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1章 転生~幼年期
39話 数年後
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大精霊テルサスにお願いされ、封印の強化を成功させた尊流達に贈られた追加のご褒美のオリハルコンやミスリル、アダマンタイトに数々の魔石によって更に強化されたゴーレムによる修行が始まり、あれから数年が経過しており、尊流は10歳になっていた。
そしていつもの尊流の異空間にて尊流とアルミスが剣の手合わせをしていた。しかしそれは手合わせと言うには余りにも激しく、そして強烈だった。
「ま、参った、アルミス降参。ハア、ハア、」
尊流はアルミスに首元に剣を突きつけられ、手を挙げ降参していた。
「ハア、ハア、タケル様、本当、強くなりましたね。」
「やっぱり先生が良いからかな。」
ここ数年で尊流はアルミスの事を呼び捨てにするようになっていた。尊流が強力なゴーレムに負けた時から暫くして、アルミスの方からお願いされたからだ。暫くは自分が年下だからと拒否していたのだが、アルミスに押し切られる形で尊流は承諾し今に至っている。
「お互い息も切れてるし、ちょっと休憩しようか。」
「ハイ、そうですね。休憩しましょう。」
アルミスはというと、自分は尊流に仕えている身だからと頑として譲らなかった為、尊流に対して未だに敬語である。
二人は小屋に戻るとソファーに腰を下ろしお茶を飲んでいた。すると扉の奥からドシドシと足音を立てリビングに入って来た者がいた。
身長は150センチ程だが、肩の筋肉が盛り上がり、腕は太く筋肉質で体は骨太で筋肉質、髪はボサボサで長いが、後ろで一つに束ねており、顔が濃く長い髭がを生やしていた。所謂ドワーフである、このドワーフも女神様からの神託によりこの小屋へ三年前にやって来て尊流に鍛治の技術を教えていたのである。
「おう、ボン、今日の手合わせはどっちが勝ったんだ?」
「あ、フェレーロ、今日はアルミスだよ。」
アルミスがフェレーロを見て口を開いた。
「フェレーロ、手合わせ用の剣がもう駄目そうなのよ、またお願いできる?」
「ああ、そろそろだと思ってな、もう出来てるぜ。お嬢」
フェレーロはそう言って腰に着けたポーチから新たな剣を2本取りだし、尊流とアルミスそれぞれに手渡した。
尊流とアルミスの手合わせは長らく尊流が作った木剣で行っていたが、フェレーロが来て暫くして、フェレーロが作った刃引きの剣で行われるようになったのである。
しかも二人の剣撃が激しすぎてすぐに剣がボロボロになってしまうので数日に一度交換していた。
尊流とアルミスが受け取った剣を仕舞うと、有る人物が声を掛けてきた。
「さ、お二人さん、紅茶が入りましたよ、フェレーロもどうぞ。」
「ありがとう、シーリバ。」
尊流にシーリバと言われた人物は身長は165cm位、肩甲骨迄伸びた銀髪、細身の体に控え目な胸、特徴のある尖った耳、エルフの女性であった。
フェレーロとほぼ時を同じくして小屋にやって来て尊流に弓や木工技術や装飾品の技術を教えていた。
「やっぱりシーリバの淹れた紅茶は美味しいね。」
「そうですね、タケル様。私も同じように淹れてるんですが、どうしても及びません。」
「そうか?ワシはお嬢の淹れたお茶も旨いとおもうがな。」
サビオを除く四人がソファーで紅茶を飲み寛いでいた。
四人が飲んでいる紅茶は大精霊テルサスが定期的に送ってくれていたので、今では食事の時はケルム草のお茶、休憩やティータイム時は紅茶を飲むというのが習慣となっていた。
「タケルさん、今日の予定はどうしますか?」
シーリバが尊流に尋ねると、尊流はカップを置き、アイテムボックスから何かを取りだし答えた。
「今日はテルサス様の所に改良したこのプリンを届けようと思って。みんなはどうする?」
尊流はプリンを手ち持ち、三人に尋ねた。封印の強化後に尊流達はテルサスの所々を度々訪れていたが、手土産として尊流が作り、改良を重ねた物である。
「ワシはボンのアイディアをもう一度試してみたくてな、工房に篭る。」
「私は行くわ。」
「私はタケル様に付いて行きます。」
