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2章 少年期 1部シーバムの大森林編
4話 遺跡
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マジッククリエイションで家を作り、布団を作ったタケルは小屋に居た時のように日の出より少しだけ遅れて起きた。
「ん、んん~。やっぱり布団は良いな。」
タケルはノビをしてベットから出てリビングに向かった。
まだ二人とも起きて来ておらず、シーンとしていた。タケルは庭に出てドラゴンの肉を切り取ろうとした時、ロックウールハウンドが食いちぎった跡が沢山有るのに気が付いた、ナイフで一ヶ所ずつ切り取り始めた所でタケルの手が止まった。
「素材解体の魔法使えば良いんじゃん。」
タケルはドラゴンをアイテムボックスに仕舞い、【素材解体】を使い食いちぎられた部位を切り取り、その他をブロック肉に分け、ついでに他の素材も全て素材毎に解体して分けておいた。
「やっぱり便利だ。食いちぎられた箇所はまた餌に使えば良いか。」
クリーンを使えば食べられるのだが、タケルの気分の問題でその部分は食べたく無かった。
リビングに戻るとサビオとアルミスが起きて来ていたので、ドラゴンの肉を使いカツサンドを作り朝食を済ませ、そのままテーブルでお茶を飲み寛いでいた。
「後でソファーも作らなくちゃいけませんね。」
「ほっほっほ。何とも優雅な旅になりそうだの。」
「そうね、私もそう思うわ、サビオ爺。」
タケルのお陰であり得ない程優雅な旅になりそうな事にサビオとアルミスは顔を綻ばせていた。
お茶も飲み終わり、三人は森へ出てまた移動を再開した。
布団を作り終わってからおよそ1週間、昼間は徒歩で森を移動し、日が暮れてからはセーフゾーンに入り小屋で過ごす、通常ではあり得ない程の快適な旅をしていた3人は今日も森の中を進んでいた。
「あ、またシーバムグランドバイパーだ。」
タケルは移動中マジッククリエイションを使い、探知を進化させたマップ連動型レーダーを作っていた、1度でも目にした者は同種なら名前も表示させる事が出来、敵意の有無も判る優れものである。その探知に大型のヘビであるシーバムグランドバイパーが表示されていた。
このシーバムグランドバイパーは胴の直径が1m程有り、体長も10mをゆうに越えるヘビで、動きは非常に良く俊敏で、ヘビの癖に歯が有り牙での攻撃もしてくる厄介な魔物であった。
「ここら辺はこのヘビの巣なのかな?よっと。」
タケルはシーバムグランドバイパーの熱探知に掛かる前に瞬時に首元に移動し、首を切断した。厄介な魔物ではあるが、タケル達一行の敵では無かった。
「もう少し変わった奴は居ないかな。」
「ほっほっほ。そのような事を言うのはタケル殿位なんだの。」
「タケル様が強いんだから仕方ないわよ、サビオ爺」
タケル達はまるでピクニックにでも来てるかのように楽しげに話をしながら歩みを進めていた。
「なんだ?久し振りに名前の出ない反応が有るな。」
タケルの探知に初めてと思われる反応が幾つか表れた。
「何だか妙だな、もっと居る感じがするんだけど、反応は少ないな。サビオさん、ちょっとあっちに妙な反応が有るので行ってみましょう。」
タケルは探知や魔力探知と、マップに表示される数が合わない事を不思議に思い確認しに行くことにした。
暫く進むと違和感の原因が判明した。それは木々に飲み込まれ、藪に覆われているが、石造りの建物であった。かなり大きな物なので遺跡とされるものであろう、それは人の姿は無く、有るのはそこかしこから感じられる魔物の反応だけである。いまでは魔物の棲みかになっているようである。
「おお。これは遺跡かな?」
タケルが遺跡を見て感心していると、サビオが説明を始めた。
「ほっほっほ。これはシーバムの森の元に成ったシーバム王国の宮殿だの。その昔シーバム王国は緑豊かな国であったんだがの・・・・」
シーバム王国はサビオの言うように緑豊かで、かつ強力な軍隊を保有する国であり、長く魔物の進行を防いで来たのだが、ある時1000年前の魔王率いる魔物の軍勢に滅ぼされてしまったのである。
それから時が経ち森は深くなりやがて森は街を飲み込み、今では宮殿の一部が地上に顔を出しているだけとなったのである。
「え、と言う事はこの下には街が埋まってるの?」
「そうだの、魔法も盛んでかなり栄えておったと聞いておるの。」
二人の会話を聞きアルミスがサビオに尋ねた。
「ねえ、サビオ爺、何でここがシーバム遺跡だって判るの?」
「ほっほっほ。昔師匠に場所を聞いておったしの、それに資料や文献に載っておる特徴と建物が似ておるからの。」
サビオは師匠の話と文献でシーバム遺跡だと判ったようだ。そしてサビオが話を続けた。
「ここは強力な魔物が沢山居るらしくての、宮殿に隠された財宝は手付かずと言う話だの。」
「ざ、財宝!」
タケルは財宝と聞いて目が輝いていたが、アルミスは余りここで興味無さそうであった。
「ほっほっほ。アルミス殿は財宝には興味が無いかの。そう言えば魔剣や宝剣も多数眠っているらしいの。」
すると、余り興味無さそうだったアルミスの目が輝いた。
「魔剣に宝剣!」
「ほっほっほ。二人とも目が輝いて来たの。」
サビオの話にタケルもアルミスも少し興奮して来たようだ。
「ほっほっほ。では探索と行くかの。」
「サビオさん、中の事は判るんですか?」
「ほほ。判らんの。しかしその方が楽しいんだの。」
サビオの話を聞いてタケルは少し考え込み始めた。
「サビオさん、少しだけ待って下さい、中の様子が判る魔法を作ります。」
「ほっほっほ。やはり便利な魔法だのう。」
タケルは新たに作る魔法の構成を考え始め、顎に手を当てて首を傾げて、暫くブツブツと独り言を言っていた。
「よし。これでやってみよう。」
マジッククリエイション 開始
魔法名【スキャン&サーチ】
[効果]
マップと併用して使用する。
使用者の周辺を魔力で地形や建造物の構造を解析し、マップに表示。
平面、立面、立体での表示が可能。
その他探知機能とリンク
マジッククリエイション 完了
「後は・・・金属探知かな?いや、もっとアバウトに探せる方が良いかな。んん~。よし。」
マジッククリエイション 開始
魔法名【アイテムサーチ】
[効果]
任意のアイテムを指定して探索出来る。
【スキャン&サーチ】とリンクして使用可能。
詳細探索から大掴での探索が可能。
マジッククリエイション 完了
「こんなもんかな。じゃあ発動させてっと。」
「ほっほっほ。どうかの?中の様子は判るかの?」
「ええ、判ります。取り敢えず塔の一番上から行きますか、どちらも何も無さそうなので、どっちから行っても良いですよ。」
そう言ったタケルに、サビオが問い掛けて来た。
「タケル殿、書物や文献等も判るかの?」
「書物や文献ですか、分かりました、ちょっとやってみます。」
タケルは【アイテムサーチ】に書物や文献を追加しすると、塔の両方から反応が出た。
「あら、両方の塔から書物か文献の反応が出ちゃいましたね。」
「ほっほっほ。どちらから行くかの。」
「どっちでも良いですよ。でも悩むなら右から行きますか、瞬間移動であのバルコニーまで跳びます。二人とも近くに寄って下さい。」
サビオはタケルの横に立ち、アルミスはタケルの背中にそっとしがみついた。
「じ、じゃあ行きますよ。」
タケルは3人で塔のバルコニーに瞬間移動で跳んだ、いきなり変わった景色にアルミスはキョロキョロと辺りを見渡していた。
「ちょっと待って下さいね。」
そう言うとタケルは雲斬丸を取り出し、バルコニーの窓の両脇に有る石像を斬り倒した。すると、斬り倒された石造の顔が苦悶の表情に変わり、動かなくなった。
「ガーゴイルですね。」
「ほっほっほ。流石タケル殿。ワシにも判らんかったの。」
「タケル様素敵です。」
「まだまだコレからです、行きますよ。取り敢えず部屋の中には居ませんから。」
そう言うと、タケルは塔の窓をくぐり、部屋の中に入った。
「うわっ!埃っぽい!」
「1000年も昔の建物だからの、しかし魔法がまだ掛かっており、状態はかなり良いんだがの、埃は仕方ないの。」
「サビオ爺、クリーンで何とかならないの?流石にここまで埃っぽいとキツイわ。」
タケルとアルミスが同時にサビオの方を見る。
「ほほ。まあ、大丈夫だろうの。クリーンでキレイにしながら進もうかの。」
そう言ってサビオは部屋にクリーンを掛け、埃を無くし部屋をキレイにした。すると家具の風化は見られるものの、とても1000年前の建物とは思えない壁や床が表れた。
「へ~。建物自体は全然傷んで無いね。」
「ほっほっほ。そうだの、この分だとあと1000年は持ちそうだの。勿論何も無ければの話たがの。」
サビオは髭を触りながら辺りを見渡していた。
「ここには反応が無いので進みますか。」
「ほほ。そうだの。」
タケルはこの部屋には何も反応を感じなかったので次の部屋に行く事にして部屋を出た。
部屋を出ると目の前は壁で左右にカーブした廊下が続いている、【スキャン&サーチ】で確認すると、壁の向こうは階段になっており、螺旋状になっている。
「反応が有るのは少し先ですが、他の部屋も見てみますか?」
「ほっほっほ。全てを見てたら時間が幾ら有っても足らんのでの、反応が有った所だけ見てみるかの。」
「分かりました、じゃあこの先に階段へ出る扉が、有るので行きましょう、少し降りた所の部屋です。」
3人は廊下を進むと木製の扉が有ったが、朽ちてボロボロになり今にも崩れそうになっていた。扉を引くとそのまま崩れ落ちた。扉の瓦礫をどけて階段に出ると、壁に魔石が埋め込まれているのを見つけた。
「コレは・・・」
タケルは魔石に触り、魔力を少し流すと階段が光で照らされ明るくなった。
「ほっほっほ。まだ明かりの魔道具が生きて居るんだの。」
驚いた事に1000年前の魔道具がまだ使える状態で残っていた。
「凄いですね、先の方まで魔石が連動して光ってるんですね。」
タケル達は階段を降りていき、ある扉の前で止まった。
「この中ですね、結構な数が有るので書庫みたいですね。」
サビオの目が輝いていた。
「ほっほっほ。そうかの、では拝見するかの。・・・?」
扉を開けようとしたサビオの手が止まった。サビオは何か考えているようだ。
「どうしました?」
「ふむ。結界が施されているの。」
言われて見ればこの扉は先程の扉と違い風化したり朽ちたりしていない。封印され状態保存されているようである。
タケルが鑑定で扉を調べてみると、確かに結界が張られていた。破れない訳では無いがトラップが仕掛けて有る場合があり、迂闊に破る事を躊躇っていた。
「うーん。どうしますかね。」
タケルが悩んで居ると、サビオが口を開いた。
「ほっほっほ。タケル殿、ここはタケル殿の魔法の出番だの。」
タケルはサビオがに言われ、ハッとした。
「あ、そうか。その手が有りましたね。ちょっと待ってて下さい。」
マジッククリエイション 開始
魔法名【アンチプロテクション トラップキャンセル内包】
[効果]
結界を解除する事が出来る。
解除による罠の発動を防ぐ事が出来る。
マジッククリエイション 完了
「よし、完成です。では解除しますね。」
タケルはアンチプロテクションで結界を解除したが、特に変化は見られなかった。しかし鑑定で扉を調べると確かに結界は無くなっていた。
「では開けますね。」
タケルがドアノブを回し、ドアを押すと音もなくスッと扉は開いた、中は暗く様子は解らない。タケルが壁を確かめると、また魔石が埋め込まれており、タケルが魔力を流すと部屋が光で明るく照らされた。
「おおお。」
「ほっほっほ。コレは大したもんだの。」
「コレ全部本?」
魔石により、部屋全体が照らされて見えてきた物は、丸い部屋の壁全面に有る本棚にびっしりと埋め尽くされた本と、キレイに並んだ本棚であった。並んでいる本棚もぎっしりと本が詰まっている、その他にも本棚に入りきらない本がいたる所に山積みにされている。
タイトルを見てみると、《シーバム王国の歴史》《シーバム王伝記》《シーバム王国の料理全集》《シーバム王国の・・・》
「なんだコレ。シーバム王国に関する本ばかりだな。」
「ほっほっほ。そこの棚はそういった類いが並んでおるのだろうの。こっちは魔法に関する本が沢山あるの。」
サビオは背表紙を確認しながら片っ端からアイテムボックスに放り込んでいた。
アルミスはシーバム王国の言葉は解らない様で、ウロウロとして本棚を眺めているだけだった。
「ねえ、アルミス。アルミスもここの本を読める様になりたい?」
タケルが聞くと、目をキラキラとさせてタケルに走り寄って来た。
「タケル様、もしかして私にもここの本が読める様になるんですか?」
「多分出来ると思うよ。」
タケルはそう言ってマジッククリエイションで、自分が女神から貰った物と同じようなアズール全言語理解の魔法を作りアルミスに掛けた。
アルミスも本の意味が判るようになり、楽しそうに本棚の本を物色し始め、3人で部屋中の本を物色して回っていた。
「ん、んん~。やっぱり布団は良いな。」
タケルはノビをしてベットから出てリビングに向かった。
まだ二人とも起きて来ておらず、シーンとしていた。タケルは庭に出てドラゴンの肉を切り取ろうとした時、ロックウールハウンドが食いちぎった跡が沢山有るのに気が付いた、ナイフで一ヶ所ずつ切り取り始めた所でタケルの手が止まった。
「素材解体の魔法使えば良いんじゃん。」
タケルはドラゴンをアイテムボックスに仕舞い、【素材解体】を使い食いちぎられた部位を切り取り、その他をブロック肉に分け、ついでに他の素材も全て素材毎に解体して分けておいた。
「やっぱり便利だ。食いちぎられた箇所はまた餌に使えば良いか。」
クリーンを使えば食べられるのだが、タケルの気分の問題でその部分は食べたく無かった。
リビングに戻るとサビオとアルミスが起きて来ていたので、ドラゴンの肉を使いカツサンドを作り朝食を済ませ、そのままテーブルでお茶を飲み寛いでいた。
「後でソファーも作らなくちゃいけませんね。」
「ほっほっほ。何とも優雅な旅になりそうだの。」
「そうね、私もそう思うわ、サビオ爺。」
タケルのお陰であり得ない程優雅な旅になりそうな事にサビオとアルミスは顔を綻ばせていた。
お茶も飲み終わり、三人は森へ出てまた移動を再開した。
布団を作り終わってからおよそ1週間、昼間は徒歩で森を移動し、日が暮れてからはセーフゾーンに入り小屋で過ごす、通常ではあり得ない程の快適な旅をしていた3人は今日も森の中を進んでいた。
「あ、またシーバムグランドバイパーだ。」
タケルは移動中マジッククリエイションを使い、探知を進化させたマップ連動型レーダーを作っていた、1度でも目にした者は同種なら名前も表示させる事が出来、敵意の有無も判る優れものである。その探知に大型のヘビであるシーバムグランドバイパーが表示されていた。
このシーバムグランドバイパーは胴の直径が1m程有り、体長も10mをゆうに越えるヘビで、動きは非常に良く俊敏で、ヘビの癖に歯が有り牙での攻撃もしてくる厄介な魔物であった。
「ここら辺はこのヘビの巣なのかな?よっと。」
タケルはシーバムグランドバイパーの熱探知に掛かる前に瞬時に首元に移動し、首を切断した。厄介な魔物ではあるが、タケル達一行の敵では無かった。
「もう少し変わった奴は居ないかな。」
「ほっほっほ。そのような事を言うのはタケル殿位なんだの。」
「タケル様が強いんだから仕方ないわよ、サビオ爺」
タケル達はまるでピクニックにでも来てるかのように楽しげに話をしながら歩みを進めていた。
「なんだ?久し振りに名前の出ない反応が有るな。」
タケルの探知に初めてと思われる反応が幾つか表れた。
「何だか妙だな、もっと居る感じがするんだけど、反応は少ないな。サビオさん、ちょっとあっちに妙な反応が有るので行ってみましょう。」
タケルは探知や魔力探知と、マップに表示される数が合わない事を不思議に思い確認しに行くことにした。
暫く進むと違和感の原因が判明した。それは木々に飲み込まれ、藪に覆われているが、石造りの建物であった。かなり大きな物なので遺跡とされるものであろう、それは人の姿は無く、有るのはそこかしこから感じられる魔物の反応だけである。いまでは魔物の棲みかになっているようである。
「おお。これは遺跡かな?」
タケルが遺跡を見て感心していると、サビオが説明を始めた。
「ほっほっほ。これはシーバムの森の元に成ったシーバム王国の宮殿だの。その昔シーバム王国は緑豊かな国であったんだがの・・・・」
シーバム王国はサビオの言うように緑豊かで、かつ強力な軍隊を保有する国であり、長く魔物の進行を防いで来たのだが、ある時1000年前の魔王率いる魔物の軍勢に滅ぼされてしまったのである。
それから時が経ち森は深くなりやがて森は街を飲み込み、今では宮殿の一部が地上に顔を出しているだけとなったのである。
「え、と言う事はこの下には街が埋まってるの?」
「そうだの、魔法も盛んでかなり栄えておったと聞いておるの。」
二人の会話を聞きアルミスがサビオに尋ねた。
「ねえ、サビオ爺、何でここがシーバム遺跡だって判るの?」
「ほっほっほ。昔師匠に場所を聞いておったしの、それに資料や文献に載っておる特徴と建物が似ておるからの。」
サビオは師匠の話と文献でシーバム遺跡だと判ったようだ。そしてサビオが話を続けた。
「ここは強力な魔物が沢山居るらしくての、宮殿に隠された財宝は手付かずと言う話だの。」
「ざ、財宝!」
タケルは財宝と聞いて目が輝いていたが、アルミスは余りここで興味無さそうであった。
「ほっほっほ。アルミス殿は財宝には興味が無いかの。そう言えば魔剣や宝剣も多数眠っているらしいの。」
すると、余り興味無さそうだったアルミスの目が輝いた。
「魔剣に宝剣!」
「ほっほっほ。二人とも目が輝いて来たの。」
サビオの話にタケルもアルミスも少し興奮して来たようだ。
「ほっほっほ。では探索と行くかの。」
「サビオさん、中の事は判るんですか?」
「ほほ。判らんの。しかしその方が楽しいんだの。」
サビオの話を聞いてタケルは少し考え込み始めた。
「サビオさん、少しだけ待って下さい、中の様子が判る魔法を作ります。」
「ほっほっほ。やはり便利な魔法だのう。」
タケルは新たに作る魔法の構成を考え始め、顎に手を当てて首を傾げて、暫くブツブツと独り言を言っていた。
「よし。これでやってみよう。」
マジッククリエイション 開始
魔法名【スキャン&サーチ】
[効果]
マップと併用して使用する。
