界を張りますから、そうしたらドラゴンを出して下さい。」
タケルは【特殊結界】を発動させ、広範囲に瘴気を漏らさない為の結界を張った。
「よし、【サポート】実行。」
タケルは次に【サポート】の魔法を実行し、不測の事態に備えた。
「サビオさん、ドラゴンと魂を封印した魔石を出して下さい。」
タケルに言われサビオがドラゴンを取り出した、タケルが以前見たドラゴンである、シルヴァと比べてもやはり大きく、そして狂暴そうな見た目である。
タケルがドラゴンを見ているとサポートの魔法がタケルに話しかけてきた。
『ドラゴンの魂を解放して下さい。』
「喋った!!」
タケルは魔法の【サポート】が喋ったので驚いた、自分で作った魔法であったが、サポートの方法は指定していなかった、なのでタケルは勝手にステータス画面にメッセージでも出ると思い込んでいた。
『ドラゴンの魂を解放して下さい。』
「あ、ああ・・・」
タケルはドラゴンの魂が封印されている魔石に向かい封印解除の魔法を掛けると、魔石が光り始めた。
『光が強くなり魂が出てきたら【ディサブルマジック】をドラゴンに掛け、すぐに【リサスケイション】を掛けて下さい。』
サポートがそう言うと魔石が強く光り出し、封印された魂と思われる光球が魔石から出てきた、タケルは光球を確認すると、すぐに【ディサブルマジック】を掛けると、ドラゴンの体から魔力が霧散して行くのが確認出来た、そしてすぐにタケルは【リサスケイション】をドラゴンに掛けた、すらとドラゴンの体が淡く光ったと思うと光球がドラゴンの体に吸い込まれて行った。
『ドラゴンが鼓動を始めたら【ピュリフィケーション】をドラゴンと宝玉に掛けて下さい。』
言われた通りタケルはドラゴンと宝玉に【ピュリフィケーション】を掛けると、ドラゴンの体から瘴気が溢れだしてきた、そして溢れだした瘴気は宝玉により吸い込まれていき同時に浄化され消えていった。
『このまま暫く時間が掛かります。』
タケルはサポートの声に頷き、サビオに声を掛けた。
「サビオさん、順調ですが、少し時間が掛かるようです。」
サビオは黙って頷き、じっとドラゴンを見つめていた。
すると、ドラゴンがバタバタと動き始めた、どうやら瘴気の侵食と浄化の作用に苦しんでいるようだ。
『警告、このままではドラゴンの体力が持ちません。』
「えっ?じゃあヒールを!」
タケルがドラゴンにヒールを掛けようとすると、サポートがタケルに警告を発して来た。
『警告。今ヒールを掛けると高確率で浄化が失敗します。予想以上の瘴気の量です。』
「じゃあ、どうすれば良いんだ!」
タケルは思わず叫んだ、サポートの声はタケルにしか聞こえていないので、バタバタと動いているドラゴンを心配そうに見つめていたサビオとアルミスは、驚いてタケルに視線を移した。
『現魔法行使者の魔法でドラゴンの体をスキャンした結果、瘴気を取り込みすぎて、ドラゴンの魔石が魔瘴石に覆われてしまっているのが原因と判明しました。宝玉を圧縮し、ドラゴンの体内に撃ち込み魔石ごと魔瘴石を破壊し、宝玉と魔石を入れ替える必要が有ります。』
「そんな事をして大丈夫なのか?・・・」
『現魔法行使者がドラゴンと従魔の契約を交わし、魔力の譲渡をした際に宝玉とドラゴンの体を融合させれば高確率で成功致します。』
タケルはサポートにそう言われ咄嗟にサビオに向かい叫んだ。
「サビオさん!このままでは失敗します、なので俺が従魔の契約を交わしますが良いですね!」
サビオは驚いた顔をしていたが、タケルの問いに答えた。
「構わないんだの!成功するなら何でも良いんだの!」
サビオの返事を聞き、タケルは急いでメイクアイテムと錬成を使い魔力を込めて宝玉を圧縮した。バレーボール程の大きさであった宝玉は圧縮され、野球ボール程の大きさになり、そして強く光り輝き、まるで光球のようであった。タケルは圧縮された宝玉を更にバレット状にし、魔力探知をフルに使い魔瘴石に覆われた魔石の位置を確認すると、魔法を撃ち込む要領で宝玉を撃ち込んだ。
