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2章 少年期 1部シーバムの大森林編
8話 雄叫び
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王妃達の封印石を1000年もの間一人で見守って来たベルナルドの呪いを解くため、ベルナルドを封印したタケル達は昼食にするためにセーフゾーンに来ていた。
「何にしますか?シーバムグランドバイパーはヘビだから淡白で美味しいかもしれませんね。どうですか?」
「ほっほっほっ。タケル殿に任せるでの。」
「私はタケル様の作る物であれば何でも。」
二人共シーバムグランドバイパーで問題無いようである。タケルは魔法で解体して肉だけを取りだし、調理を始めた。
「出来ました、試しに色々作ってみました。全てシーバムグランドバイパーの肉で、これがフライ、これが唐揚げ、これが照り焼きです。フライはソースか醤油、唐揚げにはマヨネーズか、特性スパイスお好みでどうぞ、照り焼きは味が濃いのでそのままでどうぞ。」
「ほっほっほっ。流石タケル殿だの、どれも美味しそうなんだの。」
「この照り焼きいい臭いです。」
「いただきます!」
「ほほ。これはなかなか旨いの。」
「照り焼き美味しいです。タケル様!」
タケル達は沢山遭遇してウンザリしていたシーバムグランドバイパーを遅めの昼食のおかずにした。タケルの腕も加わりどれも好評で大量に作った料理は全て完食された、勿論アルミスが照り焼きを殆ど食べたのは言うまでも無い。
遅めの昼食を食べ終わった3人は片付けを済まし、テーブルで紅茶を飲み寛いでいた。
「ベルナルドさんの呪いは考えが纏まるまでもう少し掛かりますね。」
「タケル様、財宝はどうされますか?」
「そっか、財宝を取りに行ってどのくらいの量か確認しないと宝物庫も作りようが無いしね。じゃあ、後で財宝を取りに行って、戻ったら書庫と宝物庫を作って今日はおしまいかな。」
「ほっほっほっ。タケル殿、ワシはここに残っても大丈夫かの?」
「え?大丈夫ですけど、何かするんですか?」
「ほっほっほっ。サカリアス殿の書物と書庫の本も読んで見たくての。」
「ああ、構いませんよ。」
「じゃあアルミス、二人で財宝を取りに行こうか。」
「はい、タケル様。」
アルミスは少し頬を赤らめていた。
「ではタケル殿、サカリアス殿の書物だけ渡してくれるかの、後は書庫が出来てからで構わんからの。」
タケルが隠し部屋で回収したサカリアスの書物をリビングに出すと、サビオは直ぐにアイテムボックスに仕舞い、心なしか足取りも軽そうに自分の部屋へと消えて行った。
「じゃあ行こうか。アルミス。」
タケルとアルミスは二人で扉を抜けて遺跡の通路に戻って来た。そこから通路を戻って行くと少し広い部屋に辿り着いた、そこは封印石を探しに地下へ降りてきた時にあった最初の部屋で、扉が幾つも有る部屋であった。
サカリアスの隠し部屋が有る通路はこの部屋の隠し扉から入って行った所に有った、タケルの【スキャン&サーチ】が無かったら見つけられなかったであろう。この遺跡は非常に良く出来ており、至る所に隠し扉が有り様々な所に出られる様になっている。隠し通路は勿論、部屋と部屋を繋ぐ扉、隠し部屋に続く扉等が有り、有事の際や、盗賊対策として作られていたのであろあろう。サカリアスの隠し部屋もそんな通路の1つであった。
「この遺跡は闇雲に探したら絶対に見付からないね。何らかのスキルが無いと隠し扉なんか見つけられないよね。」
「そうですね、タケル様。シーフでも難しいかも知れませんね。タケル様が見つけた扉はどれも非常に判りづらい物ばかりでしたからね。」
「そっか。凄い高度な技術を持っていたんだね~。」
「そうですね、この世界は1000年前英雄王が統一し、英雄王の死後500年は平和で、大きな戦も無かったそうですが、その後魔物の大量発生や、属国の反乱による戦乱が続き様々な技術が失われたと聞いております。」