「サビオさんはゴーレムかな?まあ良いか。じゃあ三人で行こうか。」
フェレーロは工房に篭る為、扉の奥へ消えていった。アルミスとシーリバは付いて来ると言うので、尊流は二人と共に転移魔法で祠の前に飛んで来た。
いつものように祠が光り、形を変え扉が出現しする、扉がひとりでに開き三人は階段を降りて行った。
階段を降りて、大きな扉の前に三人が来ると、やはりひとりでに開いた。三人が中へと入るとテルサスが待ってましたとばかりに三人のすぐ前に現れた。
「うふふ。タケルさん、アルミスさん、シーリバさん、お待ちしてましたよ。」
今では大精霊テルサスもタケルだけでなく、アルミスやシーリバもさん付で呼んでいる、敬語でのさん付けと言うよりもテルサスの普段の口調から親しみを込めたさん付けだと感じられる。
「こんにちは、テルサス様。今日はまたプリンを改良したのでお持ちしました。」
「まあ、タケルさん、嬉しいわ。私タケルさんの作るプリンが大好きなんです♪」
テルサスの言葉にアルミスとシーリバが続く。
「私もです♪テルサス様。」
「私はタケル様の作る物は何でも大好きです♪」
近頃は女性同士凄く仲が良い、最初の頃のアルミスの緊張はどこえやら、と言った感じである。
「では、紅茶を淹れますね。」
テルサスがそう言うと、いつもの事だがテーブルとイスが出現した、テーブルの上にはティーセットがセッティング済みであった。テーブルセットを出現させたテルサスが、三人を急かすように着席を促した。
「さ、皆さん座って座って。早くプリン食べましょう。」
(こうなったら大精霊の威厳も何も無いな。)
尊流はそう思いながらアイテムボックスからプリンを出した。プリンは予め氷魔法を使い冷やしてあり、食べるのに丁度良い温度である。
「コレが今回作ったプリンです、容器はシーリバの里の技術を使って作ったもので、口を容器に付けた時の口当たりも改良してみました。」
尊流が作ったという容器は、エルフの里にて祭事の際、女神へのお供えのお酒を入れる器の技術を用いられており、形は小さな円柱状の壷ような形で、口の部分が丸く丸められ、厚くなっていて同じ材質で蓋も付いていた。
「まあ、ステキ。プリンがより美味しそうに感じますわ。」
テルサスは嬉しそうに目を開き、顔を綻ばせ、胸の前で手を軽く合わせながら喜んでいた。
「気に入って貰えて良かったです、味も確認してみて下さい。」
尊流がスプーンを差し出すと、テルサスはスプーンを受け取って新作のプリンを一口すくい口へ運んだ。
「んんん~。おいし~~♪」
テルサスは満面の笑みを浮かべ、両手を頬に当ててクネクネしていた。
続いてアルミスとシーリバも新作のプリンを口にし、同じように頬に手を添えてクネクネしたいた。
「喜んで貰えて嬉しいですよ、テルサス様。まだ有りますので後でお渡ししますね、暫くは楽しめると思いますよ。」
尊流はテルサスが喜んでるのを見て安心し
、沢山渡すことを約束していた。
その後プリンを食べながらのお茶会は、ほぼ女子がおしゃべりをしながら暫く続いた。
お茶会もそろそろ終わりという雰囲気になった頃、テルサスが尊流に話し掛けてきた。
「タケルさん、プリン大変美味しく頂きましたよ、ありがとうございました。それと、本日はある方とお会いになられてからお帰り頂けますか?」
「え、ええ。構いませんが、どなたにお会いすれば宜しいので?」
「タケルさん、こちらへ。」
テルサスは微笑みながら、尊流を水辺に案内した。
水辺に立ったテルサスはその場で背筋を伸ばし一言だけ告げた。
「お会いして頂くのはこの方です。」
テルサスはそう言うと誰も居ない空間に対して誰かを紹介するような素振りをした。
するとテルサスの背後の水面が膨れ上がり水柱となった、そして次第に人の形になっていき、遂には完全に人の形に、いや、人が現れた。以前のような水の人物ではなく、完全に人であり、そして美しい女性であった。その女性はテルサスのような服装をして居るが、もっと神聖な感じがして美しかった。テルサスも美しいが、更に美しく気高く感じ、手には美しい宝石のような物が付いた金属製の杖を手に持ち、頭には植物で作られた冠を乗せていた、その冠もとても美しく、植物で作ったとは思えない程の物であった。
