ツンデレでごめんなさい!〜素直になれない僕〜

ハショウ 詠美

文字の大きさ
上 下
25 / 36
第二章

ずっと K/S

しおりを挟む


「「やった~!!!」」

「うん・・・!嬉しい、ありがとう・・・!」

「よし、お祝いをしようか!」


 地道な努力のお陰でお兄ちゃんが歩ける様になりました!パチパチパチ!あと吐かなくなったよ!

 いやぁ、ここまで長かった様な短かった様な!

 あ、そうそう、記憶喪失の前に鍛錬出来て居たのは、私とお母様で開発した特性ポーションのせいだった。あのポーションは主に偏頭痛や腰痛持ちの人のために開発した物で、完成して嬉しかったからお兄ちゃんにいっぱいあげて居たのだ。あ、ベンにもあげてたから回収しないといけないじゃん。

 お兄ちゃんが捨てずに持っていてくれて、今回使ってくれたのは嬉しかったけれど・・・。このポーションは市販していて、お年寄りの世代に使われている。でもこんなに強い効果があっただなんて知らなかった。

 これは一大事だとお母様と話し合い、特性ポーションを市販するのは止めて神殿で診察を受けてから渡す、と言う処置をする事となった。

 お兄ちゃんの様に病状の発見が遅くなるのは更なる被害を招く可能性が十分にあるからね。私達の『キャンディー商会』は引き続き皆様のために頑張ります。


 キャンディー商会は私とお母様が開発したものを売っていて、お父様が私達だけのために作ってくれたものなのだ。因みに名義は(本人は知らないけど)お兄ちゃんになっている。だから、正真正銘の私達家族だけのもの。

 結構大きくて人気なんだけど、お兄ちゃんはお店とかに疎いから知らないだろうね。全然お買い物とか行かないし、私達が買って来ちゃうし。

 多分お兄ちゃんはまたカレア達の貰った~、くらいにしか思って居ない、いや・・・最悪の場合めんどくさいと思われている?!

 うえぇ~ん!悲しくなって来たよぉ・・・

 悲しんでいる私に、お兄ちゃんから声が掛かる。その髪留め・・・、と。

 やっぱり可笑しいよね、嫌だよね。怖いよね、嫌いになるよね。やっぱり変だよね・・・嫌われた?もう着けないから嫌わないで!


「変、かな・・・変だよね!」

「違う!っその、とっても似合ってる、・・・か、可愛い・・・よ・・・?」


 ぐわわぁぁぁぁああと熱が集まる。

 今私は右耳脇に三つ編みをして緑色のリボンで結っているけれど、その髪留めは少し大きめな金色のオシャレな『K』の文字が着いていて、同じく小さな『D』『I』『L』の文字が着いている。

 流石にあざと過ぎるかなと思ったんだけど!


「ありがとう、お兄ちゃん・・・!」

「ふふっ、どういたしまして・・・。言える事は言わないと、死んだら伝えられないから、ね。言って良かった~。」

「そう、だね!ありがとう!お兄ちゃん!」


 可愛い、と恥ずかしがりながら言ってくれたお兄ちゃんの可愛さは異常にやばい。それに対して少し問題がある程だが。

 私は思いっきりお兄ちゃんぎゅうっと抱き締めて、滲む涙を見せない様にした。

 お兄ちゃんは最近、この様な言動が増えた。

『もし死んだら』

 と言う考えがすぐ近くにある様に言う。

 まるで余命宣告を受けた人の様なのだ。私達に真っ直ぐな感情で礼を言う。前はなかったこの言動。

 確かにいつかは死んじゃうかも知れないけど、ソレを常に考えて居るって、まるで壊れるのが当たり前みたいじゃない。って思うけど、この言動は私達のせいである。

 そんな事言ったら怒るだろうから、いや、怒られたから言わないけれど、少なくとも大いに責任がある。次はそんな事にならないように、ずっと私達の傍に居続けて欲しい。

 ずーっと一緒に居て、ドロドロに甘やかして、私達が居ないと生きられなくて、離れない様にしてやりたい。

 でもソレは望むべき事ではないからやらないよ。

 だから、今日も家族皆で仲良く楽しく愛しい時を過ごそう。早く、も~っと元気になってね?お兄ちゃん!


「ほぉらお兄ちゃん!シャインマスカット~!」

「レリィ、私からはストロベリーよ♡」

「桃水も飲むんだぞ、レリィ?」

「うん、・・・ありがとう・・・」


 お兄ちゃんはまた、はにかんでくれた──────



 私はふと、一人になった時に考えた。

 ベンはいつ来るの?

 この間ポーションを回収しに行った時の話が、理由だけ・・ならまだ許せるのだけど。

 ていうか回収の時、特製ポーションの数が減ってたから心配したら、二日酔いに使ってたらしい。怒りたいとこだけど、新しい用途を見つけられたから許そう!


 気が付くと、大きな溜め息が口から出ていた。

 ベンったら、まだあの事・・・拗らせてるの?確かに分かるけどさ、一緒に居た方が楽しいに決まってるじゃない。本当に分かって居ないよね。

 一体何度言ったら分かるのかな。

 お兄ちゃんも私も、お父様もお母様もずっと小さな頃から言っているのに。

 やっぱり一線引いて来るのだ。全然来ないし、あんな顔する癖に、良く言えるよね。

 だから、今度会ったら、絶っ対に言ってやる!

 何度言ったら分かるんだ!ってね!


 カレアが心で誓いアハハと高笑いすると同時に、騎士団で誰かが盛大なくしゃみをして、誰かに噂でもされているんじゃ無いですか?なんて笑い合っていたそうな。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

英雄の帰還。その後に

亜桜黄身
BL
声はどこか聞き覚えがあった。記憶にあるのは今よりもっと少年らしい若々しさの残る声だったはずだが。 低くなった声がもう一度俺の名を呼ぶ。 「久し振りだ、ヨハネス。綺麗になったな」 5年振りに再会した従兄弟である男は、そう言って俺を抱き締めた。 ── 相手が大切だから自分抜きで幸せになってほしい受けと受けの居ない世界では生きていけない攻めの受けが攻めから逃げようとする話。 押しが強めで人の心をあまり理解しないタイプの攻めと攻めより精神的に大人なせいでわがままが言えなくなった美人受け。 舞台はファンタジーですが魔王を倒した後の話なので剣や魔法は出てきません。

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...