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2章 少年期 1部シーバムの大森林編
15話 オーガ
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従魔になったドラゴン、シルヴァに手作りのネックレスを作ったタケル、しかしタケルがネックレス用に造り上げた魔石は宝玉へと姿を変え、サビオを驚かせた。シルヴァに遺跡周辺の支配を命じセーフゾーンへと戻ったタケル達はベルナルドの上がったレベルの腕試しとして異空間でゴーレムと戦って貰う事に。
ベルナルドとゴーレムを異空間に置いてきたタケルとサビオはソファーで再び紅茶を飲み、サビオが言っていた話と言うのを始めていた。
「それで、一体どんな話なんですか?サビオさん。」
「ほほ。タケル殿は覚えておるかの?もと聖霊だった邪竜の事を。」
「勿論覚えてますよ、凄く大きくて強そうでしたよね。確か聖獣に戻す方法を探しているんでしたよね。」
「ほほ。そうだの。それでなんだがの、タケル殿の魔法で何とかならないのかと思っての。」
「ああ、なるほど。そういう事なんですね。確かにマジッククリエイションを使えば可能かもしれませんね。」
タケルは思い出していた、元は聖獣であった邪竜に触れて涙を流していたサビオを、その邪竜が友であった事、長い間ずっと聖獣に戻してから死なせてやるために、アイテムボックスにいれて持ち歩いている事を。しかし自分の修行に付き合わせ、もしかしたらその発見が遅れているのではと思い、タケルはサビオに申し訳ない気持ちになっていた。
「それなのにずっと俺の修行に付き合わせてすいません。元に戻す方法の発見が遅れてたりしませんか?」
「ほほ。大丈夫なんだの、むしろ発見が早まるかもしれないんだの。タケル殿の魔法のおかげでの。」
「そうですか、そう言って頂けると楽ですね。それとその件は頑張って方法を考えてみます。」
「ほっほっほっ。頼んだんだの。」
サビオはそう言って頭を下げた、タケルは慌ててやめるようサビオに言い話を始めた。
「サビオさん、俺はサビオさんに感謝してるんです、サビオさんはこっちに来てからずっと俺の相手をしてきてくれました、そんなサビオさんの願いなら、それは俺の願いも同然なんです、もっと遠慮無く言って下さい。」
「ほほ。ありがとうなんだの。タケル殿。」
「気にしないで下さい、サビオさんは俺にとって家族も同然なんです、家族の為に何かをするのに理由なんて要りませんしね。」
「タケル殿・・・・」
タケルに家族と言われサビオはうっすらと目に涙を溜めていた、その二人の会話をタケルの隣で聞いていたアルミスも目に涙を溜めてウルウルとしていた。
「タケル様は優しいんですね、そんな方の妻になれるかと思うと本当に幸せです。」
「ほっほっほっ、そういえばシルヴァがそんな事を言っておったの。タケル殿、いつの間にそんな話になったんだの。」
タケルがアルミスを見ると、うっかり言ってしまった事に顔を赤くしていた。そしてサビオというと、さっきまでの少し感動的な場面が台無しになるような表情でタケルに経緯を聞いて来ていた。
「もう、サビオさん。それはどうでも良いじゃないですか、正式に結婚する日が決まったら教えますから、それまではそっとしておいてくださいよ。」
「ほっほっほっ。そうかの、分かったんだの、報告楽しみにしているんだの。」
「ええ、楽しみに待ってて下さい。」
その後は和やかに三人で紅茶を飲み、暫く雑談をしていた。
「あ、ベルナルドさんからですね。腕前の確認が終わったようです。」
タケルはそう言うと扉を出現させ、異空間へ入って行った。
「おお、タケル殿、何とかここまでは倒す事が出来ましたぞ。」
タケルを見つけるなりそう報告してきたベルナルドが指差した先には、並んだゴーレムが半分位の所まで倒されていた。それを見てタケルがベルナルドに告げた。
「これくらい出来るなら、もう一緒に森で行動出来ますね。明日からは一緒に行きましょう。」
「あ、ああ。分かった、足手まといにならぬよう努力する。」
タケルはベルナルドの実力がそれなりになったのを確認出来たので、パーティーメンバーとして一緒に森を移動する事にした。
