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1章 転生~幼年期

34話 弱体化魔法

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異空間にて即席で作り上げた尊流だが、それをアルミスに全力の攻撃で破壊されてしまった尊流は、アルミスと共に小屋に戻っていた。

「タケル様、本当に申し訳ありません。」

アルミスは尊流のゴーレムを壊してしまった事を申し訳無さそうにしていた。

「アルミスさん、気にしなくても良いですよ。遅かれ早かれ俺かアルミスさんに破壊されていたんでしょうから。アイディアは良かったのでサビオさんに改良してもらいますよ。本当に気にしなくても大丈夫ですから、ほら、昼食の準備をするのでアルミスさんはソファーに座って寛いでいて下さい。」

尊流はそう言いながらアルミスを慰め、昼食の準備をしにキッチンへと向かった。

「さて、今日はフライにでもするかな。あ、そうだアルミスさん、肉と魚どっちが良いですか?」

「に、肉が良いです。」
(やっぱり肉が好きなのかな?)

「判りました、肉ですね。ちょっと変わった肉料理をお見せしますよ。」

尊流は食材箱から肉を取りだし切り分け、包丁の裏でトントンと叩き始めた。全てを叩き終えた頃にサビオがリビングに入ってきた、サビオは尊流の調理している姿を見てお昼は何か聞いてきた。

「ほほ、タケル殿。今日のお昼は何を作っておるのかの。」

サビオは髭を触りながら興味津々でキッチンを覗き込む。

「今日はフライですよ、以前作った魚のフライの、肉バージョンですね。」

「ほっほっほっ。アレは旨かったがそれを肉で作るのかの、タケル殿の作る料理はどれも旨いからの、楽しみだの。」

サビオは髭を触りながら目を細め、ニコニコとしながらソファーに向かって行った。

「ほほ、どうしたんだの、アルミス殿、浮かない顔をしてるように見えるがの。」

ソファーに座り、落ち込んでいたアルミスがサビオの方を向き、泣きそうな顔でサビオに話を始めた。

「サビオ爺、私はどうすれば、タケル様が練習用に作ったゴーレムを壊してしまったの、全力でやっては駄目だと言われていたのに、つい力が入って全力で打ち込んでしまって・・・タケル様は気にしなくても大丈夫と言っていたけど、申し訳無くて・・・」

「ほっほっほっ。アルミス殿。そんな事だったのかの。そんな事を言ったらタケル殿なんかは何度もワシの渾身のゴーレムを壊してくれてるがの。」

サビオはアルミスの話を笑い飛ばした。

「け、けど、サビオ爺のゴーレムは何十体も居たし、破壊しても良い用だったんじゃないの?」

「ほほ、そんな事は無いんだの、元々あのゴーレムはそんなに弱くは無いんだがの、タケル殿やアルミス殿が規格外なだけなんだの、仕方無く作業用ゴーレムを作って大量に作っての、足りない実力を数で補っていただけなんだがの。」

サビオは最初1体のゴーレムしか出さなかったが、魔法でリンク舜殺されてその数をドンドン増やして行った、改良を加え自律型アイアンゴーレム改となり、ある程度の数でそこそこ対応出来ていたのだが、最近は尊流がゴーレム戦に慣れてきた為、増やしたのだが、先日遂に60体のゴーレムも僅かな時間で破壊されてしまうようになったのであった。

「そうだったんだ、サビオ爺もごめん。」

「ほっほっほっ。気にする事は無いの、お陰で作業用ゴーレムにゴーレムを量産させる技術も新たに手に入れたしの、タケル殿だってきっと何かを得た筈だからの、第一タケル殿はそんな事を気にするような人物では無いからの。」

「そ、そうだよね、タケル様は女神様の使徒だもんね。」

「ほっほっほっ。そうだの、ではタケル殿の料理を待つとするかの。」

二人が話をしていたその頃、尊流は肉を叩き終わり、卵をかき混ぜていた。フライに使うパン粉はパンを削って作った、尊流は手早く下処理を済ませ、油に入れ揚げ始めた。キャベツもどきの千切りも盛り付け、味噌汁とご飯をよそり、フライが揚がったので一口サイズに切り盛り付けて完成した。
「出来ましたよ、運んで下さーい。」

「ほほほ。こりゃ旨そうだの。」

サビオが運びながら言うと、アルミスがお盆を運びながらスンスンと匂いを嗅いだ。」

尊流も自分の分を運ぶと、ソファーに座った。

「食べましょうか、いただきます。」

尊流が言うと、二人も後に続いた。

「いただきます、だの。」

「いただいます。」

尊流が何か小皿を二人に差し出した。

「醤油でも良いんですが、コレを掛けるか、付けて食べてみて下さい。俺の家ではウスターソースなんかを掛けてたんです、専門店なんかだと専用のソースが有るんですけどね。」

尊流がソースを掛けると、アルミスは同じように掛けた、サビオは一口づつ付けて食べるようだ。

「タケル殿、この肉もだがソースも旨いの。」

「美味しいです、タケル様。」

「有り難う御座います、日本では○○カツって言うんですよ、例えば牛、牛肉なら牛カツや、ビーフカツ、こちらだとヴァークがそれに当たるので、ヴァークカツですね。豚はこちらでも同じなので、トンカツや、ポークカツとか言いますね。因みに今日のはトンカツです。脂がのっていて美味しいですね。」

尊流の説明を二人はウンウンと頷きながら聞き、箸は止まらず食事をしながらしている。そして、先にサビオが食べ終え、アルミスも食べ終わったが、アルミスの分は多目に用意したにも係わらず、全て平らげた後も少しもの足りなさそうであった。
尊流も食べ終え、片付け後ソファーでお茶を飲みながら三人で寛いでいると、サビオが尊流に話しかけてきた。

「ほほ、そう言えばタケル殿。アルミス殿にゴーレムを壊なんだがの、一体どの様なゴーレムを作ったのかの。」

サビオがそう言うと、アルミスは少しだけ俯き、尊流は思い出したように話し始めた。

「あ、そうそう。そうなんですよサビオさん。まずはコレを見てください。」

そう言うと尊流はアルミスに破壊されたゴーレムを小屋の床の上に取り出した。

「ほほほ。コレはまた奇妙な形だの。」

「ええ、即席で作ったので形は奇妙ですが、なかなか優秀だったんですよ。まず、この真ん中のヤツなんですか・・・・・」

尊流はアルミスにした説明よりも詳しくサビオに説明をした。一つ一つ丁寧に説明をする尊流に対し、サビオはウンウンと頷きながら時折「成る程!」と良いながら尊流の説明を聞いていた。その頃アルミスは顎に指を当て首を傾げて聞いていたが、諦めたように、お茶を飲んでいた。
 一通りゴーレムの説明を聞き終わったサビオが髭を触りながら感嘆し、驚きのの表情で話し始めた。

「ほほ、タケル殿はやはり天才だの、コレだけのゴーレムを即席で作ってしまうとはの。確かにこの方法であれば個々の特徴を生かしつつ強化が出来るの。」

「ええ、そう思ったんですが、やはり強度が問題で。」

サビオは嘆息すると、尊流に話し始めた。

「タケル殿。タケル殿やアルミス殿の攻撃に耐えられるゴーレムなんかはの、そうそう作れんだろうの、しかしの、今回のゴーレムはそれぞれが特化型だからの、それぞれの特徴を伸ばしてやって素材を全体的に見直すだけでかなりの強化になると思うがの。」