アルミスの話によると、この世界の技術は昔の方が優れていたようである、タケルはまだこの世界の街や村を見ていないので現在はどれ位の技術レベルや生活レベルなのか判らないが、昔より優れている事は無さそうだ。
「へ~。そうなんだ・・・ところで、アルミス、魔物の気配がこっちに来てるね。」
「私もにも判ります、凄い殺気ですね。」
「そうだね~。俺達何か気に障る事でもしたかな?」
「タケル様、相手は魔物です、魔物からすれば私達は存在が気に障る事なのでしょう。」
「そ、そうだね。」
(受け答えがマジメ過ぎるよ、アルミス。)
その時、1つの扉が勢い良く開き通路から魔物がゆっくりと姿を現した。
その魔物は大きく身長は3メートル近く有り、全身が短く赤い毛に覆われており、頭には2本の角、牛のような顔付きであるが、牙が有り草食では無いのだろう、ヨダレを垂らし鼻息が荒くタケルの所まで鼻息の音が聞こえる程だ、腕は太く筋肉が盛り上がり大きな斧を持っている、下半身は動物のような足をしていて足先は蹄になっておりまさしく牛のソレである。どうやら地球でも物語やゲームでもお馴染みのミノタウロスのようだ、しかもこのミノタウロスは簡素ではあるが鎧まで着けている、上位種なのであろう。
ミノタウロスのに続いて犬型が数匹、正確には全部で5匹いる。体は大きく、目が燃えるようにあかく、鋭い牙と爪を持ち、口からはヨダレが垂れており、垂れたヨダレが床に落ちると床が溶けていく、協力な酸のようだ、全身を覆う体毛は太くまるで針金のようである、どうやらヘルハウンドのようだ。
そしてその内の一匹は体つきは少し小さい、他の個体よりも体毛は短く爪もそれほどでもない、しかし口からは炎が時折見え隠れし、感じる圧力も他の個体の非ではなく強く感じる。ファイヤーヘルハウンドと言うらしい。
「おお、ミノタウロスだ、スゲー!本物だ、強そうだね。あのワンコは可愛く無いな。」
「アルミス、どっちやる?」
「タケル様、ミノタウロスは私に殺らせて下さい。」
タケルは依然聞いた話を思い出した。アズールにおいて獣人族は人々から差別を受ける事が多々ある、それは個人からであったり、地域全体からであったり、国自体が差別をしている所もある、理由は様々有るだろうが、その一旦としてミノタウロスのような魔物にも原因が有るそうだ、見た目が獣に近いとはいえ2本足で歩き、武器を使い人のように動け、獣人に似ているからである。その為獣人族はミノタウロスを忌み嫌っているのだ。それ故アルミスもミノタウロスを目の前にして感情が高ぶっていらのだろう。
タケルはアルミスの表情を見て気持ちを切り替えて目の前の魔物に対峙する事にした。
「分かったよ、アルミス。ただアイツは上位種っぽいからくれぐれも気を付けてね。」
「はい、タケル様。元より手を抜くつもりは有りません。」
(あ~。気合い入ってるな、何だかあのミノタウロスに同情するよ、御愁傷様。)
「さてと、俺はワンコ達の相手だね。ちと雲斬丸だとアルミスに迷惑かな、違うのにしようかな。」
タケルはそう言ってアイテムボックスから短めの槍を取り出した、この槍はタケルが作った物で、柄の先に両刃の穂が付いており、けら首と言われる穂の根元部分には少し小さめの短刀位の刃物が穂に対しほぼ直角に左右に付き十字の形を成している、形は違うが両鎌槍である。柄は硬いアダマンタイト製で石突きは打撃にも使えるように、細い金棒のようになっている。
タケルはその槍をクルクルと回転させ構えた。
「さあ、来い!」
ヘルハウンドは先程から警戒しずっとタケルの周囲をうろついている、タケルが槍を構えるとヘルハウンドは牙を剥き唸り声を上げたかと思うと4匹が一斉に飛び掛かって来た、ファイヤーヘルハウンドは動かずにタケルを見ている。
4匹が位置を入れ替えながらタケルに向かってくる、タケルは何もしてこないファイヤーヘルハウンドを視界の端に捉えつつ槍で刺突を連続で放つと4匹全てのヘルハウンドに突き刺さり、ヘルハウンドは吹き飛んだ、2匹はその場で絶命したが2匹は傷を負いながらも立ち上がり、タケルに牙を剥いている。その時であった、ファイヤーヘルハウンドが火球を吐き飛ばし生き残ったヘルハウンドに当たり、ヘルハウンドは炎に包まれその場で灰と化した。
「仲間じゃ無いのかよ・・・」
タケルはファイヤーヘルハウンドに向き直り槍を構えた、するとタケルに向かい火球を連続で放って来た、タケルは火球を全て避けながらファイヤーヘルハウンドに向かい跳び込み槍の刺突を繰り出すと、ヘルハウンドは炎のブレスを吐き出し周囲を炎で撫で回した。
「おっと。ブレスも有ったか。」
タケルは再度跳び込み槍で凪ぎ払うと、ファイヤーヘルハウンドの身体を切り裂いた。そう思った瞬間ファイヤーヘルハウンドの体が炎に包まれた、タケルは違和感を感じ槍を構え様子を伺っていると、ファイヤーヘルハウンドは全身を炎のヘルハウンドとなった。
「そうか、それが本当の姿か、燃えるワンコ!!」
タケルは ファイヤーヘルハウンドに跳び付き槍を一閃、ファイヤーヘルハウンドの体は両断された、かに思えたが両断された炎の体はくっつき元の炎の体に戻ってしまった。その後タケルは何度か槍で凪ぎ払い、切り上げ、刺突を繰り出したが全て元に戻ってしまった。
「んん~。やっぱり普通に水かな?」
タケルは槍に水の属性を付与し、再度凪ぎ払った、すると先程よりも戻りが遅くなった、タケルは水の属性値を上げて凪ぎ払い、切り上げ、刺突を繰り出した。ファイヤーヘルハウンドは一瞬大きく燃え盛ったかと思うと炎が縮むように小さくなり、最後は摩石だけを残して消え去った。
「んん~。【炎体生成】って体が炎になるなかな?コピーしたけど何だか怖いな・・・【嗅覚上昇】は使えるかも知れないかな・・・」
タケルはユニークスキル【トレース】を使用してスキルを幾つかコピーしていたが、強力なスキルは手に入らなかったようだ。
タケルがヘルハウンドと戦い始めた時と同じ頃、アルミスとミノタウロスはお互いに武器を構え睨み合っていた。
アルミスとミノタウロスは暫し睨み合っていたが、ファイヤーヘルハウンドが放った火球が傷付いたヘルハウンドに当たったのを切っ掛けにアルミスとミノタウロスの両者が動いた、ミノタウロスはアルミスの身長よりも大きい戦斧を横凪ぎに振りかぶり、アルミスはミノタウロスの懐に飛び込んだ、アルミスはミノタウロスの懐に飛び込んだ為に避ける事が出来ず、剣を戦斧の柄の部分に当てて攻撃を防いだ、ミノタウロスは自分より遥かに小さいアルミスに
攻撃を防がれた事に一瞬驚いた、しかしすぐに戦斧を戻し同時に戦を持っていない左手で殴りに掛かった、アルミスは拳を跳んでヒラリと拳をかわし、拳とすれ違い様に剣を降り腕を切り落とした。ミノタウロスは叫び声を上げ、戦斧を振り回した。勢い良く腕から噴き出していた血をミノタウロスは腕に力を入れただけで血を止めしけつした。
「随分器用ね。ヴァークちゃん。」
ヴァークとはアズールの牛に似た動物の名である、アルミスがミノタウロスに近付くと、ミノタウロスは戦斧を振り上げると、戦斧を振り上げた腕が一周り太くなった、そして次の瞬間ミノタウロスは力の限り戦斧を降り下ろした。しかしアルミスはミノタウロスの渾身の一撃を剣で受け流し、戦斧は地面に突き刺さった。そしてアルミスはそのまま剣を横凪ぎに振り抜き、ミノタウロスの左足を切り落とした。
左足を膝下から下を失ったミノタウロスはバランスを崩し傷口を床に付け、倒れそうになる所を床に突き刺さった戦斧にしがみつきどうにか身体を支えた。そんな状況でもミノタウロスは戦意を喪失していなかった、ミノタウロスは雄叫びを上げ戦斧を床から引き抜き、立て膝の状態で戦斧を横凪ぎに振り抜いた、アルミスはミノタウロスの懐に跳び込み腕を切り付けた、ミノタウロスの腕は戦斧を持ったまま回転して飛んで行った。
ミノタウロスは諦めたのか、雄叫びを上げた、その瞬間アルミスがミノタウロスを切り付けると首が切断され、雄叫びは途切れ、床に首が転がった。
「そっちも終わった?」
ファイヤーヘルハウンドを倒したタケルがヘルハウンドの死体とファイヤーヘルハウンドの魔石を回収し終えアルミスの元へ歩み寄って来て声を掛けてきた。
「はい、タケル様。無事終わりました。」
(あ~。やっぱりミノタウロスが無惨な姿に・・・御愁傷様)
じゃあ、ミノタウロスを回収して行こうか、財宝がまってるよ。
タケルとアルミスは先頭が終わり静になった部屋をあとにし、財宝の有る部屋へと向かって行った。
「何にしますか?シーバムグランドバイパーはヘビだから淡白で美味しいかもしれませんね。どうですか?」
「ほっほっほっ。タケル殿に任せるでの。」
「私はタケル様の作る物であれば何でも。」
二人共シーバムグランドバイパーで問題無いようである。タケルは魔法で解体して肉だけを取りだし、調理を始めた。
「出来ました、試しに色々作ってみました。全てシーバムグランドバイパーの肉で、これがフライ、これが唐揚げ、これが照り焼きです。フライはソースか醤油、唐揚げにはマヨネーズか、特性スパイスお好みでどうぞ、照り焼きは味が濃いのでそのままでどうぞ。」
「ほっほっほっ。流石タケル殿だの、どれも美味しそうなんだの。」
「この照り焼きいい臭いです。」
「いただきます!」
「ほほ。これはなかなか旨いの。」
「照り焼き美味しいです。タケル様!」
タケル達は沢山遭遇してウンザリしていたシーバムグランドバイパーを遅めの昼食のおかずにした。タケルの腕も加わりどれも好評で大量に作った料理は全て完食された、勿論アルミスが照り焼きを殆ど食べたのは言うまでも無い。
遅めの昼食を食べ終わった3人は片付けを済まし、テーブルで紅茶を飲み寛いでいた。
「ベルナルドさんの呪いは考えが纏まるまでもう少し掛かりますね。」
「タケル様、財宝はどうされますか?」
「そっか、財宝を取りに行ってどのくらいの量か確認しないと宝物庫も作りようが無いしね。じゃあ、後で財宝を取りに行って、戻ったら書庫と宝物庫を作って今日はおしまいかな。」
「ほっほっほっ。タケル殿、ワシはここに残っても大丈夫かの?」
「え?大丈夫ですけど、何かするんですか?」
「ほっほっほっ。サカリアス殿の書物と書庫の本も読んで見たくての。」
「ああ、構いませんよ。」
「じゃあアルミス、二人で財宝を取りに行こうか。」
「はい、タケル様。」
アルミスは少し頬を赤らめていた。
「ではタケル殿、サカリアス殿の書物だけ渡してくれるかの、後は書庫が出来てからで構わんからの。」
タケルが隠し部屋で回収したサカリアスの書物をリビングに出すと、サビオは直ぐにアイテムボックスに仕舞い、心なしか足取りも軽そうに自分の部屋へと消えて行った。
「じゃあ行こうか。アルミス。」
タケルとアルミスは二人で扉を抜けて遺跡の通路に戻って来た。そこから通路を戻って行くと少し広い部屋に辿り着いた、そこは封印石を探しに地下へ降りてきた時にあった最初の部屋で、扉が幾つも有る部屋であった。
サカリアスの隠し部屋が有る通路はこの部屋の隠し扉から入って行った所に有った、タケルの【スキャン&サーチ】が無かったら見つけられなかったであろう。この遺跡は非常に良く出来ており、至る所に隠し扉が有り様々な所に出られる様になっている。隠し通路は勿論、部屋と部屋を繋ぐ扉、隠し部屋に続く扉等が有り、有事の際や、盗賊対策として作られていたのであろあろう。サカリアスの隠し部屋もそんな通路の1つであった。
「この遺跡は闇雲に探したら絶対に見付からないね。何らかのスキルが無いと隠し扉なんか見つけられないよね。」
「そうですね、タケル様。シーフでも難しいかも知れませんね。タケル様が見つけた扉はどれも非常に判りづらい物ばかりでしたからね。」
「そっか。凄い高度な技術を持っていたんだね~。」
「そうですね、この世界は1000年前英雄王が統一し、英雄王の死後500年は平和で、大きな戦も無かったそうですが、その後魔物の大量発生や、属国の反乱による戦乱が続き様々な技術が失われたと聞いております。」
アルミスの話によると、この世界の技術は昔の方が優れていたようである、タケルはまだこの世界の街や村を見ていないので現在はどれ位の技術レベルや生活レベルなのか判らないが、昔より優れている事は無さそうだ。
「へ~。そうなんだ・・・ところで、アルミス、魔物の気配がこっちに来てるね。」
「私もにも判ります、凄い殺気ですね。」