その女性は歩きだし、水面からテルサスの隣に移動して並んで立ち止まった。
「精霊王、メディオクリス様に御座います。」
「精霊王?」
尊流には大精霊と精霊王の違いがイマイチ判らなかった。尊流が戸惑って居ると、精霊王メディオクリスが口を開いた。
「初めまして、女神の使徒よ。私はこの世界の全ての精霊を統べる者、メディオクリスです。精霊王とも言われておりますね。」
尊流がチラッと後ろを見るとアルミスとシーリバが固まっていた。
(やっぱり。)
「初めまして、精霊王メディオクリス様。何か御用でしょうか?」
尊流が訪ねると、メディオクリスは静かに首をふり、尊流に話しかけた。
「女神の使徒よ、いえ、テルサスのようにタケルさんとお呼びしましょう。今日お会いしたのは、貴方の修行の手助けをしに来たからです。」
「修行の手助け?」
「そうです、と言っても私の加護を授ける事と、貴方の力を覚醒させる事です。」
「か、覚醒?それはどうやって?」
するとメディオクリスがすっと手を前に出し、尊流に掌を向けた。尊流の体は光だし、尊流は体の奥から熱くなるのを感じた。
「な、なんだ?ぐっ!」
やがてその熱さは全身に広がり、尊流は思わず崩れ落ち膝を付いた。
「受け入れなさい、それは元々貴方の力です。大丈夫、そう、抵抗せずに。」
尊流はメディオクリスに言われるがまま、込み上げる熱さを受け入れると、力が湧きあがって来るのを感じた。
「こ、これは・・・・」
それもドンドンと湧いてくる、力が溢れ出るような感覚がした時、全ての感覚が鋭くなった気がしたと同時に熱さも湧いてくる感覚も無くなり、尊流は立ち上がって腕を伸ばしたり曲げたりし、体のあちこちを確認した。
「何だったんだ。」
尊流が困惑していると、メディオクリスが口を開き、尊流に語り始めた。
「タケルさん、貴方の閉ざされていた力を解放したのです、それでもまだ一部ですが、徐々に全ての力を解放する事が出来るでしょう。そして今よりも成長しやすくなる事でしょう。」
「成長しやすく・・・」
(成長期の事じゃ無いよな?)
「私はそろそろ行かねばなりません、後は頼みましたよ、テルサス。」
「あっ、待ってまだ」
「畏まりました。メディオクリス様。」
尊流はまだ聞きたい事が有ったようだが、メディアクリスは瞬時にただの水となって崩れ落ち消えてしまった。
「タケルさん、席にどうぞ。」
再び席に促され、イスに座った尊流はテルサスに色々と質問をぶつけた。そしてテルサスは尊流の質問にひとつひとつ丁寧に質問に答えた。
「判りました。あの小屋での生活もあと2年程って事ですね、その後はやる事さえやれば自由に生きて良いと。」
「そうですね。ですからそれまでに沢山遊びに来て下さいね。」
「ええ、勿論です。」
その頃、アルミスとシーリバは漸く再起動を果たした。
「アルミス、シーリバさん、そろそろ帰るよ。」
「お帰りなさいですね。アルミスさん、シーリバさん。メディオクリス様よりお預かりしていた物をお渡ししますね。」
「え?何をですか?」
「精霊王様が私に?」
アルミスとシーリバが同時に答えた。
「うふふ、タケルさんと同じ物ですよ。」
そう言うとテルサスは掌に光の玉を出現させた、そしてその光の玉をふたりに手渡した。光の玉は手の中で弾け、二人の体を包み、やがて体に吸い込まれるように消えていった。
「これは・・・」
「うふふ、メディオクリス様の加護ですよ。かの英雄王以降メディアクリス様の加護を頂いた方はあなた方だけですよ。良かったですね。」
アルミスは素直に喜んでいたが、シーリバは静かに涙を流し、感謝していた。やはりエルフにとって精霊、特に精霊王は特別なのだろう。
二人が加護を受け取ったのを見届けた尊流は二人に声を掛けた。
「良かったね、アルミス、シーリバさん。じゃあ、帰ろうか。」
「それではタケルさん、ごきげんよう。」
「はい、テルサス様ありがとうございました。またプリン持ってきますね!」
テルサスに見送られ尊流達は階段を上がって行った。
小屋に戻った尊流は皆を集め、テルサスとの話をし、ここでの生活があと少しだと告げ、残りの日々を準備と修行に充てる事にし、残り少ない日々は慌ただしく過ぎていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
いよいよ大詰めです、次回は1章最終話となります。
そしていつもの尊流の異空間にて尊流とアルミスが剣の手合わせをしていた。しかしそれは手合わせと言うには余りにも激しく、そして強烈だった。
「ま、参った、アルミス降参。ハア、ハア、」
尊流はアルミスに首元に剣を突きつけられ、手を挙げ降参していた。
「ハア、ハア、タケル様、本当、強くなりましたね。」
「やっぱり先生が良いからかな。」
ここ数年で尊流はアルミスの事を呼び捨てにするようになっていた。尊流が強力なゴーレムに負けた時から暫くして、アルミスの方からお願いされたからだ。暫くは自分が年下だからと拒否していたのだが、アルミスに押し切られる形で尊流は承諾し今に至っている。
「お互い息も切れてるし、ちょっと休憩しようか。」
「ハイ、そうですね。休憩しましょう。」
アルミスはというと、自分は尊流に仕えている身だからと頑として譲らなかった為、尊流に対して未だに敬語である。
二人は小屋に戻るとソファーに腰を下ろしお茶を飲んでいた。すると扉の奥からドシドシと足音を立てリビングに入って来た者がいた。
身長は150センチ程だが、肩の筋肉が盛り上がり、腕は太く筋肉質で体は骨太で筋肉質、髪はボサボサで長いが、後ろで一つに束ねており、顔が濃く長い髭がを生やしていた。所謂ドワーフである、このドワーフも女神様からの神託によりこの小屋へ三年前にやって来て尊流に鍛治の技術を教えていたのである。
「おう、ボン、今日の手合わせはどっちが勝ったんだ?」
「あ、フェレーロ、今日はアルミスだよ。」
アルミスがフェレーロを見て口を開いた。
「フェレーロ、手合わせ用の剣がもう駄目そうなのよ、またお願いできる?」
「ああ、そろそろだと思ってな、もう出来てるぜ。お嬢」
フェレーロはそう言って腰に着けたポーチから新たな剣を2本取りだし、尊流とアルミスそれぞれに手渡した。
尊流とアルミスの手合わせは長らく尊流が作った木剣で行っていたが、フェレーロが来て暫くして、フェレーロが作った刃引きの剣で行われるようになったのである。
しかも二人の剣撃が激しすぎてすぐに剣がボロボロになってしまうので数日に一度交換していた。
尊流とアルミスが受け取った剣を仕舞うと、有る人物が声を掛けてきた。
「さ、お二人さん、紅茶が入りましたよ、フェレーロもどうぞ。」
「ありがとう、シーリバ。」
尊流にシーリバと言われた人物は身長は165cm位、肩甲骨迄伸びた銀髪、細身の体に控え目な胸、特徴のある尖った耳、エルフの女性であった。
フェレーロとほぼ時を同じくして小屋にやって来て尊流に弓や木工技術や装飾品の技術を教えていた。
「やっぱりシーリバの淹れた紅茶は美味しいね。」
「そうですね、タケル様。私も同じように淹れてるんですが、どうしても及びません。」
「そうか?ワシはお嬢の淹れたお茶も旨いとおもうがな。」
サビオを除く四人がソファーで紅茶を飲み寛いでいた。
四人が飲んでいる紅茶は大精霊テルサスが定期的に送ってくれていたので、今では食事の時はケルム草のお茶、休憩やティータイム時は紅茶を飲むというのが習慣となっていた。
「タケルさん、今日の予定はどうしますか?」
シーリバが尊流に尋ねると、尊流はカップを置き、アイテムボックスから何かを取りだし答えた。
「今日はテルサス様の所に改良したこのプリンを届けようと思って。みんなはどうする?」
尊流はプリンを手ち持ち、三人に尋ねた。封印の強化後に尊流達はテルサスの所々を度々訪れていたが、手土産として尊流が作り、改良を重ねた物である。
「ワシはボンのアイディアをもう一度試してみたくてな、工房に篭る。」
「私は行くわ。」
「私はタケル様に付いて行きます。」
「サビオさんはゴーレムかな?まあ良いか。じゃあ三人で行こうか。」
フェレーロは工房に篭る為、扉の奥へ消えていった。アルミスとシーリバは付いて来ると言うので、尊流は二人と共に転移魔法で祠の前に飛んで来た。
いつものように祠が光り、形を変え扉が出現しする、扉がひとりでに開き三人は階段を降りて行った。
