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手紙 3
しおりを挟むあなたの眼は魔術を使うことができない灰色。
何の属性も持っていない灰色の眼。
属性がなければ魔力がたくさんあっても、それを使うことができない。
銀色の髪を持っているから、城から出す事はできない。でも魔術が使えないから、蔑ろにされてしまう……。
そんな中途半端な存在にあなたを産んでしまってごめんなさい。
王子殿下のお妃のアナベル様は王家に近い血筋のお方で、この国でも、重要な公爵家のご令嬢。婚礼の前に、私達の存在を知らせる訳にはいかなかった。だから、あなたは陛下の一三番目の子として、ここで暮らしていたの。
王宮の片隅でひっそりと。
でもあなたが居たから寂しくなかったし、私には穏やかな生活だった。
……時々愛しい方も訪れてくださったし。
殿下の訪れに浮かれていた私は、状況を見るのを忘れていたわ。
殿下のお妃様のアナベル様が私達の事を知ったらどうなるのかを。
アナベル様は幼い頃から殿下の婚約者で、ずっと殿下に焦がれていた方。殿下が他の令嬢と話していらしただけで、悋気を見せていたわ。
私が二妃様の侍女だった頃 殿下が私に話しかけてくださっていた時にも 凄く怖い目で睨まれたわ。
初めは小さな嫌がらせだった。
陛下の気まぐれで手が付いた元侍女風情が殿下に気に掛けていただいているなんて身の程知らずなって叱責されたわ。
あなたが殿下の子だなんてもちろん知らない。 それでも、殿下の興味が私に向けられるのが気に入らないのでしょうね。
だけど、少しだけ前からアナベル様の視線が以前より怖いものになった気がするの。
嫌がらせも段々ひどくなってきて、命に関わるものになってきたように思う。
殿下の訪れを知られてしまったのかも知れない。
何度も怖い思いをしたの。
もしかしたら、8歳のあなたへの手紙を書く事が出来なくて、これが最後の手紙になってしまうのかも…。
ああ、ミラルカ。どうかアナベル様に気を付けて。
あなたが殿下の子と知られたら、危害を与えられるのは間違いないわ。
……それから陛下に。
王家の銀髪を持ちながら魔術を使えないあなたを、どうするつもりなのかわからない…。
ごめんね、不安にさせる事ばかり書いてしまったわね。
ちょっといろんな事が重なって少し疲れてしまったみたい。
大丈夫。来年もちゃんとあなたへの手紙を書くわ。
9歳のあなたにも10歳、11歳のあなたにも。成長していくあなたにずっと手紙を書くの。
いつか あなたに直接すべてを語る日が来るまで。
私の愛しいミラルカへ
マリーン
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