「そうだね~。俺達何か気に障る事でもしたかな?」
「タケル様、相手は魔物です、魔物からすれば私達は存在が気に障る事なのでしょう。」
「そ、そうだね。」
(受け答えがマジメ過ぎるよ、アルミス。)
その時、1つの扉が勢い良く開き通路から魔物がゆっくりと姿を現した。
その魔物は大きく身長は3メートル近く有り、全身が短く赤い毛に覆われており、頭には2本の角、牛のような顔付きであるが、牙が有り草食では無いのだろう、ヨダレを垂らし鼻息が荒くタケルの所まで鼻息の音が聞こえる程だ、腕は太く筋肉が盛り上がり大きな斧を持っている、下半身は動物のような足をしていて足先は蹄になっておりまさしく牛のソレである。どうやら地球でも物語やゲームでもお馴染みのミノタウロスのようだ、しかもこのミノタウロスは簡素ではあるが鎧まで着けている、上位種なのであろう。
ミノタウロスのに続いて犬型が数匹、正確には全部で5匹いる。体は大きく、目が燃えるようにあかく、鋭い牙と爪を持ち、口からはヨダレが垂れており、垂れたヨダレが床に落ちると床が溶けていく、協力な酸のようだ、全身を覆う体毛は太くまるで針金のようである、どうやらヘルハウンドのようだ。
そしてその内の一匹は体つきは少し小さい、他の個体よりも体毛は短く爪もそれほどでもない、しかし口からは炎が時折見え隠れし、感じる圧力も他の個体の非ではなく強く感じる。ファイヤーヘルハウンドと言うらしい。
「おお、ミノタウロスだ、スゲー!本物だ、強そうだね。あのワンコは可愛く無いな。」
「アルミス、どっちやる?」
「タケル様、ミノタウロスは私に殺らせて下さい。」
タケルは依然聞いた話を思い出した。アズールにおいて獣人族は人々から差別を受ける事が多々ある、それは個人からであったり、地域全体からであったり、国自体が差別をしている所もある、理由は様々有るだろうが、その一旦としてミノタウロスのような魔物にも原因が有るそうだ、見た目が獣に近いとはいえ2本足で歩き、武器を使い人のように動け、獣人に似ているからである。その為獣人族はミノタウロスを忌み嫌っているのだ。それ故アルミスもミノタウロスを目の前にして感情が高ぶっていらのだろう。
タケルはアルミスの表情を見て気持ちを切り替えて目の前の魔物に対峙する事にした。
「分かったよ、アルミス。ただアイツは上位種っぽいからくれぐれも気を付けてね。」
「はい、タケル様。元より手を抜くつもりは有りません。」
(あ~。気合い入ってるな、何だかあのミノタウロスに同情するよ、御愁傷様。)
「さてと、俺はワンコ達の相手だね。ちと雲斬丸だとアルミスに迷惑かな、違うのにしようかな。」
タケルはそう言ってアイテムボックスから短めの槍を取り出した、この槍はタケルが作った物で、柄の先に両刃の穂が付いており、けら首と言われる穂の根元部分には少し小さめの短刀位の刃物が穂に対しほぼ直角に左右に付き十字の形を成している、形は違うが両鎌槍である。柄は硬いアダマンタイト製で石突きは打撃にも使えるように、細い金棒のようになっている。
タケルはその槍をクルクルと回転させ構えた。
「さあ、来い!」
ヘルハウンドは先程から警戒しずっとタケルの周囲をうろついている、タケルが槍を構えるとヘルハウンドは牙を剥き唸り声を上げたかと思うと4匹が一斉に飛び掛かって来た、ファイヤーヘルハウンドは動かずにタケルを見ている。
4匹が位置を入れ替えながらタケルに向かってくる、タケルは何もしてこないファイヤーヘルハウンドを視界の端に捉えつつ槍で刺突を連続で放つと4匹全てのヘルハウンドに突き刺さり、ヘルハウンドは吹き飛んだ、2匹はその場で絶命したが2匹は傷を負いながらも立ち上がり、タケルに牙を剥いている。その時であった、ファイヤーヘルハウンドが火球を吐き飛ばし生き残ったヘルハウンドに当たり、ヘルハウンドは炎に包まれその場で灰と化した。
「仲間じゃ無いのかよ・・・」
タケルはファイヤーヘルハウンドに向き直り槍を構えた、するとタケルに向かい火球を連続で放って来た、タケルは火球を全て避けながらファイヤーヘルハウンドに向かい跳び込み槍の刺突を繰り出すと、ヘルハウンドは炎のブレスを吐き出し周囲を炎で撫で回した。