使用者の周辺を魔力で地形や建造物の構造を解析し、マップに表示。
平面、立面、立体での表示が可能。
その他探知機能とリンク
マジッククリエイション 完了
「後は・・・金属探知かな?いや、もっとアバウトに探せる方が良いかな。んん~。よし。」
マジッククリエイション 開始
魔法名【アイテムサーチ】
[効果]
任意のアイテムを指定して探索出来る。
【スキャン&サーチ】とリンクして使用可能。
詳細探索から大掴での探索が可能。
マジッククリエイション 完了
「こんなもんかな。じゃあ発動させてっと。」
「ほっほっほ。どうかの?中の様子は判るかの?」
「ええ、判ります。取り敢えず塔の一番上から行きますか、どちらも何も無さそうなので、どっちから行っても良いですよ。」
そう言ったタケルに、サビオが問い掛けて来た。
「タケル殿、書物や文献等も判るかの?」
「書物や文献ですか、分かりました、ちょっとやってみます。」
タケルは【アイテムサーチ】に書物や文献を追加しすると、塔の両方から反応が出た。
「あら、両方の塔から書物か文献の反応が出ちゃいましたね。」
「ほっほっほ。どちらから行くかの。」
「どっちでも良いですよ。でも悩むなら右から行きますか、瞬間移動であのバルコニーまで跳びます。二人とも近くに寄って下さい。」
サビオはタケルの横に立ち、アルミスはタケルの背中にそっとしがみついた。
「じ、じゃあ行きますよ。」
タケルは3人で塔のバルコニーに瞬間移動で跳んだ、いきなり変わった景色にアルミスはキョロキョロと辺りを見渡していた。
「ちょっと待って下さいね。」
そう言うとタケルは雲斬丸を取り出し、バルコニーの窓の両脇に有る石像を斬り倒した。すると、斬り倒された石造の顔が苦悶の表情に変わり、動かなくなった。
「ガーゴイルですね。」
「ほっほっほ。流石タケル殿。ワシにも判らんかったの。」
「タケル様素敵です。」
「まだまだコレからです、行きますよ。取り敢えず部屋の中には居ませんから。」
そう言うと、タケルは塔の窓をくぐり、部屋の中に入った。
「うわっ!埃っぽい!」
「1000年も昔の建物だからの、しかし魔法がまだ掛かっており、状態はかなり良いんだがの、埃は仕方ないの。」
「サビオ爺、クリーンで何とかならないの?流石にここまで埃っぽいとキツイわ。」
タケルとアルミスが同時にサビオの方を見る。
「ほほ。まあ、大丈夫だろうの。クリーンでキレイにしながら進もうかの。」
そう言ってサビオは部屋にクリーンを掛け、埃を無くし部屋をキレイにした。すると家具の風化は見られるものの、とても1000年前の建物とは思えない壁や床が表れた。
「へ~。建物自体は全然傷んで無いね。」
「ほっほっほ。そうだの、この分だとあと1000年は持ちそうだの。勿論何も無ければの話たがの。」
サビオは髭を触りながら辺りを見渡していた。
「ここには反応が無いので進みますか。」
「ほほ。そうだの。」
タケルはこの部屋には何も反応を感じなかったので次の部屋に行く事にして部屋を出た。
部屋を出ると目の前は壁で左右にカーブした廊下が続いている、【スキャン&サーチ】で確認すると、壁の向こうは階段になっており、螺旋状になっている。
「反応が有るのは少し先ですが、他の部屋も見てみますか?」
「ほっほっほ。全てを見てたら時間が幾ら有っても足らんのでの、反応が有った所だけ見てみるかの。」
「分かりました、じゃあこの先に階段へ出る扉が、有るので行きましょう、少し降りた所の部屋です。」
3人は廊下を進むと木製の扉が有ったが、朽ちてボロボロになり今にも崩れそうになっていた。扉を引くとそのまま崩れ落ちた。扉の瓦礫をどけて階段に出ると、壁に魔石が埋め込まれているのを見つけた。
「コレは・・・」
タケルは魔石に触り、魔力を少し流すと階段が光で照らされ明るくなった。
「ほっほっほ。まだ明かりの魔道具が生きて居るんだの。」
驚いた事に1000年前の魔道具がまだ使える状態で残っていた。
「凄いですね、先の方まで魔石が連動して光ってるんですね。」
タケル達は階段を降りていき、ある扉の前で止まった。
「この中ですね、結構な数が有るので書庫みたいですね。」
サビオの目が輝いていた。
「ほっほっほ。そうかの、では拝見するかの。・・・?」
扉を開けようとしたサビオの手が止まった。サビオは何か考えているようだ。
「どうしました?」
「ふむ。結界が施されているの。」
言われて見ればこの扉は先程の扉と違い風化したり朽ちたりしていない。封印され状態保存されているようである。
タケルが鑑定で扉を調べてみると、確かに結界が張られていた。破れない訳では無いがトラップが仕掛けて有る場合があり、迂闊に破る事を躊躇っていた。
「うーん。どうしますかね。」
タケルが悩んで居ると、サビオが口を開いた。
「ほっほっほ。タケル殿、ここはタケル殿の魔法の出番だの。」
タケルはサビオがに言われ、ハッとした。
「あ、そうか。その手が有りましたね。ちょっと待ってて下さい。」
マジッククリエイション 開始
魔法名【アンチプロテクション トラップキャンセル内包】
[効果]
結界を解除する事が出来る。
解除による罠の発動を防ぐ事が出来る。
マジッククリエイション 完了
「よし、完成です。では解除しますね。」
タケルはアンチプロテクションで結界を解除したが、特に変化は見られなかった。しかし鑑定で扉を調べると確かに結界は無くなっていた。
「では開けますね。」
タケルがドアノブを回し、ドアを押すと音もなくスッと扉は開いた、中は暗く様子は解らない。タケルが壁を確かめると、また魔石が埋め込まれており、タケルが魔力を流すと部屋が光で明るく照らされた。
「おおお。」
「ほっほっほ。コレは大したもんだの。」
「コレ全部本?」
魔石により、部屋全体が照らされて見えてきた物は、丸い部屋の壁全面に有る本棚にびっしりと埋め尽くされた本と、キレイに並んだ本棚であった。並んでいる本棚もぎっしりと本が詰まっている、その他にも本棚に入りきらない本がいたる所に山積みにされている。
タイトルを見てみると、《シーバム王国の歴史》《シーバム王伝記》《シーバム王国の料理全集》《シーバム王国の・・・》
「なんだコレ。シーバム王国に関する本ばかりだな。」
「ほっほっほ。そこの棚はそういった類いが並んでおるのだろうの。こっちは魔法に関する本が沢山あるの。」
サビオは背表紙を確認しながら片っ端からアイテムボックスに放り込んでいた。
アルミスはシーバム王国の言葉は解らない様で、ウロウロとして本棚を眺めているだけだった。
「ねえ、アルミス。アルミスもここの本を読める様になりたい?」
タケルが聞くと、目をキラキラとさせてタケルに走り寄って来た。
「タケル様、もしかして私にもここの本が読める様になるんですか?」
「多分出来ると思うよ。」
タケルはそう言ってマジッククリエイションで、自分が女神から貰った物と同じようなアズール全言語理解の魔法を作りアルミスに掛けた。
アルミスも本の意味が判るようになり、楽しそうに本棚の本を物色し始め、3人で部屋中の本を物色して回っていた。
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緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
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