上 下
18 / 155
1章 転生~幼年期

16話 木工と調理

しおりを挟む
無事身体強化を手に入れた尊流であったが、気が付くと太陽はかなり傾き、もう少しで夕方という時間になっていた。

「身体強化を手に入れたのは良いけど、もうこんな時間か、どうするかな。」

思いのほか時間が経っていた事に気付いた尊流は、今日はもうキッチンを使えるようにするかどうか悩んでいた。

「んん~。よし、どのみち一人だ、明日1日寝てても誰にも迷惑掛けないし、取り敢えずやってみるか。」

そう言うと尊流は小屋の中に入って行った。

「まずは寸法だな、スケール(巻き尺)なんか無いか、よし。」

そう言うと、裁縫や等を行う服飾の部屋へ入って行き、長い紐とハサミを持って部屋から出て来た。

「えっと、高さはコレくらいかな、んで、横幅は端まで目一杯欲しいな、奥行きはこんなもんかな、あと踏み台も欲しいな、」

キッチンの寸法を紐で計り、そしてハサミで紐を切り、番号を振る、女神様との連絡用ノートに予め書いた簡単な図面が書いてあり、そこへどこが何番の紐かを書き込んで行く。そんな作業を何度か繰り返していた。

「よし、コレで図面は完成だ、ザックリだが、後は組み立てながら調整すれば良いだろ。」

完成した図面が書かれたノートと、紐を持って木工細工室に向かう。

「よし、天板に使う板はコレで良いかな。」

そう言って表面の目が一番細かい板を選んで作業台の上に載せた。

「おお、楽々持てる、4歳時でこんな大きな物を持てるなんて身体強化ハンパね~。」

次に天板用の全長用に切った紐を板に当て、印を付ける、反対側も同じように印をつけ、墨つぼで線を引く。
そして線に沿ってノコギリで切っていく。

「異世界ファンタジーの定番らしく、中世のヨーロッパがモデルっぽいけど、このノコギリは引き切りなんだな、さっきは気付かなかったよ、墨つぼまで有るし。」

日本でもお馴染みの道具が有ることに少し驚きつつ、ドンドン切って行く。

「それにしてもよく切れるノコギリだな、身体強化のお陰ってのも有るけど、良いノコギリだな。」

道具の良さも手伝って、身体強化をしてるとはいえ、4歳時とは思えない速さで尊流は板を切り終え、続いて奥行きも切り終えた。

「よし、この調子だと思ったよりも早く終わりそうだな。」

天板を思いのほか早く切り終えた尊流は気分を良くして、次の工程に移った。

「よし、次は高さか、箱型にしようと思ったけど、今回は丸太で良いか、足を増やせば大丈夫だろ。」

 手頃な太さの丸太を紐を合わせ、8本程用意した。天板が長いのでたわむのを防ぐ為だ。これで足の部分は準備完了。
 そして足がふらつかないようにする補強材を選ぶ。

「コレは後で取り付けてから切ればいいかな。」

補強材は取り敢えず端に寄せておく、次に踏み台を天板を切り落とした端材を使って作成した。

「よし、後はキッチンで組み立てだ。」

そう言って加工した材料をキッチンに運ぶ、天板用の紐を床に置き、両端を合わせて丸太を置き、
天板を載せて釘で打ち付ける。

「いやあ、釘が有ってよかった、しかもちょうどいい長さで助かった。」

現代の釘とはだいぶ形は違うが釘があった事に安堵していた尊流。もし釘が無かったら、最悪は切った丸太に板を載せるだけと思っていたからである。

「おし、次は中間の足だな」

残りは紐を三つ折りにして長さを揃え、足の間隔を均等に分割して配置していった。

「よし、これで後は釘で打ち付けてっと。あ、段差用の踏み台もくっつけなくちゃ。」

そう言ってメインの大きな踏み台と、乗り降り用の小さい踏み台を釘で打ち付け、最後に足がグラ付かないように、細長い材木を踏み台の3方に打ち付ける。

「よし、完成だ!どれ、乗ってみよう。」

完成した踏み台にニコニコで上がる尊流、しかし上に立った尊流は浮かない顔をしていた。

「ん~、少しガタガタするな、床が微妙に平らじゃないのか、ん~、よし。」

そう言うと尊流は部屋が並ぶ廊下を走っていき、皮革製品の加工部屋から数種類の革を持って戻ってきた。

「こんなもんでどうだ?ん~、これでどうだ!お。良い感じだ。」

暑さの違う革を小さくきり、足の下に入れて揺れを確かめる事を何度か繰り返しようやくキッチンを使うための踏み台が完成した。

「やった、完成だ!これでキッチンが使える!」

踏み台に上がり、キッチンを確認すると、カウンター部分は平らな石でできていた、ほんの少し凸凹している。シンクの部分はお風呂と似ている作りだ。
コンロの部分はかまどになっているタイプと、魔石が埋め込んであるタイプが1口づつ並んでいる。
鍋やフライパン、食器なんかは全てキャビネットの中に入っていた。
と、そこまで確認した所でステータスが展開された。

「お、木材加工と家具製作のスキルが増えた、次はもっと上手く出来るようになるのかな?」

スキルを獲得したのを確認すると、尊流は食材箱から食材を色々取り出した。

「えっと、肉と油はあるな、え~っと、クンクン、にんにくみたいな匂いだな、野菜はコレはキャベツっぽいな、こっちはレタスに近いな。」

今までキッチンが使えないため確認してなかった食材を一つ一つ確認していく尊流。

「よし、まずは異世界定番のマヨネーズだ!」

そう言って、小さめのボールに卵黄2個、塩を小さじ1(目分量)油を適量入れ、お酢は無かったのでワインビネガーで代用、泡立て器は無かったので円柱に加工した材木の周りに竹串のようなものをぐるっと、多少隙間を開けて固定しくくり付け代用した。

「よし、あとは混ぜるべし!!おお、身体強化のお陰で早い早い。」

あっという間にかき混ぜ終わり、日本で食べてた物と少し違うが、マヨネーズが完成した。

「ドレッシングもほしいな。」

尊流はカウンターにまな板を乗せ、玉ねぎのような食感と味のする葉野菜を切っていく、
にんにくっぽい物を少々、ワインビネガー、油、塩、胡椒も有ったので投入、醤油は無かったので今回は諦めた。
ボールに入れ、先程の泡立器もどきをクリーンで綺麗にして、かき混ぜる。

「よし、醤油が無いからちょっと物足りないけど、十分だ。」

そして付け合せにじゃがいものような芋をかまどで茹で、その間にサラダを作る。

「よし、最後にステーキだ!」

フライパンをコンロに置き、魔石に魔力を送ると、IHヒータのようにフライパンが暖かくなってきた、にんにくっぽい物をスライスして油で炒める、予め塩胡椒を降っておいた肉を入れ、焼き始める。
 ウェルダンが好きなので蓋をしてじっくりと焼く、串をさすといい感じに焼けているのが判る、更に乗せ、フライパンに残った油に玉ねぎドレッシングとバターを加え、ステーキソースをも完成。
 ステーキにかけ、付け合せも盛り付ける、全てローテーブルに運び、セッティングした所でステータスが展開された。

「お、調理と料理研究のスキルを覚えた、これからどんどん美味い物作って食うぞ!では、いただきます!」

大人でも多いような量のステーキをペロリと平らげた。食事も終わり後片付けをし、キッチンをクリーンで綺麗にした後、尊流はお風呂に入って気分良くベッドに潜り込んだ。

「あ~、美味しかった~。それにしてもこの4歳時の体のどこにあんなに入るんだか。」

大食いの疑問は感じたが、美味しい食事が出来た満足感で、尊流はすぐに夢の世界へ旅立った。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~

星天
ファンタジー
 幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!  創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。  『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく  はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...