「タケル殿ーーー!!」
いきなり宝玉を圧縮し、圧縮した宝玉をドラゴンに向かい撃ち込んだタケルを見てサビオが驚いて思わず叫んだ。
宝玉を撃ち込まれたドラゴンは動かなくなり、僅かに体がピクピクと動くだけであった。
「信じて下さい!」
そう言ってタケルはサビオの方を一瞬見ると、ドラゴンに駆け寄り、ドラゴンの頭に手を当てた。するとドラゴンの体が大きく痙攣したかと思うとピクリとも動かなくなった。
「まさか・・・」
サビオは失敗したのかと両手を頭に乗せ、今にも泣き出しそうな顔をした。
「まだです!」
ドラゴンの頭に手を当てていたタケルが目を瞑ったまま声をあげた。するとドラゴンの体から瘴気が漏れ出し霧散していく、霧散した瘴気は結界により浄化され消えていった。
「よし、良い子だ、もう少し頑張れ。」
タケルがそう言うとドラゴンが初めて目をうっすらと開けてタケルの方を見ると、再び目を閉じた。
するとタケルが手を当てている部分が光り出し、その光りは徐々に広がって行きドラゴンの体を覆っていく。光がドラゴンの体を全て覆うと光は強く輝き出し、辺りをキラキラと照らし、辺り一面が光に包まれた。
「この感じは・・・」
サビオが懐かしい感覚を感じたかと思うと、光が収っていった。
「終りましたよ。」
タケルがサビオの方を向いて微笑んでおり、その傍らには白銀に輝き、心地よい光を放つドラゴンが座ってサビオを見ていた。サビオは今にも泣き出しそうな顔をして、ヨロヨロとドラゴンに歩み寄って行き、ドラゴンに抱きつくと声を殺して泣き始めた。
タケルはアルミスを手招きして呼び寄せ肩を抱き、体を寄せ合い二人で静かにサビオを見守っていた。
同日、それを知ってはいたが放置する事にしたタケルとサビオはリビングで邪竜となったサビオと友である元聖獣の事について話をしていた。
「サビオさん、例の件ですが大体考えが纏まりました。」
「そうなのかの。一体どうやるのかの。」
「先日作った宝玉をまた作ります。それと今回は蘇生の魔法と、サビオさんが掛けた魔法の無効化と、瘴気の浄化、あと瘴気を閉じ込め浄化する結界の、魔法を作ります。」
「随分と手間が掛かるんだの。」
タケルが考えたのはまず宝玉を作り、サビオの掛けた命を奪う魔法を無効化し、同時に封印された魂を解放し、すぐに蘇生魔法を掛け、次に瘴気の浄化魔法をかけ、同時に障が漏れ出さないように結界を張る、そして全ての作業の補助と強化の為に宝玉を使うという方法だ。
「万全を期す為にこれくらい必要なんです。試しに以前に単純に邪竜を聖獣に戻す魔法を作ろうとしたんですけど、それは出来なかったんです。だから1つ1つ解決して行かなければならないんです。」
「タケル殿、大変かも知れんが宜しく頼むんだの。」
そう言ってサビオは頭を下げた、その姿を見てタケルはサビオの思いの深さを感じ、絶対に成功させると心に強く誓っていた。そんな二人をアルミスは静かに見つめていた。
「サビオさん、先に宝玉を作りますね。」
そう言ってタケルはアイテムボックスから魔石を幾つか取り出して【メイクアイテム】の魔法で1つに纏めた、そして出来上がった魔石に入るだけありったけの魔力を込める。すると前回作った時と色が違い、半透明で白く光輝く宝玉が出来上がった。
「た、タケル殿。これは・・・」
「聖なる宝玉ってなってますね。」
タケルは出来上がった宝玉を鑑定したらしい。結果は聖なる宝玉となっており、大変な力を持っている宝玉とだけ表示されていた。
「なんか浄化と蘇生を上手く行くように意識して魔力を込めたらこうなりました。」
「ほっほっほっ。タケル殿は本当に規格外なんだの。」
「流石タケル様ですね。」
サビオはタケルがした事がどんなに凄い事かを理解していたが、アルミスはタケルの事をを誉めてはいるものの、サビオの言動を見て凄い事をしたんだな、と思って発言しただけであった。
「あとは魔法を作らないとですね。」
タケルは【マジッククリエイション】を使用して魔法を作り始めた
マジッククリエイション 開始
魔法名
【リサスケイション(蘇生)】
[効果]
死亡してから24時間以内であれば蘇生させられる。(死亡してから時間停止を掛ければ蘇生可能時間を伸ばせる。)
寿命の場合は効果が無い。
肉体が残っていることが条件。
蘇生後HPやMPは1%だけ戻る。
マジッククリエイション 完了
「よし、いけた!条件が付いたけど今回の件では問題無いな。じゃあ次だ!」
魔法名
【ピュリフィケーション超級(浄化)】
[効果]
通常の浄化よりも範囲、効果ともに強力な浄化効果が得られる。
アンデッドモンスターに大きなダメージを与える。
マジッククリエイション 完了
「よし、次は結界かな。」
マジッククリエイション 開始
魔法名
【特殊結界】
[効果]
通常の結界と異なる、瘴気を通さない上に浄化の作用も有る。
この結界の中で浄化を使うと効果が上昇する。
マジッククリエイション 完了
「あともう少し。」
マジッククリエイション 開始
魔法名
【ディサブルマジック(魔法無効化)】
[効果]
発動された魔法の効果を無効にする。
マジッククリエイション 完了
「よし、完成かな。」
「タケル殿、これで聖獣に戻せるのかの。」
マジッククリエイションを使い一通りの魔法を完成させたタケルに対し、サビオは期待を込て問いかけた。しかしタケルはどこか不安げな顔をしており、タケルの顔を見たサビオは再びタケルに問いかけた。
「タケル殿、どうかしたのかの?」
「いや、何も無いですが。万全を期して複数の魔法を作りましたが、何かが足りない気がしまして・・・」
「そ、そうなんかの。一体何が足りないのかの。」
タケルは顎に手を当て首を傾げて考えていた。
「ちょっと、もう1つ魔法を作ります。万が一の時の為にサポート出来る魔法を作ります。」
タケルはそう言って再びマジッククリエイションを使い魔法を作り始めた。
マジッククリエイション 開始
魔法名
【マジックサポート】
[効果]
複雑な作業を行う際にサポートする。
実行したい事を登録し、全てを任せる事も出来る。
あくまでサポートであり、この魔法単体では何も出来ない。
マジッククリエイション 完了
「ん、少し条件が付いたけど問題無いな。」
「タケル殿、これで安心して出来そうなのかの。」
先程と違い、満足そうなタケルの顔を見て今度こそ大丈夫そうだと感じタケルに問いかけた。
「そうですね。何か有ってもどうすれば良いのかサポートしてくれる筈です。」
「そうか、それなら安心なんだの。」
タケルは宝玉をアイテムボックスに仕舞い、聖獣に戻す作業に入る前にリラックスしようと紅茶を飲んで一休みする事にした。
「ふう。少し緊張するな。」
「タケル様が緊張されるなんて珍しいですね。」
「ほっほっほっ。そうだの、確かに珍しいの。」
タケルはリラックスする為に紅茶を飲んでいたがまだ緊張が取れずにいた、こちらの世界に来てからずっと傍で自分を支えてくれたサビオ、そのサビオの長年の願いを叶える為の作業をしようとしているのだ、もし失敗したらどれだけサビオを悲しませてしまうか判らない、それ故にどうしても緊張してしまうのであった。
「そうだね、こんなに緊張したのは始めてかもしれないね。」
そう言って紅茶を飲むタケルの隣にアルミスが座り、そっと手を握りタケルの目を見つめて話始めた。
「タケル様、タケル様なら絶対に大丈夫です、今までも沢山私達を驚かせて来たじゃないですか、剣も極めてこれ以上強くなるのは難しいと思っていた私が更に強くなる事も出来ました。全てタケル様が居たから出来た事です、大丈夫ですいつものように軽々と成功させられますよ、それにタケル様は私の将来の旦那様になるんですから、その緊張は私も半分受け持ちますよ、だから今回も絶対に上手く行きます。」
そう言ってアルミスはタケルの頬にキスをした。
「どうですか?タケル様、まだ緊張取れませんか?」
