ツンデレでごめんなさい!〜素直になれない僕〜

ハショウ 詠美

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第一章

たまには Le/S→B/S

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 ──────キ、キ、キ、キスしてるぅ~!

「誰がするかボケェぇぇぇぇぇぇえええ!!!──────っゔっっ・・・痛ったぃ・・・」


 最悪の夢見心地だったせいで、ソファーから転げ落ちて頭を打った。そんな事になって居るのは勿論騎士団長の僕。

 ソファーで寝るからそんな事になるんだよ。

 僕は馬鹿なのか?いくら何でもダサ過ぎるでしょ。って、もう十一時だし!仕事しないといけないのに寝ちゃった。・・・また、ルドウィン様に怒られるのか。

 ルドウィン様によしよしされるなんて、都合のいい夢など見れる理由がなく。・・・どちらかと言えば悪夢を見てしまった。気分は落ち込んだままで、溜め息は止まることを知らない。


 机の上にはベンが書いたと思われる手紙と、ご丁寧にラップをかけられたサンドイッチが置いて在った。

 ここになかったら食べなかったかもしれない、そう考えてサンドイッチを手に取った。お行儀は良くないがサンドイッチ食べながらベンの手紙を読む。


 ───ライト様へ

 お部屋に運ぶか迷いましたが、この前殴られたので止めておきました。サンドイッチを用意して置いたので食べて下さい。もし夜に起きてしまっても、仕事の続きなんてしないで下さいね。部屋でしっかり寝て下さい。 ベインより

 追伸 ︰ 先程、ルドウィン様にお会いしました。ライト様の事、心配してましたよ。───


 ルドウィン様が僕を心配?!

 ヤバい、仕事がやりたい・・・!現実で褒められたい。そんな事ある訳無いと知って居るのに、衝動が抑えられない・・・!僕、今なら何でも出来る!!!

 僕は寝起きから仕事に明け暮れていた。



 ―――



 暫くしてノック音が部屋に鳴り響いた。僕の口から思わず間抜けな声が出てしまったのと同じ様にムッとしたベンが入って来た。


「ライト様!仕事やっちゃダメって書いて置きましたよね?!何やってるんですか・・・もう!こんな事だろうと思いましたけど、因みに何時からやっていたんです?!」

「・・・十二時過ぎから、だよ?」

「はぁ・・・!今、二時ですよ?二時間も、電気も付けないで、暗闇で、バカですか?バカなんですか?!」


 ベンがネチネチ言ってるけど、これで最後にするから、と言って黙らせる。さっきより少しムッとしたベンだったけれど、書類の片付けをしてくれた。

 ・・・嘘がバレ無くて良かった。


 十分後くらいに仕事が終わって早々にベッドに寝かされて居る。毎日の睡眠時間が四時間も無いなんて、頭イカれてますよ、なんて憎まれ愚痴を叩かれながら。


「ほら、早く寝て下さい。」

「寝てたから眠れない・・・」

「えぇ~・・・気合いでどうにか寝れません?」


 それが出来たら苦労しない、思った事をそのまま口に出した。それなのに、ベンは僕のほっぺをむにむにするだけだ。


「ベン、いつもダメって言ってるだろ?」

「うわぁ~、今のルドウィン様にやって見て下さいよ。俺でもズキューンって来ました・・・多分イチコロだと思います。」

「・・・ベンの、ばか・・・」

「はいはい、すみませんでした~。」


 僕の何が良いんだ。ズキューンって何なんだ。不思議で仕方が無い。僕がカレアみたいに可愛かったら、好きになって貰えたのだろうか・・・

 なんか嫌になって来た。


「ライト様~?何か振られたみたいな顔しないで下さいよ。まだ大丈夫ですよ!・・・まだ・・・・・」

「まだって言うなぁ!」


 怒りを露わにする様に毛布を握り締め、頬を膨らませ、枕をバンバン叩いている・・・つもりなのだろう。実際はぽふぽふ子供が駄々を捏ねている様にしか見えない。

 ・・・誰が見ても凄く可愛いと言える。

 やってる本人はそれに気付かないのだから、余計にタチが悪いのだ。


 ライト様が早く幸せになると良いな、そう考えると口元が緩んだ。それに対してもっと怒って居る姿は・・・誰もが大変そそられる事だろう。

 ライト様がこんなに可愛いのが知れたら虜になってしまう!俺・・・何があっても守りますからね!

 俺はライト様のベンですから!

 悪い虫は徹底的に対処致します!


「・・・ベン、その顔はなぁに?何考えてるんだ?・・・何か、むかむかする顔なんだけど!僕で遊ぶなよ・・・!」

「はいはーい・・・」


 可愛いライト様に俺はまた、生意気な返事をした。



 十分程だろうか。沈黙が続いたのにも関わらず両者とも全く寝る気配すらない。痺れを切らしたのだろうか、急に無茶振りをしてきた。


「ねぇ、面白い話して。」

「えぇ~!急に言われても・・・」 

「じゃあ鍛錬」
「駄目です!!!」

「じゃあ話してよ、暇で暇でしょうがない・・・」


 唸りながら考えけれど、特に思い付かなかった。


「ライト様、閑談しましょ?」

「どれだけ僕を休ませたいんだ・・・」

「ん~と・・・あ、殴った話、覚えてました?」


 ライト様は気まずそうに目を逸らしながら小さな声で・・・覚えてる、と言った。またズキューンとしたが、あの可愛かった出来事を思い出した。





 ライト様が団長になって直ぐの頃。

 疲れて居たのだろう。今日の様にソファーで寝てしまって居た。身体を痛めるので、ベッドに運ぼうと抱っこした。

 ・・・おんぶする訳にはいかないじゃないか。起こしてしまったら嫌だから。だから、両腕で背中と膝裏を持ち上げるように支えたんだ。

 パチッと目があって、ライト様は自分の状況を確認出来たのか、口をはくはくさせながら真っ赤になった。

 可愛くて笑ったら、子供じゃない!と言われて・・・

 強烈な、一撃を食らったのだった──────

 顎に痣が出来てしまい、本来なら裁判沙汰の事だ。俺は全然怒って居なかったのに、ライト様はボロボロ泣きながら謝ってきて・・・

『ベン、ごめんっごめんねっ!うぇぇ~・・・僕、僕、わざとじゃないの!ごめんなさ・・・ごめんなさい・・・』

 可愛かったなぁ~・・・。勿論現在進行形で可愛いんだけど。少し視線を向けるとそっぽを向かれる。


「悪い事考えてるでしょ!昔の話は掘り返さないでよね、もう・・・。」

「ライト様が可愛いのがいけないんですよ?」

「ベンのバカ!」


 それから暫く閑談を続けた。

 ライト様が有り得ないくらい鍛錬しようとするのを阻止しながら。



 何気ない日常が、一番良いのだと思える。

 一番良いと思えるのは、何故だろうか?

 それは──────


 
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