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2章 少年期 1部シーバムの大森林編

7話 呪いと封印

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シーバム王国滅亡の瞬間であろう遺跡の記憶を見たタケルは玉座からサビオとアルミスに向かって声を張り上げた。

「サビオさん、アルミス、上がって来てください!」

タケルのただならぬ雰囲気を感じ取り、サビオとアルミスは瞬時に玉座の有る段まで上がって来た。タケルは二人に呼んだ訳を話始め、自分が先程見てきた遺跡の記憶の事を説明した。

「ほほ、なるほどの、王妃と王子達がの。この宮殿の魔法もさのサカリアス殿の魔法かもしれんの。」
 
サビオはタケルの話を聞き、髭を触りながら何か考えて居るようだ。

「それで、タケル様。王妃様達は助かるんですか?」

アルミスは王妃達を助けたいようだ。胸の上で拳をギュッと握り締め、タケルの決定を待って居るようだ。

「今からその場所に行って王妃達が封印されている封印石を回収しに行きます。」

タケルは王妃達が封印されている封印石を回収する事に決めたようだ。いや、むしろ初めからそうすると決めて居たようである、タケルはまるでその場に居たかのように一部始終を見て来たのである、民を思う王、そして父親として家族だけは助けたいと思うかつてのシーバム王の姿を見てその思いの手助けをしてあげたいと思っていた。
 タケルは二人を連れて玉座の脇の扉を抜けて記憶で見た通路を目指して進んで行った。途中何度か魔物に遭遇したが、明確な目的を持って進む今のタケルにとって、先程のマンティコアですら道端の石ころ程度の障害でしかなかった。

「こっちです、この先を左です。」

タケルは迷うこと無く進んで来て記憶で見た通路まで来ていた。そしてマップに隠し部屋のような存在を確認しており、そこを目指して少し足早に通路を進んでいた。

「ここですね、この壁の向こうの小部屋に封印石が有ります。」

タケルは何も無い通路の壁を指し示しサビオとアルミスに説明した。

「結界が施して有りますね、何度か有った物と同じ物のようですね、流石筆頭宮廷魔導師と言ったところですね。」

タケルは壁に手をかざしながらそう言うと結界を解除した。すると壁の一部が凹み次に周囲の壁が扉の様に開き入り口が現れた。

「入りましょう。」

タケルは壁に空いた入り口を通り中へと入って行くと、中から人の気配が殺気を持って近付いてきた。
 殺気を持って近付いて来た人物がタケル達に向かい剣を抜き問い掛けて来た。

「何者だ、貴様達は何をしにここへ来た!返答次第ではここで死んで貰う。」

構えている剣の剣先をタケルに向けた、殺気の人物は男で、鎧を着ておりその姿から騎士のようである。その男に向かいタケルが話し掛けた。

「貴方はベルナルドさんですか?驚いたような、1000年前と全然変わらないな。」

男は驚いたような表情をして、今度はタケルに問い掛けた。

「な、何故私の名を・・・どうして私の名を知っている。」

この男がタケルが記憶で見たベルナルドであった、あれから1000年もの間たった一人で王妃達を見守り続けて居たのである。

「まずは自己紹介からしましょう。私の名はタケル・サワムラ、王妃ルシアナ様と王子アルセリオ様、王女ミレイア様の封印を解きに来た者です。ベルナルドさん。」

タケルの話を聞き、ベルナルドは剣を震わせ、遂には剣を床に落としてしまった。そして涙を流しながら顔を押さえて床に両膝を付き跪づくようにうずくまった?。

「うっうっうっ・・・やっと、やっと・・・陛下、王妃様達が助かるかもしれません・・・・」

ベルナルドは暫く嗚咽しながら涙を流していたが、落ち着いて来たのか亡き王に向かい王妃達の事を報告し終ると、タケルの方に向き直り、片膝を付き直し頭を垂れた。

「お見苦しいところをお見せ致しました。私は近衛騎士団第3小隊隊長ベルナルド・プレシディウム、ここで王妃様達を長きに渡り見守っておりました。」

恭しくうやうやしくタケルに対し礼節を取るベルナルドに対し、タケルも腰を落とし、ベルナルドの肩に手を置き話し掛けた。

「顔を上げて下さい、ベルナルドさん。1000年もの間たった一人で見守っていたんですね、お疲れ様でした。」

「1000年・・・そうか、私は1000年も・・・」

タケルはベルナルドの腕を取り立たせると、サビオ達を紹介し始めた。

「ベルナルドさん、こちらはサビオさん、こちらはアルミス、どちらも俺の仲間です。サビオさん、アルミス、こちらはベルナルドさん、1000年もの長い間、王妃様たちの封印石を見守り続けて居たんです。」

「ほほ。1000年もこの場所でかの。それはまた大変だったの。」

「いえ、辛かったのは最初1、2年だけで、サカリアスの残した書物を読んで瞑想を覚えたので。その他に魔法も覚えて練習してましたし。」

ベルナルドはサカリアスの残した書物で独自に瞑想や魔法も覚えて居たようで、サビオはベルナルドの話に感心している。

「ほっほっほっ。魔法を覚えたのかの、しかも1000年前の魔法だの、一体どんな魔法なんだろうの。」

「サビオさん、雑談はそれくらいにして封印石を回収しましょう。」

ベルナルドの話に感心を持ったサビオの話が長くなりそうだと思ったタケルは話を遮った。

「ほっほっほっそうであったの。」

サビオは髭を触りながら少し苦笑いしていた。

タケルは奥の部屋に行き、記憶の映像で見た壁の辺りを見ると結界が施してあり、タケルはそれを解除し、壁の一部を押した。すると廊下の時と同様に入り口が出来て、小さい隠し部屋が現れた。隠し部屋の中には机が置いてあり、その上に封印石が3つ並んで置いてあった。

「あった、これだ。この中に王妃様達が封印されているんです。」

タケルは石を抱え隠し部屋を出て、小部屋を抜けてベルナルドが居る部屋に戻った。タケルは封印石を一旦テーブルに置いてベルナルドの方を見た。

「ベルナルドさん、貴方は確かサカリアスさんの用いた一種の呪いにより1000年も生きて居たんですよね。」

タケルが尋ねると、ベルナルドは黙って頷いた。

「それで、今回俺達が封印を解きに来た訳ですが、貴方はどうしたいですか?」

「タケル様、一緒に行きたいに決まってるのでは?」

アルミスが当然の疑問をタケルに投げ掛けた。

「アルミス、ベルナルドさんに掛けられてるのは一種の呪いで、サカリアスさんが命を捨ててベルナルドさんに掛けた物なんだ、そしてその呪いで1000年も生きてたんだけど、あくまでも呪いの一瞬だからね、この部屋から出るか、王妃様の封印が解かれたら、効力が切れて死んでしまうんだ。それか呪いの効力の効果時間がおよそ1000年だから、このままここに居てもいずれ死んでしまうんだ。」

タケルの話を聞き、アルミスは悲しそうな顔をしていた。

「そんな、タケル様・・・それではベルナルドさんは王妃様の復活を見ることは出来ないと言う事ですか?」

たった一人で1000年もの間この狭い部屋で王妃の封印石を見守ったベルナルド、アルミスもまたタケルに仕えると決めた身であり、自分とベルナルドを重ねて考え、もし自分が同じ立場だったらと思いアルミスは俯き拳をギュット握っていた。

「アルミス殿と言ったか、心配にはおよばぬ、私は自ら望んでサカリアスに魔法を掛けて貰ったのだ、覚悟は出来ている。それに王との約束が果たせなかった私がこれ以上の事を望む事はできぬ。」

ベルナルドは口調こそ決意に満ち溢れていたが、王妃が封印されている封印石を見つめて寂しそうな表情をしたいた。
 タケルはベルナルドの表情を見て同じような顔をしていたが、ふとある事を思いつきサビオに話し掛けた。

