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第二章
ファリンス視点
しおりを挟む馬車に揺られながら気持ち良さそうに寝ているシャーロットを見つめる。
さっき会ったばかりだと言うのに放っておけなくなり連れて来てしまった。
あの合言葉・・・。何故シャーロットが知っているのだろうか。本当に俺と同じ経験をしたのだろうか。そういえば、俺と同じ経験を?と聞いたら表情が明るくなっていた。あの言葉だけで通じると言う事は本当に事実なのだろう。後は直接聞くしかないな。
シャーロットは何故か疑う事が出来ない。不思議な感覚だ。人は必ず裏表がある。それは俺も一緒だ。信用出来る人は数少ない。毎回疑って、疑い続けて来たのに・・・。雰囲気があの人に似ている気がする。交渉に絶対向いている。見た目も磨けば世界一可愛くなるだろう。つまり最高の人だ。
あの人が俺にしてくれた様に、俺もシャーロットにしよう。どうか見守って居て下さい。
さっきからシャーロットが魘されている。何か悪い夢を見ているのかもしれない。邸宅に着いたらすぐ医者に見せて寝かせよう。起こさない方が良いよな。
「ファリンス様、着きましたよ!」
「ありがとう。」
トリーが馬車の扉を開けた。起こさない様にシャーロットを抱っこして降りる。トリーと共に歩き出す。
「ファリンス様、つかぬ事をお聞きしますがその・・・ご令嬢?はどちら様ですか?」
「ラリセス伯爵家の長女のシャーロットだ。」
「え?!凄く病弱なのですよね?連れて来て宜しいのですか?!駄目ですよね?なんで・・・」
「・・・その噂は嘘だ。」
本当にこの世の中は飽き飽きする。十年程前にラリセス伯爵家の一人娘が病に掛かった。何かあった時の為に養子を迎え入れたらしい。が、奇跡的にラリセス家の愛娘の病が治った。・・・その代わり養子が病弱になったのだ。社交界では奇跡ではないか、と噂になり、養子・・・シャーロットが捨てられるのではないかと言う噂もあった。しかしその噂に対してラリセス夫妻はローズを治してくれた女神よ、養子であっても娘に変わりはない、と言っていた。
でもシャーロットの体を見てみろ。傷だらけではないか。何が・・・何が婚約だ!人に暴力を影で振るっているし、最後までシャーロットを蔑み見下した・・・。あの目、あの声、あの態度、あの顔を見るだけで吐き気がする。絶対に許さない。
「・・・っ?!その・・・その傷は・・・?!」
「だから信用出来ないと言っただろう。」
そうだよな、この傷を見たら異常な事は絶対に分かる。トリーは伯爵家に行く前、ラリセス夫妻はとても優しいと有名な噂が有ります。信用出来るかもしれませんね!、と言っていた。社交界なんて・・・人間なんてこんな物だ。
トリーに急いで扉を開けてもらい、玄関で迎えるメイド達を通り過ぎる。挨拶なんてしてる暇はない。
自分の部屋へと運び、ベッドに降ろそうとする。シャーロットが・・・ぅ・・・ぁ、と言う唸り声をあげたと思えば抱き着いてきた。目には涙が滲みとても辛そうだ。
急にパチリと目が開き目が合う。ほぇ?、と言う可愛い声を出した。
「おはよう。」
挨拶をしてベッドに降ろす。医者を呼びに行こうと思ったら目で行かないで、と訴えてくる。可愛い・・・。
「シャーロットの傷を治す為に医者を呼んでくるね。良い子に待って居れるかい?」
「・・・うん。」
うわぁ、良心が痛むけどシャーロットの体が一番優先だ。頭をよしよしと撫でて布団を掛ける。トリーに見張りをお願いして医者を呼びに行った。
─────
邸宅に居る最高位の医者を連れて来た。傷跡が残らなければいいが・・・。医者に脚の傷を見せる。
一度凄く驚いき顔を顰めたがすぐ冷静になり状況を判断してくれた。流石である。
「こんな傷は・・・邸宅にあるだけの道具では足りないかも知れません。総合病院に連れて行くのが良いでしょう。ですが・・・テーピングをしてからの方が良いです。もう少し強い刺激があったら歩けなくなってしまいます・・・。」
・・・許せない。
「許せないですね。・・・寝ている様ですが失礼しても宜しいでしょうか。」
「・・・頼む。」
シャーロットがまた唸っている。呼吸も荒くなったので大丈夫か、と声をかけようとした瞬間────
「・・・や・・・めて・・・ごめんなさい!!!」
シャーロットが飛び起きた。
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