階段を降りて、大きな扉の前に三人が来ると、やはりひとりでに開いた。三人が中へと入るとテルサスが待ってましたとばかりに三人のすぐ前に現れた。
「うふふ。タケルさん、アルミスさん、シーリバさん、お待ちしてましたよ。」
今では大精霊テルサスもタケルだけでなく、アルミスやシーリバもさん付で呼んでいる、敬語でのさん付けと言うよりもテルサスの普段の口調から親しみを込めたさん付けだと感じられる。
「こんにちは、テルサス様。今日はまたプリンを改良したのでお持ちしました。」
「まあ、タケルさん、嬉しいわ。私タケルさんの作るプリンが大好きなんです♪」
テルサスの言葉にアルミスとシーリバが続く。
「私もです♪テルサス様。」
「私はタケル様の作る物は何でも大好きです♪」
近頃は女性同士凄く仲が良い、最初の頃のアルミスの緊張はどこえやら、と言った感じである。
「では、紅茶を淹れますね。」
テルサスがそう言うと、いつもの事だがテーブルとイスが出現した、テーブルの上にはティーセットがセッティング済みであった。テーブルセットを出現させたテルサスが、三人を急かすように着席を促した。
「さ、皆さん座って座って。早くプリン食べましょう。」
(こうなったら大精霊の威厳も何も無いな。)
尊流はそう思いながらアイテムボックスからプリンを出した。プリンは予め氷魔法を使い冷やしてあり、食べるのに丁度良い温度である。
「コレが今回作ったプリンです、容器はシーリバの里の技術を使って作ったもので、口を容器に付けた時の口当たりも改良してみました。」
尊流が作ったという容器は、エルフの里にて祭事の際、女神へのお供えのお酒を入れる器の技術を用いられており、形は小さな円柱状の壷ような形で、口の部分が丸く丸められ、厚くなっていて同じ材質で蓋も付いていた。
「まあ、ステキ。プリンがより美味しそうに感じますわ。」
テルサスは嬉しそうに目を開き、顔を綻ばせ、胸の前で手を軽く合わせながら喜んでいた。
「気に入って貰えて良かったです、味も確認してみて下さい。」
尊流がスプーンを差し出すと、テルサスはスプーンを受け取って新作のプリンを一口すくい口へ運んだ。
「んんん~。おいし~~♪」
テルサスは満面の笑みを浮かべ、両手を頬に当ててクネクネしていた。
続いてアルミスとシーリバも新作のプリンを口にし、同じように頬に手を添えてクネクネしたいた。
「喜んで貰えて嬉しいですよ、テルサス様。まだ有りますので後でお渡ししますね、暫くは楽しめると思いますよ。」
尊流はテルサスが喜んでるのを見て安心し
、沢山渡すことを約束していた。
その後プリンを食べながらのお茶会は、ほぼ女子がおしゃべりをしながら暫く続いた。
お茶会もそろそろ終わりという雰囲気になった頃、テルサスが尊流に話し掛けてきた。
「タケルさん、プリン大変美味しく頂きましたよ、ありがとうございました。それと、本日はある方とお会いになられてからお帰り頂けますか?」
「え、ええ。構いませんが、どなたにお会いすれば宜しいので?」
「タケルさん、こちらへ。」
テルサスは微笑みながら、尊流を水辺に案内した。
水辺に立ったテルサスはその場で背筋を伸ばし一言だけ告げた。
「お会いして頂くのはこの方です。」
テルサスはそう言うと誰も居ない空間に対して誰かを紹介するような素振りをした。
するとテルサスの背後の水面が膨れ上がり水柱となった、そして次第に人の形になっていき、遂には完全に人の形に、いや、人が現れた。以前のような水の人物ではなく、完全に人であり、そして美しい女性であった。その女性はテルサスのような服装をして居るが、もっと神聖な感じがして美しかった。テルサスも美しいが、更に美しく気高く感じ、手には美しい宝石のような物が付いた金属製の杖を手に持ち、頭には植物で作られた冠を乗せていた、その冠もとても美しく、植物で作ったとは思えない程の物であった。
その女性は歩きだし、水面からテルサスの隣に移動して並んで立ち止まった。
「精霊王、メディオクリス様に御座います。」
「精霊王?」
尊流には大精霊と精霊王の違いがイマイチ判らなかった。尊流が戸惑って居ると、精霊王メディオクリスが口を開いた。
「初めまして、女神の使徒よ。私はこの世界の全ての精霊を統べる者、メディオクリスです。精霊王とも言われておりますね。」