アルミスにそう尋ねられたタケルの顔は先程までと違い、緊張も取れて決意のこもった凛々しい顔付きになっていた。
「ありがとう、アルミス。お陰で余計な緊張が取れたよ。」
「ほっほっほっ。それではタケル殿、アルミス殿、宜しく頼むんだの。」
サビオはそう言ってにこやかに笑い頭を下げた。
「はい!任せて下さい!サビオさん。」
「そうよ、私達に任せておいて、サビオ爺。」
タケルは爽やかに、しかし決意溢れる目でサビオに応えた。
「ではサビオさん、俺の異空間に行きますか。」
タケルは扉を出現させて異空間へと入っていった。
「最初に結界を張りますから、そうしたらドラゴンを出して下さい。」
タケルは【特殊結界】を発動させ、広範囲に瘴気を漏らさない為の結界を張った。
「よし、【サポート】実行。」
タケルは次に【サポート】の魔法を実行し、不測の事態に備えた。
「サビオさん、ドラゴンと魂を封印した魔石を出して下さい。」
タケルに言われサビオがドラゴンを取り出した、タケルが以前見たドラゴンである、シルヴァと比べてもやはり大きく、そして狂暴そうな見た目である。
タケルがドラゴンを見ているとサポートの魔法がタケルに話しかけてきた。
『ドラゴンの魂を解放して下さい。』
「喋った!!」
タケルは魔法の【サポート】が喋ったので驚いた、自分で作った魔法であったが、サポートの方法は指定していなかった、なのでタケルは勝手にステータス画面にメッセージでも出ると思い込んでいた。
『ドラゴンの魂を解放して下さい。』
「あ、ああ・・・」
タケルはドラゴンの魂が封印されている魔石に向かい封印解除の魔法を掛けると、魔石が光り始めた。
『光が強くなり魂が出てきたら【ディサブルマジック】をドラゴンに掛け、すぐに【リサスケイション】を掛けて下さい。』
サポートがそう言うと魔石が強く光り出し、封印された魂と思われる光球が魔石から出てきた、タケルは光球を確認すると、すぐに【ディサブルマジック】を掛けると、ドラゴンの体から魔力が霧散して行くのが確認出来た、そしてすぐにタケルは【リサスケイション】をドラゴンに掛けた、すらとドラゴンの体が淡く光ったと思うと光球がドラゴンの体に吸い込まれて行った。
『ドラゴンが鼓動を始めたら【ピュリフィケーション】をドラゴンと宝玉に掛けて下さい。』
言われた通りタケルはドラゴンと宝玉に【ピュリフィケーション】を掛けると、ドラゴンの体から瘴気が溢れだしてきた、そして溢れだした瘴気は宝玉により吸い込まれていき同時に浄化され消えていった。
『このまま暫く時間が掛かります。』
タケルはサポートの声に頷き、サビオに声を掛けた。
「サビオさん、順調ですが、少し時間が掛かるようです。」
サビオは黙って頷き、じっとドラゴンを見つめていた。
すると、ドラゴンがバタバタと動き始めた、どうやら瘴気の侵食と浄化の作用に苦しんでいるようだ。
『警告、このままではドラゴンの体力が持ちません。』
「えっ?じゃあヒールを!」
タケルがドラゴンにヒールを掛けようとすると、サポートがタケルに警告を発して来た。
『警告。今ヒールを掛けると高確率で浄化が失敗します。予想以上の瘴気の量です。』
「じゃあ、どうすれば良いんだ!」
タケルは思わず叫んだ、サポートの声はタケルにしか聞こえていないので、バタバタと動いているドラゴンを心配そうに見つめていたサビオとアルミスは、驚いてタケルに視線を移した。
『現魔法行使者の魔法でドラゴンの体をスキャンした結果、瘴気を取り込みすぎて、ドラゴンの魔石が魔瘴石に覆われてしまっているのが原因と判明しました。宝玉を圧縮し、ドラゴンの体内に撃ち込み魔石ごと魔瘴石を破壊し、宝玉と魔石を入れ替える必要が有ります。』
「そんな事をして大丈夫なのか?・・・」
『現魔法行使者がドラゴンと従魔の契約を交わし、魔力の譲渡をした際に宝玉とドラゴンの体を融合させれば高確率で成功致します。』
