2 / 31
覚醒 1
しおりを挟む「ミラルカ…!食べてはダメ!!吐き出して……!」
いつもの様にミラルカが母と二人だけの夕食を食べていた時のことだった。
母親がミラルカの口に指を入れ、食べた物を吐き出させた。更に水を飲まされ また吐かせられる。
「ゴホッ、ゴホッ…うぇ、ぐぅ…え…」
数度繰り返されるうちに身体から力が抜け、倒れるミラルカを支えることができず母親も一緒に床に倒れた。
「か、母様…?」
母の顔はまっ青で、口の端からは、ひとすじの血が流れている。
どうしよう…!誰か呼ばなくては!
ミラルカは重い身体でどうにか起き上がり助けを呼ぼうとしたが、母がそれを止めるように手を握りしめ首を横に振った。
「ミラルカ…一人残してくけど、ごめんね。……どうか生きて、生き延びて……幸せに…」
その言葉の途中で母の身体は激しく痙攣し始めた。
荒い、途切れ途切れの呼吸。
「母様!母様!…誰かいないの?母様!…お願い、誰か!」
ミラルカは母にしがみつき必死に助けを呼ぶが応える者はいない。
苦しそうな母の呼吸は次第に弱くなり、痙攣も徐々に小さくなる
イヤ、イヤだ!母様が死んじゃう!
「誰かお願い、お願い 母様を助けて!」
「母様!…」
「……ゲホッ、ゲホッ……くぅ、ううぅ…ミ、ラ………」
母は赤い血を大量に吐いた。
吐いた血溜まりに倒れたまま動かない母をミラルカは必死に揺さぶる。
だが、反応は無い。
ミラルカは混乱し、それでも母を揺すり続け、助けが来るのを期待した。
だが、誰も助けに来る気配は無い。
どうして?どうして誰も来ないの?
どうして、誰も助けてくれないの?
血が、血がいっぱい。
母様の血が…
赤い、真っ赤な血だ!
赤い。赤…赤赤赤赤赤……!!
「…あ…あ、ああぁ!……」
目の前が真っ赤に染まる。
何も見えなくて、ただただ真っ赤で……
「ううぅ…あ、あ…」
頭の中で何かが大きな音を立てている。
ああ、うるさい…
頭が割れそう。
身体がの中で何かが暴れてる。
身体がバラバラになりそうに痛い。
身体が痛くて熱い。
真っ赤な火で焼かれてる様だ。
熱い!熱い!!
「あ…あああぁぁあ……!!」
抑えきれない何かが。
何かが身体中を駆け巡っている。
その度に身体が引き千切られそうで、痛い、痛い!
「ううぅ…あ、あ…あああぁぁああああーーー!!!」
何かが身体を引き裂いて出ていく感覚
割れる音、何が?
揺れてる、地面が?自分が?
そのままミラルカの意識は赤い闇に沈んだ。
0
お気に入りに追加
454
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
転生リンゴは破滅のフラグを退ける
古森真朝
ファンタジー
ある日突然事故死してしまった高校生・千夏。しかし、たまたまその場面を見ていた超お人好しの女神・イズーナに『命の林檎』をもらい、半精霊ティナとして異世界で人生を再スタートさせることになった。
今度こそは平和に長生きして、自分の好きなこといっぱいするんだ! ――と、心に誓ってスローライフを満喫していたのだが。ツノの生えたウサギを見つけたのを皮切りに、それを追ってきたエルフ族、そのエルフと張り合うレンジャー、さらに北の王国で囁かれる妙なウワサと、身の回りではトラブルがひっきりなし。
何とか事態を軟着陸させ、平穏な暮らしを取り戻すべく――ティナの『フラグ粉砕作戦』がスタートする!
※ちょっとだけタイトルを変更しました(元:転生リンゴは破滅フラグを遠ざける)
※更新頑張り中ですが展開はゆっくり目です。のんびり見守っていただければ幸いです^^
※ただいまファンタジー小説大賞エントリー中&だいたい毎日更新中です。ぜひとも応援してやってくださいませ!!
灰色の冒険者
水室二人
ファンタジー
異世界にに召喚された主人公達、
1年間過ごす間に、色々と教えて欲しいと頼まれ、特に危険は無いと思いそのまま異世界に。
だが、次々と消えていく異世界人。
1年後、のこったのは二人だけ。
刈谷正義(かりやまさよし)は、残った一人だったが、最後の最後で殺されてしまう。
ただ、彼は、1年過ごすその裏で、殺されないための準備をしていた。
正義と言う名前だけど正義は、嫌い。
そんな彼の、異世界での物語り。
黒銀の狼と男装の騎士【改稿版】
藤夜
ファンタジー
母と双子の兄を魔獣フェンリルに殺され、呪いの刻印を刻まれたエルディアは、男として騎士団副団長ロイゼルドの従騎士となる。
刻印の力で不死に近い身体をもち、国を守るため戦場に飛び込むエルと、彼女をその過酷な運命から守ろうとするロイの師弟のじれじれ恋愛ファンタジー!
現在改稿中で部分的に削除しています。
改稿版ができ次第アップしていきます。
あらすじはかわりありませんのでご注意下さい。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる