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第二章
本当は
しおりを挟む僕はいじけてます。
「許してぇ、お兄ちゃん・・・」
「っっライト様、俺・・・何でもやります。」
「あ、ベン・・・大声で、イリナードが好き、結婚したい、俺はイリナードに恋してます!って言って。お兄ちゃんは素直に言う事が苦手じゃん。だからお兄ちゃんがやりたくない事をやれば良いんだよ。・・・そもそもベンが原因だし・・・。」
確かにちょっとベンが大声で言ってるの見てみたい。
僕は布団からちょこっとだけ覗いた。気になるなって言う好奇心と僕だったら出来ないという憧れがある。ていうか、言ったら好きって認めてるって宣言するって事だよね。そもそもベンは『イリナードが好き』って事に反論して無いし。
「ううぅ・・・行きますよ、ライト様・・・しっかり聞いて下さいね!お、俺はぁ!いいいいいいいイリナードが大好きです!めめめっっっちゃ結婚したいです!俺は・・・俺はぁあぁ!イリナードに!恋してますぅぅぅうううう!!!」
僕はおぉ~と言ってぱちぱちと拍手を送ったが、不穏な気配を感じる。そう、扉の方から。
僕達二人は今、ベンの正面に居るような形に近い。そして、ベンは扉に背を向けて居る。僕達には見える訳だ。そこに居る人が。
母上はまぁ・・・!と言った様子で嬉しそうだが、父上は、怖い。凄くオーラが見える。ゴゴゴゴ・・・と音を立てて燃えているのが分かる。僕は心の中でたくさん謝った。ベン、本当にごめんねと・・・。
しかし父上は予想に反して、僕達に頭を冷やして来ると行って何処かにフラフラと行ってしまったのだ。
「まぁまぁまぁまぁ・・・!ベンも好きな人が出来たの?イリナード様ね、副団長の弟君・・・良いわぁ!」
「え、イリナードってストラード様の弟なの?」
「「「知らなかったの?!」」」
なんとあらまぁ、ベンはイリナードとストラードが兄弟だと知らなかったらしい。流石にそれはやばいよベン!イリナード泣いちゃうよ・・・この先大丈夫かなぁ?
ストラードとイリナードって似てるのになんで気付かないのかな。あ、ベンだからか。本当に可愛いな・・・。
「で、レリィはルドウィン様とどうなの?」
「・・・・・・」
僕の事は聞かないでよ。どうして聞くんだ、僕は傷心中なのに。ルドウィン様のオーラを浴びてないし、噂すら聞かないんだ。そんな寂しい僕に何を聞くと言う。
現実を改めて見詰める僕に、勿体ぶらないで教えてと言ってくる。
「・・・・・・なぃ・・・」
「ん?」「ん?」「ん?」
「襲撃事件があってから、一回も会ってない・・・」
三人ともそんな・・・!みたいな目で見てくる。
ん?ってだんだんドミノみたいに首を傾げてたのは凄く可愛かったけど、悲しいんだよ。声に出すと余計に悲しいの。
分かる?分からないよね・・・。
「あの、ライト様がルドウィン様にお姫様抱っこされてたって聞いたんですけど・・・。だからてっきり進展があったものだと・・・。あ、な、何でも、無いです!」
「え・・・僕そんな事初めて知った・・・」
「「ベンのバカ!!」」
うがぁと母上とカレアがベンを責め立てる。しかしベンは平謝りだ。どういう事なのか検討もつかない。
そもそもルドウィン様に、お、お姫様抱っこなんてして貰った覚えないし、どうしてそんな噂が出たのだろう。あの時は僕とルドウィン様以外に人は居なかったしな・・・。
僕が気を失った(?)後に、誰かが来た?それとも、それ、と、も・・・?
もやもやと出来事が思い出される。
ルドウィン様を庇って倒れる時は、抱き締められた(?)し、その後は、そういえば、話してる時、僕の頭を撫でてくれたし、手を握ってくれたけど、その手は、こ、ここここ恋人繋ぎだったし、僕、笑えって、ルドウィン様の口元に触れ、触れ、触れ・・・!
いやああぁぁあああぁああああぁぁああああああぁぁあああああ!
ちょ、超絶に!ふ、不不不不謹慎んんんんんんんんんんんん!!!
「ど、どうしたの?レリィ?」「お兄ちゃん・・・!」
「ライト様、俺のせいで・・・」
「っううぅ!僕、僕は・・・、」
あんな時の事で嬉しいなんて不謹慎だ!
僕はいたたまれず布団の下に潜る。
・・・許可なくルドウィン様の口元に触れるだなんて、
僕は・・・僕は・・・!
「僕は凄く悪い・・・『えっちな子』なのですぅぅうううう!!!!!」
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