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1章 転生~幼年期

15話 身体強化

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昨日魔法を失敗して、酷い目に有った尊流だが、今はまた同じ魔法を放とうとしている。
「よーし、ファイヤーボール、ファイヤーボール、さて、おりゃあ!」

□□□□□□□□□□

遡ること二時間前・・・・

尊流は先日と同じようにベルド鳥の鳴き声で目を覚ました。
そしてまたパンをかじりながら、ジュースで流し込みつつ、時たま手でパンをちぎりベルド鳥に与えていた。

「んん~。多重詠唱ってラノベみたいに簡単にはいかないんだな。それに初日の風呂といい、昨日の気絶といい、2日連続で死にかけるとは、この先大丈夫かな。」

ベルド鳥に餌を与えつつ、2日連続で死にかけた事に酷く落ち込んでいる尊流。
パンを千切りながら何気なくステータスを開いて見ていた。
 
「ん?何か増えてるな、そうか、気絶してて気付かなかったんだな、多重詠唱と多重遠隔操作?まだあるな、炎耐性と衝撃耐性?」

先日の練習で遠隔操作は覚えていたのだが、新たにスキルや耐性を覚えているのに気が付いた。

「死にかけてスキルや耐性を覚えるなんて、何だか何処かの戦闘民族みたいだな、おい。」

そう言いながら先程までの落ち込みは何処かにふっ飛び、尊流はワクワクしていた。

「こうしちゃおれん、早速練習だ‼」

急いで残りのパンを食べ終え、空になった瓶を放り投げて、岩に向かって走り寄って行った。


□□□□□□□□□□

「おりゃあ‼」

2つのファイヤーボールは尊流が思い描いたように動き、前後に並んだ岩の前の岩を避けて、後ろの岩に左右から当たった。

「よし!成功!お?お~!凄いな、岩が消し飛んだ。」

今回は十分に距離を取っており、爆風の被害も無く安全に魔法を成功させる事が出来た、そして巻き上がった土煙が収まると、岩は消し飛んでおり、尊流はその威力と多重詠唱の成功に喜んだ。

「いや~。昨日は死にかけたけど、もう成功しちゃうなんてスキルって凄いね~。」

魔法の成功に喜びながら、直ぐに次の魔法の体勢に入る尊流。

「よし、じゃあ、 どんどん行くよー!」

そう言うと、尊流はウォーターボールを多重詠唱で成功させると、次々に魔法を唱えていき、全て成功させた。

「よ~し、取り敢えず全属性の多重詠唱と多重遠隔操作は成功だな。」

そうして尊流は全ての属性の多重詠唱と多重遠隔操作の魔法の練習に没頭した。

「ふう。腹減ったー。飯にしよう。」

朝から魔法の練習に没頭し、気付けばお昼喰らいになっていた。
尊流は朝放り投げた瓶を拾い上げ、小屋の中に入っていった。

キッチンにある、食材の入った箱を尊流は覗き込んでいた。

「さて、空き瓶は戻してっと、お、補充されてる。ヨシヨシ。」

箱に入っているジュースは、通常のジュースよりアッサリしてて飲みやすく、かつ飽きが来ないため、1日何本も飲んでいた、しかし空き瓶が貯まっていく一方であったが、たまたま空き瓶を戻したら、暫くすると中身が補充された瓶に置き換わって居たことがあり、その都度空き瓶は箱に戻す事にしたのである。
 そして、パンとジュースの瓶を手に取りそれを見つめながら尊流は呟いた。

「やっぱり、キッチンが使えないのは痛いな~。」

身長が足りず、キッチンが使えないため、そのまま食べられる物しか食べていないため、尊流は使う事が出来ないキッチンに視線を移し、暫く恨めしそうに見つめていた。

「よし!魔法の練習もそこそこしたし、午後はキッチンを使えるようにしよう。」

そう言いながら、その場に座ったままで、パンをジュースで流し込んだ。

「さて、そうは言ったがどうしたものか。」

そう言いながら、尊流は顎に手を当て首を傾げて考え込んでいた。

「そういえば木工細工の部屋に木材が有ったな、よし。」

木工細工の部屋に木材が有ることを思い出した尊流は、ドアが並んでる廊下にに行き、木工細工の部屋に入って行った。

「ほ~。成る程、結構良い材木が揃ってるな、でも何に使うのか判らない道具が多いな。」

木工細工の部屋をウロウロ見て回りながら、尊流は呟いた。
 そしてひとしきり部屋を回った尊流は道具が並んでる棚の前に立っていた。

「ふむ、大体何に使う道具なのか判るんだけど、判らない物も多いな…それはい良いとして、道具は俺には大きいがまあ、何とか使えるか。」

やりたい事に使う道具は地球での経験で判る、異世界初の道具だが、形状から何に使うか判る。幾つか道具を手に取ると、次に材木が並んだ棚の前に歩いていった。

「さて、どうしたものか。」

材木棚の前で道具を抱えたまま困ったように材木を眺めていた。

「大人ならまだしも、4歳児にはどれもデカ過ぎる…小さく加工して持って行くにしても、そもそも棚から材料を出すことすら出来ん…ここでもこの体が原因で出来ないのか。」

尊流は暫く材木の前で悩んだり、取り出せないかと挑戦したりしてみたが、やはり無理だったので諦める事にし、一旦道具を戻し、リビングに戻って来てソファーの上に座り込んだ。

「んん~。困ったな、どうするか…確か平均的な大人より強いってフレイア様は言ってたんだけどなあ…まだ体が馴染んで無いって事か?魔法は確かに強そうなんだけどな…」

尊流はソファーの上で暫く考え込んでいた。

「魔法は強いけど体力は4歳児…魔法…魔法?…そうだ!魔法だ!ラノベで良くある身体強化ってやつを覚えれば!よし、早速練習だ‼」

尊流はそう言うと、ソファーから飛び降り、庭へと飛び出して行った。

「えっと、確か魔力を体全体に纏わせるのが一般的だよな、んん~、こうか?違うな、ただ魔力を纏わせるだけじゃ意味が無いか、」

試行錯誤するがなかなか上手く行かない、どうすれば良いのかと考えていると、ふとあることを閃いた。

「そうだ!パワードスーツみたいにすれば良いのか、よし、纏った魔力を筋肉のような動きをするようにイメージして、それを固定っと、お?何かイケそうだぞ、もう少しだ!」

閃いて試したことはかなり成功に近づいていて、よりいっそう試行錯誤に熱が入る尊流であったが、端から見ると一人で下手なダンスを踊っているように見え、とても滑稽なのだが、自分しか居ないので気にせず続ける。

「よし、じゃあコレを筋肉の動きに連動させるようにしてっと。お?良い感じだな。」

かなり良い感じの感触を掴んだのか、少し浮かれた感じで、尊流は庭の石の前に立っていた。

「よし、行くぞ~。おりゃ!」

自分の背丈程ある岩の前で気合いを入れると、両手を広げ抱きつくような感じで岩を抱えようと力を入れた。

「うお!持ち上がった!」

尊流が岩を持ち上げたのと同時にステータスが展開され、身体強化の魔法を手に入れた事が表示された。

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