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第二章

お兄ちゃんの危機 K/S

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 お兄ちゃんが儚い。

 以前はそこまでではなかった。きっかけは襲撃事件だろう。私とお母様は研究棟の警備から外れる事が出来なかったし、お父様は市の警備に行ってしまったから、お兄ちゃんのために何も出来なかった。

 だからせめてもの償いとして頑張っている。

 それにしても儚い。


 私達が謝らないでと言ったら、恥ずかしそうにありがとうと言ったり、悲しそうにありがとうと言ったり・・・。時には傷付いた様に言ったり。

 カクンとなって歩けなくて思わず漏らす声も、おどおどと謝る姿も手に力が入らないと手首を押さえて悲しむその行動全てがエッt、失礼。儚いのだ。

 一緒に寝た時も、私の名前を呼んで髪を耳に掛けてくれたり、スルッと優しく頬を撫でたり、悪戯に微笑んで摘んだり。ふっと笑うお兄ちゃんは本当にエッttt、失礼。本当に儚い。


 もし私が他人の男だったとしたのならば。行動はひとつに決まっているだろう。この色kkk、失礼。この儚さに抗える者など居ないのだから。

 そういう事に疎いお兄ちゃんを欲望のままに押し倒し、抵抗出来ないのを良い事にあ~んな事やこ~んな事をして♡・・・初めてなのに『指だけ』で『ぐちゃぐちゃ』に泣かせて『とろっとろ』にして『あまぁ~く』喘ぎ叫ばせるのだ。お兄ちゃんの頭は未知の快感により可笑しくされて訳も分からず『えっちな言葉』を言わされてしまい・・・行為はエスカレートして行くばかりである。そして普段と対な姿、女々しい弱々しい姿に優越感を感じ、より従わせたくなってしまいそれから止まらず、嫌だ嫌だと抵抗するお兄ちゃんはより男を煽るだけで・・・。小さな身体で大きな男の『ソレ』を『美味しそう』に『喜んで』飲み込んでしまって、お兄ちゃんはもう後戻り出来ない所まで──────♡♡♡♡♡


「───カレア?」

「ハッ!お母様!!!」


 いつの間にか思考がちょっと危ない方に!!!

 失礼しました。私もお兄ちゃんの色kkk、失礼。儚さに当てられてしまったわ。アレコレの妄想、いや・・・これから起こるであろう未来への考えが止まらない。

 って事でぇ!!!


「お母様!お兄ちゃんの・・・お兄ちゃんの・・・!」

「えぇ!」

「「貞操の危機よ!!!」」

「な、何?!レリィの貞操の危機?!?!」


 今は緊急家族会議中。正しく緊急なのだ。

 だってお兄ちゃんの貞操が!あんなに純粋で無垢で美しくて可愛くてエッttt、失礼。儚いお兄ちゃんを!誰がほって置くと言うのだ!どんな精神の持ち主だったとしても・・・!


「お父様!コレは本当に緊急事態なの!だってお兄ちゃんったらもの凄くエッッtttttt、おっほん。もの凄く儚いじゃない!誰があの色kkkkkk、失礼。儚さに当てられないと言うの?!」

「「グッ・・・!」」

「このままではお兄ちゃん、いつ犯されても可笑しくないわ!」

「お、お、犯さ、」

「貴方ぁ!どうしましょう?!」


 話しているとバァンと扉が開かれた。何事かと思えばメイド長が一緒に家族会議をしているセバスチャンに言った。

 あ、セバスチャンはお父様が小さな頃から居る執事なの。だからこうやって一緒に家族会議をしている。今までは白熱してたからあれだけどいざとなったら止めてくれるしネタをくれる。頼りになるセバスチャン!が珍しく頭を抱えている。


「クッ・・・分かりました!退室しなさい!」

「はい!」


 お父様が何事かと問えば、お兄ちゃんの色kkk、失礼。儚さに当てられて精神と肉体が我慢出来ず異動を希望する新人が多いそうだ。良い忠誠心だなぁおい!

 でもどうしたら良いんだ!

 どうしようとドンチャカドンチャカピーチクパーチクドンガラガッシャンデデデデデーンと考えて最終的に一つの答えに辿り着いたのだ。(私とお母様だけ)


「お母様・・・!」

「えぇ、分かって居るわ、カレア・・・!レリィは・・・」

「「早くルドウィン様と結婚させるしかない!!!」」

「?!?!ダメだダメだダメだ!けけけけ結婚なんて早すぎる!」


 おっとここで当たり前の様にお父様が反対!さてお母様、どう出るのか?!言い合いか?言い合いか?!言い合いなのかぁ~あ?!これまでの言い合いは全てお母様が勝利している!因みに今日の天使or精霊合戦もお母様のサービス・・・・によってお父様が敗北している!

 しかし愛する家族のために戦います!

 さてこの勝負、どちらが勝つ?!

 お父様VSお母様!レディー、ファイト! カーン!


「貴方!これしか方法はないわ!」

「駄目だイベ!レリィを嫁になんて出せない!」

 おっと初っ端から勝負を仕掛けてくるお母様に対してお父様もしっかりと反論していく!レリィを好き過ぎる余りの夫婦喧嘩の開幕だ!

 因みにお兄ちゃんがお嫁に行くのは私も悲しい!

「嫌よ!レリィが好きでもない誰かに犯されるのなんて!」

「それは当たり前だ!しかし私達が守れば」

「酷いわっ忘れたの?!私が襲われかけた事!魔法封じの手錠と足枷を付けられて魔道具も奪われて何も出来なかったのよ!その時に助けてくれたのは愛する貴方!デネじゃない!」

「っっつ!!!」

 おっとここで衝撃の昔話!私も初めて知りました!意外とドロドロ過ぎる展開!お母様、ご無事で良かったですね!

 お母様の言う通り確かにお兄ちゃんが安全だとは限らない!

 ソレに対してお父様、何も言い返せないぃ!コレはお兄ちゃんを守るために((ルドウィン様と)←これ大事)結婚させるのが一番の安全策ではないか?!

 しかしお父様、まだ迷いがある様だ!両者とも睨み合って居る!さてどうする!どうなるこの勝負ぅう!

「貴方は私に恋した事を忘れたの?!レリィは、レリィはルドウィン様が好きなのに!貴方が一番分かってるんじゃなくて?!酷いわ!」

「イベ・・・!」

 お母様可愛い!可愛い過ぎる!そんなお母様の言葉はお父様に突き刺さる!

 おっとおっとおっとぉ~?!先程よりお父様が迷っております!白熱する闘い!さて、どちらが終止符を打つのか!果てして勝者はどちらなのか!

「私は家族が、大好きなの!!!」

「イベ!私もだ!」


 カンカンカーン!!! フィニ~ッシュ!

 勝者、お母様!


 いやぁ、最後は華麗なる言葉でお父様を納得させましたね。本当に良い夫婦だと思います。・・・お父様とお母様の子で良かったって、きっとお兄ちゃんも思ってるでしょう。

 家族の事が心から大好き。

 お兄ちゃんにもいつか、嘘偽りのない真っ直ぐな愛を届けてくれるお父様とお母様みたいな人が出来れば、好きな人と結婚出来たら幸せになれるんだろうな。

 例えば、ルドウィン様とか。

 私にもいつか・・・現れれば良いのに──────


 
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