尊流がチラッと後ろを見るとアルミスとシーリバが固まっていた。
(やっぱり。)
「初めまして、精霊王メディオクリス様。何か御用でしょうか?」
尊流が訪ねると、メディオクリスは静かに首をふり、尊流に話しかけた。
「女神の使徒よ、いえ、テルサスのようにタケルさんとお呼びしましょう。今日お会いしたのは、貴方の修行の手助けをしに来たからです。」
「修行の手助け?」
「そうです、と言っても私の加護を授ける事と、貴方の力を覚醒させる事です。」
「か、覚醒?それはどうやって?」
するとメディオクリスがすっと手を前に出し、尊流に掌を向けた。尊流の体は光だし、尊流は体の奥から熱くなるのを感じた。
「な、なんだ?ぐっ!」
やがてその熱さは全身に広がり、尊流は思わず崩れ落ち膝を付いた。
「受け入れなさい、それは元々貴方の力です。大丈夫、そう、抵抗せずに。」
尊流はメディオクリスに言われるがまま、込み上げる熱さを受け入れると、力が湧きあがって来るのを感じた。
「こ、これは・・・・」
それもドンドンと湧いてくる、力が溢れ出るような感覚がした時、全ての感覚が鋭くなった気がしたと同時に熱さも湧いてくる感覚も無くなり、尊流は立ち上がって腕を伸ばしたり曲げたりし、体のあちこちを確認した。
「何だったんだ。」
尊流が困惑していると、メディオクリスが口を開き、尊流に語り始めた。
「タケルさん、貴方の閉ざされていた力を解放したのです、それでもまだ一部ですが、徐々に全ての力を解放する事が出来るでしょう。そして今よりも成長しやすくなる事でしょう。」
「成長しやすく・・・」
(成長期の事じゃ無いよな?)
「私はそろそろ行かねばなりません、後は頼みましたよ、テルサス。」
「あっ、待ってまだ」
「畏まりました。メディオクリス様。」
尊流はまだ聞きたい事が有ったようだが、メディアクリスは瞬時にただの水となって崩れ落ち消えてしまった。
「タケルさん、席にどうぞ。」
再び席に促され、イスに座った尊流はテルサスに色々と質問をぶつけた。そしてテルサスは尊流の質問にひとつひとつ丁寧に質問に答えた。
「判りました。あの小屋での生活もあと2年程って事ですね、その後はやる事さえやれば自由に生きて良いと。」
「そうですね。ですからそれまでに沢山遊びに来て下さいね。」
「ええ、勿論です。」
その頃、アルミスとシーリバは漸く再起動を果たした。
「アルミス、シーリバさん、そろそろ帰るよ。」
「お帰りなさいですね。アルミスさん、シーリバさん。メディオクリス様よりお預かりしていた物をお渡ししますね。」
「え?何をですか?」
「精霊王様が私に?」
アルミスとシーリバが同時に答えた。
「うふふ、タケルさんと同じ物ですよ。」
そう言うとテルサスは掌に光の玉を出現させた、そしてその光の玉をふたりに手渡した。光の玉は手の中で弾け、二人の体を包み、やがて体に吸い込まれるように消えていった。
「これは・・・」
「うふふ、メディオクリス様の加護ですよ。かの英雄王以降メディアクリス様の加護を頂いた方はあなた方だけですよ。良かったですね。」
アルミスは素直に喜んでいたが、シーリバは静かに涙を流し、感謝していた。やはりエルフにとって精霊、特に精霊王は特別なのだろう。
二人が加護を受け取ったのを見届けた尊流は二人に声を掛けた。
「良かったね、アルミス、シーリバさん。じゃあ、帰ろうか。」
「それではタケルさん、ごきげんよう。」
「はい、テルサス様ありがとうございました。またプリン持ってきますね!」
テルサスに見送られ尊流達は階段を上がって行った。
小屋に戻った尊流は皆を集め、テルサスとの話をし、ここでの生活があと少しだと告げ、残りの日々を準備と修行に充てる事にし、残り少ない日々は慌ただしく過ぎていった。
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チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
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