タケルはサポートにそう言われ咄嗟にサビオに向かい叫んだ。
「サビオさん!このままでは失敗します、なので俺が従魔の契約を交わしますが良いですね!」
サビオは驚いた顔をしていたが、タケルの問いに答えた。
「構わないんだの!成功するなら何でも良いんだの!」
サビオの返事を聞き、タケルは急いでメイクアイテムと錬成を使い魔力を込めて宝玉を圧縮した。バレーボール程の大きさであった宝玉は圧縮され、野球ボール程の大きさになり、そして強く光り輝き、まるで光球のようであった。タケルは圧縮された宝玉を更にバレット状にし、魔力探知をフルに使い魔瘴石に覆われた魔石の位置を確認すると、魔法を撃ち込む要領で宝玉を撃ち込んだ。
「タケル殿ーーー!!」
いきなり宝玉を圧縮し、圧縮した宝玉をドラゴンに向かい撃ち込んだタケルを見てサビオが驚いて思わず叫んだ。
宝玉を撃ち込まれたドラゴンは動かなくなり、僅かに体がピクピクと動くだけであった。
「信じて下さい!」
そう言ってタケルはサビオの方を一瞬見ると、ドラゴンに駆け寄り、ドラゴンの頭に手を当てた。するとドラゴンの体が大きく痙攣したかと思うとピクリとも動かなくなった。
「まさか・・・」
サビオは失敗したのかと両手を頭に乗せ、今にも泣き出しそうな顔をした。
「まだです!」
ドラゴンの頭に手を当てていたタケルが目を瞑ったまま声をあげた。するとドラゴンの体から瘴気が漏れ出し霧散していく、霧散した瘴気は結界により浄化され消えていった。
「よし、良い子だ、もう少し頑張れ。」
タケルがそう言うとドラゴンが初めて目をうっすらと開けてタケルの方を見ると、再び目を閉じた。
するとタケルが手を当てている部分が光り出し、その光りは徐々に広がって行きドラゴンの体を覆っていく。光がドラゴンの体を全て覆うと光は強く輝き出し、辺りをキラキラと照らし、辺り一面が光に包まれた。
「この感じは・・・」
サビオが懐かしい感覚を感じたかと思うと、光が収っていった。
「終りましたよ。」
タケルがサビオの方を向いて微笑んでおり、その傍らには白銀に輝き、心地よい光を放つドラゴンが座ってサビオを見ていた。サビオは今にも泣き出しそうな顔をして、ヨロヨロとドラゴンに歩み寄って行き、ドラゴンに抱きつくと声を殺して泣き始めた。
タケルはアルミスを手招きして呼び寄せ肩を抱き、体を寄せ合い二人で静かにサビオを見守っていた。
1
お気に入りに追加
3,420
あなたにおすすめの小説
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。
イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)
こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位!
死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。
閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話
2作目になります。
まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。
「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~
星天
ファンタジー
幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!
創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。
『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく
はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる