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覚醒 4
しおりを挟む目が覚めたミラルカが最初に感じたのは酷い喉の渇きだった。
「……い…」
声を出そうとしたが喉が痛くて声が出せない。
「お気がつかれましたか?ここは王宮ですよ」
初老の男に話しかけられたが、返事を返すことができない。
「…ず、お、み…ず……」
なんとか水を要求すると男の横に侍女がいたようで、その侍女が吸いのみで水を含ませてくれた。
「…ッ、ゲホッ、ゲホッ!……」
むせて咳き込んだら喉の痛みがさらに増してあまりの辛さにミラルカ喉の目から涙が溢れる。
「毒で喉が傷ついたのでしばらくは痛むでしょうな。意識も戻られたので後は大丈夫と思われますが、数日は安静にされた方が宜しいでしょう。後は、念の為この毒の中和剤を服用させなさい」
ミラルカは上体を少し起こされて、薬を飲ませられた。
液体のそれはもの凄く…。
「にが…!うぅ…」
涙目のミラルカに思いがけず優しい笑みを浮かべ初老の男(たぶん医者)が言う。
「苦いが、我慢しなされ。まずは、この王宮でゆっくり休んで身体を戻すことです。ではのう」
医者と侍女が出て行くのを見届けるや ミラルカはふたたび眠りの中に引き込まれた。
『今、何時だろう?』
目が覚めて辺りを見回したが、真っ暗で誰もいないようだ。
『すごく喉が渇いた。水、水ないかな?』
部屋の中を捜したら、暗闇の中で、ベットから少し離れた卓に水差しと吸いのみがあるのが不思議とはっきり見えた。
取りに行くために身体を起こそうとしたが、力が入らない。
『ダメだ、起きられない…。
うぅ~、水が欲しい。喉痛い、喉渇いた…水、水こっち来ないかなぁ。
水、こっちに来い!………!!』
ヤケクソで心の中で叫んだ、ミラルカの目に信じられない光景が映った。
なんと吸いのみがプカプカとミラルカの方に浮かんできたのだ!
驚きつつも、手でキャッチ。とりあえず飲む。
『うう~ 喉に滲みる~。でも、ちょっと頭の霧が晴れた気がする』
少しだけスッキリしたところで、改めて考える。
ここはどこ?私は誰?あのベタなセリフが頭に浮かぶ。
『マジでここドコ?…ここは、王宮だとお医者さんが言ってたような……?王宮、どこの?……』
ーーインフィルーー不意に頭に浮かんだ国名。
それをきっかけに次々と思い出した。
自分の名前はミラルカ、インフィル国の王女という身分。
母と二人で王宮の離れに住んでいること。
『…あっ、母様!血の中で倒れたままだった!!………母様?お母さんよね?お母さんは、いつもパートで、帰って来るのは夕方…』
ミラルカの記憶にある母は二人。母様とお母さん。
混乱した頭で自分の家族を思い浮かべる。
『父さんは中堅会社の人事部課長。お姉ちゃんは、青柳 翠(あおやぎ すい)で弟が青柳 蒼(あおやぎ そう)。私…私は青柳 紫(あおやぎ ゆかり)…』
自分の名は青柳 紫であるのは間違いないのだが、ミラルカであるという自覚もある。
『どういうこと?夢…かなぁ。私まだ寝てるのかな?あ…』
吸いのみを持ったままだった事に気づき視線を向けると、それを持つ手はどう見ても小さな子供の手だった。
ますます混乱する紫。
『…!私、子供になってる?え、え?なんで?…なんで…っ!…』
突然激しい頭痛と耳鳴りが襲う。
紫は、痛みに耐えきれず再度意識を手放した。
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