サビオにそう言われ苦笑いをしながらも、少し希望が見えた尊流は、満足そうに頷いた。

「サビオさん、判りました、それでこのゴーレムの強化をサビオさんにお願いしたいんですが。」

「ほっほっほっ。タケル殿の頼みだからの、ワシが責任を持って強化をさせてもらうからの。」

そう言ってサビオは笑い、尊流のゴーレムを自分のアイテムボックスに仕舞った。
 
「有り難う御座います。サビオさん、よろしくお願いします。」

「ほっほっほっ。それでは早速改良をしに行くかの。」

そう言ってサビオはお茶を飲み干すと、扉の奧へと消えて行った。


「じゃあ、アルミスさん。また二人でやりますか。」


尊流がまた二人での修行を提案すると、アルミスは尊流の方を見て困惑した様子で返答した。

「で、でも、タケル様・・・・」

「ふふふ、アルミスさん。大丈夫ですよ、何で今まで気付かなかったのかって位簡単な方法が有るんですよ。」

尊流は何か考えが有るようで、何処か自信が有りげであった。

「簡単な方法・・・ですか?」

「そうです、簡単な方法です。とにかく行ってみましょう。」

尊流は説明もそこそこに、扉を出現させると、アルミスの手を取りアルミスを引っ張り扉を抜けて異空間へとやって来た。

「さて、アルミスさん。まず先程の方法ですが、魔法ですね。」

「魔法ですか?」

尊流の簡単な方法とは魔法だと言われ、アルミスは首を傾げてキョトンとしているが、尊流は少しイタズラっぽい笑みを浮かべて話を続ける。

「まあ、コレはゴーレムが完成するまでの繋ぎでは有るんですが、簡単に言うと魔法でアルミスさんの攻撃力を下げてしまえば良いんですよ。例えば肉体強化の逆で体に負荷を掛けたり、俊敏性を下げたりですね。」

通常、敵に使用する弱体化の魔法を、アルミスに掛けるというのが尊流の良い方法だと尊流は言い放った。

「そ、そうなんですか。」

アルミスは少し不安そうである。アルミスが不安に思うのは当然である、弱体化の魔法は敵に掛けるものというのはアルミスもそう考えていたからである、それを手合わせの力量調整の為に、自分に対しそれを掛けると言うのである。尊流を信じてはいるが、アルミスは敵にそういった類いの魔法を掛けられた事が無く、不安に思うのも仕方の無いことであった。しかし 尊流が妙に自信有りそうに言うので受け入れることにした。

「じゃあ、アルミスさん。肉体強化の逆で高負荷を掛けて行動を制限する魔法をかけますね。」

尊流がアルミスに魔法を掛けると、アルミスの体が怪しく光り、その光が消えたかと次の瞬間、アルミスは全身に負荷を感じた。それはまるで全身に重りを付けたようであり、重力が増したかのようであった。

「アルミスさん、どうですか?キツくないですか?」

尊流がアルミスにどんな感じか聞くと、アルミスは腕を動かしたり、手を開いたり閉じたりしていた。

「タケル様、コレがそうなんですね、重りを全身に着けているような感じです、指の先まで同じ感じです。」

アルミスは暫く体の動きを確かめた後、ポーチから木剣を取りだし、軽く素振りを始めた。
 そんなアルミスを見て、尊流が口を開いた。

「アルミスさん。弱体化と言いましたが、その魔法は全身に負荷を掛けているので、そのままの状態で過ごすと体を鍛える事にもなるんですよ。」

尊流がそう言うとアルミスは目をキラキラと輝かせた。

「私はもっと強くなれるんですか?」

アルミスは尊流をキラキラとした目で見つめ、少し興奮しているようだ。
 そんなアルミスを見て尊流は少しだけ引いていた。

「え、ええ。そ、そうですね、一度掛けただけでは無理ですが、継続して魔法を掛け続け負荷を感じなくなったら、魔法を解除した時スピードもパワーも上がっている筈です。」

「スピードもパワーも・・・」

アルミスは木剣を片手に持ち、反対の手をを握り締め、遠くを見るような目で呟いた。
 尊流はそんなアルミスを見て少し後悔した。

(んん~。アルミスさんがやる気になったのは良いけど、失敗だったかな。コレだと実力が開く一方な気が・・・)
「と、とにかくですね、これでアルミスさんが全力でやっても俺の修行になると思います。」

するとアルミスはハッ!として尊流の方を見た。

「タケル様、申し訳ありません。タケル様の修行の為だと言うのに、自分が強くなる事ばかり考えていました。」

「良いんですよ、アルミスさんには修行を付き合って貰って指導もして貰うんですから、アルミスさんが一緒に強くなれるなら俺も嬉しいですよ。」

尊流の言葉を聞き、アルミスが少し頬を赤らめ微笑んでいる。

「さ、それでは始めましょうか、まずは軽く剣を打ち合うだけからいきましょう。」

そう言って始めた尊流とアルミスの手合わせは暗くなるまで続いた。

そうしてアルミスに弱体化の魔法を掛けての連日の手合わせは徐々に激しさを増していった。
 サビオが改良していた尊流のゴーレムも完成し、その性能は尊流とアルミスそれぞれ1対1でも対応出来るほどの高性能に仕上がっていた。

そして午前中は魔法込みでのゴーレムとの戦闘修行、午後はアルミスとの手合わせの日々が続いた。







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