「おっと。ブレスも有ったか。」
タケルは再度跳び込み槍で凪ぎ払うと、ファイヤーヘルハウンドの身体を切り裂いた。そう思った瞬間ファイヤーヘルハウンドの体が炎に包まれた、タケルは違和感を感じ槍を構え様子を伺っていると、ファイヤーヘルハウンドは全身を炎のヘルハウンドとなった。
「そうか、それが本当の姿か、燃えるワンコ!!」
タケルは ファイヤーヘルハウンドに跳び付き槍を一閃、ファイヤーヘルハウンドの体は両断された、かに思えたが両断された炎の体はくっつき元の炎の体に戻ってしまった。その後タケルは何度か槍で凪ぎ払い、切り上げ、刺突を繰り出したが全て元に戻ってしまった。
「んん~。やっぱり普通に水かな?」
タケルは槍に水の属性を付与し、再度凪ぎ払った、すると先程よりも戻りが遅くなった、タケルは水の属性値を上げて凪ぎ払い、切り上げ、刺突を繰り出した。ファイヤーヘルハウンドは一瞬大きく燃え盛ったかと思うと炎が縮むように小さくなり、最後は摩石だけを残して消え去った。
「んん~。【炎体生成】って体が炎になるなかな?コピーしたけど何だか怖いな・・・【嗅覚上昇】は使えるかも知れないかな・・・」
タケルはユニークスキル【トレース】を使用してスキルを幾つかコピーしていたが、強力なスキルは手に入らなかったようだ。
タケルがヘルハウンドと戦い始めた時と同じ頃、アルミスとミノタウロスはお互いに武器を構え睨み合っていた。
アルミスとミノタウロスは暫し睨み合っていたが、ファイヤーヘルハウンドが放った火球が傷付いたヘルハウンドに当たったのを切っ掛けにアルミスとミノタウロスの両者が動いた、ミノタウロスはアルミスの身長よりも大きい戦斧を横凪ぎに振りかぶり、アルミスはミノタウロスの懐に飛び込んだ、アルミスはミノタウロスの懐に飛び込んだ為に避ける事が出来ず、剣を戦斧の柄の部分に当てて攻撃を防いだ、ミノタウロスは自分より遥かに小さいアルミスに
攻撃を防がれた事に一瞬驚いた、しかしすぐに戦斧を戻し同時に戦を持っていない左手で殴りに掛かった、アルミスは拳を跳んでヒラリと拳をかわし、拳とすれ違い様に剣を降り腕を切り落とした。ミノタウロスは叫び声を上げ、戦斧を振り回した。勢い良く腕から噴き出していた血をミノタウロスは腕に力を入れただけで血を止めしけつした。
「随分器用ね。ヴァークちゃん。」
ヴァークとはアズールの牛に似た動物の名である、アルミスがミノタウロスに近付くと、ミノタウロスは戦斧を振り上げると、戦斧を振り上げた腕が一周り太くなった、そして次の瞬間ミノタウロスは力の限り戦斧を降り下ろした。しかしアルミスはミノタウロスの渾身の一撃を剣で受け流し、戦斧は地面に突き刺さった。そしてアルミスはそのまま剣を横凪ぎに振り抜き、ミノタウロスの左足を切り落とした。
左足を膝下から下を失ったミノタウロスはバランスを崩し傷口を床に付け、倒れそうになる所を床に突き刺さった戦斧にしがみつきどうにか身体を支えた。そんな状況でもミノタウロスは戦意を喪失していなかった、ミノタウロスは雄叫びを上げ戦斧を床から引き抜き、立て膝の状態で戦斧を横凪ぎに振り抜いた、アルミスはミノタウロスの懐に跳び込み腕を切り付けた、ミノタウロスの腕は戦斧を持ったまま回転して飛んで行った。
ミノタウロスは諦めたのか、雄叫びを上げた、その瞬間アルミスがミノタウロスを切り付けると首が切断され、雄叫びは途切れ、床に首が転がった。
「そっちも終わった?」
ファイヤーヘルハウンドを倒したタケルがヘルハウンドの死体とファイヤーヘルハウンドの魔石を回収し終えアルミスの元へ歩み寄って来て声を掛けてきた。
「はい、タケル様。無事終わりました。」
(あ~。やっぱりミノタウロスが無惨な姿に・・・御愁傷様)
じゃあ、ミノタウロスを回収して行こうか、財宝がまってるよ。
タケルとアルミスは先頭が終わり静になった部屋をあとにし、財宝の有る部屋へと向かって行った。
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