ツンデレでごめんなさい!〜素直になれない僕〜

ハショウ 詠美

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第一章

少しの違和感 B/S

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 少しだけだと思う。ほんの少しの、ちょっとした違和感。

 自意識過剰なだけかも知れない、勘違いなのかも知れない。なのに拭い切れない違和感は大きく膨らむ。


「あ、ベン、そう言え・・・ば・・・」


 謎の合間がある言葉に対して、何かあったのか心配になった。でも心配より疑問が勝ったのでどうしたのか、と質問をした。


「・・・新しく入団した人は居る?」

「居ない、ですけど・・・?」


 聞いてきたのは入団した人が居るかどうかと言う事だった。確かに入団した人が居たら挨拶をしないとだからな。でも、さっきの合間はなんだったんだろう。

 少し戸惑いながら居ないと言うと、そうか、ありがとうと言われた。なんか、いつもと違う気がする。普段ならそっか、ありがと、って言うと思う。

 きっと俺の気のせい、ライト様も疲れて居るんだ、と思って追求する事はやめた。


 ライト様を逃げないようにして副団長様に今後の予定を伝えるために出向くと、みんな口を揃えて団長が消えそうでした!!と言った。

 いや・・・分かるけども。

 溜め息をしながらレイピアを取る姿は儚く、風前の灯りの様だった。ちょっとえっち過ぎるぜライト様!

 騎士団の皆キューンってなってたよ。だんだん頬が赤く染められていって、何故か見てはいけないものを見てしまった様な気分になるんだ。

 肝心のルドウィン様が居ないのが残念だけど、どんな人でもイチコロなんだろう。

 それにしてもイリナード達に色々話しちゃったのはヤバい。ルドウィン様の事を言わなかったのは褒めて欲しいけど、言わないのが良いから駄目か。まぁ殆どイリナードとしか居なかったから大丈夫だとは思うんだけど・・・。

 最初の方にライト様は皆の事大好き~!って騒いで叫びまくって居たからそれはヤバい。ライト様を熱く語って泣いてを繰り返して・・・。

 もう黒歴史だよぉ~・・・。

 ま、ライト様の良い所を知って貰えたのは良かった。はたから見たら俺は虚言癖なんだけど。皆がいつか信じる日は来るのだろうか。ずっと虚言癖は嫌だからよろしくね~。

 ラララライト様~に会って~♪
 いっぱい~いっぱいお話するよぉ~♪
 ライト様~は薬が嫌い~♪
 因みに俺も~めっちゃ大っきーらーい~♪

 呑気に歌いながらライト様の部屋の扉を開けるとライト様が寝っ転がって居た。俺は嬉しくて感激過ぎて感動し過ぎて思わず拝む程だった。

 ライト様は泣き過ぎだと俺に言うが、ライト様は休まなさ過ぎだからお相子だよね。いや、ライト様の方が悪いんだ!


「ライト様のせいですよぉ!」


 ライト様のせいにして置こう。

 今まで疲れて居ても寝なかったこの人が自主的に寝ていると言う事は、余程疲れて居るって事だろう?・・・素直に喜んで良いのか分からなくなってきた。

 こっちは真剣なのにイタズラにライト様は笑った。怒ろうと思ったのに一瞬にして砕け散った。


「ベン、イリナードとはどうなの?」

「ん、ほぇえ!?きききき急に、ど、どどどどうしたんでですかぁ?ららららライト様?べべべべべっっつに~、イ、イリリナードがどうとかこうとか別に、なな、何も考えて無いですし~?!」


 急にイリナードの話を振って来たのでちょっとびっくりした。そう、びっくりしただけ。別に何とも考えて無いんだから。

 否定したのにも関わらず、ライト様の煽りは第二ラウンドに突入したのだった。でも、少し様子が違くって。


「んーと、えっ・・・と、えっと・・・。几帳面で、優しくて背が高くて・・・赤の髪の毛をしている人・・・。忘れちゃったな~・・・。さ、最初から二文字目まで、教えて?」

「え、え、えぇ?イリ・・・?」

「そう呼べば喜ぶんじゃない?」


 直球では無く凄く遠回しに言って来るものだから気が付かなくてライト様の思うツボとなった。少し違うと感じたのはライト様がめっちゃ考えていたからって事だったのね。

 それにしてもライトはタチが悪過ぎる!

 平常心を保つために叫んで壁に頭をぶつけるけれど上気した頬は戻らない。後ろでライト様が笑った気がした。

 深呼吸をしてライト様に向き合うと既にライト様は寝ていた。長いまつ毛を見つめ今後の事を考える。


 どうしてあんな事言ったんだろう?

『馬鹿馬鹿しい、俺が居ても居なくて変わらないだろう?いや、・・・俺が居ない方が嬉しいだろうな。』

 前に一度、そんな感じの事を言って居た気がする。僕はみんなにとって必要がないのだと。

 ある新人が団長が居ない方が鍛錬に集中出来る、団長なんて形だけの物で要らないよな。

 なんて事を笑いながら言って居て、ライト様はじゃあ来なくて良いぞ、と言って。そいつら二人は自称良いの所のお坊ちゃまだったからすぐ騎士団を辞めた。その後の事はあえて触れないけど。

 あの時はどんなに精々した事か。すぐ悪態を付いてきて本当にうざかったんだ。お前もお飾り団長のアクセサリーだとか、便乗しか出来ないとか・・・。思い出しただけでイライラする。

 だけどライト様は自分の事を責めてしまってどうしよかと悩んで居たら、そいつらに虐められていた人が居たらしく直接感謝されたのだ。

 団長、本当にありがとうございます、って。

 それで回復したけれど今回はどうやって励ましたら良いのか分からない。元々人がどんな事を考えているかよく分からないから、役に立てないだろう。

 どうして人は個人差が酷いんだ。

 皆同じだったらこんな事にならないのに。俺がライト様みたいに何でも出来たら良かったのに。ライト様が俺みたいに素直だったら良かったのに。

 叶わない事を考えたって、自分の首を絞めるだけだと分かって居る。なのに止められない。縋る事しか出来ない。

 縋る以外に何をすれば良いのか分からない。見守る事しか出来ないのだ。けど、遅くても良いから何かを必ず見つけてやる。例えば、手の前の事だとか。

 真っ直ぐ寝かせるためにライト様を持ち上げたのに、起きる事は無かった。いつもは起きるのに、良いのか悪いのか・・・。


 
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