翌日タケル達は薄暗い森の中を進んでいた、タケルが先頭となり、藪を切り開きながらではあるが、まるで散歩でも楽しむかのように一行の足取りは軽やかであった。
「な、なあ、タケル殿、もう少し周りを警戒した方が良いのではなかろうか。」
タケル達は武器も持たず普段通りに歩いて行く、しかしベルナルドだけは帯剣しいつでも剣を抜けるようにして移動していた。一見ベルナルドが臆病に見えるが、本来はそれが普通であり、周囲を警戒し斥候、前衛、中衛、後衛等役割を決めて慎重に進んで行くものである、それはベルナルドが騎士団に居た頃から現在まで変わらない事であった。しかしタケル達は広範囲に渡る索敵が可能であり、かつ各々が常識外れな実力の持ち主であるため、警戒をする必要が無かったのである。
「ベルナルドさん、大丈夫ですよ、魔物は近くには居ませんし、今は上空もカバーしてますからね。」
先日のシルヴァの時の経験を生かしタケルはマップの索敵範囲を森の上空まで広げていたのだった。
「そ、そうか、タケル殿がそう言うなら大丈夫なのであろう、しかしこうしていると落ち着くのだ。大目に見てくれ。」
「まあ、そういうことなら構いませんが、疲れちゃいますよ。」
「ほっほっほっ。まあ、仕方が無いんだの。そのうち慣れると思うんだの。」
「ところでベルナルドさん、オーガと戦った事有りますか?」
「ああ、あるな。騎士団に居た頃に1度。あの時は30人程の騎士団員でようやく倒した程の強敵であってな、仲間も半数が命を落とした程の激戦だったんだ。」
「そうですか、大変だったんですね、でも今ならベルナルドさんでも倒せるんじゃないですか?ドラゴン狩りの称号も有りますしね。」
「お、おお。そうであるな。今の私ならオーガくらい1対1でも倒せるかもしれないな。」
「え、かもなんですか?やっぱり自信が無いみたいですね。」
「い、いや、そんな事は無いぞ、あのゴーレムをあれだけ倒す事が出来たのだ、きっと今なら1対1でも倒せる!間違いない!」
「そうですよね、出来ますよね。」
タケルが妙にベルナルドを煽る、しかしベルナルドはまんまとのせられ、どんどんその気になって行く、サビオはそんな二人のやり取りを見てニヤニヤしており、アルミスは微笑んでいた。
「おお!出来るとも!オーガなんぞこの手で捻り潰してくれる!」
「頼もしいですね、ベルナルドさん。」
「おお。タケル殿、もしオーガが出ても任せてくれ、手出し無用だ。ハハハ。」
その時タケルが不適な笑みを浮かべ呟いた。
「言質取った。フフ。」
サビオもニヤニヤとしている。アルミスは相変わらず微笑んでいた。
「タケル殿、何か言いましたかな?」
「いえいえ、何でも無いですよ、ただベルナルドさんに是非頑張って頂きたいと思いまして。」
「え?な、何を」
その時であった、少し先の木が突然破裂したかのように弾けた、ベルナルドは何事かと弾けた木の方に視線を向けた。そこには赤黒い肌で頭には角を生やし、口からは牙が飛び出している。腕は太く筋肉が盛り上がっており、手には大きな棍棒を握っている、身の丈はおよそ3mのオーガが唸り声を上げ、タケル達を血走った目で睨んでいる。
「ベルナルドさん、出番ですよ!宿敵のオーガです。ベルナルドさんの実力を是非とも発揮してください。」
タケルがそう言ってベルナルドの方を見ると、剣を構えガタガタと震えていた。そんなベルナルドの姿を見てタケルは感心していた。本来なら逃げ出したくなるような状況であろう。ベルナルドは昔、騎士団員30人で相手をして多くの仲間を失いやっと倒した相手であり、トラウマを負ってもおかしくない相手であったからだ、その原因でもあるオーガを目の前にして、ベルナルドは震えながらも剣を構えオーガと対峙していたからである。
「へえ、少しはマシになったようだね。さて、お手並み拝見と行きますか。」
「ほっほっほっ。ベルナルド殿、お主なら出きるんだの。頑張るんだの。」
「ベルナルドさん、今の貴方なら出来ますよ、頑張って下さい。」
しかしベルナルドは未だに震えが収まらず、剣を持つ手も震えいまにも剣が落ちそうであった。
そんなベルナルドを見てタケルが切り出した。
「ベルナルドさん、貴方なら出来ますよ!ドラゴン狩りなんですから!ほら、頑張って!物理障壁のバフを掛けてあげますから。」