「サビオさん、ちょっと相談が有るんですが。」

タケルはサビオを連れて小部屋に二人で行き、何かを相談し始めた、時折サビオが頷き、髭をさわっていた。暫くすると二人は戻って来てタケルがベルナルドに話し掛けた。

「ベルナルドさん、お話が有ります。」

タケルに改めて話が有ると言われ、一体何の話なのかと不思議に思ったベルナルドはタケルに尋ねた。

「タケル殿、話とは一体、まさか何か問題でも?」

「いえ、そうでは有りません。ベルナルドさん、俺はこれからあの封印石を持ち帰り、安全な場所で封印を解きます、ですからこのままではベルナルドさんは王妃様達が封印から解放されるのを見ることが出来ません。」

「そうか、死ぬ間際に一目確認したかったが仕方無いな・・・・」

ベルナルドはタケルの話を改めて聞き、少し落ち込んだ、死ぬ間際に一目だけでも王妃の姿を確認して死にたかったからだ。しかしそんなベルナルドの言葉を遮り、タケルが話を続けた。

「ベルナルドさん、話はまだ有ります、聞いて下さい。ベルナルドさん、今から貴方はこの摩石に封印されて頂きます。」

「え?どういう事だ?」

「あ、話す順番が違いましたね、えっとですね。ベルナルドさんの呪いを解く事が恐らく出来ます、しかし失敗は許されないし、ここでジックリと調べる時間も有りません、呪いの効果がいつ切れるか判りませんからね。ですから一旦封印されて頂き、万全を期してから呪いを解きます。そうすればベルナルドさんは王妃様達と会えます。」

ベルナルドは驚いた、シーバム王国の筆頭宮廷魔導師のサカリアスが命を捨てて掛けた魔法、呪いの一種を解く事が出来ると言うのだ、しかも目の前に居るまだ若い少年がそう言ったのである、驚くのも無理はない。

「ど、どういう事だ?そんな事が出来るのか?」

「ええ、出来ると思います。」

「タケル殿はどうしてそこまで・・・」

「王妃様の封印は解くと決めていたんですが、ベルナルドさんの思いに打たれた、と言うのも有りますが、本音を言うと王妃様達の封印が解けたところで、1000年も時間が経ってしまっているんです、それに俺たちは旅の途中です、安全な場所で一緒に暮らす訳にはいきませんからね。ベルナルドさんに王妃様達の世話をお願いしたいんですよ。」

ベルナルドはタケルの話を聞き、笑った。自分の呪いを解く理由にも勿論だが、諦めていた王妃様達との対面が叶うかも知れないからであった。

「ふははは。タケル殿、私に王妃様達の世話をしろと・・・・タケル殿、それは願っても無い事だ、むしろこちらからお願いする、どうか宜しく頼む。」

ベルナルドがタケルに向かい頭を下げた。そしてタケルは静に頷いた。

「ほっほっほっではタケル殿、封印の魔法は知ってるの。地竜の魔石が丁度有って良かったの。」

サビオは床に魔石を置いてベルナルドの傍に歩み寄り、肩に手を置き話始めた。

「ベルナルド殿、タケル殿を信じて待っていて欲しいんだの。何、次気が付いた時は呪いが解けているでの。」

サビオの話を聞きベルナルドはコクリと頷いた。タケルはベルナルドが頷いたのを確認すると封印の魔法を発動させた、すると封印石代わりの地竜の魔石の周りに魔方陣が現れた。魔方陣が光始めると、次に摩石も光だした、そしてタケルが手を伸ばしベルナルドに掌を向けるとベルナルドの体が光始め、光が強くなりベルナルドの姿が見えなくなりと、光が魔石に吸収されるように消えていき、光が消えるとベルナルドの姿は無くなっていた。

「ベルナルドさん、必ず呪いを解いてみせますからね。」

タケルはベルナルドが封印された魔石を手に取りそう呟いた。
 ベルナルドを封印し終わり、テーブルの上に置いてある封印石をアイテムボックスに仕舞い、タケル達は部屋に有ったサカリアスの残した書物も回収して隠し部屋を出て地下通路を戻っていた。

「そう言えば財宝の事忘れてましたね。けどお腹も減って来たので財宝は後にして昼食にしますか。」

「ほっほっほっ。そうだの、そう言えばお腹が減って来たの。」

「タケル様、私も何だか急にお腹が減って来ました。」

緊張も解けてお腹も減って来たのでタケル達は昼食にする事にし、セーフゾーンへと入って行った。





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