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第一章
バカ代表とはこの人です
しおりを挟むイリナードは優しい。ベンに頼まれて上司の面倒を見ているのだから・・・。
「───や~め~ろベイン!下手くそ!自分で食える!コレを外せ!おい!イリナ・・・っちょっ、あつ!ベンっ熱いんだけど!」
「あっ、ベイン様、さ、流石に・・・」
「うぇぇ・・・ダメですぅ・・・ダメなんです・・・」
「だから熱いってば!!!いゃぁぁああ!服の中入った、中入ったぁ!熱いやだぁ!取ってよぉぉ!ベンのバカぁぁぁぁ!もうむりぃ、無理なの!イリナード!」
イヤイヤ叫ぶ事しか出来ないのは僕。ごはんをご飯を食べたいだけなのに、どうしてこんなに熱い思いをしなければならないのだろうか。本当に火傷する。
───数分前
「ライト様は自分でご飯食べちゃダメです!」
「・・・何でだ?」
ベンはどうだと言うように、自信満々に言い切った。ベン曰く、病人は自分でご飯を食べてはイケナイらしい。念の為イリナードにも確認するが、幼少期食べさせて貰った事が普通に在るらしい。
俺は子供じゃないと拒否していたが、料理が冷めると言う事とベンが泣いてしまった事から、ベンに食べさせて貰う事になったけど。
ベンはある意味天才だった。
「イリナード!中の取って!熱いっ熱いのっ!ベンも口のヤツ取って!二人ともっ、お願い!助けてぇ!」
「団長の服を、め、捲れと言う事ですか?!?!」
「おねがいっ、熱いの!」
部下の前で醜態を晒すとは最悪以外の何物でもないが、イリナードなら言いふらしたりしないだろう。
だから助けて!
やっとベンが口元の物を拭き取ろうと僕の顔を掴み、イリナードが服の中に手を入れるのと同時に声が響いた。
「───っ病人が何をやっておられるのです?コレは合意での行為ですか?貴方達は本当に」
「熱いってば!もぉ~やだぁぁぁあ!」
「ライト様、出来ました!」
「私には、私には無理です!ベイン様お願いします・・・!」
でも真剣に行動しているのだ。他の人の言葉などに耳を傾けている時間なんて無い。熱いくて助けを求める者や泣きながら行動する人、上司を目の前にしてアワアワしている人。余裕なんて一ミリたりとも存在しないのだ。
そして僕も熱過ぎて涙が出て来た。
「ベン!早く、早くして!ん・・・」
「取れました!!!」
「「「あ・・・」」」
「貴方達は、何をしているのですか?」
部屋を訪れたのは大神官様だった。いつも通りにこやかなのに、後ろで黒い炎が燃え上がって居る様だ。
しかし僕は何故ここに居るのかを考える前に、今すぐ一人でご飯を食べる許可が欲しかったので口を開こうとしたのに。にこやかな大神官様に遮られたのだった。
「言い訳は無用です。分かりました。お粥プレイなんですよね。三人でお粥プレイなんですね。人の趣味に口を出す気は有りませんし、私には関係ない事だと言いたい処ですがライト君は病人なんです。本当に分かっていらっしゃるのですか?」
「・・・三人で『おかゆぷれい』って何だ?」
「「ブホッッッ!!」」
「あぁ・・・こんなにウブな子を・・・」
おかゆぷれいってなんだろう?普段声を荒らげる事が無い大神官様が鬼の形相(雰囲気だけ)で言って来るおかゆぷれいって一体・・・。
「『おかゆぷれい』は悪い事なのか?それとも『三人でおかゆぷれいをする』という事が悪いのか?」
「両方ダメです!ってか大神官様、誤解です!」
おかゆぷれいも、三人でおかゆぷれいをする事も、両方悪い事らしい。・・・つまり、おかゆぷれいは悪い事って事か!
((テロテロリーン!! レリィハオカユプレイヲオボエタ!!))
おかゆぷれいに気を取られていたが、大神官様の許可が在れば一人でご飯を食べる事が出来る。今一番やらないとイケナイ事は、お願いする事。
「大神官様、一人でご飯を食べる許可を下さい。」
「すみません・・・どういう事でしょう・・・?」
( ˙◊˙ ( ˙ө˙ ( ˙8˙ ( ˙Θ˙ )
「そうだったんですね・・・今後は誤解される様な事をなさらないで下さい。私は本当に二人が襲っている様にしか見えなくて・・・」
「「誤解が解けて良かったです!(泣」」
僕だけ状況が理解出来ないまま説明(?)が終わった。分かる事はベンとイリナードが仲良しって事。
大神官様は安心していつものにこやか笑顔でご飯の食べ方を説明して退出して行った。
・まだ自分で食べないで、他者に手を借りる事
・充分に冷まして焦らずしっかり噛んで食べる事
・一口のサイズは小さくする事
・ベンが下手ならイリナードに任せて、膝に乗せてもらって食べる事
僕はイリナードの膝の上。少し冷めたお粥をもぐもぐしていた。お互いの顔を見ないからやりやすい。・・・目の前でベンが反省中の紙を持って正座しているけれど。
僕達は無言だった。だからボソッと言ったイリナードの声が普通に聞こえる訳だ。
「ベイン様が言ってのは本当なのか・・・」
ベンが言っていたのは本当。ベンは何を言ったのでしょうか?僕は気になって気になって四六時中寝れません。なのでイリナード君。教えて頂けませんかね?
「イリナード、詳しく。」
「え、えっ・・・と・・・」
目の前のベンはカタカタ震えている。おっと・・・コレは自覚がある様だね。イリナード君?困ったからって僕の口にお粥を詰め込むで無いよ。
ぐりぐりとイリナードの足をうりうりすれば恐る恐る口を開いた。ベンは言わないでと言わんばかりだからいっぱいあるって事か。
「団長は、恥ずかしがり屋だと・・・」
「ふーん・・・もっといっぱい言ってみろ。」
「団長は、団長は・・・!本当は可愛くて優しくて思いやりがあって、緊張するとキツく当たってしまうけど、後からめっちゃ後悔して、時には涙目にまでなって執務室にしょぼんとしていると!しかも本当は大きな声を出したく無いし、皆の名前ちゃんと覚えてるし、皆と仲良くした」
「───もう良い!良いってば!」
ベンの罪を確実にしようと聞き出そうとしたのに、勢いに任せて言い過ぎでしょ!凄く恥ずかしい!
なんで僕、もっと言えなんて言ったんだよ!
「勢いに任せて一応!他にもベイン様にたくさん教えて頂きました!団長が倒れてからのベイン様は泣き止む事を知らず、騎士団で代わる代わる子守りをしておりました!その際私が一番の適役と言う事で務めさせて頂き、泣きながらたくさん教えて下さいました!因みに騎士団全員の名前を覚えて居る事は全ての団員が知っています!」
「ベンのっ、バカぁぁああああ!!!」
最悪最悪最悪最悪!恥ずかしんじゃう!いっそ死んだ方がマシだった!やだやだやだやだやだやだ!
「ベン!言い訳を聞こう・・・!」
「すみませんでしたー!でも、名前の話と、ル・・・例の人の話はしてません!あと、い、いち、にににににんんんんんん」
「だ、団長の素の一人称は『僕』です!!!」
「ベンのバカぁぁぁあああああああ!!!!!」
念願の仲のいい人(?)は一人増えたが、恥ずかしい事No.3に入る事を知られたのであった。
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