タケルはそう言うとベルナルドに物理ダメージ無効の障壁魔法を掛け、再び声を掛けた。
「ベルナルドさん、バフ掛けましたからね、でも当たったら死なないけど痛いですよ!攻撃は避けて下さいね!ほら、オーガとがドンドン近付いて来てますよ!」
その時、オーガが大きく吠えて棍棒をベルナルドに向けて降り下ろしてきた。
ベルナルドは咄嗟に剣で棍棒を受け流し、起動を変えられた棍棒は地面に当たり土を弾き大きく抉られた穴が空いた。
「お。やるね。」
タケルは初撃をかわしたベルナルドを見て呟いた。
しかしベルナルドは初撃をかわし自信が付いたのか、それとも気持ちを切り替えたのか震えが止まっていた。ベルナルドの表情も引き締まり、その表情は近衛騎士団員であった時のそれであった。
初撃をかわされたオーガは一瞬驚いたようだが、そのまま棍棒をベルナルドに向けて横凪ぎに振りかぶった。しかしベルナルドが剣で棍棒をかち上げ、軌道を変えられた棍棒は手に握られたままオーガの頭の上まではね上がった。ベルナルドは剣に力を入れオーガの左足を斬りつけた、しかしベルナルドの剣はオーガの硬い皮膚に阻まれうっすらと切り傷をつけたのみであった。
「ベルナルドさん!力が入り過ぎです!もっと肩の力を抜いて振り抜くように!」
アルミスがベルナルドにアドバイスを送った。するとベルナルドは飛び退き一端距離を置いた。そしてベルナルドは「ふーっ!」と息を吐き目を瞑ったかと思うと目を見開くと、肩の力が抜け綺麗な構えとなった。
2度も攻撃をいなされたオーガは怒り、雄叫びを上げながらベルナルドの方へと向けて棍棒で地面を叩き上げると、大量の土砂がベルナルドに遅いかかかった、ベルナルドは冷静に剣を構え残撃を飛ばし土砂をふせぐと目の前に距離を詰めて来て、降り下ろされた棍棒を剣で棍棒を弾く、しかし今度はすぐに棍棒が降り下ろされベルナルドが再度剣で弾いた、そこから暫くオーガの棍棒とベルナルドの剣の攻防が続いた。
「んん~。あのオーガ強いな、このままだと剣が持たないかも。」
ベルナルドとオーガの戦いを静観していたタケルだが、顎に手を当て少し何かを考えると、指を立ててその後ベルナルドを指差した。するとベルナルドの動きが良くなりベルナルドの攻撃が優勢になってきた。
『タケル殿、何かしたのかの。』
『あ、バレました?状況打開の為に少しだけ身体強化を掛けました。』
『なるほどの、しかし絶妙な強化だの、本人はオーガの動きが少し悪くなった位にしか思わんかもの。』
タケルとサビオは念話で会話していた、どうやらタケルはベルナルドに身体強化の魔法を掛けたようである、それも心なしか動きが良くなる程度の弱い強化であった。しかし原状を打開するには十分であった。
「この!オーガめ!今だ!」
ベルナルドの剣とオーガの棍棒の激しい打ち合いが続くなか、オーガの棍棒が大きく弾かれた、その隙にベルナルドが先程と同じく左足に斬りかかった、オーガはまたベルナルドの剣は弾かれると避けもしなかったが、力も抜け鋭くなった剣撃はオーガの左足を膝上から切断した。油断し左足を失ったオーガは苦痛に顔を歪め崩れ落ち、左手を地面に付きベルナルドを睨み付け大きく吼えると体勢を崩したまま棍棒を横凪ぎにふりかぶった。ベルナルドは棍棒をかち上げ、そのまま剣を降り下ろしオーガの腕を斬り飛ばした。
武器を失ったオーガはオーガはまたも吼えそのまま大きく口を開けたままベルナルドに噛み付きに来たが、ベルナルドは跳んで噛み付きを避け、オーガの首に剣を降り下ろしオーガの首を切断した。
「フーッフーッ俺が、俺がオーガを一人で・・・クッ」
「やりましたね、ベルナルドさん。」
「ほっほっほっ。なかなかやるの。」
「ベルナルドさん、私は出来ると思ってましたよ。」
一人でオーガを倒したベルナルドをそれぞれが称えた。そしてベルナルドは目に涙を溜めて天を仰いでいた。過去にオーガと戦い命を落とした仲間を思ってか、自分一人で倒せた事か、それとも両方なのか、その時、薄暗い森の中に木々の間から一筋の光が差し込み、天を仰ぐベルナルドを照らした、その姿はまるで絵画に描かれた勇者のようであった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ようやくベルナルドを覚醒させる事が出来ました。
ベルナルドの達位置に悩んでいたのですが、何となく方向性が今回で決まりました、何となくですけどね。
それでは今後も宜しくお願い致します。
ベルナルドとゴーレムを異空間に置いてきたタケルとサビオはソファーで再び紅茶を飲み、サビオが言っていた話と言うのを始めていた。
「それで、一体どんな話なんですか?サビオさん。」
「ほほ。タケル殿は覚えておるかの?もと聖霊だった邪竜の事を。」
「勿論覚えてますよ、凄く大きくて強そうでしたよね。確か聖獣に戻す方法を探しているんでしたよね。」
「ほほ。そうだの。それでなんだがの、タケル殿の魔法で何とかならないのかと思っての。」
「ああ、なるほど。そういう事なんですね。確かにマジッククリエイションを使えば可能かもしれませんね。」
タケルは思い出していた、元は聖獣であった邪竜に触れて涙を流していたサビオを、その邪竜が友であった事、長い間ずっと聖獣に戻してから死なせてやるために、アイテムボックスにいれて持ち歩いている事を。しかし自分の修行に付き合わせ、もしかしたらその発見が遅れているのではと思い、タケルはサビオに申し訳ない気持ちになっていた。
「それなのにずっと俺の修行に付き合わせてすいません。元に戻す方法の発見が遅れてたりしませんか?」
「ほほ。大丈夫なんだの、むしろ発見が早まるかもしれないんだの。タケル殿の魔法のおかげでの。」
「そうですか、そう言って頂けると楽ですね。それとその件は頑張って方法を考えてみます。」
「ほっほっほっ。頼んだんだの。」
サビオはそう言って頭を下げた、タケルは慌ててやめるようサビオに言い話を始めた。
「サビオさん、俺はサビオさんに感謝してるんです、サビオさんはこっちに来てからずっと俺の相手をしてきてくれました、そんなサビオさんの願いなら、それは俺の願いも同然なんです、もっと遠慮無く言って下さい。」
「ほほ。ありがとうなんだの。タケル殿。」
「気にしないで下さい、サビオさんは俺にとって家族も同然なんです、家族の為に何かをするのに理由なんて要りませんしね。」
「タケル殿・・・・」
タケルに家族と言われサビオはうっすらと目に涙を溜めていた、その二人の会話をタケルの隣で聞いていたアルミスも目に涙を溜めてウルウルとしていた。
「タケル様は優しいんですね、そんな方の妻になれるかと思うと本当に幸せです。」
「ほっほっほっ、そういえばシルヴァがそんな事を言っておったの。タケル殿、いつの間にそんな話になったんだの。」
タケルがアルミスを見ると、うっかり言ってしまった事に顔を赤くしていた。そしてサビオというと、さっきまでの少し感動的な場面が台無しになるような表情でタケルに経緯を聞いて来ていた。
「もう、サビオさん。それはどうでも良いじゃないですか、正式に結婚する日が決まったら教えますから、それまではそっとしておいてくださいよ。」
「ほっほっほっ。そうかの、分かったんだの、報告楽しみにしているんだの。」
「ええ、楽しみに待ってて下さい。」
その後は和やかに三人で紅茶を飲み、暫く雑談をしていた。
「あ、ベルナルドさんからですね。腕前の確認が終わったようです。」
タケルはそう言うと扉を出現させ、異空間へ入って行った。
「おお、タケル殿、何とかここまでは倒す事が出来ましたぞ。」
タケルを見つけるなりそう報告してきたベルナルドが指差した先には、並んだゴーレムが半分位の所まで倒されていた。それを見てタケルがベルナルドに告げた。
「これくらい出来るなら、もう一緒に森で行動出来ますね。明日からは一緒に行きましょう。」
「あ、ああ。分かった、足手まといにならぬよう努力する。」
タケルはベルナルドの実力がそれなりになったのを確認出来たので、パーティーメンバーとして一緒に森を移動する事にした。
翌日タケル達は薄暗い森の中を進んでいた、タケルが先頭となり、藪を切り開きながらではあるが、まるで散歩でも楽しむかのように一行の足取りは軽やかであった。
「な、なあ、タケル殿、もう少し周りを警戒した方が良いのではなかろうか。」
