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第二章
ずっと K/S
しおりを挟む「「やった~!!!」」
「うん・・・!嬉しい、ありがとう・・・!」
「よし、お祝いをしようか!」
地道な努力のお陰でお兄ちゃんが歩ける様になりました!パチパチパチ!あと吐かなくなったよ!
いやぁ、ここまで長かった様な短かった様な!
あ、そうそう、記憶喪失の前に鍛錬出来て居たのは、私とお母様で開発した特性ポーションのせいだった。あのポーションは主に偏頭痛や腰痛持ちの人のために開発した物で、完成して嬉しかったからお兄ちゃんにいっぱいあげて居たのだ。あ、ベンにもあげてたから回収しないといけないじゃん。
お兄ちゃんが捨てずに持っていてくれて、今回使ってくれたのは嬉しかったけれど・・・。このポーションは市販していて、お年寄りの世代に使われている。でもこんなに強い効果があっただなんて知らなかった。
これは一大事だとお母様と話し合い、特性ポーションを市販するのは止めて神殿で診察を受けてから渡す、と言う処置をする事となった。
お兄ちゃんの様に病状の発見が遅くなるのは更なる被害を招く可能性が十分にあるからね。私達の『キャンディー商会』は引き続き皆様のために頑張ります。
キャンディー商会は私とお母様が開発したものを売っていて、お父様が私達だけのために作ってくれたものなのだ。因みに名義は(本人は知らないけど)お兄ちゃんになっている。だから、正真正銘の私達家族だけのもの。
結構大きくて人気なんだけど、お兄ちゃんはお店とかに疎いから知らないだろうね。全然お買い物とか行かないし、私達が買って来ちゃうし。
多分お兄ちゃんはまたカレア達の貰った~、くらいにしか思って居ない、いや・・・最悪の場合めんどくさいと思われている?!
うえぇ~ん!悲しくなって来たよぉ・・・
悲しんでいる私に、お兄ちゃんから声が掛かる。その髪留め・・・、と。
やっぱり可笑しいよね、嫌だよね。怖いよね、嫌いになるよね。やっぱり変だよね・・・嫌われた?もう着けないから嫌わないで!
「変、かな・・・変だよね!」
「違う!っその、とっても似合ってる、・・・か、可愛い・・・よ・・・?」
ぐわわぁぁぁぁああと熱が集まる。
今私は右耳脇に三つ編みをして緑色のリボンで結っているけれど、その髪留めは少し大きめな金色のオシャレな『K』の文字が着いていて、同じく小さな『D』『I』『L』の文字が着いている。
流石にあざと過ぎるかなと思ったんだけど!
「ありがとう、お兄ちゃん・・・!」
「ふふっ、どういたしまして・・・。言える事は言わないと、死んだら伝えられないから、ね。言って良かった~。」
「そう、だね!ありがとう!お兄ちゃん!」
可愛い、と恥ずかしがりながら言ってくれたお兄ちゃんの可愛さは異常にやばい。それに対して少し問題がある程だが。
私は思いっきりお兄ちゃんぎゅうっと抱き締めて、滲む涙を見せない様にした。
お兄ちゃんは最近、この様な言動が増えた。
『もし死んだら』
と言う考えがすぐ近くにある様に言う。
まるで余命宣告を受けた人の様なのだ。私達に真っ直ぐな感情で礼を言う。前はなかったこの言動。
確かにいつかは死んじゃうかも知れないけど、ソレを常に考えて居るって、まるで壊れるのが当たり前みたいじゃない。って思うけど、この言動は私達のせいである。
そんな事言ったら怒るだろうから、いや、怒られたから言わないけれど、少なくとも大いに責任がある。次はそんな事にならないように、ずっと私達の傍に居続けて欲しい。
ずーっと一緒に居て、ドロドロに甘やかして、私達が居ないと生きられなくて、離れない様にしてやりたい。
でもソレは望むべき事ではないからやらないよ。
だから、今日も家族皆で仲良く楽しく愛しい時を過ごそう。早く、も~っと元気になってね?お兄ちゃん!
「ほぉらお兄ちゃん!シャインマスカット~!」
「レリィ、私からはストロベリーよ♡」
「桃水も飲むんだぞ、レリィ?」
「うん、・・・ありがとう・・・」
お兄ちゃんはまた、はにかんでくれた──────
私はふと、一人になった時に考えた。
ベンはいつ来るの?
この間ポーションを回収しに行った時の話が、理由だけならまだ許せるのだけど。
ていうか回収の時、特製ポーションの数が減ってたから心配したら、二日酔いに使ってたらしい。怒りたいとこだけど、新しい用途を見つけられたから許そう!
気が付くと、大きな溜め息が口から出ていた。
ベンったら、まだあの事拗らせてるの?確かに分かるけどさ、一緒に居た方が楽しいに決まってるじゃない。本当に分かって居ないよね。
一体何度言ったら分かるのかな。
お兄ちゃんも私も、お父様もお母様もずっと小さな頃から言っているのに。
やっぱり一線引いて来るのだ。全然来ないし、あんな顔する癖に、良く言えるよね。
だから、今度会ったら、絶っ対に言ってやる!
何度言ったら分かるんだ!ってね!
カレアが心で誓いアハハと高笑いすると同時に、騎士団で誰かが盛大なくしゃみをして、誰かに噂でもされているんじゃ無いですか?なんて笑い合っていたそうな。
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