タケル達は武器も持たず普段通りに歩いて行く、しかしベルナルドだけは帯剣しいつでも剣を抜けるようにして移動していた。一見ベルナルドが臆病に見えるが、本来はそれが普通であり、周囲を警戒し斥候、前衛、中衛、後衛等役割を決めて慎重に進んで行くものである、それはベルナルドが騎士団に居た頃から現在まで変わらない事であった。しかしタケル達は広範囲に渡る索敵が可能であり、かつ各々が常識外れな実力の持ち主であるため、警戒をする必要が無かったのである。
「ベルナルドさん、大丈夫ですよ、魔物は近くには居ませんし、今は上空もカバーしてますからね。」
先日のシルヴァの時の経験を生かしタケルはマップの索敵範囲を森の上空まで広げていたのだった。
「そ、そうか、タケル殿がそう言うなら大丈夫なのであろう、しかしこうしていると落ち着くのだ。大目に見てくれ。」
「まあ、そういうことなら構いませんが、疲れちゃいますよ。」
「ほっほっほっ。まあ、仕方が無いんだの。そのうち慣れると思うんだの。」
「ところでベルナルドさん、オーガと戦った事有りますか?」
「ああ、あるな。騎士団に居た頃に1度。あの時は30人程の騎士団員でようやく倒した程の強敵であってな、仲間も半数が命を落とした程の激戦だったんだ。」
「そうですか、大変だったんですね、でも今ならベルナルドさんでも倒せるんじゃないですか?ドラゴン狩りの称号も有りますしね。」
「お、おお。そうであるな。今の私ならオーガくらい1対1でも倒せるかもしれないな。」
「え、かもなんですか?やっぱり自信が無いみたいですね。」
「い、いや、そんな事は無いぞ、あのゴーレムをあれだけ倒す事が出来たのだ、きっと今なら1対1でも倒せる!間違いない!」
「そうですよね、出来ますよね。」
タケルが妙にベルナルドを煽る、しかしベルナルドはまんまとのせられ、どんどんその気になって行く、サビオはそんな二人のやり取りを見てニヤニヤしており、アルミスは微笑んでいた。
「おお!出来るとも!オーガなんぞこの手で捻り潰してくれる!」
「頼もしいですね、ベルナルドさん。」
「おお。タケル殿、もしオーガが出ても任せてくれ、手出し無用だ。ハハハ。」
その時タケルが不適な笑みを浮かべ呟いた。
「言質取った。フフ。」
サビオもニヤニヤとしている。アルミスは相変わらず微笑んでいた。
「タケル殿、何か言いましたかな?」
「いえいえ、何でも無いですよ、ただベルナルドさんに是非頑張って頂きたいと思いまして。」
「え?な、何を」
その時であった、少し先の木が突然破裂したかのように弾けた、ベルナルドは何事かと弾けた木の方に視線を向けた。そこには赤黒い肌で頭には角を生やし、口からは牙が飛び出している。腕は太く筋肉が盛り上がっており、手には大きな棍棒を握っている、身の丈はおよそ3mのオーガが唸り声を上げ、タケル達を血走った目で睨んでいる。
「ベルナルドさん、出番ですよ!宿敵のオーガです。ベルナルドさんの実力を是非とも発揮してください。」
タケルがそう言ってベルナルドの方を見ると、剣を構えガタガタと震えていた。そんなベルナルドの姿を見てタケルは感心していた。本来なら逃げ出したくなるような状況であろう。ベルナルドは昔、騎士団員30人で相手をして多くの仲間を失いやっと倒した相手であり、トラウマを負ってもおかしくない相手であったからだ、その原因でもあるオーガを目の前にして、ベルナルドは震えながらも剣を構えオーガと対峙していたからである。
「へえ、少しはマシになったようだね。さて、お手並み拝見と行きますか。」
「ほっほっほっ。ベルナルド殿、お主なら出きるんだの。頑張るんだの。」
「ベルナルドさん、今の貴方なら出来ますよ、頑張って下さい。」
しかしベルナルドは未だに震えが収まらず、剣を持つ手も震えいまにも剣が落ちそうであった。
そんなベルナルドを見てタケルが切り出した。
「ベルナルドさん、貴方なら出来ますよ!ドラゴン狩りなんですから!ほら、頑張って!物理障壁のバフを掛けてあげますから。」
タケルはそう言うとベルナルドに物理ダメージ無効の障壁魔法を掛け、再び声を掛けた。
「ベルナルドさん、バフ掛けましたからね、でも当たったら死なないけど痛いですよ!攻撃は避けて下さいね!ほら、オーガとがドンドン近付いて来てますよ!」
その時、オーガが大きく吠えて棍棒をベルナルドに向けて降り下ろしてきた。
ベルナルドは咄嗟に剣で棍棒を受け流し、起動を変えられた棍棒は地面に当たり土を弾き大きく抉られた穴が空いた。
「お。やるね。」
タケルは初撃をかわしたベルナルドを見て呟いた。
しかしベルナルドは初撃をかわし自信が付いたのか、それとも気持ちを切り替えたのか震えが止まっていた。ベルナルドの表情も引き締まり、その表情は近衛騎士団員であった時のそれであった。
初撃をかわされたオーガは一瞬驚いたようだが、そのまま棍棒をベルナルドに向けて横凪ぎに振りかぶった。しかしベルナルドが剣で棍棒をかち上げ、軌道を変えられた棍棒は手に握られたままオーガの頭の上まではね上がった。ベルナルドは剣に力を入れオーガの左足を斬りつけた、しかしベルナルドの剣はオーガの硬い皮膚に阻まれうっすらと切り傷をつけたのみであった。
「ベルナルドさん!力が入り過ぎです!もっと肩の力を抜いて振り抜くように!」
アルミスがベルナルドにアドバイスを送った。するとベルナルドは飛び退き一端距離を置いた。そしてベルナルドは「ふーっ!」と息を吐き目を瞑ったかと思うと目を見開くと、肩の力が抜け綺麗な構えとなった。
2度も攻撃をいなされたオーガは怒り、雄叫びを上げながらベルナルドの方へと向けて棍棒で地面を叩き上げると、大量の土砂がベルナルドに遅いかかかった、ベルナルドは冷静に剣を構え残撃を飛ばし土砂をふせぐと目の前に距離を詰めて来て、降り下ろされた棍棒を剣で棍棒を弾く、しかし今度はすぐに棍棒が降り下ろされベルナルドが再度剣で弾いた、そこから暫くオーガの棍棒とベルナルドの剣の攻防が続いた。
「んん~。あのオーガ強いな、このままだと剣が持たないかも。」
ベルナルドとオーガの戦いを静観していたタケルだが、顎に手を当て少し何かを考えると、指を立ててその後ベルナルドを指差した。するとベルナルドの動きが良くなりベルナルドの攻撃が優勢になってきた。
『タケル殿、何かしたのかの。』
『あ、バレました?状況打開の為に少しだけ身体強化を掛けました。』
『なるほどの、しかし絶妙な強化だの、本人はオーガの動きが少し悪くなった位にしか思わんかもの。』
タケルとサビオは念話で会話していた、どうやらタケルはベルナルドに身体強化の魔法を掛けたようである、それも心なしか動きが良くなる程度の弱い強化であった。しかし原状を打開するには十分であった。
「この!オーガめ!今だ!」
ベルナルドの剣とオーガの棍棒の激しい打ち合いが続くなか、オーガの棍棒が大きく弾かれた、その隙にベルナルドが先程と同じく左足に斬りかかった、オーガはまたベルナルドの剣は弾かれると避けもしなかったが、力も抜け鋭くなった剣撃はオーガの左足を膝上から切断した。油断し左足を失ったオーガは苦痛に顔を歪め崩れ落ち、左手を地面に付きベルナルドを睨み付け大きく吼えると体勢を崩したまま棍棒を横凪ぎにふりかぶった。ベルナルドは棍棒をかち上げ、そのまま剣を降り下ろしオーガの腕を斬り飛ばした。
武器を失ったオーガはオーガはまたも吼えそのまま大きく口を開けたままベルナルドに噛み付きに来たが、ベルナルドは跳んで噛み付きを避け、オーガの首に剣を降り下ろしオーガの首を切断した。
「フーッフーッ俺が、俺がオーガを一人で・・・クッ」
「やりましたね、ベルナルドさん。」
「ほっほっほっ。なかなかやるの。」
「ベルナルドさん、私は出来ると思ってましたよ。」
一人でオーガを倒したベルナルドをそれぞれが称えた。そしてベルナルドは目に涙を溜めて天を仰いでいた。過去にオーガと戦い命を落とした仲間を思ってか、自分一人で倒せた事か、それとも両方なのか、その時、薄暗い森の中に木々の間から一筋の光が差し込み、天を仰ぐベルナルドを照らした、その姿はまるで絵画に描かれた勇者のようであった。
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ようやくベルナルドを覚醒させる事が出来ました。
ベルナルドの達位置に悩んでいたのですが、何となく方向性が今回で決まりました、何となくですけどね。
それでは今後も宜しくお願い致します。
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